多様化するインフルエンサーの定義。フォロワー数よりも大切なものは?

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ソーシャルメディアで拡散を狙いたい──。そう思ったらまず、インフルエンサーの起用を考えるブランドは多い。そして、彼ら彼女たちのフォロワー数は多ければ多いほどいいはずだ、と考える。しかし、最近は数だけではない価値をも計算に入れはじめている。

インフルエンサーの影響力を考えるとき、データを駆使したコンテンツマネージメントの会社であるNetscribesが行なった調査が興味深い。Netscribesは、6週間にわたって、10のコスメブランドのインスタグラムの公式ページを分析した結果を2017年10月に発表した。

SHISEIDOは3日に1ポストでエンゲージメントを高めた

それによると、M・A・C(フォロワー数:1,680万人)やMaybelline New York(590万人)、L'Oréal Paris Makeup(410万人)などよりもフォロワー数が10分の1以下であるSHISEIDO(30万3千人)が、3.0%のエンゲージメント率(注※1)を達成していたことが判明。同じ調査で、フォロワー数が10倍以上もいるMaybelline New Yorkのエンゲージメントは、0.80%であった。
(※1) 一般的に(いいね!数+コメント数)÷投稿数÷フォロワー数で算出される。

この結果について、Netscribesは、「日本のイメージを彷彿とさせる繊細な投稿が影響している」と分析している。

その投稿をみると、日本の自然と伝統を独自の世界観で描く中村咲子氏のアートを起用したり、創業間もない頃のポスターを紹介するなど、ノスタルジックな雰囲気とモダンをうまく醸し出した内容が多い。リアルなインフルエンサーではなく、アーティストや過去のアセットを「インフルエンサー」としてうまく起用しているといえよう。

Instagram:SHISEIDO

また、同一のキャンペーン内で #BeautyEveryday、#ArtistsWeLove、#ShareBeautyのように決まったハッシュタグを繰り返し使用することで、一貫した世界観を作り上げることに成功したとも分析している。

さらに、フォロワー数だけではなく、投稿数も多ければいい、ということではないことも明らかになった。M・A・Cの投稿数は、1日に5〜7ポストしているのに対し、SHISEIDOの投稿数は、3日にたった1ポストである。

エンゲージメントという視点では、日本のブランドというイメージをピュアに伝え続けている資生堂の勝利だ。フォロワー数の多寡ではなく、緻密なブランディングとブランドのアイデンティにふさわしいメッセージがユーザーの心を捉えることをSHISEIDOは証明してくれた。

等身大で知りたいことを教えてくれるインフルエンサー

SHISEIDOほどのエンゲージメント指数は叩きだせなかったMaybelline New YorKだが、一方でフォロワー数が多く、かつユーザーからの信頼を得ることにはしっかりと成功している。若い世代向けブランドとして競合であるレブロンよりもフォロワー数が50倍近いことからも、支持者が多いことがうかがえる。その鍵はやはり、ユーザーに対する真摯な姿勢だろう。

彼らが起用するインフルエンサーは、華やかなセレブたちだけではない。メイクアップアーティストや美容家を多数起用し、商品の詳細やメイクアップアイテムのHow toをポストしている。当然ながら、ユーザーからの信頼度はアップし、思わず購入したくなってしまうようなポストが人気を得ている。

Instagram:Maybelline New York

一方で、人気セレブを起用する場合は、その哲学、ストーリーが大事だ。キム・カーダシアンがプロデュースしている「KKW Beauty」や、リアーナがプロデュースしている「Fenty Beauty by RIHANA」などがそのいい例だ。

ファッションから化粧品へ。「Cultural Movement」の波

どちらにも共通しているのは、キム・カーダシアンとリアーナの人気だけにあやかっているのではなく、ブランドのアイデンティティと、彼女たちのメッセージがきちんと重なり合っていることだ。Fenty Beauty by RIHANNAは、どんな肌の色にも対応したファンデーションを提供している。これが「多様性を受け入れているよ」というリアーナからのメッセージとして、ユーザーには届くのである。

ファッション界では、若い世代が「Girls Power」や「No WAR」のようなメッセージが描かれたレタードファッションのアイテムを身につけることで、自身の考えをアピールするというトレンドが根強くなって来ているが、コスメを通しても、自分が共感し、自身を体現できるブランドを選びたい、というニーズが高まってきている。こういった一連の現象を、美容はミレニアル世代にとってもはやCultural Movementである、と評した記事もある。

これまでの常識にとらわれず、自由に発信したい彼らに魅力的に映るのは、ファッションもコスメも、Cultural Movementの要素が含まれたアイテムたち。社会や常識に対して、自分の発信したことが意味を持つと信じているユーザーは、それを手にする意味を考えて、ブランドを選ぶ──。ミレニアル世代は、社会的に正しいか否かということに、大人が思っている以上に敏感なのである。

CHANELやValentinoが起用し始めたマイクロインフルエンサー

さて、フォロワー数の勝負ではない、と早々に気づき始めたブランドが注目しているのが、「マイクロインフルエンサー」たちだ。

マイクロインフルエンサーとは、特有のコミュニティで強い拡散能力を持ち、フォロワー数が1万から10万人のインフルエンサーのことをさす。高い専門性と良質なフォロワーがいることから、ユーザーとのエンゲージメントに効果的だとみなされている。

いち早く、動画でマイクロインフルエンサーを起用したのが、ファッションブランドのValentinoだ。

東京のミレニアル世代の男女を起用し、世界から見た東京のクールな世界観をうまく表現し、話題となった。コンサバでもなくフェミニンでもなく、〝東京らしさ〟をもったマイクロインフルエンサーたちが出演し、彼ら自身が拡散することで、彼ら彼女らのコアなファンがさらにブランドに興味を持つ、という流れを作ることに成功している。



Valentinoの成功に続いて、この秋、 DOLCE&GABBANAも東京で「ミレニアルズ ドルチェ&ガッバーナ東京(MILLENNIALS DOLCE&GABBANA TOKYO)」と題したキャンペーンを展開した。モデルには、東京のストリートをリードしているモデルに加えて、インフルエンサーを含めた101人のミレニアルズを起用し、閉店後の伊勢丹新宿店でファッションショーを開催。ドルチェ&ガッバーナが積極的に起用している〝未来を象徴する世代〟として「ミレニアルズ」にフィーチャーした。

Instagram:Dolce&Gabbana

また、CHANELも2016年の春に行った、香水「N°5 」のキャンペーンもマイクロインフルエンサーの力をうまく活用している、

まず、フォロワーを10万人以上の拡散力の強いインフルエンサーが、南仏にあるCHANELの香水工房を訪れ、その様子をインスタグラムへハッシュタグ「#newchanel5」とつけてポスト。それを見た、フォロワー数10万人以下のマイクロインフルエンサーたちが、同じ場所へ訪れ、その画像をポストしていった。マイクロインフルエンサーを熱狂的に支持する一般のユーザーが、それを見て同じ場所へ行き、「私も来てみたよ!」とポストするという流れにつながった。



現地に用意されていたのは、フォトジェニックな撮影スポットや、香水の原料となる花畑の風景にマッチしたレンタルサイクルなどだ。インスタグラムにポストしたくなるスポット作りも含めて、ユーザーの心をしっかりとらえたといえる。

メディア化したインフルエンサーたち

SNS上では、フォロワー数が多いだけでは、エンゲージメントが高まるとはいえず、著名人を起用したからといって、必ずしも意図したメッセージが伝えられるとも限らない。

いちばんに考えなくてはならないのが、文脈だ。ユーザーを納得させ得るストーリーを持っているのか、ユーザーが自ら動きたくきたくなるような説得力のある情報が盛り込まれているのか、都度、じっくりと練る必要がある。

その文脈を、自分ごと化してとらえ、自分の言葉でブランドのメッセージを伝えるインフルエンサーたちはもはや、メディアと呼んでいいだろう。そう考えれば、世代別、価値観別にさまざまな背景のある化粧品ブランドが、どんな分野に強いのか、どんなユーザーに支持されているのかを加味してインフルエンサーを選ぶのは当然だ。数だけで語るインフルエンサーマーケティングは、終わりを迎えている。

text: 篠田 慶子(Keiko Shinoda)


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