ユニリーバ、ロレアルの中国物流ラストワンマイルの攻防、それがもたらす先の世界
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前日の記事で、ワトソンズが中国で物流まで含めたスマートストア化を目論み、リアルでは、ロレアルとのコラボ店舗の拡大を試みるワトソンズを取り上げた。関連して、そのロレアルや、ユニリーバの欧州美容大手が中国の物流のラストワンマイルをどこと組んでいるのか、そのインパクトを中国での展開の軌跡やエピソードを交えて少し深掘りして考えてみたい。
※この記事は『国際商業』10月号「ビューティテック最前線」への寄稿を一部加筆し掲載しています。
2018年8月に、ユニリーバが中国EC第二位の大手、JD.comと物流で提携したというニュースがあった。国内の遠隔地にも強力な自社物流網を持つJD.comがそのインフラを外部にも開放するのだが、最初のパートナーとしてリリースされたのがユニリーバということになる。
JD.comとは、中国最大のチャットアプリWeChatを運営するテンセントグループの一員で、アリババが運営するTmall(天猫)に次いで中国のEC市場第二位の企業だ。2004年の創業以来、偽物ではなく正規品を扱うことで消費者の信頼を勝ち得て業績を伸ばしてきたが、その一方で、物流やテクノロジーへの投資も強力にすすめてきており、同じく2018年8月には、同社の世界初となる無人倉庫が稼働を開始したことも話題になった。
ユニリーバは、1983年に上海リーバを設立して以来、30年以上中国市場と向き合っている。JD.comとは2015年に提携をはたしており、同社のEC上でダヴなどのファミリーブランドの拡販につとめてきた。テクノロジーにも理解が深く、新興市場への開拓にソーシャルイノベーション視点を必ずもつユニリーバであり、今回のニュースはそれほど驚くべきことではないかもしれない。が、この提携話が思い起こさせたのは、JD.comの物流を支える配達員の話だ。
このエピソードは、筆者が2018年7月にシンガポール国立大学蘇州校が開催する5日間の中国参入プログラムに参加した際にある教授の講義で耳にしたエピソードである。JD.comでは無人倉庫など物流改革を進める一方で、自社で抱える配達員には、それぞれの家庭に荷物を配達した際、ついでにゴミ捨てやちょっとした用の手伝いをすることを推奨している。そして実際に配達員の親切な行いはすみずみまで浸透しているようだ。
Image: Freer via Shutterstock
というのもJD.comが最も重視しているKPIは、売り上げではなくNPS(ネット・プロモーター・スコア)だという。荷物の届け先での温かな親切が、そのスコアに跳ね返り、配達員個人の評価につながり、昇進や昇給が約束される。属人的な資質に頼らず、こうした仕組み化でのおもてなしこそ、いまの中国の強みだ。JD.comが築きあげてきた偽物を排除した安心できるオンラインショッピングと、それを遠隔地まで届ける配達員の心配りにより、顧客ロイヤルティが高まるのは間違いない。ショッピング体験がさらに豊かになることを見越したユニリーバとJD.comとの親密な関係がそこにはあることを感じさせる。
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