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中国発「シェア化粧ボックス」は競合も登場。サービスを体験してわかった課題感

◆ English version: Will China’s makeup booth industry leave a mark?
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シェアリングエコノミーが伸長する中国において、美容分野ではパーソナルなボックス型ブースで、その場でメイクが楽しめる、いわばおひとりさま化粧ボックスが登場している。その代表格の「17beauty」については以前の記事で紹介したが、それから半年たち、競合も続々登場している。今回はその実際の使い勝手はどうなのか、無人型の「17beauty」と、競合する有人型「PlusBeauty」の2つを実際に試し、サービスの課題と可能性を探る。

17beautyのブース

まずは、中国都市部の商業施設を中心に展開する女性向けシェアリング化粧ボックス17beautyの使い勝手について紹介したい。

無人型化粧ボックス17beautyはプライベート空間を追求

17beautyは、主に25〜35歳の女子大生や会社員をターゲットにしており、メイク落としからメイクアップまで様々なブランドの化粧品を時間貸しで試せる、いわば商品貸出ブースだ。スタッフは常駐せず無人で、設置されている化粧品を自由に選び、セルフでトライアルを楽しむことができる。

今回は、17beautyのうち上海のショッピングモールに設置されたブースを体験した。受付から支払いまで操作はスマホのWeChatアプリ内ですべて完結。ユーザー側にとっては、スマホひとつでサービスを受ける準備が整うのも大きな魅力だ。

扉に貼られているQRコードをWeChat上でスキャンすると、ミニプログラム(アプリ内アプリ)が立ち上がり、利用時間を選択する画面になる。1セット=15分が最小単位で(下記画像の赤い枠が初回限定無料、通常は28元=約458円)、15分コース以外にも25分(38元=約621円)、35分(48元=約785円)、45分(58元=約948円)などを選ぶことができる。

WeChat上で15分コース(初回無料)
を選択した。

WeChat Payを通じてモバイル決済後、入室。利用時間は、決済が完了した時点からカウントが始まり、スマホアプリに残り時間が表示される。2畳ほどの広さのブースには、化粧品が整然と並んだガラスケースがおいてある。

ガラスケースは、開始と同時に左右に
自動で開く仕組み。

扉部分には瞬間調光ガラスが採用されており、ユーザが入室すると同時に、すりガラス状に変化する。人通りの多い商業施設においても、外から中が覗かれないようプライバシーを考慮したつくりだ。

化粧品は、ランコム、ディオールなど、若い世代が憧れる高級ブランドが並ぶ。日頃は手が届きにくいアイテムをリーズナブルな価格で、誰の目も気にせずに使える点がこの17beautyの最大の強みだろう。

無人ボックスであるがゆえの防犯対策については、監視カメラが設置され、化粧品はすべて底部が固定されて持ち出せない仕組みになっている。

液体状のコスメもポンプ式のものが
置かれているため、持ち上げる必要はない。

口紅も固定されており、チップにとって使う。

使い捨てのパフや綿棒、チップが一袋に入ったキットが自由に使えるようになっており、試し塗りが存分にできる反面、SNSやいくつかの地元メディア記事では衛生面を懸念するユーザーの声も見られた。

Win-Win関係を促すシェア化粧ボックス

さて、この化粧品をシェアする無人ボックス発想の原点はどこにあるのだろうか。17beautyは、北京美时每刻科技有限公司が運営。中国人女性であるCEO韩淑琪(ハン・シューチ)が、南カリフォルニア大学の大学院在学中に休学し、2018年7月に起業して始めたサービスだ。

17beautyを始めたきっかけは、在学時代に青島を旅行した際、綺麗な自撮り写真を撮りたいものの、数日のために多くの化粧品を持ち歩くのは不便だと感じたという。そこで、シェアリングエコノミーを化粧品にも活用することで、広範囲で低コストなサービスを生み出すことに成功した。

主な収益は、ユーザーが支払う使用料に加えて、化粧品メーカーやブランドからの広告収益だ。中国人に人気のブランド数社との提携を結んでおり、ユーザー自身ではなかなか購入しづらいミドル~ハイエンドブランドの製品を安価な利用料で使える魅力がある一方で、企業にとっては、自社製品の広告としての位置づけであり、サンプリングに近いかたちでユーザーとのタッチポイントをつくれるわけだ。

2018年8月にエンジェルラウンドで数百万元の資金調達をし、企業価値は3,000万元(日本円で約4.8億円)と報道されている。

2018年7月時点の記事では、運営側は「1日40セットの利用を見込んでおり、3カ月以内に北京・上海・広州の三都市で300ボックスを設置予定」と述べている。あらためて17beautyのWeChatの公式アカウントを確認したところ、2019年5月27日時点では設置は36カ所(北京13、上海6、昆明1、貴陽1、武漢7、広州5、杭州3)と公言した目標には届いていない様子だ。

有人型化粧ボックス「PlusBeauty」では、プロのサービスが身近に

PlusBeautyのブース

17beautyとほぼときを同じくして誕生した「PlusBeauty」は2018年の7月末に上海に一店舗目を出店、2019年05月27日時点で上海市内に計10拠点を持つ有人のシェア化粧ボックスだ。

先程の17beautyと同様、PlusBeautyもショッピングモール内に出店しているが、無人ブースで自分でお試しができる17beautyと違い、PlusBeautyはプロの美容スタイリスト、ブランドコスメを備えた化粧ブースである。また、メイクと合わせてヘアスタイリング付きのコースもあり、総合的な美容サービスが受けられる。

予約と決済については、17beautyとほぼ同様で、WeChat上で操作し、予約時間になったらボックスに行く仕組みだ。

メイクのメニューは12種類。
日常メイクやパーティーなど特別な日の
メイクなどから好きなものを選べる。

今回は「日常メイク」コースを選んでみた。WeChat表示価格は、30分98元(1,600円位)。中国の物価感から考えると、割高な印象ではあるが、自分で手を動かすことなくプロの技術を受けられるのはユーザー側には大きな魅力だろう。また、割引価格で施術が受けられるプリペイドサービスも存在するようだ。

サービスに導入しているスキンケア製品・化粧品は、ランコム、クリニークなどの欧米ブランドから、無印良品などの日本製品まで幅広く取り揃えている。

施術は雑談をしながら和気あいあいと進んでいき、途中アイメークやチークに関して、どのような色・雰囲気にしたいか選択を求められる場面もあった。メイクの仕上がりについては、オーダーした日常メイクというよりも、特別の日仕様の気合が入ったメイクの仕上がりだとは感じたが、丁寧かつ、クオリティの高い施術でありユーザーの満足度は高そうだ。

特別な日のメイクを日常のシーンで

PlusBeautyの創業者でCEOの傅佳穎(フー・ジャイイン)は、通算12年間、ウェディング業界とファッション業界に関わっていた女性である。彼女は、結婚式の時に多くの女性がプロによるメイクサービスを受けるのを見る中で、女性が結婚式以外の場面でもメイクアップでより輝くことができるとよいと考え、このサービスを始めたという。

PlusBeautyのスタッフは、「中国人の間では日常的に化粧する習慣がまだ定着しておらず、化粧のノウハウをよくわかっていない人が多い。だからこのように、メイクを一から仕上げるビジネスは需要がある」と話す。

結婚式場に併設されたサロンという特化型のロケーションではなく、シェア化粧ボックスという小型ブースにすることで、出店機会も増え、低価格で場所を借りられる利点もあるだろう。

体験してみたところ、17Beautyは比較的メイクに慣れている層に、PlusBeautyはメイク初心者がターゲットといえるだろう。あるいは、状況によって使い分けるユーザーもいるかもしれない。また、17Beautyのようなプライバシー重視型と違い、PlusBeautyはスケルトンのブースで、通りがかりの人にメイク体験を見せてアピールすることも目的のひとつのようだ。

PlusBeautyでは、ヘアメイクアップサービスのほかにも、メイクレッスン提供や、まだ取扱商品は1品のみであるものの、WeChat上のミニプログラム上(アプリ内アプリ)で自社開発の化粧品の販売も行うなど、新たなサービス展開にも意欲が感じられる。

PlusBeautyのプライベートブランド「一早」

化粧シェアボックスの評価はこれから

近年、中国では化粧品の市場規模は一気に拡大し、若い世代には日常的にメイクをする女性も多く見られるようになってきた。そのように、メイクを楽しむことが日常に浸透するなか、今回のようなシェア化粧ボックスの登場は、よりメイクを身近な消費行動として定着させる起爆剤になりうるだろう。

出典:sohu.com

無人型「17beauty」も有人型「PlusBeauty」も、現在ショッピングモールを中心に出店しているが、メイクの機会が創出されやすいタイミングといえば、仕事を終えた後や、休日の外出前だ。移動時に利用されやすい駅のような交通施設に設置すると利用頻度はさらに多くなりそうだ。もしくは、ブースという簡易建築の特質を活かして、催事会場にテンポラリーなスペースを複数設置するというイベント特化型もありえるだろう。

この2社以外にも競合はさまざまに登場している。中国のある記事によると「进享化妆间」という無人のシェア化粧ボックスが存在しており、5分コースで9.8元(約155円)、15分コースで19.8元(約314円)、25分コースで29.8元(約470円)という17beautyよりも、より安価な価格帯で展開。今後も低価格競争は激化するだろう。

しかし低価格競争は、サービスの質の劣化にもつながりやすい。また、無人シェア化粧ボックスではメンテナンスの問題もある。事実、17beautyを含む無人シェア化粧ボックスの手抜き保守も前述の記事上でレポートされており、化粧水のボトルが空だったり、開封日が不明だったり、床にゴミが散在するなど、外観上も衛生上の不安も残る。また、感染症の恐れも否めないとの声もある。

日本にもANGELBE(アンジェルブ)や、VIPラウンジなどの有料パウダールームはあるが、多くの場所に展開されるには至っていない。今回の中国市場におけるシェア化粧ボックスの事例が示唆するのは、明確なターゲット選定、ユーザーの導線を意識した設置場所、使い勝手から運営側のオペレーション、衛生面も含めてのサービス設計をふまえての最適解を、どこもまだ模索中ということだ。

Text&Photo: 滝沢 頼子(Yoriko Takizawa)

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