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サステナブル容器最前線、レフィルステーションや工場の排気ガス利用など13事例

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欧州で本格的なトライアルが始まったレフィルサービスや、脱プラスチックの試み、また、再生プラスチックや生分解性まで、加速する環境負荷が少ない化粧品容器開発の国内外事例をまとめた。

消費者が意識的かつ能動的に、サステナブルな、あるいはエシカルな製品を選択することはもはや単なるトレンドではない。この消費者行動の変化を受け、プラスチック使用量を削減し、容器を再利用できるシステムを作るなど、美容業界各社が化粧品容器のサステナビリティ化に向けて新しい試みを行っている。

ヨーロッパでは、持参した空き容器にシャンプーやシャワージェルなどの詰め替えができるレフィルステーションを店舗などに設置する動きが急速に進んでおり、大手メーカーが次々と導入のテストを始めている。化粧品容器による環境へのダメージを減らすための、国内外での最新の取り組みについて紹介する。

欧州を中心に登場、詰め替えのためのレフィルステーション5事例

2019年は、専用の詰め替え容器を作り、日用品や飲料などを定期的に宅配するするサブスクリプションサービス「Loop」に、化粧品メーカーを含む多くの企業が参加し話題となった。そして、2020年の現在、最先端の試みとして注目されるのが、レフィルステーションの設置だ。

■ ザ ボディショップ

レフィルステーション設置の流れを先導したのは、環境保護活動などで世界をリードするザ ボディショップだ。同社は英ロンドンに2019年9月、エコフレンドリーを強化した新コンセプトストアをオープンした。店内にはレフィルステーションが設置され、繰り返し使えるアルミ製ボトルを購入した顧客は、シャワージェルやクリーム類などを必要に応じてレフィルできる。期間限定のフレーバーなども用意し、レフィルの利用を促している。またザ ボディショップ以外のものでも、空になった容器の回収を店頭で受け付け、5つ返品するとクーポンを発行する。

この店舗のオープンを紹介したSNSの投稿には、「何年も待っていた!」「「いいアイディアだ」などと、歓迎する声が数多く寄せられた。

■ ニベア

バイヤスドルフ傘下のニベアは、2020年8月より、ドイツのハンブルクとカールスルーエにあるドラッグストアで、2種類のシャワージェルを揃えたレフィルステーションの試験導入を開始した。利用客は最初にレフィルステーションに置かれたプラスチック製の空容器に好みの商品を注入し、支払いは容器に印刷されたラベルを読み取ることで行う。レフィル回数は専用バーコードを使って管理し、衛生上の理由から3回までボトルに詰め替え可能で、4回目以降は古いボトルを返却してリサイクルに回し、代わりに新しいボトルが渡される。

ニベアは、将来的にはほかの商品も店頭で詰め替え可能にすることを視野に入れており、サステナブルを推進するだけでなく、消費者にとっても付加価値のあるサービスにしたいと考えている。

■ ユニリーバ×Beauty Kitchen

また、ユニリーバは、ヨーロッパで最大規模となるレフィルステーションのトライアルを2020年10月に開始した。英国のスーパーマーケットチェーンAsdaの協力のもと、英国中部の都市リーズにある店舗にレフィルマシン3台を設置。ユニリーバ傘下の7ブランドの商品をタッチレスで詰め替えることができる。またこのレフィルシステムでは、各ボトルに固有のQRコードを発行することで、ボトルの使用状況や詰め替えサイクルなど利用者の動向を追跡し、今後のサービスの改善に役立てるという。

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出典: Unilever UK

このレフィルマシンは、ナチュラル&サステナブルなスキンケア・ボディケアをコンセプトとするBeauty Kitchenが開発に協力した。Beauty Kitchenでは4月より、シャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュ、ハンドウォッシュ、フェイスウォッシュのレフィルマシンを導入。これは自動販売機の製造を手がけるRBCグループと提携して開発したものだ。Beauty Kitchenでは今後2年間で、英国内に1,000カ所のレフィルステーション設置を目指している

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出典: Cosmetics Business

■ Authentic Beauty Concept

ヘンケル傘下のプレミアムヴィーガンヘアケアブランド「Authentic Beauty Concept」は、ヨーロッパの広い地域にある提携ヘアサロンの一部に、ヘアケア製品の詰め替えができるRefill Barの設置をスタートした

まずスタイリストが顧客の髪質やコンディションをカウンセリングして、自宅で使用するのに最適なヘアケア製品を選び、Refill Barで再生プラスチック使用率92%のボトルにシャンプーなどを注入する。製品名等を記載したラベルも、バイオプラスチック85%と細かい部分にまで環境への配慮がある。顧客は使い切った空ボトルを持参すると、再びレフィルしてもらえて10%のディスカウントも受けられる方式だ。

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出典: ヘンケル

このプログラムは地球環境に良い影響をもたらすのはもちろん、顧客がサロンに定期的に訪れるモチベーションとなる意味で、サロンオーナーにとっても利点が高い。

■ SHISEIDO

日本では、資生堂がSHISEIDOブランドの銀座にある旗艦店「SHISEIDO グローバル フラッグシップ ストア」で、11月から詰め替えサービスを開始した。美容液「アルティミューン パワライジング コンセントレート N」のレフィルができる「アルティミューン ファウンテン」を設置し、持ち込まれた使用済みの容器の洗浄と詰め替えをセットで行う。

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出典: 資生堂

この試みは、サステナブルな活動や製品開発を通じて企業としての社会価値の創造を掲げる、資生堂のグローバルプロジェクト「Sustainable Beauty Actions(SBAS)」の取り組みの一環だ。日本の文化でもある「もったいない」というモノを大切にする精神を尊重し、リサイクルやリユースなど環境に配慮した施策に力を入れていくとしている。

アルミニウム製など繰り返し使えるボトル開発4事例

各種洗剤など日用品においては、詰め替え用製品の普及が進み、使用済みボトルを捨てるのではなく、繰り返して使う意識が定着してきた。化粧品やパーソナルケア製品で、今後レフィルステーションが増えていくとすれば、何度も使用できるボトルの需要はますます高まるだろう。

Myro

テニス選手のセリーナ・ウィリアムズとNBAプレーヤーのカーメロ・アンソニーという、2大アスリートが出資したスティック型のデオドラントブランド「Myro」では、レフィル容器を使用している。容器は通常の使い捨て製品よりもプラスチック量を50%カットしたデザインで、新しいデオドラントスティックをケースにはめこむのもワンアクションで簡単だ。

■ Vetroplas

英国の容器製造企業であるVetroplasは2019年1月、プレミアムアルミニウムボトルを発表。アルミニウムはボトルに直接印刷が可能なため、商品名の印字や凝ったイラストレーションなどオリジナルの装飾ができ、紙やプラスチック製のシールラベルを必要としない。同社ではエンボス技術での特許を取得しており、よりアーティステックなデザインにも対応するとしている。またアルミニウムは、外部からの光や湿気を遮断する性質が高いため、化粧品の品質維持にも優れ、しかもリサイクルしやすいという特徴がある。すでに英国やアイルランドなどのメーカーに採用されている。

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出典: Vetroplas

さらに同社は、2020年10月に再使用が可能なガラス製の真空保存容器を開発した。ガラスの容器本体と樹脂製の内側容器の二重構造になっており、使用後は内部コンポーネントだけ取り替えてリユースしていく。

■ P&G

P&Gはヨーロッパ市場で、再利用可能な100%アルミニウムボトルと詰め替え用品をセットにしたパッケージシステムを、同社の複数のヘアケアブランドで2021年より導入すると発表。これによりプラスチック使用量を現在より60%削減できるとする。同社では2021年末までにシャンプーとコンディショナーなどのバージンプラスチック使用量を50%削減する目標を立てている。

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出典:P&G

■ 花王

環境保護や使いやすさの観点から、サステナブルな容器の開発にいち早く取り組んできた花王は、シャンプーやボディソープなどで、詰め替え用フィルム製品「ラクラクecoパック」をそのままセットして使えるスマートホルダーの展開を、2020年4月から本格的に開始した。詰め替え用製品の利用は広く普及しているが、ボトル容器に移し替える手間が課題であった。そこで、フィルム容器をそのままセットしてすぐに使えるスマートホルダーを開発したとする。

さらに2020年9月には、「ラクラクecoパック」の口につけると、軽い力で押すだけで一定量の液を出せる専用「らくらくスイッチ」も開発している。

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出典: 花王

工場の排気ガス利用やソーシャルプラスチックなどエシカル容器4事例

最後に、大手メーカーが推進する生分解性や廃棄物を原料とした環境負荷が少ない容器の開発事例4つを紹介する。

■ ロレアル

ロレアルは10月、工場や施設から排出される産業炭素を利用した化粧品用のプラスチックボトルの開発に世界で初めて着手した。化学産業大手のTOTALとガス発酵技術開発ベンチャーのLANZA TECHと協業してのプロジェクトで、産業炭素をエタノールに変換し、さらに脱水処理でエチレンに替え、化学重合させてポリエチレンに仕上げて、シャンプーやコンディショナーのボトルに利用するという。工場排気を利用したボトル開発は、実現すれば温室効果ガス排出量の大きな削減につながるため、化粧品業界に限らずグローバルで注目を集めている。

ロレアルでは2030年までに、全製品のパッケージのプラスチックをリサイクルまたは植物性に替え、温室効果ガスの排出量を2016年の半分にする目標を掲げている。

■ エスティ ローダー

エスティ ローダーは、化学薬品製造のSABICと容器開発のAlbeaと提携。消費者が使用した後に回収したポストコンシューマプラスチックを原料に、傘下のオリジンズのフェイシャルマスク用のチューブを開発すると発表した。

ポストコンシューマプラスチックは、複数の樹脂が混在する可能性や、汚れの付着などの問題があり、これまでリサイクルが難しいとされてきた。この新技術により新しいリサイクルの形ができあがることが期待される。オリジンズでは2023年までに、容器の8割をリサイクル利用、リユーサブル、あるいはリサイクル可能なものにすることを目標にしている。

■ ヘンケル

ソーシャルプラスチックを使ったボトルの利用を推進するのはヘンケルだ。ソーシャルプラスチックとは、貧困に苦しむ地域の人々が近隣の海や河川から回収したプラスチックを現金や物品などと交換するプログラムにもとづいた再生プラスチックのことで、貧困地域の社会支援と海洋ゴミの削減につながる。ヘンケルでは「Nature Box」ブランドの容器を、ソーシャルプラスチック98%の容器に変更してリローンチした。

また同社では、パッケージ製造企業向けに提供している原料のリサイクルの可能性を評価する分析ツール「EasyD4R」に、プラスチックに加えて、段ボールやガラス、アルミニウム、ブリキなども評価できる機能を追加した。EasyD4Rはすでに2,500回以上ダウンロードされており、ヨーロッパの「ベスト・プラクティス・サステナビリティ・アワード2020」のファイナリストにノミネートされた。

SHISEIDO

資生堂は、前述のサステナブルプロジェクトSBASの一環で、化学メーカーのカネカと共同で開発した生分解性容器の新製品、SHISEIDO「アクアジェル リップパレット」を発表した。100%植物由来の素材PHBHを化粧品容器としては世界で初めて採用。このパレットは温暖な気候のもとであれば1~3年ほどで海中や土中で分解されるという。

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出典: 資生堂

環境問題が年々深刻化するなか、美容業界においてもESG経営を重要視する企業が増えており、化粧品容器のみならず、環境保全やサステナブルに向けた研究開発が加速している。同時に、企業の倫理性を問う消費者意識もまた確実に高まっており、ここで取り上げたレフィルステーションなどの新サービスが一般化する日はそれほど遠くないはずだ。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)、編集部
Top image: Oakville News via Unsplash

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