ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2021年上半期デジタル施策総まとめ
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ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2021年上半期デジタル施策総まとめ

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2021年上半期の化粧品売上上位6社のデジタル施策と事業開発をまとめた。2021年上半期はロレアルとエスティ ローダーがパンデミック以前の成長基調に戻り、記録的な売上を上げるなどコロナ禍の変化の対応を素早く、かつ柔軟に行ってきた企業が大きな成果をあげた。今回は6社のうち1位~3位企業のロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダーについて紹介する。4位~6位企業については次回に紹介する。
※ランキングはBeautyPackagingのTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIESより

ロレアル、エスティ ローダー好調の理由、3社が展開するソーシャルアクション

2020年の化粧品業界は、「2020年下半期デジタル施策総まとめ」にもある通り、パンデミック対応モードに突入し、課題を特定しながら柔軟に戦略シフトをしつつすべてのステークホルダーへの真摯な対応をした企業と、対応に遅れが目立った企業で、売上・シェアの明暗が分かれた。2021年に入り、ロレアルやエスティ ローダーは2019年度の成長に戻してきており、むしろパンデミックの経験でさらに盤石な企業となっている。

トップ3企業の共通の動きとして2021年上半期に目立ったのは、欧米で顕著だったマイノリティに対するヘイトクライムへのアクションとして、有色人種の採用を強化したり、LGBTQ+を支援する活動などが積極的に展開されたことだ。

広告・マーケティングの観点でこの領域のトップに立つユニリーバは、2016年から展開している「脱ステレオタイプ」ビジョンのもと、ポジティブ・ビューティ・ビジョンを発表し、ビューティブランドとパーソナルケアブランドのパッケージングと広告から「ノーマル」という言葉を排除するなどの活動をスタートしている。エスティ ローダーは人種やLGBTQ+への差別を是正する活動を積極的にアピールしている。ロレアルも30代以下の雇用を増やすための活動を始め、格差問題をはじめとする社会課題へアプローチしている。

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ロレアル、ユニリーバ、
エスティ ローダーの株価の動き
出典:Yahoo! Finance

上の図にあるとおり、株式市場では、ロレアルとエスティ ローダーが高く評価されている。

S&P500指数の2021年上半期の平均上昇率が13.1%で、ナスダック総合指数が8.1%だったのを上回り、ロレアル20.9%、エスティ ローダー19.3%という結果だった。

ロレアルが好調な理由は、ECに注力しながらコスト削減も同時に実施した結果といえる。またCDOとして名を馳せたルボミラ・ロシェ氏の退任を受け、アスミタ・デュベイ氏がCDOに就任した。デュベイ氏はインド出身で、統計学と経済学のバックグラウンドを持ち、インドや中国市場などの成長市場ですでに大きな成果をあげた実績をもとに、さらにデジタル化を進めていくとみられている。

エスティ ローダーは、パンデミック前の2019年にみせていた成長基調に戻りつつあり、メイクアップ製品は苦戦が続くものの、スキンケアは堅調に成長していることから、市場では高く評価されている。とくに中国市場の回復は大きい。

ユニリーバは、原料高騰により利益率が圧迫され、また、悪化するインフレで、さらなる値上げを実施する可能性を示唆していることなどを受けて、市場での評価は低迷している。

1位: ロレアル 
記録的な増益増収で、パンデミック前の成長に戻る

図1

2021年7月29日に発表した2021年上半期決算は、売上高が対前年同期比20.7%増(like-for-like、同じ為替レートで計算するなど同状況となるように調整した場合)、16.2%増(レポートベース)の151億9,660万ユーロ(1兆9,780億円)、営業利益は、対前年同期比26.8%増(レポートベース)の29億8,810万ユーロ(3,890億円)という結果となった。とくに第2四半期が33.5%増(like-for-like)と、「並外れた成長」とロレアルが発表したほど好調だった。

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出典:Loreal Finance

地域別にみると、北米が第2四半期に44.7%増と非常に強い成長を示し、ECも29.2%増の結果となった。中国本土の伸びが大きく、32.4%増加。2020年の第2四半期に始まった売上回復だが、中国のオンラインショッピングイベント「618」で、ロレアルパリが、TmallとJDの売上トップビューティブランドの地位を確立し、ランコムもトップ3にランクインするなど、中国のオンラインでも大きく成長を続けている。

小売店舗の再開によって、ECは緩やかな成長となっているものの引き続き伸びており、また、ワクチン接種を済ませた富裕層などが国内外に旅行に出始め、買い控えていた化粧品消費が進むなどで、免税店などのトラベルリテールは立ち直りの兆しをみせている。

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出典:Loreal Finance

営業利益は19.7%。粗利の大幅な改善とコスト管理により、収益性を再び向上させるサイクルに戻ってきている。2019年上半期と比較しても6.6%増、後半と比較すると8.4%増と、パンデミック前の成長率に戻っている。

プロフェッショナルプロダクツは、第2四半期が65.9%増、上半期では41.0%増の売上高となった。サロンにおけるトレーニングや顧客体験のデジタル化、そのほか、ソーシャルリスニングツール上のコメントや質問に答えてユーザーコミュニケーションをはかり、リピーターを増やすフリーランスのスタイリストの育成、ECの急増の3つのトレンドの恩恵を受けて、すべての地理的エリアで売上が増加し、なかでも米国で記録的な結果を出した。また、中国本土でもECとサロンで大きな成長を遂げ、欧州ではドイツとフランスが牽引して成長傾向だった。

コンシューマー製品は、第2四半期が14.2%、上半期が6.3%増の売上高となった。とくに中国本土、ブラジル、インドネシア、主要なヨーロッパ都市で成長し、ECも引き続き伸びて売上の20%以上を占めている。北米と欧州ではワクチン接種によりオフィスに戻ることを考え始めた消費者がアイメイクやファンデーションを購入し、メイクアイテムで記録的な伸びを示した。ヘアケアは中国、ヨーロッパ、ブラジルで成長し、スキンケアも引き続き伸びている。中国本土ではロレアルパリのRevitalift Filler Ampoule in Creamのローンチで大きなシェアを獲得した。

ランコムなど高級化粧品カテゴリーのロレアル リュクスは、高級美容市場が回復したことを受け、第2四半期で45.7%、上半期で28.1%の成長を記録。とりわけ中国の消費者の間で非常に好調で、北米でも力強い回復がみられた。

ラ ロッシュ ポゼなどのアクティブコスメティックスは、マーケット自体が大幅に改善しつつあり、第2四半期で48.4%、上半期で37.5%増。スキンケアブランドポートフォリオが、消費者の健康志向に適合したこともあり、パンデミックの間に大幅に成長している。また、医療専門家との強固な連携や、デジタル・ECの専門知識を活用したことも成長を牽引する要因となっている。なかでも、米国、中国本土、英国では並外れた業績をあげた。ターゲットを絞ったオムニチャネルアクティベーション戦略により、ECも好調だったが、店舗の売上も2桁成長に戻ってきている。

2020年に、パンデミック後の美容業界を見据えて、2021年には以下の4つの領域に戦略的に注力すると掲げたロレアルだったが、有言実行ですべての領域で攻めている。

1)カテゴリー戦略は、スキンケアを第一優先に、ヘアケア・ヘアカラー、フレグランスにも力をいれていく

2)メイクアップは必ず復活するとみており、コロナ後を見据え、メイクアップも引き続き注力する

3)Eコマースに注力し、世界各地でのシェア向上を図る

4)ブランドごとの「P&L効率化」(利益率を上げるための施策で、たとえばコスト削減など)を図る

コロナ禍でP&Lの見直しを迫られたものの、ライブコマースなどデジタルの力を使って短期間に結果を出してきたこともあり、1年半足らずで、10年連続増益増収を達成してきた2019年と同等の成長に戻し、ビューティトップ企業の意地をみせた。

製品だけでなく、企業として社会貢献や環境へのコミットメントも優先事項としてあげており、2021年6月に消費者、株主、すべてのステークホルダーに「世界を動かす美しさを創造する」ことを共有するためのグローバルキャンペーンを開始した。あわせて、30歳未満の雇用機会を30%増やすことで、若者の雇用を促すグローバルプログラム「L'Oréal for Youth」も発表している。具体的には厳しい経済環境にある学生の採用増、あるいはスキルセットの教育、メンタリングなどを提供している。

ロレアルのデジタルでの主な動き

■ 2021年1月11日 CES 2021にて、「L’Oréal Water Saver(ロレアル ウォーター セーバー)」を発表。サロンとホームケアのためのサステナブルなヘアケア技術環境イノベーションカンパニーGJOSAとの共同開発(日本語版プレスリリース

■ 2021年3月8日 フランスの上場企業の優れたデジタルコミュニケーション企業として2年連続でゴールド・トロフィーを受賞。個人株主に向けたサービスと、前例のない状況で野心的なデジタルコミュニケーションツールの実証を行ったことが評価された

■ 2021年4月22日 ルボミラ・ロシェ(Lubomira Rochet)氏の退任を受け、アスミタ・デュベイ(Asmita Dubey)氏をCDOに任命。デュベイ氏は、これまでロレアルグループのCMO(Chief Marketing Officer)およびコンシューマー製品のCDOを務めていた。インド出身で、統計学と経済学のバックグラウンドを持ち、インドの広告会社でキャリアをスタートさせたのちに、中国で世界最大のFMCG(Fast-Moving Consumer Goods、日用消費財)企業のキャンペーンを成功させただけでなく、中国ロレアルのECを支援してきた。また、ロレアル初のアリババとテンセントのジョイントベンチャーのパートナーシップを成功させた。ロレアル入社後は、中国・アジアパシフィックのCMOとして、成長領域のデジタル化を強化している。グループのCMOに就任後は、メディア価値を最大化し、デジタルを成長のドライバーとして、メディアエコシステムを構築し、新しいテクノロジーやツールの導入なども行っている

■ 2021年6月30日 ロレアルは、ブルソラマ(※)初のデジタルeフェアであるBourso’Liveに参加。このイベントはバーチャルで開催され、個人株主と出会い、交流し、ロレアルグループの業績やコミットメントなどを直接やり取りするもの。
(※)ブルソラマは、ユーロ圏最大の金融サービスグループであるソシエテ・ジェネラルのフランス国内リテール・バンキング部門のブランドの1つ

ロレアルの事業開発での主な動き

■ 2021年2月1日 タカミの買収完了

■ 2021年3月23日 ロレアルのCVCであるBOLDを通じてスイスの環境テックスタートアップ企業GJOSAへマイノリティ出資日本語版プレスリリース

ロレアルそのほかの動き

■ 2021年1月12日 ブランカ・ジュティ(Blanca Juti)氏が最高コミュニケーション&広報責任者(Chief Communications & Public Affairs Officer)に就任

■ 2021年1月29日 ロレアルが4年連続でブルームバーグの男女平等指数(GEI)に選定日本語版プレスリリース

■ 2021年2月1日 日本ロレアル「第38回コロイド界面技術シンポジウム」で、ロレアルグループ独自のサステナビリティプログラム「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」を発表

■ 2021年2月12日 第23回ロレアル-ユネスコ女性科学賞を発表し、女性科学者5人が受賞。自然科学・数学・コンピューターサイエンスにおける先駆的研究を評価

■ 2021年2月15日 日本ロレアル がテラサイクルと包括的連携でサステナビリティを加速

■ 2021年2月26日 「2021 World's Most Ethical Companies®(世界で最も倫理的な企業)」に選出

■ 2021年3月4日 ロレアルのビジョン「Beauty of the Future(未来の美しさ)」で、透明性、安全性、グリーンサイエンスを掲げる

■ 2021年3月4日 オランダを拠点とするデータ会社Equileapのジェンダー平等指数で、4,000社のなかからトップ4に選定。4年連続のランクインで、フランス企業では1位(日本語版プレスリリース

■ 2021年3月5日 オマール・ハジェリ(Omar HAJERI)氏がプロフェッショナル製品部門の社長に就任

■ 2021年3月8日 日本ロレアルが国際女性デーに「女性のエンパワーメント・アドバイザリー・ボード」を新設

■ 2021年4月20日 2020年10月14日の発表にもとづき、取締役会会長とCEOの機能を分離し、ジャン・ポール・アゴン(Jean-Paul Agon)氏は、取締役会長の役割を引き続き果たし、2021年5月1日付で、ニコラス・ヒエロニムス(Nicolas Hieronimus)氏がCEOに就任

■ 2021年6月23日 ロレアル東ヨーロッパ・ゾーンの社長のアレクサンドル・ポポフ(Alexandre Popoff)氏の引退後、現在ロレアル西ヨーロッパ・ゾーンの社長であるヴィアニー・ダービル(Vianney Derville)氏が、東・西ヨーロッパを統合し、1つのヨーロッパ・ゾーンとして運営することを発表

■ 2021年6月25日 CARBIOS社の酵素技術を用いた再生プラスチックを使用した世界初の化粧品ボトルを実用化

■ 2021年6月28日 日本ロレアルがコロナ禍で困窮するシングルマザーのキャリアの支援を発表

2位: ユニリーバ 
ポジティブ・ビューティ・ビジョンを発表し、広告などから「ノーマル」という言葉を削除

図1

2021年7月22日に発表された2021年上半期の決算結果は、対前年比5.4%増の258億ユーロ(約3兆3,400億円)。営業利益率は18.8%で100bps(ベーシスポイント=0.01%、1%)減。ビューティ・パーソナルケアは、104億ユーロ(約1兆3,500億円)、ホームケアは52億ユーロ(約6,700億円)、フード&リフレッシュメントは102億ユーロ(約1兆3,300億円)の売上高となった。

ビューティ・パーソナルケアは、売上高は3.3%増加、価格は1.4%増加。パーソナルケアの消費量増加に支えられて、第2四半期の売上高は4.2%に加速。スキンケアは2桁成長、デオドラントの成長が戻ってきた。米国で、サステナブルなパッケージングとして、ダヴのデオドラントのリフィルの販売を開始した。昨年と比較すると、手指衛生品の成長は鈍化しているが、プレミアムブランドのSheaMoistureは米国で2桁成長。プレステージブランドも店舗の再開等で2桁成長だった。原材料高騰で一部値上げをはかったものの、利益率220bps(2.2%)減。米国で悪化するインフレで、さらなる値上げを実施する可能性を示唆している。

ユニリーバは、2016年から脱ステレオタイプへの取り組みを行っており、広告表現のみならず、製品開発段階からのマーケティングプロセスにも領域を広げている。ユニリーバの「Act2Unstereotype」は、マーケティングプロセス全体において、より多様で包括的な考え方を奨励し、統合することを目的にしてきた。「脱ステレオタイプ第2ステージ」のビジョンを達成するために、ポジティブ・ビューティ・ビジョンを発表し、ビューティブランドとパーソナルケアブランドのパッケージ表記と広告から「ノーマル」という言葉を排除するなどの活動を開始している。

ユニリーバの事業開発での主な動き

■ 2021年1月5日 ユニリーバとイノバパートナーシップは、バイオテクノロジー応用によるクリーニング技術が可能となる技術の商業化のために、合弁会社ペンロスバイオを立ち上げた。イノバパートナーシップは、2006年に設立されたヘルスケア企業の成長と商業的発展をサポートするブティックコンサルティング会社

■ 2021年4月26日 米テキサス州オースティンに拠点を置くウエルネス・ライフスタイル企業Onnitを買収

■ 2021年5月27日 食品技術会社ENOUGH(旧3FBIO)と提携し、新しい植物ベースの肉製品を市場に投入すると発表

■ 2021年6月14日 D2CのEC製品であるPaula's ChoiceをTAアソシエーツから買収する契約を締結

ユニリーバのそのほかの動き

■ 2021年1月21日 ユニリーバは、より包括的な社会を構築するために、以下の取り組みを行うことを発表した(日本語版プレスリリース

● 2030年までにユニリーバと取引のある製造業や農業従事者に焦点を当て、ユニリーバの従業員だけでなく、関係するサプライヤー、他企業、政府、NGOと協力し、購買慣行、コラボレーション、アドボカシーを通じて、彼らが生活のために適切な収入を得られるよう変化を生み出す

● 2025年までに、マイノリティグループの人々が所有および管理するサプライヤーに年間20億ユーロを支出する

● 2030年までに、従業員の新しい雇用モデル(年金制度などを利用できる柔軟な雇用契約や、勉強やトレーニングのための休暇提供など)を開拓し、1,000万人の若者が雇用機会に備えるために不可欠なスキルを身につけられるようにする

■ 2021年3月9日 新しいポジティブ・ビューティ・ビジョンで、「ノーマル」という表現を排除すると発表。Dove、Lifebuoy、Axe、Sunsilkなどの美容およびパーソナルケアブランドの進歩的な取り組みと行動を示すポジティブ・ビューティは、公平で包括的であり、地球にとってサステナブルな新時代の美容を擁護し、「ノーマル」という言葉を削除することで、差別をなくし、より包括的な美のビジョンを提唱することを誓った(日本語版プレスリリース

■ 2021年4月22日 熱帯雨林を保護し、地球規模の気候変動対策を強化するために、10億ドル以上の資金を拠出する新しい官民イニシアチブを発足

■ 2021年5月18日 リサイクル可能な歯磨き粉チューブを導入、2025年までに全世界の歯磨き粉をこの新チューブに転換する計画を発表

■ 2021年5月21日 ヘアケアブランドTRESemméが、動物実験を禁止するポリシーを制定し、PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)のBeauty Without Bunnies(動物実験なし)リストに登録された

■ 2021年6月10日 世界初の紙ベースの洗濯洗剤ボトルを発表、2022年頭までにブラジルでデビューする予定で、その後ヨーロッパなどでも展開を目指す。紙ベースのヘアケアボトルを作成するために、同じ技術を試験的に導入している

3位: エスティ ローダー 
スキンケアが伸長、社会課題の解決にも積極的に発言

図1

2021年8月19日に発表された2021年度(2020年7月~2021年6月)の売上高は、対前年比13%増の162億2,900万ドル(約1兆7,800億円)、営業利益は、28億4,600万ドル(約3,100億円)だった。スキンケアは28%増の94億8,400万ドル(約1兆400億円)、メイクアップは12%減の42億300万ドル(約4,600億円)、フレグランスは23%増の19億2,600万ドル(約2,100億円)、ヘアケアは11%増の5億7,100万ドル(約630億円)だった。

スキンケアは、エスティ ローダー、ラメール、クリニークを中心にすべての地域で売上増加。とくに、中国本土でエスティ ローダーやラメールの成長が著しかった。また、Dr.Jart+はスキンケアの純売上高成長に約4%寄与した。

メイクアップは、パンデミックの影響で、消費者のファンデーションと口紅の使用が激減し世界的に需要が伸び悩むなかでも、Too Facedのターゲットを絞った消費者リーチの拡大とリッププランパーの商品力で売上が伸び、ラメールはザ・ルミナス クッション ファンデーションの継続的な成功で伸びた。また、中国本土でのメイクアップ市場の回復が成長に寄与している。

フレグランスは、パンデミック時のホームフレグランス製品に対する消費者需要を反映し成長。ジョー マローン ロンドンなどの高級フレグランスは、パンデミック下だからこそ、香りを楽しみたいという顧客が多かったことから成長した。ヘアケアは、美容室などが閉鎖されている間、アヴェダのオンライン売上が好調で、2桁成長となった。

2020年の同時期は、パンデミックによる店舗閉鎖とハイエンド製品を中心に消費者の買い控えが起きた結果、業績が悪化したが、2020年6月からCDOを置き、矢継ぎ早にデジタル・シフト施策を打ち、2020年12月には対前年同期比5%の売上を記録している。デジタル化の手を緩めず、店舗の閉鎖が世界中のあちこちで断続的に続くなかでも、2020年下半期も好調な結果で終わった。パンデミックが始まる2019年時期の営業利益を上回る結果も出した。それにより、The Ordinaryなどのブランドで知られるDECIEMへの投資を増やすことも可能となり、3年以内の完全買収をめざしている。

エスティ ローダーはパンデミックが始まった直後から、グローバルで人種差別問題に取り組んできている。化粧品業界全体をみても文化的美しさの規範を変える時代に入ってきており、広告の多様性の欠如に加えすべての肌トーンの人に製品提供ができていなかった問題に対しても、スタートアップや新興ブランドがアクションを起こすことで伝統的なビューティ・ジャイアントからマーケットシェアを奪ってきている状況にある。

エスティローダーは、下記の「そのほかの動き」でもわかるように、人種差別問題、LGBTQ+問題、女性の地位向上などの領域で積極的に発言し、アクションしていくことで、従業員と顧客の双方に対しての関係を改善しようとしているのがみえる。

エスティ ローダーのデジタルでの主な動き

■ 2021年3月16日 ルーマニアのブカレストにデジタルテクノロジーセンターを設立し、データ分析、オムニリテールソリューション、クラウドテクノロジー、インテリジェントな自動化などの重要分野をサポートすることで、イノベーションをさらに加速し、消費者体験を向上させ続けることを発表。2018年にオープンしたロングアイランドシティにある同社のグローバルデジタルテクノロジーセンターの成功にもとづいて、同社の500人以上のITプロフェッショナルを補完するために、世界32カ国のさまざまな地域にある既存のデジタルテクノロジーセンターに投資する予定

エスティローダーの事業開発での主な動き

■ 2021年1月14日 新事業開発(NBD)の新しいシニア・バイスプレジデントに、デーブ・スミス(Dave Smith)氏が就任。応用化学の領域でイノベーターとして知られるコーニング社からエスティ ローダーに移籍し、最近では、コーポレートベンチャーキャピタルの責任者とM&Aのディレクターを務めていた

■ 2021年2月23日 カナダを拠点とする急成長中のスキンケアブランドのThe OrdinaryとNIODを持つDECIEM Beauty Groupへの投資を拡大し、3年以内に完全所有を目指すと発表

■ 2021年5月18日 2020年10月に次世代の美容リーダーの育成を行うZ世代ネットワークイニシアチブを、ジョージタウン大学のグローバルビジネスイニシアチブと提携してローンチ。今回は10人の学生をエスティ ローダーの幹部と引き合わせ、会社のブランド、製品、消費者などに焦点をあてたフィードバックセッションを実施。エスティ ローダーの幹部は、メンタリングや業界考察などの知見を提供した

エスティ ローダーのそのほかの動き

■ 2021年1月19日 Yahoo! Financeが主催する、LGBT+の優れた未来のリーダー2020のトップ100人に、エスティ ローダーのインターナショナル事業開発ディレクターであるクリストファー・サアイシス(Christopher Sayasith)氏が選ばれた

■ 2021年1月25日 サプライチェーンのエグゼクティブ・バイスプレジデントであるグレゴリー・F・ポルサー(Gregory F. Polcer)氏が2021年7月1日をもって退職することを発表。2021年5月1日付で後任にロベルト・カネヴァリ(Roberto Canevari)氏が就任すると発表

■ 2021年1月26日 トラベル・リテールのサステナビリティ目標を発表。ビジネスのあらゆる側面にサステナビリティを組み込む取り組みの一環として、2023年度末までにトラベル・リテールの顧客に関わる二酸化炭素排出ゼロを達成する、2025年までに森林管理協議会(FSC)認証の製品に移行する、2023年までにプラスチックフィルムラップを取り除き、プラスチックの使用量を減らすなどのトラベル・リテール部門の目標を掲げた

■ 2021年1月27日 体験学習、キャリアコーチング、専門的なトレーニング、自己啓発のメンターシップなどを通じて、ハワード大学(※)の卒業生の成功をサポートするためのパートナーシップ・プログラムShe'sHoward:Own Your Power を発表。(※)ハワード大学は、米ワシントンDCにあり、奴隷制が廃止される以前から黒人教育向上を目的として掲げ、「黒人大学」のトップ校として知られる

■ 2021年1月27日 2021年LGBTQの職場の平等に関連する企業の方針と慣行を測定し、米国内で最も重要なベンチマーク調査・レポートとして知られるCorporate Equality Index(CEI)で100点満点を獲得

■ 2021年2月1日 2月の黒人歴史月間を祝い、黒人リーダーとエグゼクティブのネットワークが、黒人の髪の進化や黒人の旅行についてなどテーマ別のさまざまなイベントを実施

■ 2021年2月12日 人種の平等に関するコミットメントを「ブラックエクスペリエンス:過去、現在、未来」などを通じてアップデートした

■ 2021年2月18日 ブルームバーグのGender-Equality Index(GEI、男女平等指数)に4年連続で選出

■ 2021年2月22日 アイーダ・ムーダチロウ・リボア(Aïda Moudachirou Rebois)氏がグローバルマーケティングの上級副社長に就任。リボア氏は、ロレアルに15年勤務後、ジョンソン・アンド・ジョンソンのスキンヘルスブランドの担当副社長、レブロンのグローバルマーケティング担当シニア・バイスプレジデントを歴任

■ 2021年3月4日 人種平等や同一労働同一賃金へのコミットメントの一環として、Equity and Engagement COE(センターオブエクセレンス)を設立、従業員から消費者に至るまで、ビジネスのあらゆる側面でより公平性と代表性を構築することを目指す

■ 2021年3月8日 エスティ ローダーの女性の平等に関する戦略 Opening Doors:Women's Advancement and Gender Equalityで、企業として2023年までに男女賃金の平等を達成する、2025年までに取締役会でジェンダー平等を達成するなど、さまざまなコミットメントを発表

■ 2021年3月18日 アジア系の人々を狙ったヘイトクライムの急増を受け、エスティ ローダーは、アジア系コミュニティとの連携を強め、45万ドルの寄付を約束

■ 2021年3月30日 エスティ ローダーとEasmanが2025年までにサステナブルなパッケージ目標を達成するためのMOU(覚書)を締結

■ 2021年4月6日 グローバル・シア・アライアンス(Global Shea Alliance、GSA)に参画。GSAは、シアバター産業がよりグローバルかつサステナブルに発展することを助け、この業界で働く女性に利益をもたらすために作られた団体

■ 2021年4月12日 エスティ ローダーのグローバル・コミュニケーションのエグゼクティブ・バイスプレジデントのアレックス・トローワー(Alex Trower)氏の7月1日付の引退を発表。5月11日には後任となるメリディス・ウェブスター(Meridith Webster)氏の5月17日の入社および、グローバルコミュニケーション・パブリックアフェアーズのエグゼクティブ・バイスプレジデントへの就任を発表

■ 2021年4月15日 M・A・Cコスメティックス、エスティ ローダー 、アヴェダがニューズウィークの「アメリカのベストロイヤルティプログラム2021」に選ばれた

■ 2021年5月7日 Covid-19救済支援として、エスティ ローダー カンパニーズ慈善財団(ELCCF)を通じて、手指消毒剤の生産だけでなく、ELCCares従業員救済基金の設立や、国境なき医師団に200万ドルの助成金、世界中の国や地域の最前線での救援と対応の取り組みに330万ドル以上の寄付を約束し、米ニュ-ヨーク、カナダ、韓国、中国、イタリア、ラテンアメリカなどさまざまな地域で支援を実施

■ 2021年5月26日 エスティ ローダーとローダーファミリーは、乳がんによる格差を解消するための研究に2年間で100万ドルを投資すると発表

■ 2021年6月8日 黒人採用をサポートし、グローバルトレーニングの計画を前倒しにしたことを発表

2021年下半期は各社のさらなるステップアップに注目

ビューティ企業上位3社は、パンデミック下において、デジタルを活用しながら成長基調へ戻すべくさまざまな施策を打ち、1年半で結果が出始めている。とくに、ロレアルやエスティ ローダーは、コスト削減によりP&L強化もはかりパンデミック前の成長に戻ってきている。そのなかでユニリーバは原料高騰を値上げで吸収できず、やや苦戦している。パンデミック当初よりも手指衛生品の成長が鈍化していることもあって、衛生品を含むユニリーバのビューティ事業は厳しい状況にある。

とはいえ、特筆すべきは3社ともパンデミック下の苦しい時期においても、気候変動や多様性の問題に真摯に向き合い、さまざまなコミュニケーションを消費者および社会に向けて発信している点だろう。とくにヘイトクライムが問題となった2021年上半期は、人種問題やマイノリティ問題に対して、各社とも積極的に発信をした。

2021年下半期は、さらなる成長を遂げるために、これまでの戦略をベースに、ステップアップを図ってくるだろう。ロレアルは伝説的なCDOであったロシェット氏に代わり、グロースマーケットに強いデュベイ氏が指揮をとることになり、下半期にどのような戦いを仕掛けてくるのかに目が離せない。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top image: jafara via Shutterstock

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