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独バイヤスドルフは韓国LYCLとアクセラを通じて協業、日本での実施も視野に

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バイヤスドルフが韓国で行うアクセラレータープログラムの選定企業LYCLは、バイヤスドルフからグローバル進出など広範囲でのサポートを受け、2度の投資に加えて、パートナーとして製品開発などの協業を進めている。双方にインタビューを行い、ドイツに本社をおくバイヤスドルフが韓国、そして日本も視野にいれてアクセラレータープログラムを実施する意図についても話を聞いた。

独バイヤスドルフが韓国で実施する「ニベア・アクセラレーター」

ドイツのグローバルスキンケア企業バイヤスドルフは、韓国発の有望な美容系スタートアップを発掘・育成するため「ニベア・アクセラレーター」(以下、NX)という独自のプログラムを韓国で展開している。2020年6月には、第二期の選定企業が発表された。(参考記事『独バイヤスドルフが韓国でアジアトップの美容特化アクセラレーターを目指す理由』)。

今回は、NXの第一期選定企業の1つであり、大型投資を受けるなど動向に注目が集まるビューティスタートアップ「LYCL」のハン・マニ(Manhwi Han)副代表と、バイヤスドルフ韓国のベンチャー&新事業部門で部長(Head of Ventures and New Business at Beiersdorf)を務めるヤツェク・ブロズダ(Jacek Brozda)氏にインタビューを行い、LYCLが描くビジネスの将来像やバイヤスドルフのNXのもくろみについて聞いた。

LYCLはクチコミプラットフォームUNPAを活用しPBブランドを開発

LYCLは、2013年創業で、Kビューティアイテムのクチコミレビューやコンテンツを提供する「UNPA」(オンニのポーチ)という情報プラットフォームと、オリジナルのスキンケアブランド「unpa.Cosmetics」を運営している。

LYCLの強みは、200万ダウンロードを超えるUNPAに集まるデータを分析して利活用し、消費者インサイトにもとづいた、人気が出る確率が高い自社製品を早いサイクルで市場に投入するビジネスモデルを持つ点だ。過去には、約100万人のユーザーデータを解析して開発したリップスクラブ「ブビブビリップ」がミリオンセラーとなり、日本でもドンキホーテなど大型小売店を通じて販売され評判になった。

「LYCL ではUNPAで話題となっているキーワードや、ユーザーに対するアンケートから次のトレンドや需要を予測し、自社ブランドでの新製品開発に活かしている。これまでブビブビリップのほかにも、『チャチャトゥースペースト』という歯磨き粉がヒット商品となった」(ハン氏)

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ブビブビリップ 

データを読み解き、ヒットの兆しをすくいとる実力

ブビブビリップは、従来製品に対する消費者の意見や不満を上手く汲み取った商品だった。唇に角質がたまると口紅の発色が悪くなる。その際、一般的には角質除去液などが使用されるが、チクチクした痛みを感じるというデメリットがある。そんなジレンマの存在をデータからみてとったLYCLは、泡を発生させ角質を柔らかくして簡単に除去できるアイテムとして商品化したのがブビブビリップだ。

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チャチャトゥースペースト

一方、チャチャトゥースペーストは炭粉の成分を配合した歯磨き粉で、パッケージもペースト自体も黒色だ。真っ黒な歯磨き粉で歯を磨くという、常識からかけ離れた商品を開発するきっかけとなったのは、これもUNPAユーザーの情報発信だった。米国や欧州で活性炭の持つホワイトニング効果を期待して、炭を使って歯を磨くという流行があり、それがプラットフォーム上で話題となったのだ。その“ユーザーのアイディア”を取り入れ、黒い歯磨き粉を製品化したところ、見た目のインパクトや意外性から大ヒットし、韓国だけで累計151万個を売り上げた。

バイヤスドルフがLYCLを高く評価しているのも、情報プラットフォームの集客力&データと自社開発力、この2つの柱を結びあわせたビジネスモデルに由来する。「NXが選出した企業としては唯一、LYCLには2度にわたる投資を行った。一回目の投資はNX単体、二回目はロッテグループと共同で500万ドル(約5億2,000万円)規模となった」とブロズダ氏は明かす。

昨今では、人工知能(AI)を使ってデータ分析を自動化するという手法が流行っているが、LYCLのそれは、ある意味アナログだが、AIでは見つけにくいインサイトを拾い出す手法といえよう。属性情報などラベルから見えてくるデータだけでなく、クチコミのキーワードの選別処理と、ユーザーアンケートを深部まで読みこんで潜在的なニーズなどを掘り起こしている。こういったデータを深く読み解く力もまたLYCLの強みといえる。

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出典: NX & LYCL

世界進出を目指すLYCLとアジアトップのアクセラレーターを狙うNX

バイヤスドルフはLYCLの成長を後押しするため、積極的な支援を惜しまない。その中身は2つに大別できる。「製品開発」と「販路拡大」だ。

とはいえ、LYCLは支援を受けるだけの側ではない。11月18日に韓国でローンチしたバイヤスドルフの新スキンケアブランド「CHAUL」の立ち上げには同社が深く関わった。UNPAプラットフォームを通じての消費者リサーチ、ブランドデザイン、パッケージ開発、デジタルコンテンツ制作など、幅広い領域で協業したのである。

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出典:CHAUL Instagram公式アカウント

「個人的には、このようなコラボレーションこそ、バイヤスドルフとNX選定企業が結ぶパートナーシップのベストプラクティスだと考えている。さらに、韓国国内流通網のさらなる確保と、東南アジア地域への販路拡大のための支援も行っている」(ブロズダ氏)

LYCLは創業当初から、情報プラットフォームを運用してきた経験から、unpa.Cosmeticsの公式サイトなどD2Cチャネルを通じた商品展開やデジタル戦略に豊富な知見を持つ。しかしながら、バイヤスドルフがニベアブランドなどで確立している、韓国やグローバル市場におけるオフライン流通網などで商品を展開し、存在感を際立たせてこそ、次の段階の成長が実現できると考えている。

ハン氏は「デジタルに強いブランドや企業が、D2Cモデルである程度の成功をおさめることは可能かもしれない。しかしオンラインだけではデジタルマーケティングをはじめ、広告費を捻出し続ける負担があるため、持続的な成長を遂げるには、どこかで確固としたオフライン販売網を構築したり、海外市場の開拓などステップアップが必要だ。とくに海外の販路に関しては壁が高い。韓国美容業界の場合、従来は主に免税店を通じた中国市場への進出というアプローチが主流だった。だが、コロナ禍によってその手法も難しくなり新たな局面を迎えている」と語り、予期せぬ状況や混乱期であればあるほど、誰よりもスピーディに動いて市場をリードできる企業が「次世代Kビューティのヒーローになれる」との見方を示す。その意味で、世界に販路を持つバイヤスドルフのバックアップがあることを心強く感じているとする。

グローバル市場への積極的な進出を計画しているLYCLにとって、韓国での事業は一種のモデルケース構築やテストマーケティングも兼ねている。韓国でデータを集め、需要を汲み取り、新たなトレンドを生み出す。そして、その成功サイクルを世界でも仕掛けていくのが、ハン氏ら経営陣が描く戦略だ。当面の進出先として想定しているのは、中国、東南アジア、そして日本である。

「日本は次の目標として最も注目している市場だ。ブビブビリップやチャチャトゥースペーストは日本国内の一部流通チャネルを通じて販売され、好評を得ているが、今後はオフライン市場での販売を強化していきたい。協力パートナーも意欲的に募っていく」(ハン氏)

バイヤスドルフ側も、LYCLのグローバル進出を全面的に支援する考えだ。販路はもとより、各国やエリアごとに考慮すべき点やR&D、マーケティング、セールスなど、ドイツ発のインターナショナルな企業として培ったビジネスノウハウを共有していくとする。

「バイヤスドルフのグローバルリソースを活用して、LYCLはもちろん、そのほかの選定企業の成長を加速させるため支援していくつもりだ。何年も何十年もパートナーとして関係を築きたいと願っている」として、アクセラレーターとして、選出企業とは一過性のつながりではない、長期的な観点に立った協業を考えていることをブロズダ氏は強調する。

また、NX自体も今後、アジアのNo.1ビューティアクセラレーターになることをビジョンとしている。「韓国の次に戦略的に重要視しているのが、日本だ。グローバルにみてもスキンケアを牽引する市場のひとつであり、日本のビューティスタートアップの可能性も高く評価している。LYCLなどと同じくコラボレーションできることを期待している」(ブロズダ氏)

バイヤスドルフにとっても、本腰を入れた支援を行うLYLCの成功が、アジアNo.1アクセラレーターへの近道となるはずだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: NX 
画像提供: LYCL

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