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ユニリーバやP&Gも参加するLoopが変える世界、LUSHが試みる廃棄物ゼロの日常

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環境への悪影響を可能な限り削減するサステナビリティに向けて、大手化粧品メーカーはすでに舵を切っている。各種の試みのなかでも、とくにインパクトの大きい商品の容器の問題について最新動向を探っていきたい。

最初に明らかにしておきたいのは、化粧品業界において、とりわけ欧米の企業がサステナブル(地球環境の持続可能性)に配慮するのは、倫理観や社会性に関する企業ポリシーの確立というだけではなく、現代の消費者からの強い要求を感じ取っているからだ。極端な言い方をするなら、サステナブルではないと判断されたブランドは生き残れない。自社製品のサステナビリティを高めることはビジネスそのものに直結するのである。

インターナショナルに展開するITソリューション企業CGSが米国の消費者1,000人以上を対象に行ったCGS 2019 Retail and Sustainability Survey(小売におけるサステナビリティ意識調査)によると、年齢・性別に関わらず68%の人が、製品を購入する際にサステナビリティは考慮すべき大事なポイントであると回答。あわせて、同様の商品に比べてサステナブルな製品の価格が25%以上高額でも、サステナブルな製品の方を選ぶとした人は、消費者の3分の1を超える35%を占めた。

さらに、化粧品やパーソナルケア製品がサステナブル&エコフレンドリーであることは重要と考える人は40%。あるブランドをサステナブルだと認識するのは、「エコフレンドリーな原材料を使用しているから」と答えた人が31%で、「エシカルなポリシーを持つ」の15%や、「社会に貢献する活動に資金提供をしている」ことを評価する8.8%を上回る第1位だった。

このように数字の上でも消費者意識の方向性は明瞭で、消費の中心を担うミレニアル世代やZ世代に限っていえば、サステナビリティへの志向はさらに高くなる。

詰め替え容器を再利用するLoop

消費者のこうした声を受けて、大企業は実際に動き始めている。

リサイクルビジネスを手がけるTerraCycle は2019年1月、ダボスで開催された世界経済フォーラムで、日用品や飲料などを詰め替え容器で定期的に宅配するサブスクリプション・サービス「Loop」を発表した。その時点で、ユニリーバやP&G、ネスレなど、大手25社が参加を表明している。

TerraCycleによると、取り扱われるすべての製品は、各企業が自社製品向けに設計したガラスやステンレス製など再利用が可能な容器に詰めて配達される。配達の際の外箱も使い捨ての段ボールではなく、特別デザインの“Loopトート”になる予定だ。

Loopの仕組み 
出典:ITmedia

TerraCycleのサイトからサブスクリプションを申込んだユーザーが、注文した商品、たとえばジュースやアイスクリーム、シャンプーなどを使い切ったら、空の容器をトートに入れて無料回収を依頼すると、自動的に次回分が発注できる仕組み。回収した容器は洗浄殺菌して再び使用される。昭和の時代には一般的だった家庭への牛乳配達を思わせるシステムだ。

ユニリーバは、Loopのプラットフォームで、自社ブランドのRENLove Beauty and Planetをアルミとガラスでできた容器で提供をするとしており、ダヴRexonaAxeのデオドランド製品はステンレス製のリフィル・スティックを試作中という。 ユニリーバは2018年に、ダヴといったサステナビリティを戦略の中核におくことを定めた26ブランド(2018年当時)が、そうではないブランドに比べて、過去4年間で46%速いスピードで成長しており、ユニリーバ全体の売上げ成長の70%を占めたことを公表しており、Loopへの参画に積極的なのもうなずける。

一方、P&GはオムツのパンパースをLoopで提供する。使用後のオムツをリユースできる専用容器に捨て、容器がいっぱいになったら中身のオムツごと返却する方式で、使用済みオムツもリサイクル再生される。P&Gからはこのほかにも、ヘアケア製品のパンテーン、口腔ケアのオーラルB、カミソリのジレットなど、全11ブランドがLoopに参加する。

Loopはまず、5月をめどにパリとニューヨークで試験運用をスタートして最適化を図り、順次、他の地域にも進出する計画だ。

ゴミを資源に変える企業TerraCycle

大企業がこぞって参加するLoopという、ユニークなリサイクルビジネスモデルを考案したTerraCycleは、人々が思う“当たり前”を転換させる異色の企業だ。

創業は2001年、プリンストン大学を中退したトム・ザッキー(Tom Szaky)CEOによる、ミミズのフンから作るオーガニック堆肥を炭酸飲料の空き瓶に入れて製品化するビジネスからはじまった。その後、「捨てるという概念を捨てよう」をスローガンに掲げて、通常はリサイクルできないとされていた種類のゴミの収集と再利用を世界的な規模で行う企業に成長した。

ザッキー氏は、幼少期に当時共産圏だったハンガリーから家族とともに亡命。カナダに移住した生い立ちを持ち、異なる経済体制を実感した経験が“廃棄物”という概念を変える発想の裏にある。

現在、大手ブランドやメーカーがスポンサーになり、リサイクルが困難とされてきた廃棄物をリサイクルする無料プログラムをTerraCycleでは行なっている。

コルゲートとTerraCycleによる
リサイクルプログラムの回収対象ゴミ
 出典:Colgate-Palmolive

一例では、コルゲートと共同で、使用済み歯ブラシや歯磨きチューブなど口腔衛生用品をリサイクルして、建築材料などに利用できる粒状のプラスチックペレットにするプログラムを英国で開始した。TerraCycleのサイトから参加登録をして、使用済み口腔衛生商品を送ると、回収量に応じてポイントが付与され、学校やチャリティー団体などへの寄付金に換えられる。TerraCycleは日本にも拠点があり、美容業界ではメイベリンニューヨークやロクシタン、イニスフリーが使用済みの製品や空き容器を回収する協働プログラムを展開している。

生分解するプラスチックの開発

サステナブルな化粧品容器を考えるうえでは、容器の再利用に加えて、別の角度からの取り組みもある。環境破壊を起こしにくい素材の容器の開発である。その背景にあるのは、生活排水などを経由して大量のプラスチックゴミが流出した結果としておこる、深刻な海洋汚染の問題だ。

海流にのって何千キロも浮遊し続けるビニール袋、海底の泥の中に大量に堆積するマイクロプラスチック。すでに世界の海に存在しているといわれるプラスチックゴミは合計1億5,000万トンで、そこに年間800万トンが新たに流入していると推定される

一度放出されたプラスチックゴミは容易には自然分解されず、多くが数百年以上も残り続ける。そこで、注目されるのが生分解性素材を使用した容器だ。

合成樹脂の一種で汎用樹脂のなかで最大の生産量があるポリエチレンテレフタレート(PET)は、耐薬品性、防湿性、耐寒性、加工性に優れていることから、飲料ボトルをはじめ、スーパーの食品トレイといった容器のほか、断熱材や各種フィルムなどに幅広く利用されている。

英国ベースのプラスチックパッケージメーカーMacpacが開発したBreakdown PETは、原料成分の少なくとも90%がリサイクル可能で、最終的にゴミ処理埋立地に投棄されたのちも、数百年ではなく、わずか数年で自然に分解するという

これは、ポリマーが絡み合うチェーンを短くして、埋立地に自然に存在する微生物がPET内に含まれる炭素を分解しやすくしたためで、同時に、通常のPETと同等レベルの経年耐久性や強度を実現しており、高い実用性が期待される。

Breakdown PET
出典:Confectionery Production

100%リサイクル可能なプラスチック

プラスチックゴミの削減という観点から、容器に使用するプラスチックをリサイクル可能な素材に転換する試みは、各所で行われている。

リサイクル技術ベンチャーのPureCycle Technologiesは、P&Gのバックアップを受け、P&Gが特許を取得しているポリプロピレン(PP)をバージン原料に近い形に還元する技術のライセンス付与を受けているが、先ごろ、世界有数のテキスタイル・化学品メーカーMillikenとネスレが支援に加わり、オハイオ州にあるPureCycle Technologiesのプラントで製造される純化PPの品質が大きく向上する見込みだ。

既存のリサイクル技術では、汚染物質や色素を十分に取り除くことは難しい。リサイクルプラスチックは色がグレーで、悪臭を放ったり、基準値以上の汚染物質を含む場合もあることから、リサイクル品の利用がなかなか進んでいない状況がある。P&Gが開発した、汚染物質や色素の大半を除去できる純化技術が革命的と称されるのはこのためだ。

今回の提携で、PureCycle TechnologieはMillikenの添加剤を使用してPPの再生過程を強化するとともに、ネスレと協力し、プラスチックゴミを出さない100%リサイクルまたはリユース可能な新しい容器用素材の開発を目指すとしている。

プラスチックの代替品も続々登場

また、そもそも容器やラベルにはプラスチックを使わないことを選択するブランドもある。

2012年創業のニュージーランド発のエティーク は、ヴィーガン素材の原料からパッケージに至るまで、すべてサステイナブルな世界初の固形バー製品であるとうたう。シャンプー、コンディショナー、モイスチャライザーなどを固形化することで、液体製品には必須のプラスチックボトルを排除。あわせて、生分解性のパッケージで梱包している。これにより、同社は2018年に100万本のプラスチックボトルが海に流出するのを防いだとしている。

また、グァテマラの研究者はバクテリア・セルロースから作ったシートを発表 。紙とプラスチックの中間にあるような品質で使い勝手がよく、様々な色に染めたり、水で貼り合わせたりができる。石鹸から作った容器と組み合わせることで、クリーム状や液体状のパーソナルケア製品のパッケージに使用でき、プラスチックの代替品になるという。天然素材の原材料はすべて現地でまかなえるうえ、製造するのに必要なエネルギーも少なくて済み、多次元レベルでサステナブルだ。

バクテリア・セルロース製の包装と
石鹸の容器
出典:Global Cosmetics News

スマートリテールで容器ゼロを目指すラッシュ

一方、容器はおろか梱包材まで一切を排除してしまおうというのが、美容業界においてサステナビリティの先陣を切るラッシュである。

SXSW 2019で公開されたラッシュ の“デジタル・パッケージング”システムは、ラッピングされていないむき出しの状態のバスボム54種類がミニベルトコンベアー上に並べられ、来場者はブース内に掲示されたQRコードからダウンロードしたビジュアルサーチアプリを通して、スマートフォンを好みのボムにかざすだけで、価格や原材料など商品情報や関連動画がみられる擬似ショッピング体験を楽しんだ

SXSW 2019に出展した
ラッシュのブース
出典:Mobile Marketer 

Lush Labsと呼ばれるこのアプリはまだ開発途上だが、年内には同社の製品をすべて網羅し認識できるようになるのに加え、マルチランゲージ対応で、商品アドバイスを受けたり、情報のシェアやレビューコメントを書き込むことも可能となる予定だ。

この技術とコンセプトは、東京・新宿に2019年初夏にオープンするアジア最大規模の旗艦店に採用される。同店にはあわせて、インターアクティブ画面など最新のデジタルデバイスも装備され、廃棄物ゼロを目指すラッシュのフィロソフィーを体感するニューリテールが提案される。

プラスチックボトルが家庭のバスルームや化粧品ポーチから姿を消す日は、実はそう遠くないのかもしれない。

Text:そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image:Markas Spiske via Unsplash

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