化粧品業界における3D(3次元)細胞培養が今後のイノベーションに果たす役割
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生物から分離した細胞を生体外で3次元的に増殖・維持させる技術である「3D(三次元)細胞培養」。その市場は2021年に16億ドル(約2,138億円)、2031年までには83億ドル(約1兆1,092億円)に達し、2022年から2031年までCAGR(年平均成長率)18.2%で成長すると予測されている。こうした市場の急成長には、近年の3D細胞培養技術の発展・多様化により、応用領域やユーザーが拡大してきている背景がある。3D細胞培養市場の中心領域は現在、がん研究、幹細胞研究、創薬、再生医療だが、3D細胞培養市場の発展によって、美容分野にはどのようなインパクトがもたらされるのかを考察する。
動物実験廃止の流れから3D細胞培養に注目が集まる
3D細胞培養は、これまでの2D細胞培養に比べて立体的であり、たとえば、肌でいえば、表皮から真皮といった構造や細胞の違いも再現できるところが、平面的な2D細胞から大きく進化した点だ。
化粧品業界において3D細胞培養が注目されている大きな理由の1つに、動物実験廃止の流れがある。動物実験では、対象動物が非人道的な状況にさらされる場合もあり、クルエルティフリーを求める消費者の強い動きや、さらには、動物実験とヒトでの結果との関連性が限られているという指摘もある。
動物実験廃止の取り組みが最も進んでいるEUは、すでに2009年に「化粧品に関する規則1223/2009(化粧品規則)」を制定。同規制内で化粧品に関する動物実験の禁止を定めた。EU域外で動物実験がなされた化粧品をEU域内において販売することも同規則において禁止されている。2021年には中国においても輸入化粧品の動物実験義務化が撤廃されるなど、動物実験廃止の流れが加速している。
こうした流れから、とくに大手化粧品ブランドでは、3D細胞培養によってヒトの皮膚や動物実験の代わりとなる3D皮膚モデルの作成を推進してきた。このことにより、いわゆるin vitro(イン・ビトロ、試験管レベルで行う実験)環境で、化粧品の安全性や有効性を試験する取り組みを進めている。
3D細胞培養では、従来の2D細胞培養に比べ、in vivo(イン・ビボ、動物個体をそのまま用いて行う実験)、つまり動物実験の代替となるような生体組織を模倣した3D細胞モデルを作成することができる。in vitro実験は、環境整備や飼育が必要な動物実験よりも安価なうえ、実験結果が出るのも早く、クルエルティフリーの化粧品開発に欠かせなくなっているのだ。
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