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フェムテックに特化した投資会社も。2025年までに約5兆円市場へ

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フェムテック分野のサービスの広がりに触れた前回の記事に続き、今回は投資業界、大手企業の参入や規制緩和、また活発なカンファレンス開催など、業界全体の盛り上がりについてまとめた。

月経、ヘルスケア、セックス、マスターベーション、そして、“vagina-nomics”(ヴァジャイナ+エコノミクスを組み合わせた造語)。セックスコラムにこそ並んでいそうな言葉だが、これはどれもスタートアップ投資業界向けのホワイトペーパーに登場する言葉だ。

グローバル広告代理店J. Walter Thompson Intelligenceが、2017年に未来のトレンドと変化についてまとめた「The Future 100: Trends and Change to Watch」に登場している。

女性役員の割合が6%にとどまり、未だに男性が大半を占めるスタートアップ投資業界が向けるその熱い視線が、フェムテックの本格的な幕開けを物語っている。

フェムテック市場の市場規模

今では累計6,380万ドル(約71億2,400万円)を調達しているCelmatix(不妊治療の成果データに基づいてカスタマイズした不妊対策を提案)は、創業当時、「そんなニッチな領域ではなく、糖尿病のような大きな課題を追いかけている」として、投資家に出資を断られたという。

2009年当時、難解な遺伝子検査という事業内容よりも、女性をターゲットにしているということが”ニッチすぎる”と評価される要因だった。10年前のフェムテック市場への投資金額がわずか2,300万ドル(約25億6,800万円)にとどまったのも納得がいく。

ところが、それまで緩やかだった伸びは、2015年に打って変わり、2015年からの3年間でフェムテックには10億ドル(約1,116億円)以上の資金が注がれている。2018年の投資額は、36件にまたいで総額3億9,150万ドル(約437億円)にのぼった(データ解析企業PitchBook調べ)。

ヘルスケア業界のディスラプター(既存の価値観を”破壊”して大規模な変革を起こす存在)として期待されるフェムテックだが、今後女性投資家が増えることでその勢いはますます加速するだろう。現にフェムテック市場は、2025年までに500億ドル(約5兆円)規模への成長が見込まれている。

スタートアップ企業各社の調達額もまた増加傾向にある。卵子の凍結や着床前スクリーニングなど不妊治療全般を扱うPreludeが、2億ドル(約223億円)を調達したほか、不妊治療支援を福利厚生として提供するProgynyは、約9,900万ドル(約110億円)を調達した。

アジアでは、北京発の月経トラッキングアプリDayimaが7,050万ドル(約78億7,000万円)を調達。スイス発、排卵日検知のブレスレットAvaは、2018年5月のシリーズBを経て累計調達額が4,250万ドル(47億4,500万円)に達している。

フェムテックに特化した投資会社も

過去10年間でフェムテックに出資した投資会社は365社に及ぶ。なかでも、名高いインキュベーターのY Combinatorや、ピーター・ティールが興したFounders Fundなどは、この分野に他社より積極的に投資している。

PortfoliaAstarte Venturesといった、フェムテックに特化した投資会社も存在する。

Astarte Venturesは、「女性は家庭におけるヘルスケア関連の第一の意思決定者である」という事実を踏まえて、女性と子どもにまつわる事業投資に専念している。

そのポートフォリオには、早産児の消化管機能発達を支えるデータ企業Astarte Medical Partners、バーチャルクリニックと母乳のデリバリーサービスのMaven、多量出血による産婦の死亡を防ぐデバイスを開発するAlydia Healthなどが並ぶ。

役員の大半を女性が占めるPortfoliaは、体外受精や卵子凍結などのコンシェルジュ&定期購入サービスFuture Family、クラリソニック(洗顔ブラシ)の開発チームが手がける骨盤底筋トレーニングデバイスJoyLux、膣ケアのMadorraなどに投資している。

PortfoliaのCEOで共同創業者のトリッシュ・コステロ(Trish Costello)は、「強力な業界専門家に導かれながら、従来のスタートアップ投資市場では満たされない、急成長が見込める分野の投資機会に注力している」とコメントしている。

老舗や大手も参画、買収の動きも

女性起業家が手がける印象が強いフェムテックだが、大学の研究機関、また大手企業も自ら事業開発したり、他社と協働したりすることでフェムテックへの参入を急いでいる。

米国ペンシルベニア州のLehigh Universityは、AIを用いて、HPVテストやパップテスト(細胞診検査)より何倍も効率的な子宮がん検診を編み出した。AIが子宮がんの前段階である子宮頸部異形成を特定することで、従来の高額な機器を使ったプロセスが不要になるかもしれない。

創業が2007年にさかのぼるウェアラブル機器の老舗Fitbitもフェムテックに参入。2018年春には、スマートウォッチIconicで月経トラッキングアプリClueとコラボしただけでなく、女性向けウェアラブルFitbit Versaをリリース。睡眠や心拍数、月経のトラッキングといった包括的なヘルスケア情報を網羅する。

既存ソリューションの買収によるフェムテック市場への参入もある。2018年4月、医療機器メーカーのBoston Scientificは、女性のウェルネスを扱うnVision Medicalを2億7,500万ドル(約307億円)で買収した。nVisionは、卵管から細胞を採取することで卵巣がんを早期発見するデバイスを開発し、すでにFDA(米国食品医薬品局)に認可されている。

Boston Scientific 社のエグゼクティブ・バイスプレジデントのデイブ・ピアース(Dave Pierce)は、「短期的な市場規模は5億ドル(約558億円)だと予測している。多くの婦人科医が患者を助けるためにこの機器を使用すれば、20億ドル(約2,233億円)に成長する可能性がある」と述べている。

2019年2月には、P&Gがオーガニックの生理用品販売のThis is L.を買収。買収額は、1億ドル(112億円)だと噂される。その他、女性向けセクシュアルデバイスを開発するNuelleは、製薬会社Aytu Bioscienceに買収されている。

画像提供:This is L

規制緩和も味方に

フェムテック市場の本格的な普及と拡大に欠かせない規制環境だが、ここ数年の動きをみると心強い。

ヨーロッパでは、2017年にEUがアプリとして初めてNatural Cyclesを避妊具として認可した。同アプリは、FDAにも認可されている。自社報告による避妊率は93%だが、FDAは「どんな方法も避妊率100%ではないため、女性はあらゆる選択肢を鑑みる必要がある」としている。

その他にFDAに認可されたフェムテック関連製品には、排卵日検知のブレスレットAvaや、スマートフォンを子宮頸がん検診の腟拡大鏡として使うイスラエル発のMobileODTなどがある。

英国のNHS(National Health Serviceまたは国民保険サービス)も、女性のヘルスケア・ウェルネス関連の製品の普及を積極的に後押ししている。例えば、2017年には妊娠性糖尿病のケアアプリGDm-Healthを認可した。

2018年初頭には、緊張性尿失禁の患者に対して骨盤トレーナーelvie(価格199ドル)を保険適用対象にしている。イギリスでは3人に1人の女性が緊張性尿失禁に悩んでおり、手術の大事に至る前に骨盤底筋を鍛えることで、患者1人当たり最大424ポンドの節約が見込まれるという。

カンファレンスやコミュニティの動き

グローバルなイベント管理サイトEventbriteで検索すると、世界中でフェムテック関連の大小規模のイベントが開催されていることがわかる。

たとえば、2017年春にニューヨークで始まったCycle+Sexは、女性の体やセックスをテーマに掲げる年一回のカンファレンスだ。アジア人女性が立ち上げたセクシュアルウェルネス専門のフェスティバルSPARKなどもある。

フェムテックは、大型カンファレンスでも定位置を与えられるようになってきた。

2018年にバルセロナで開催されたEU-Startup Summitでは、フェムテックをテーマにしたセッションが複数登場。同年に雑誌Wiredが開催したWired Healthには、elvieの共同創業者などフェムテックの仕掛け人が登壇した。

また、今年のSXSWには、”Can You Engineer (Sexual) Pleasure?”と題されたセッションが設けられ、DameやLionessといったセックストイの創業者などが登壇したという。

日本でも活動するグローバルな非営利団体Healthtech WomenFemtech CollectiveWoW(Women of Wearables)といったコミュニティの存在もある。ロンドンが拠点のWoWは1万人、Healthtech Womenは2万人を超える会員数を誇る。Femtech Collectiveには、200社を超える企業が参画しフェムテック業界を盛り上げている。

3/29掲載を予定しているこの一連のフェムテック記事の最終編として、セクシュアルウェルネスを含む女性の総合的なウェルネスを支える、フェムテックの具体的な製品やサービスを紹介する。

Text: 三橋ゆか里(Yukari Mitsuhashi)
バナー画像:志谷のぞみ(Nozomi Shiya / BuzzFeed)
Top image: rawpixel via Unsplash

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