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資生堂がCES2024に初出展した背景、来場者の反応とビューティテックへの人々の期待【ビューティテックウェビナー】

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BeautyTech.jpがアイスタイルのビジネスユーザー向けポータルサイト @cosme for BUSINESSと共催したウェビナー「CES2024にみるビューティテックの潮流と資生堂初出展の舞台裏」では、出展プロジェクトを指揮した株式会社資生堂 中西裕子氏と、BeautyTech.jp編集長の矢野貴久子が、現地で実感したCES2024の活況と未来に向けたビューティテックの方向性について語るとともに、CESへの初参画によって資生堂が得たさまざまな知見がシェアされた。


ビューティテックに注力する資生堂の認知拡大のステージとしてのCES

2024年2月29日開催の「CES2024にみるビューティテックの潮流と資生堂初出展の舞台裏」ウェビナーでは、同年1月に米ラスベガスで行われたCES2024への資生堂の出展を主導した株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 グループマネージャー 中西裕子氏と、CES2024現地取材を行った矢野貴久子が登壇した。

冒頭で矢野はCES2024の大テーマが「ALL ON」で、それは「すべてのものはここにある。ここから始まる」を意味すると説明。ロレアルが化粧品企業としては初となるCESでの単独基調講演を行ったことに触れ、美容企業はもはやテック企業の一員であり、イノベーションを通じて誰も取り残さない社会の実現に寄与しているとの思いを強く抱いたと話した。

グローバルの化粧品市場においてトップ企業5社の一角を占める資生堂がCES2024に出展を決めた背景にも、この「テクノロジーを活用したイノベーションの推進」の意思は明らかだ。中西氏は資生堂の出展の狙いは大きく3つあったと話す。

「1つは、世界中から集まる異業種の方も含めた圧倒的な数の来場者からのフィードバックを得ること。2つめとしては、多様な業種の企業が出展しているなかから、さらなる技術の発展につながる出会いを求めた。そして3つめに、我々が得意とするサイエンスにテクノロジーを組み合わせた、いわゆるビューティテックには以前から取り組んでいるが、改めて、そうした自社での研究開発を資生堂が積極的にしていることを示して、認知拡大を図る狙いがあった」(中西氏)

この目的のため、ブースでの展示内容として2つの独自開発技術にもとづくサービスが選ばれた。「Beauty AR Navigation」と「鼻骨格チェック(鼻の骨格から“未来の肌悩み”を予測するサービス)」だ。

株式会社資生堂 ブランド価値開発研究所 グループマネジャー 中西 裕子 氏
プロフィール/物質理学専攻(化学系)修士課程修了後、株式会社資生堂入社。スキンケア商品の処方開発研究、化粧品基剤の基礎研究、デザイン思考的アプローチを用いた研究テーマ設定、R&D戦略、新規研究の企画立案等に携わり、現在は、資生堂グローバルイノベーションセンターの事業企画、資生堂R&Dオープンイノベーションプログラムfibonaのプロジェクトリーダー

来場者にインパクトのある体験をもたらすことに成功

Beauty AR Navigationとは、資生堂が150年を超える歴史のなかで培ってきた美容法や感性科学領域の知見と、AIを用いた微細な手の動きを検出する動作認識技術を活用し、スマートフォンやタブレット端末などを用いて適切な美容法の習得と実践をサポートするデジタルアプリケーションシステムだ。正しいお手入れの仕方がわからない、店頭で体験した美容のプロの手によるフェイシャルケアを自宅でも行いたいという顧客からの声と同時に、資生堂側にも、クリームや美容液をどの程度のタッチでどのような手の動きで塗布するのがベストかを、言葉だけで伝えるのは難しいとの課題があったことから開発された。

Beauty AR Navigation
出典:資生堂 ニュースリリース

「ナレーションに従って、画面上に映し出した顔の上に現れるARの手の動きに、ご自身の手を重ねることで、適切な動作が導かれてお手入れ法を学べる仕組みとした。どのくらい再現できているかを100点中80点のように点数で表示するので、ゲーム感覚で楽しく行っていただける。CESの展示ブース来場者からは、『直感的でわかりやすく、思っていたよりもゆっくりとした動作だった。気持ち良かった』などの感想もいただいている。化粧品は成分はもちろん大事だが、それを適切に使用することも効果を最大限引き出すという意味で重要だ」(中西氏)

一方、鼻骨格チェックに活用されている鼻骨格診断は、しわやたるみなどの肌状態や毛細血管などの肌の内部組織といった肌内部の特性に、鼻骨格が密接に関連しているとの資生堂の発見をベースに開発された。これは、スマートフォンを通し、ユーザーの自撮り顔画像から鼻骨格を含む顔のパーツを分析することで、将来的に表れやすいしわやたるみの肌悩みと肌内部状態を独自のアルゴリズムにより予測しスコアとして表示するツールだ。肌悩みがおきる前に予防ケアが提案できるとともに、各自に適したマッサージ法や体の内側からのケアなど、よりパーソナライズした新しいアプローチが見出せることが期待されている。

「CESの展示ブースでは、大変多くの来場者の方が実際に鼻骨格診断を試されて、長い列ができることもしばしばだった。将来、肌にどんな変化が起きるのかを理解したいというみなさんの気持ちと同時に、では今、何をすればいいのか知っておきたいという強い要望も感じられ、このサービスに対する興味や関心は非常に高かった。異業種のテック関連企業の方からは、画像分析やアルゴリズムをこのような形の美容分野でサービス化することに驚かれたり感心されたりもした。密なコミュニケーションができお互いに良い刺激が得られたと思う」(中西氏)

また、「スマートフォンをかざすだけで、ここまで特性がわかるのがすごい」「気になり始めたところのスコアが悪かったので、判定結果は信頼できると感じた」といった技術的な面へのポジティブな感想も目立ったという。

展示スペースで鼻骨格チェックの説明をする研究員

資生堂の展示ブースには4日間で700名を超える来場者があり、多くの有意義なフィードバックが得られたとする。アンケートでも「驚きや感動がある体験だったか」との質問に8〜10点をつけた回答が96%にのぼった。中西氏は「資生堂の強みである美を解釈する独自の観点や皮膚科学の知見などのサイエンスと、画像認識やAIなど多くの産業で使われているテクノロジーを組み合わせて、美に関する体験に昇華させている点を評価していただいた」として、確かな手応えがあったとする。

日本では、鼻骨格診断を活用し、「シセイドウビューティーウエルネス(SHISEIDO BEAUTY WELLNESS)」ブランド向けにアレンジされたツールが「鼻骨格チェック」として2024年2月1日にリリースされており、ブランドの公式サイトからアクセスしてサービスの体験ができる。また、同ブランドの取扱店(14店舗)の店頭でも受けられる。

「(出展は)多彩な来場者からのさまざまな声が聞けたことが一番の収穫だ。また、展示ブースの説明スタッフは、普段は一般ユーザーとの接点がないR&D部門の研究員が務めた。使用体験をした方から直接『アメージング!』などの言葉がいただけたのが嬉しく、自分たちのやっている仕事が人々の役に立っている実感が得られて大きな励みになった」(中西氏)

領域をまたいで拡張するビューティテックの概念が新技術を生む

巨大な会場に約4,300社の企業・団体が出展し13万5,000人の来場者を集めたCES2024は、別棟に移動するだけでも時間がかかり物理的な苦労も少なくないが、生成AIをはじめとする最先端のイノベーションとテクノロジーの未来を垣間見る場所として刺激的であることは間違いない。なかでも、「ビューティテックへの期待や存在感は高まっていると感じた」と中西氏は話す。

「ビューティテック(の概念)自体が、ウエルネスやヘルスケアや医療分野、フードなど隣接する領域をまたがって拡大している。それに伴い、ジェンダーを問わずビューティテックへの期待値が高まっているように思う」(中西氏)

そして、中西氏は、体の内側や感情など、これまで見えにくかったものがテクノロジーでビジュアライズ(可視化)できるようになってきており、いろいろ説明を受けなくとも、消費者が直感的にツールを使い、便利さや楽しさを実感できる環境づくりが、今後一層進むのではないかと指摘する。そのなかで企業の役割は、「テックを活用していろいろな選択肢を提供、(選択肢を)増やしていくことにあるのでは」と話した。

矢野もまた、今回のCESでは、数年前のような、たとえばサステナブルな取り組みとしてのテクノロジーを打ち出す企業ブランディングを兼ねた展示ではなく、具体的な「ソリューション」をしっかり見せる展示が多かったとして、いかに使いやすく、いかにサービスや製品を消費者に寄り添って「パーソナライズ化」するかに、各企業・ブランドが知恵を絞っている状況と話す。

そのなかで、今後テクノロジーとサイエンスの融合も焦点になるとし、自社開発で一気通貫でサービス設計を試みる資生堂のR&Dはその組合せがスムーズで、開発にかかる時間を短縮でき、顧客体験を一気通貫で組み立てられる強みがあるのではないかと矢野は評価する。

あわせて、基幹となる技術が一通り出揃ってテックが一巡し、サービスやツールの裏にテックがあるのが当たり前になって、そのテックが人の暮らしにどう関わり、人を幸せにできるのかを考える、CESの基調講演でウォルマートのダグ・マクミロンCEOが述べていたような「人主導」でテックを浸透させることが重要であると矢野は示唆する。

こうした観点から、CESノベーションアワードの受賞製品など、CES2024で注目を集めていたビューティテックやヘルスケアテック、ウエルネスに関わる製品やサービスを紹介した。

あわせて、生成AIやマルチモーダルAIの登場でロボティクスが進化し、ネイルガジェットやマッサージなど、「置くだけ」でロボットによるサービスが可能になる時代が到来しているとする。

また矢野は、高齢者の見守りや健康管理、コミュニケーションの活発化をサポートする「エイジテック」がCES2024の新たなキーワードとして浮上してきたことに触れ、超高齢者社会がやってくる日本がこの分野をリードしていくことへの期待を示した。

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■Beauty Tech.jp編集部がCESの関連展示をまとめた資料「『CES2024』から読み解くビューティテックトレンド」(カテゴリー別・全71ページ)を@cosme for BUSINESSのページから無料でダウンロードできます。ご活用ください。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image : 株式会社資生堂
Photo: 株式会社資生堂、BeautyTech.jp編集部

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