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「グローバル美容大手のスタートアップ投資」「スキンケアサプリ」がキーワード【海外トレンド 2023年1月-2月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、化粧品大手のスタートアップ投資のトレンドと、加速する美容とウエルネスの融合を象徴するビューティサプリ市場についてレポートする。

ロレアルはWeb3とグリーンテクノロジーに、バイヤスドルフとユニリーバはバイオ企業に投資

出典:日本ロレアルプレスリリース

★注目ポイント
大手化粧品企業がグループ全体の事業戦略にもとづき、ポートフォリオの拡充や整理の一環として行われるのがM&Aや投資だ。いま、美容大手がどんなスタートアップに投資し、どんなM&Aを展開しているのかを知るのは、彼らの長期展望を推し量ることでもある。ロレアルやバイヤスドルフ、シャネルをはじめ、最新動向を紹介する。

2023年1月、仏ロレアルのコーポレートベンチャーキャピタルファンドBOLD は、ブランドやクリエイターコミュニティのためのMaaS(メタバース・アズ・ア・サービス)プラットフォームとNFTマーケットプレイスを運営する Digital Villageに少数株主として出資した。2021年設立で米国に拠点を置くDigital Villageは、仮想世界におけるデジタルアイデンティティとアセットの作成や、コミュニケーションのための拡張性のある新技術を提供している。創業者のエベリン・モラ(Evelyn Mora)氏は、元デジタルおよびサステナビリティコンサルタントで、サステナビリティに焦点を当てたデジタルイベントのヘルシンキ・ファッション・ウィークを創設したことでも知られる。

この動きは、ロレアルにとって、メタバースとWeb3領域における初のベンチャーキャピタル投資となる。同時に、2022年5月、美容業界における女性起業家のスタートアップを支援するための新しいイニシアチブとして、2,500万ユーロ(約36億円)の資金を投じて発足したBold Female Foundersによる最初の投資でもある。

また、2030年までに原料の95%をバイオソースとすることを目指した持続可能な開発プログラムを掲げるロレアルは、2022年11月には、フランスのバイオテクノロジー企業で微細藻類を製造するMicrophytの少数株式を取得している。ロレアルは、同社と協力して、微細藻類バイオマスから原料を製造する技術基盤を構築するのが狙いという。

バイヤスドルフも、ベルギーのライフサイエンス企業であるS-Biomedicの株式の過半数を取得したことを2023年1月に発表した。バイヤスドルフは、コーポレートベンチャーキャピタル活動の一環として、以前から皮膚マイクロバイオーム関連企業に投資している。今回の買収により、S-Biomedicはバイヤスドルフの既存のマイクロバイオームプログラムの下で独立した事業体として運営され、両社のコラボレーションはより緊密なものになるとみられている。

バイヤスドルフの研究開発担当上級副社長であるギッタ・ノイファング(Gitta Neufang)博士は、「スキンケアのエキスパートとして、研究開発は140年にわたりバイヤスドルフが行ってきたことの中核を成している。したがって、S-Biomedicの買収は、当社のC.A.R.E.+戦略に沿って、イノベーション力をさらに推進するための理想的なマッチングといえる」と語っている。C.A.R.E.+とは、勇気、願望、責任、共感という各単語のイニシャルを冠したもので、新規のカテゴリーや分野に投資することで同社のポートフォリオの隙間を埋めるために、2019年に導入された全社的な戦略である。

2023年1月、ユニリーバのベンチャーキャピタル部門であるユニリーバ・ベンチャーズも、200万ドル(約2億7,000万円)のプレシードラウンドの一環として、頭皮のマイクロバイオームに働きかけることをコンセプトとするオーストラリア発ヘアケアブランドSTRAAND投資した。STRAANDはこの投資により、米国、英国、ヨーロッパ、中国で事業を拡大する予定で、まもなく米国で、自社のD2Cチャネルとアマゾンの両方で販売を開始する。

2022年7月にローンチしたSTRAANDの製品はクルエルティフリー&ヴィーガンであり、オーストラリア産の天然成分を使用。プレバイオティクスの働きにより、頭皮の乾燥、かさつき、皮脂汚れ、薄毛、抜け毛などの悩みを解決することを目的に開発された。ユニリーバ・ベンチャーズのレイチェル・ハリス(Rachel Harris)氏は、STRAANDは微生物にフォーカスした処方、若い消費者へのアピール、手頃な価格によって特異性を持つと述べている。

出典:STRAAND公式サイト

一方、シャネルは、サステナブルなパッケージ(容器・包装)製造技術を持つスタートアップYangi投資をしている。スウェーデンに本社を置くYangi は、サステナビリティとサーキュラーエコノミーに焦点を当てた姉妹会社 The Loop Factory とともに、10年間に及ぶ研究を経て、ドライフォーミングの原理を用いて3D形成されたセルロースベースのパッケージを製造する技術を開発。水とエネルギーを大量に消費する湿式パルプモールドプロセスと比較して、Yangiのドライフォーミングプロセスは水を使用せず、必要とするエネルギーも少ないため、CO2排出量を最小限に抑え、エネルギー消費を75%削減することが可能とされる。化粧品や美容製品から生鮮食品、消費財まで、幅広い業界で使用できると見込まれ、プラスチックの代替となる大きな可能性を持っている。

また、大型の株式取得の動きが取り沙汰されているのは、2022年12月、ブラジルの美容コングロマリット企業であるNatura&Coが保有するクリーンビューティブランドの「イソップ(Aesop)」だ。LVMH、ロレアル、資生堂などがイソップの株式取得のオファーを検討しており、イソップのブランド価値は20億ドル以上(約2,680億円)となる可能性があるという

Natura &Coは、2012年にイソップの株式65%を7,160万ドルで取得した。メルボルンを拠点とする同ブランドは当時、11カ国で60以上の店舗を運営し、6,740万ドルの売上高を計上していた。2016年、Natura &Coは、20カ国で177店舗を展開し、百貨店に84の販売拠点を開設するまでにイソップを成長させ、購入オプションを行使して残りの35%を取得した経緯がある。ただし、イソップの株式売買交渉は現在進行中であり、関係者によると、取引に至るかどうかは確実ではないとされている。

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