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AIレコメンド「My Salon」のWellTechはマルホからスピンアウト。美容・予防・治療までをつなぐサービスへ

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株式会社WellTechは、皮膚科領域を専門とする製薬会社マルホ株式会社から、同社のAIコスメレコメンドサービス「My Salon」を引き継ぐ形でスピンアウトした企業だ。マルホとの協力関係を維持しつつ、ドラッグストアなどの企業向けとエンドユーザー向けの双方で、肌の健康と美容をつなぐエコシステムの構築を進めている。2024年5月20日にはアップデートした「パーソナルスキンケア診断サービス」もリリースされた。マルホでMy Salonのプロジェクト責任者を務め、WellTechの代表取締役に就任した中登俊幸氏に、スピンアウトの経緯のほか、My Salonの事業展望について聞いた。


スピンアウト後もマルホとの連携・協業で点を線につなぐサービスへ

皮膚疾患のための外用剤開発を続けてきたマルホは、社内に蓄積されたサイエンスやモノづくりに関するノウハウを活用し、2023年7月にAIコスメレコメンドサービス「My Salon」をリリースした。

My Salonはブランドや小売店での活用を想定して設計されている。肌状態や悩みなどユーザーからヒアリングした情報をAIが分析した結果にもとづき、ブランドを問わず蓄積した化粧品データベースから各自の肌に合う、もしくは肌を改善しうるスキンケア化粧品を表示・提案するサービスだ。

また、同時に日常生活でのリスク行動とリスクの大きさを示し、スキンケア商品の効果を実感するための行動の把握と改善を促す。つまり、肌分析によりユーザーの肌コンディションに対して現在のスキンケアがどのように肌に働きかけているのか、あわせて、おすすめの製品を使用した場合に考えられる数値の双方を可視化することで、なぜその商品が提案されているのかの理由を明らかにする。

つまりユーザーに対して、相乗効果を得るための製品の買い足しや、より肌状態にふさわしい製品への買い替えなどのアクションにつなげる役目も果たす。

現在のスキンケアの働き具合とおすすめの製品を使用した場合の双方を数値化

My Salonは、マルホが感じていた「製薬会社が持つ知見とユーザーの肌の悩みをつなぐサービスが市場にない」という課題感から生まれているが、2024年1月には、そのサービスを引き継ぐ形で、新しく設立された株式会社WellTechとしてスピンアウトした。マルホ在籍時にMy Salonのプロジェクト責任者を務め、WellTech設立とともに代表取締役に就任した中登俊幸氏はその経緯について次のように話す。

「マルホは医薬品会社であるため、製品やサービス開発の視点は10~15年と長期的だ。意思決定に関しても長期的観点に立つことが多い。一方、My Salonのビジネスはサービス事業という側面があり、SaaSとして迅速なサービス開発や事業化が求められていた。その時間軸の違いを意識し、プロジェクトの成長を止めないためにスピンアウトを決定した」(中登氏)

マルホはスキンケアに悩むユーザーに対して具体的なソリューションを提供したいという思いを抱え、化粧品を自社で販売することにも取り組んできた。ただ医療用医薬品と化粧品では商慣習も大きく異なり、さらにMy Salonはサービス事業であることから、切り離して運営することを決定したと中登氏は話す。現在は、VCから資金を調達したWellTechとマルホの間に資本関係はないものの、スキンケア領域で包括的なソリューションを構築するための提携関係にあると中登氏はいう。

「製薬会社であるマルホは治療に、我々はユーザーが日々使用する製品を通して肌トラブルなどの“予防”を提案するというように、明確にセグメントを分けて協業していくイメージだ。スキンケア領域において、予防から治療まで包括的にサポートするサービスはあまり見当たらない。ビジネス観点で各立ち位置に立つプレイヤーが市場を囲うため競い合う状況にあるからだ。私たちはその両方をつなぐことで、ユーザーの課題を解決できるユニークなポジションに立てると考えている」(中登氏)

株式会社WellTech 代表取締役
中登俊幸(なかと・としゆき)氏

プロフィール/弁理士、薬剤師、経営管理学修士。2014年にマルホに入社。入社後は知的財産戦略の企画、推進に従事。2021年10月より経営企画部に異動し、My Salonの事業化を推進。2024年1月にマルホからスピンアウトをする形で株式会社WellTechを設立し、代表取締役に就任

企業向けソリューション「My Salon for biz」を新たにリリース

My Salonの機能拡充はスピンアウト後も順調に続けられている。リリース以前、約1万点だった商品データ数は約1万8,000点に増加。ユーザー数も1万人前後まで増えているという。ユーザー向けに提供しているサービスとしては、従来の「スキンケア提案」と「肌リスク診断」で方針としては変わらないが、2024年5月20日より、スキンケアレコメンドを「パーソナルスキンケア診断サービス」として使いやすさをアップデートした。また、分析の精度に関しても「データ数とユーザー数が徐々に増えている状況のなかで、AIの自己学習が効率化し、肌分析およびレコメンド精度も段階的に向上してきている」と中登氏は説明する。

My Salonの肌の健康に関する設問イメージ

こうしたアップデートを経て、スピンアウト後に小売企業、化粧品企業、ブランド、OEM企業などを対象とした企業向けサービス「My Salon for biz」がリリースされた。同ソリューションでは主に4つの機能が提供されている。

⚫︎美容部員の個別アドバイスが得られる「パーソナルスキンケア診断サービス」

1つめの「パーソナルスキンケア診断サービス」は、小売店やブランドを通じて、肌解析とその結果をオンラインで受けとれるサービスだ。

ユーザーはドラッグストアや化粧品販売店舗などで配布されたチラシのQRコードなどからMy Salonにアクセスし、「肌悩みとその深刻度」「使用中の化粧品とその評価」など自分の肌や現在のスキンケアに関する質問に回答する。その後、1週間ほどで、ユーザーの回答とAIの肌解析をもとに、My Salonに所属するフリーランスの美容部員による各自にパーソナライズしたアドバイスやコメント、チラシ配布店舗の取り扱い製品のなかから選ばれたおすすめ製品の提案理由などを含めた診断結果が送付される。質問等があればメールで相談することもでき、ユーザーはこの診断結果を参考にして、チラシを受け取った店舗でレコメンドされた商品を購入するという流れだ。

カウンセリング機能で提供されるレコメンド結果イメージ

サービスを利用したユーザーからは、「いろいろなメーカーやブランドの商品を転々とするように使用していたが、美容専門家(美容部員)の方に、自分は幅広い対策が可能な商品選びができているとのコメントをもらいホッとした。一方で、ニキビ跡についてはほぼノーケアだったのがわかり、ニキビ跡を意識した商品 を追加してみようと思う」といったように、具体的に役立ったという声が寄せられているという。

「機能開発のための調査を進めるなかで、店頭で相談したい気持ちはあるが時間がないお客様が多いことに気づいた。My Salonを通してお客様に納得感が高い購入体験を提供することで、導入企業は潜在顧客の掘り起こしに活用できると考えている。診断結果に表示される商品はすべてサービス導入店舗で販売される商品とひも付けられている。提案された商品を購入いただいたお客様には、当社からポイントを進呈する形で還元も行っている」(中登氏)

⚫︎導入企業の店頭に置く販売促進資材の作成支援「POP製作機能」

2つめは、My Salonに登録されている各化粧品の機能性や特徴をグラフで表示するデータチャート情報を加工・提供する「POP製作機能」だ。中登氏は「パーソナルスキンケア診断サービス同様に、POP製作機能も現場に立つ過程で得た気づきから開発にいたった」と説明する。

実際に作成したPOP

「お客様の視点に立ったとき、店頭でアプリをダウンロードしたり、Webページを訪問したりして肌分析を行うまでには、煩わしさや心理的障壁がある。また実際に商品をレコメンドされたとしても、複数の選択肢のなかから商品を選んで購買を決めるのは簡単ではない。そこで考えたのが、My Salonに蓄積されたデータから店舗側が推したい特定の商品を抜き出して簡単にPOPを出力できるPOP製作機能だ。導入企業が自社で作成できるほか、弊社に依頼いただければ、紙に印刷してお渡しも可能だ。お客様は商品棚に張り出されたPOPを見るだけで、ピックアップされている商品の特性や概要を視覚的にわかりやすくつかめる。店舗側からするとPOPでアイキャッチを効率的に獲得でき、かつPOPを確認しているお客様に対して販売スタッフがお声掛けするきっかけをつくることができる」(中登氏)

⚫︎商品比較を表示しながらの「店頭カウンセリングシステム」

My Salon for bizの3つめの機能は、美容部員など販売スタッフ向けの接客支援サービスだ。「店舗カウンセリングシステム」は、販売スタッフが商品バーコードを読み込むとタブレット上に商品カタログ(比較表)が表示される機能で、接客の際に、顧客が購入を考えている商品や、その店舗のおすすめの商品の特性をその場で即座に示すとともに、競合する商品と見比べてもらうこともでき、より説得力のある提案ができる。

タブレット上で確認できる商品カタログ(比較表)

「ドラッグストアや化粧品専門店の店舗は数多くの商品を取り扱っている。それらの商品の特徴や機能をすべて覚えることは難しい。また美容部員の経験や知見によって商品説明の精度に差があり、店舗やメーカーの課題になっていることがわかった。そこで商品の特徴を迅速に表示し、美容部員の接客を支援する機能を開発することにした。洗顔料を買いたいがどの製品が良いか全く検討がつかない、といったユーザーに対し、『かさつき、乾燥』『毛穴が目立つ』『ニキビ、吹き出物』等の肌悩みの項目を選択式で回答してもらうことで、悩みにあった商品をタブレット上で一覧表示する簡易版カウンセリング機能も搭載されており、その場で簡単なカウンセリングを行ったうえで商品を提案できるようになっている」(中登氏)

⚫︎MySalonのデータを活用した「市場調査システム」

4つめの機能が、メーカーやブランド、OEM企業が製品開発やマーケティングを行う際に活用できる「市場調査システム」だ。導入企業の担当者が専用サイトなどから、たとえば自社商品と、それに競合する比較商品を選択して、比較分析の依頼をすると、各SNSでの投稿や、含有成分とその効果や機能などのデータをもとに、My Salonのデータサイエンスチームが商品間の違いを分析したレポーティングが得られる仕組みだ。分析レポートでは、分析コメント以外にも商品概要、使用方法などの情報が提供され、ユーザー企業はワンストップで市場にある商品情報収集が可能となる。

My Salon for bizの利用料については、SaaSとして1IDあたりのシステム利用料×導入ID数を月額で課金するサブスクリプションのほか、ユーザー企業のニーズや用途に応じて、個別に機能を利用できるような料金体系を設定している。たとえば、「POP製作」に関しては、WelltechがPOPを作成する場合は「POPの種類×導入店舗数」で料金が設定され、My Salonで表示される商品情報のチャートをサービス導入企業自らが切り出してPOP作りに活用する場合は「チャート情報×商品数」で利用料が課金される。

「パーソナルスキンケア診断サービス」では、販売が実現した商品あたりの手数料が店舗やブランドなどのユーザー企業からWellTechに支払われ、「店舗カウンセリングシステム」と「市場調査システム」はサブスクリプションの範囲で利用が可能だ。

マルホとの協業を通じて予防と治療の選択肢を提示できる包括的なサービスを目指す

WellTechはMy Salonのサービスを開発するにあたり、デジタルが解決できることと、人が介在すべきポイントの在り方を強く意識しているとする。通常のAIレコメンドアプリであれば、商品棚に示されたサービスに遷移するQRコードを顧客自身が読み取り、その後に続く分析や購買決定を“セルフ”で行うというサービス設計が一般的だ。しかし、My Salonは商品棚に設置するアナログな紙製POPを製作する機能や、現場で顧客とコミュニケーションを取る販売担当者をサポートするための機能を充実させている。いずれもサービス活用の敷居を下げつつ、ユーザーと導入企業の情報に対するアクセシビリティを向上させるための仕掛けだ。

「私たちは顧客の意思決定を効率的にサポートするためにAIサービスを開発してきたが、ユーザーを決断させる最終的な後押しには、人の介在が大きな力を持つことに気づいた。デジタルが持つ力と人が持つ力には明確に違いがあり、その2つを最大限に引き出すことこそサービス開発の進むべき道だと捉えている。」(中登氏)

今後、WellTechはマルホとの協業を通じて、スキンケア領域におけるユーザーの悩みや課題を包括的に解決できるエコシステムを構築していきたいとする。

「スキンケアで悩まれているお客様のなかには、明らかに医療機関での治療をすすめることが望ましいケースも散見される。WellTechとしては、マルホと連携することで予防と治療の選択肢をしっかり提示できるサービスとしてMy Salonをアップデートしていきたい。またデバイスとのつなぎ合わせも進めるのも大きな目標だ。マルホは治療の経過を可視化する肌分析デバイスなどを自社開発してきた歴史を持つ。こうしたテクノロジーをMy Salonでも積極的に活用することで、より良いスキンケアや製品を求めるユーザーのモチベーションを維持・向上できるサービスを目指していきたい」(中登氏)

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image and photo: 株式会社WellTech

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