AI活用で顧客エンゲージメント率が27倍に。化粧品各社が取り組む事例とその効果
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前回の記事では、各国のAI開発状況を俯瞰してみた。今回は、AI技術がとくにユーザー体験という点で、美容業界でどのように活用されつつあるのか、そしてその効果はどうなのかを探る。キーワードは、「パーソナライゼーション」「顧客エンゲージメント」「スキンケア・アドバイザー」の3つだ。
AIがガイドするシームレスな消費行動
AIに主導され、人々の働き方や暮らし、交流のあり方が根本から変わる、いわば第4次産業革命が起きつつある。ロレアルのルボミラ・ロシェCDOが「ビューティにまつわる体験を改革する」ための措置と語ったModiFace買収にみられるように、美容業界においても大企業から独立系のスタートアップに至るまで、AIによって実現される新次元のビジネス環境に乗り遅れまいと活発な動きが拡がっている。
ビューティの分野で、顧客満足度をあげるためのAI活用にあたっては、大きく2つのフィールドが考えられる。マーケティングを含む対顧客サービスとR&Dである。
つまり、消費者に対して、商品選びから購入まで ストレスのない“シームレスな体験”を創造して顧客を獲得することと、消費者が満足する“売れる”製品やサービスの開発だ。その観点から、現在のAIはまだ黎明期にすぎず、企業が期待するパフォーマンスを叶えられないリスクがあるとして、性急すぎるAI導入は状況によっては危険であると指摘する専門家もいる。
たとえば、ECやブランドのスマートストアの店頭ディスプレイには、消費者が興味を持った商品をトラッキングして、類似品や好むであろう関連商品を表示し購買意欲を促進する機能を備えるものがあるが、この際にAIが適切な回答や対応、新しい価値観の提供ができなければ、ユーザーはイライラしたり欲求不満を覚えることもあるだろう。美容業界に適した技術やデータを持たないAIの場合、消費者を納得させるレコメンドができず、ただ単にインプットされている自社製品を並べてみせるだけになりかねない。ただし、これは裏返しにいえば、集積する情報を正しい方向性でアウトプットできるなら、AIはきわめて有効なツールになりうるということでもある。
つまるところ、AIの能力の本質とはディープラーニングにある。肌コンディションなど生体データはもとより、悩みや好み、ライフスタイルなど、AIが多様なレベルで顧客一人ひとりを学習し情報を蓄積していければ、各人にパーソナライズした製品の創造や、個々にふさわしい商品をすぐに見つけられるショッピング体験など、美容業界が求めてやまないサービスを実現することは可能だ。
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