新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

コーセー ミルボン「インプレア」の髪&眉ARトライオン導入で広がる美容室の接客DX

◆ New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

ヘアカラーのARシミュレーションは、美容サロンでも顧客体験向上に活用する動きが活発化している。2021年3月、初めて髪と眉のカラーシミュレーションを同時に体験できるツールの導入を果たしたのがコーセーミルボンコスメティクスだ。パーフェクトのAR技術を採用し、美容師によるヘアとメイクを合わせたトータルの印象提案とクロスセルにつなげる狙いがある。事例を通じて、テクノロジー活用による美容サロン業界の新たな価値創造の可能性について考察する。

髪と眉の両方を試せる「ARトライオンツール」で接客力を強化

美容室専用化粧品ブランド「インプレア」を展開するコーセーミルボンコスメティクスが、AR技術を活用した「ヘアカラー & メイクアップ シミュレーター」で提供するのは、同社が展開する美容室専売化粧品ブランド「インプレア」と、ミルボンの美容室向けヘアカラーブランド「オルディーブ」製品のカラーイメージだ。

簡単にいえば、髪色と眉の色をそれぞれ組み合わせてデジタルガジェット上の画面で確認できるツールである。2021年3月にインプレアから眉マスカラとアイブロウペンシルを新発売する同タイミングで公開した。この髪と眉というメイクの組み合わせを提案するデジタルツールの投入は、美容サロン業界では初めての取り組みだという。

画像1

「眉」×「髪」など、
目指すビジュアルを可視化する
出典:コーセープレスリリース

このツール提供・開発支援を行ったPerfect Corp.の日本法人、パーフェクト株式会社 代表取締役社長 磯崎順信氏は次のように語る。

「演算処理の改善で、これまでは別々のシミュレーションだったものが、今回のタイミングで両方を同時に試せる実装ができた。この技術と『印象革命』というインプレアのブランドコンセプトやロジックが掛け合わさり、美容院でのユーザー体験が向上する仕組みを提供できるようになった」

髪色のみのARトライオンでは、花王が毛束プッシュイン(商品の前に設置される毛束サンプル)からデジタルへの置き換えを進めたり、ホーユー シエロがトライオンをCM展開して認知促進を進めたりと、これまではコンシューマー向けのマーケティング活用が先行してきた。だがここにきて、美容サロンのカウンセリングツールとしての問い合わせも増えているという。

「直近では、別件でパーソナル肌診断からヘアカラーをレコメンデーションするシステムの開発に携わった。これから美容サロン業界におけるテクノロジー活用の可能性はもっと広がっていくのではないか」と磯崎氏は分析する。

インプレアの延べトライオン回数10万回超え、売上げも好調に推移

今回、ARトライオン導入をブランドサイドで進めたコーセー ミルボン コスメティクス株式会社 代表取締役副社長 湯澤康弘氏も、そのメリットを次のように説明する。

「髪への施術技術の高さによる顧客満足を追求する一方で、化粧品の販売については『顧客が不快に思ってしまうのではないか』と躊躇する美容師は少なくない。今回、ミルボンのヘアカラーブランドと連携しARトライオンを導入したことで、髪色にあわせた眉の提案ができるようになった。美容師が得意とするヘアカウンセリングから化粧品の提案をする自然な流れが生まれたことで、顧客だけではなく、施術側のコミュニケーションのハードルも下がり、化粧品のおすすめがしやすくなったと現場から評価する声が届いている」

また、顧客からは美容室でシミュレートした際の画像データを持ち帰りたいという声もきかれ、自宅で前もって利用するケースも少なからずあるようだ。実際、「ヘアカラー & メイクアップ シミュレーター」の公開後、ツールの利用は最も多かった週で延べ10万回超を記録。一般的なコンシューマー向けブランドのシミュレーション回数に匹敵する利用があるという。

この一連の取り組みが奏功し、同時発売したインプレアのアイブロウ新製品の売れ行きも軒並み好調に推移している。新製品アイテムのひとつである眉マスカラ(全7色展開)に関しては、発売初月で想定の1.6倍の売上を記録。従来のオーソドックスなブラウン系2色以外の色味もよく売れているという。

眉マスカラは全7色で
どんな髪色にも対応する。
カシス、ハニー、オリーブなど
ヘアカラー「オルディーブ」の
色展開と合う色味も人気だ

「通常アイブロウアイテムでは、売上構成比の7~8割をいわゆる定番色であるブラウン系が占めるケースが多いのだが、今回はそれ以外の色もよく売れている。ブラウン系が出てないというわけではなく、いずれも想定以上の売れ行きで、ブラウン系2色で構成比4割、その他の色味6割という実績になっている。マスク着用で口元が隠れるようになり、従来の色味では眉が重たい印象になる。そのため明るい眉色を好む方が増えていることも影響しているかもしれない」(湯澤氏)

”美の権威者=美容師による印象革命”を標榜するインプレアにとって、眉アイテムの初動ヒットは売上以上に大きな意味を持った。デジタルツールを活用しブランドコンセプトを体現できたこと、実際に美容師やユーザーの行動変容につながり、美容院で「モノを売る」ことのハードルが下がったことを実感できたからだ。これはまさに、コーセー ミルボン コスメティクス設立時から湯澤氏が立ててきた大きなテーマのひとつだった。

髪色にあわせた眉メイクの提案が美容室で受け入れられた理由

「世界で戦う美容企業集団」を掲げ、コーセーとミルボンの合弁会社として美容室専用の化粧品ブランドのために設立された同社は、2019年にインプレアをリリース、スキンケア商品を中心に販売を開始した。

その準備にあたっては、下記のような市場の可能性からブランドの設計を行ったと湯澤氏は振り返る。

■ 美容室市場は約1.5兆円の産業規模があり、化粧品物販ポテンシャルは高いが、現状の化粧品(スキンケア・メイク)の物販比率は約1%の150億円程度に留まっていること
■ その背景にあるのが美容師のマインド。髪の技術には自信があるが化粧品の物販については消極的であるケースが少なくないこと
■ 一方、約2.6ヶ月に1度の来店頻度があり、滞在時間が1時間以上と、化粧品販売のタッチポイントとして有効であり、髪だけでなくメイクなど美容全体のアドバイスを求める潜在ニーズがあること

「一般的に化粧品ブランドでは、店頭で商品の使い方をレクチャーする形でのアドバイスが限定的なのに対し、美容室はヘアを中心にコスメ、ファッションと美しくなるためのトータルアドバイスができるアドバンテージがある。そこで、インプレアでは”美容室ならではの化粧品”とは何かを念頭に、お客様に寄り添うということはもちろんだが、まずは美容師に寄り添うことを第一にブランド設計をしていった」(湯澤氏)

そのブランド発足の当時から提供するのが「印象プロデュース®」というインプレアオリジナルのカウンセリングメソッドだ。髪と顔、それぞれ色・質感・形に関する6つの質問に答えると、「キュート」「フレッシュ」「クール」「エレガント」の中から現在の印象を分析し、提示する仕組みとなっている。

画像2

「若さ」と「成熟」の縦軸と
「フェミニン」と「かっこいい」の
横軸からなる4象限にマッピングする
出典:インプレア公式サイト

その現状と美容師によるカウンセリングを通じて顧客がなりたい印象の方向性を決め、「髪」と「顔」のトータルな印象チェンジへと導く方法になる。インプレアの化粧品アイテムも、このメソッドに則り印象別のラインナップを構成している。

「基礎的なスキンケアが揃う『オーラアップ』はそのままの印象で魅力を高めたい時に提案するライン。一方、『オーラチェンジ』は4つのなりたい印象に合ったスキンケアやメイクのアイテムが揃う。美容室ならではのコミュニケーションを通じて、髪と肌の印象提案でお客様のトータルビューティを実現できる形を目指した」と湯澤氏は説明する。

美容師が技術をベースとして「きれいになりたい」「変わりたい」ニーズに応えているからこそ、商品の提案も受け入れられるのだ。

画像3

なりたい印象別に区分した
アイテムラインナップ
出典:インプレア リーフレット

今回、この印象プロデュース®の分析も、これまでの紙からWebアプリケーションとしてデジタル上でビジュアル化し、スマホで使えるようにした。

「カウンセリングメソッドを理論だけでなく実際の施術に活かせる状況が徐々に出来つつある。美容師の方の化粧品提案の心理的障壁を下げるという面からも、デジタルツールの活用がよい影響をもたらしていると感じる」(湯澤氏)

ツールを介した顧客体験の向上の一方で、顧客利便性向上の取り組みとしてEC購入まわりの整備も進め、2020年6月に専用ECプラットフォーム「milbon:iD」をミルボンでは開設した。美容室専売品のEC販売は長らくタブーとされてきたが、顧客は普段利用している美容室の専用コードを入力することで商品の購入ができ、美容室にも売上が立つ仕組みを整えた。インプレアの場合も、店頭でカウンセリングを受けた後はこちらのサイトから商品を購入できる。

”技術とヒト” 美容室のポテンシャルを活かし新たな化粧品購買体験の創造へ

このように着々と地固めを進めるなかで、新製品の投入については慎重に見極めてきたという。

「実は眉アイテムや、もともと美容室の売れ筋アイテムである日焼け止めは、ブランド立ち上げ当時から発売を推す声もあったが、あえてここまで我慢して出さなかった。なぜなら、美容室に化粧品販売の知見が蓄積されていないなかで、取組みやすいアイテムを安易に発売するのは、中長期でみた場合に成長の妨げになると考えたからだ。化粧品をサロンでお客様にお薦めするのは地道な活動だが、これまでの知見の積み重ねがあるからこそ、コロナ禍でタッチアップやフェイスタッチができない状況でも、予想を上回る売れ行きをみせることができた」(湯澤氏)

その取り組みに一役買ったのがARトライオンツールである。同社では今後さらにツールのアップデートを予定しており、AIによる印象分析機能やARトライオンと印象プロデュース®との連携機能などの実装に向け検討を進めている。それが実現すれば、より差別化したヘアメイク技術や体験の提供が可能になる。

インプレアの取り扱い店舗も現状からさらに増やす予定でいるが、エンドユーザーに対する価値提供、また化粧品物販を美容室に根付かせる意味でも、美容師への教育やトレーニングには力を入れており、やみくもに数を増やすことはないと湯澤氏は断言する。

「美容室は化粧品を買うチャネルとしての伸び代は大きい。全国に20万軒以上の美容室があるとされ、コンビニ業界の約4倍の店舗数があり、やり方次第でマーケットを大きく拡大できる余地がある。業界最大手であり、美容師に対する啓発や研修プログラムに力を入れているミルボンと組めていることの意味は大きく、業界全体のスタイルを変えていくチャンスでもある。時間はかかるかもしれないが着実に取り組みを進めたい」(湯澤氏)

デジタル活用の余地がまだ多く残る美容サロン業界で、顧客体験を豊かにし、その結果として販売力も高まるパラダイムシフトに注目が集まっている。

Text: 清水美奈(Mina Shimizu)
Top image & photo: コーセー ミルボン コスメティクス株式会社

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。2021年7月19日より月・水・金の週3回配信となり、9月1日にリニューアルを予定しております。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf