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ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2019年上半期デジタル施策総まとめ

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2019年上半期の化粧品の売上上位6社のデジタルと事業開発施策をまとめた。今回は6社のうち1位~3位企業のロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダーについて紹介する。ロレアルは、デジタルでの積極投資を行っており、新たな顧客体験を追求。ユニリーバは、消費者の求めるナチュラル志向やリュクスの製品ポートフォリオを強化するためのM&Aが目立った。4位~6位企業については次回に紹介する。

※ランキングは、Beauty Packaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIESより

2018年下半期デジタル施策総まとめ」で紹介したように、2018年のキーワードは、「デジタル」「ナチュラル」「ミレニアル」「グローバルマーケット」「ダイバーシティ」「倫理」「透明性」だった。引き続き各社とも、新興国市場の開拓に加えて、Amazonやテンセントなど台頭するデジタル企業と伍していくために、一層のデジタル化推進でEC市場での成長を狙い、積極的なデジタルへの投資を行って「よりよい顧客体験」の創造による顧客の囲い込みを目指している。

また、2019年上半期は、ラグジュアリー市場とEC市場獲得のためのM&Aが多かった。今後も、この領域でのM&Aは続くだろう。ユニリーバは、デジタル技術を倫理・社会問題の分野に活用し、透明性のある企業として、とくにミレニアル世代を中心に支持を集めている。

エスティ ローダーは、ニューヨーク・クイーンズのイノベーションラボで、デザイン思考のセッションやハッカソンなどを開催しながら、人工知能、データ分析、3Dプリンティングなどへの注力を検討している。中国の経済成長の減速や旅行者向けの空港などでの需要における懸念があるものの、成長に減速はみられず、イノベーションを犠牲にすることなく、コストマネジメントができているというオペレーション面が株式市場で評価されている。

1位 ロレアル 
リュクスとデジタルで、2007年以来最高の成長を実現

2月7日に発表した2018年12月決算は売上高が前期比3.5%増の269億3,740万ユーロ(約3兆3700億円)に達し、営業利益は同5.2%増の49億2,200万ユーロ(約6,200億円)、純利益は同8.7%増の38億9,540万ユーロ(約4,900億円)の増益増収で、2007年以来最高の成長を実現したロレアル。なかでもリュクス事業とアクティブコスメティック事業(ラ ロッシュ ポゼなどヘルスケア観点からの美容ソリューション)が2桁成長を記録し、ランコムの売上高が30億ユーロを突破した。

ブランド別ではロレアルパリとメイベリンニューヨークが健闘。プロフェッショナルプロダクツは第4四半期の大幅な加速によって売上はやや増加。地域別ではアジアでの売上高が70億ユーロを超え、北米を抜いたと発表された。また、EC部門が40.6%増加してグループ売上高の11%を占め、Travel Retailが27.1%増で20億ユーロを超えたことが2018年の成長要因とロレアルは発表している。

これらの背景には、ロレアルが推し進めてきたデジタル変革がある。6月17日~21日まで開催されたCannes Lions International Festival of Creativity(カンヌ・ライオンズ)では、リュボミラ・ロシェット(Lubomira Rochet)CDOが顧客体験の観点から、ロレアルが10年にわたり行ってきたデジタル計画について講演した。

ロレアルは、デジタル変革の第2段階に入ったとして、マーケティングの中心に消費者とコミュニティを置き、顧客との信頼関係を再構築するとしている。最高の美の体験を作り出すことで人々の注目を集め、マルチチャネルのサービスを展開して、将来の顧客へアピールすることをミッションに掲げる。このためには、新しい才能、新しいエキスパート、新しい仕事のやり方が不可欠であるとし、この5年間で2,500名のデジタル・プロフェッショナルを雇用し、2万7,000人の従業員を教育してきた。こうしたスタッフが、オンラインとオフラインの双方でシームレスなショッピング体験を実現することでロレアル・ファンを増やし、売上につなげる目論見だ。あわせて、業界リーダーとして挑戦し続ける姿もまた、ロレアル・ファンを増やす要素であると考えている

ロレアルのデジタルでの主な動き

■ 1月6日 CES 2019で、傘下のラ ロッシュ ポゼからウェアラブルデバイスMy Skin Track pHを発表。個人の肌のpHレベルを計測し、肌状態に適した同ブランドの製品や使用法などをアドバイスする。CES2019イノベーション・アワードを受賞

■ 5月6日 5/16~5/18で行われたViva Technology Paris 2019(VivaTech)において、人工知能(AI)や拡張現実(AR)など、最新の技術革新を通じた未来の美や顧客体験に関するビジョン「無限の美」を発表。VivaTech では、4つのテーマで展示スペースを設けた

■ 5月17日   VivaTech期間中に、ロレアルとアリババが共同開発した、AIを搭載した初のモバイル用ニキビ診断アプリを発表。ラ ロッシュ ポゼが、アリババが展開するTmallとTAOBAOで6月ローンチのウェブアプリ、エファクラスポットスキャンは、アリババのAI技術を使用し、ニキビを起こしやすい肌を診断

■ 6月5日 ModiFaceがAIを活用したバーチャルメイク機能をAmazonへ提供すると発表

ロレアルの事業開発での主な動き

■ 6月25日 カールラガーフェルドのメイクコレクションを9月に発売することをInstragramで発表

■ 6月26日 2018年12月にスタートしたCVC BOLD(Business Opportunities for L’Oreal Development)を通じて、特異的な酵素を使用しPETプラスチック及びポリエステル繊維原料をリサイクルすることができる、サステナブルな独自技術を開発したバイオテック企業Carbiosに少額出資。2017年にCarbiosとロレアルは酵素を利用したプラスチックリサイクルに関するコンソーシアムを設立。ネスレウォーターズ、ペプシコ、サントリービバレッジアンドフードヨーロッパも加わり、Carbiosの酵素ベースのリサイクル技術を使用して、プラスチックの循環経済を推進

ロレアルのその他の動き

■ 1月16日 2019年ブルームバーグ男女平等指数の優良企業に選定

■ 1月22日 サステナビリティ度を測る国際環境評価団体CDPより、世界で唯一3年連続でAAA評価

■ 2月7日 2018年度の業績を発表

■ 2月26日 世界で最も倫理的な企業に10回目の選出

■ 3月6日 2019年ロレアル–ユネスコ女性科学賞の受賞者5名と、ロレアル–ユネスコ女性科学賞及び国際新人賞の受賞者15名を発表。日本人女性科学者2名が受賞

■ 4月2日 高級化粧品に特化した製造力を発展させるために、フランス国内の4つの工場を拡大し、香水生産の戦略的な柱として位置付けたAulnay-Sous-Bois(オルネースーボア)工場に1,500万ユーロを投資

2位 ユニリーバ 
積極的なM&Aでプレミアムビューティ製品を拡充

2018年は、デジタル技術を倫理的社会的問題解決に積極的に使用するとともに、世界的な健康志向の高まりを受け、自然派パーソナルケアや栄養補助領域をM&Aで強化してきたユニリーバ。新CEOを迎えて、2019年前半は、M&Aでプレミアムビューティ&ナチュラル領域をさらに拡充した。Amazon出身のサニー・ジェイン(Sunny Jain)氏をビューティ・パーソナルケア事業のトップに迎え、人的な面でも対応を図っていることがうかがえる。

上半期の売上は、新興国での成長に牽引され、ビューティ・パーソナルケア領域は3.3%の成長を記録。なかでもRexonaやDove Zeroなどのデオドランドが好調だった。ダーマロジカやアワーグラス、RENなど、買収したブランドは2桁成長を遂げており、6月には日本の芸妓の美容習慣から着想を得たTATCHA(タチャ)の買収を発表。高価格帯&ナチュラルコスメのポートフォリオを充実させ、1製品あたりの売上・利益を増加して、ビューティ・パーソナルケア事業全体の成長を推し進める方針だ

5月12日には、ノントキシックのスキンケアブランドDRUNK ELEPHANT(ドランク・エレファント)の買収を1億ドルで検討していると報じられた。6月12日に続報として、DRUNK ELEPHANTが投資銀行を雇ったことを表明しながらも、最終決定はしていないと明らかにした。ロレアルやエスティ ローダーなどの競合もプレミアムビューティ&ナチュラル領域に力を注いでいるため、今後もこの領域でのM&Aが進むとみられる。

2017年から続くデジタル広告の不透明性についての問題に対して、広告費削減も辞さない強硬姿勢をとるユニリーバは、業界全体での透明性確保にむけて、指針を打ち出したり、プラットフォームを構築するなど積極的な対応をしている。

ユニリーバのデジタルでの主な動き

■ 1月29日 世界最大の広告主の1つとして、広告エコシステムを推進するユニリーバは、クロスメディアでの測定モデルの開発を先導することを発表

■ 3月28日 Unilever Trusted Publishersを創設し、デジタル広告の信頼性と説明責任を保証する動きを加速させると発表。ユニリーバが定めるガイドラインに従う信頼性の高いパブリッシャーを公表し、優先的に広告出稿を行うもの

■ 6月18日 悪質なコンテンツを排除するなどオンライン上での安全性向上のために、Global Alliance for Responsible Media立ち上げを発表

■ 6月19日 カンヌ・ライオンズで、アラン・ジョープ(Alan Jope)CEOが、“woke(社会問題に意識が高い)と見せかけるようなマーケティング”が業界の信頼性を損なうと警告

■ 6月24日 AIを使用した社内のオンライン人材マーケットプレイスFLEX Experiencesを発表

ユニリーバの事業開発での主な動き

■ 1月28日 ラルフローレン出身のグェイン・ホワイティングとシャネル出身のリンジー・ボイドが立ち上げたNYベースのエコなファブリックケアブランドThe Laundressを買収

■ 2月5日 米ヘルシースナック企業Grazeを買収

■ 3月26日 消費財とオンライン・リテイル両方の経験を持つAmazon出身のサニー・ジェイン氏をビューティ&パーソナルケアの責任者に任命

■ 3月27日 フランスの化粧品ブランドGaranciaに買収提案4月5日に買収完了

■ 4月12日 P&Gからオーラルケア2ブランド、FluocarilとParogencylを買収

■ 4月18日 米国のサプリメントブランドOLLY Nutritionを買収すると発表5月21日に買収完了

■ 6月10日 ラグジュアリースキンケアブランドTATCHAの買収を発表7月26日に買収完了

ユニリーバのその他の動き

■ 1月22日 家庭用のビューティ&パーソナルケア製品の香料成分を製品配合率0.01%まで開示。業界全体にも開示を呼びかけ

■ 1月24日 廃棄物削減を目指すグローバルなショッピングプラットフォームLoopで、再利用&詰め替え可能なパッケージの新製品を9つのブランドから発売

■ 4月18日 Effie Indexから最も効果的なマーケティングをする企業と3年連続で評価

■ 6月11日 ユニリーバが目指すサステナブル・リビングを主導する位置付けのブランドの売上の伸び率が他のものに比べ高かったと発表

■ 6月17日 ロンドン、ロッテルダム、ニューヨークの広告業界エグゼクティブ63人に、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの心理学者による行動変革ワークショップとDNAテストを実施。自身のバックグラウンドを理解することで、「どのような人たちが広告を購入するか」に関するステレオタイプを排除することができたと発表。ユニリーバは、2016年ごろから自社製品の広告からステレオタイプ的な表現を控えようと「アンステレオタイプ」運動を起こしている(参考記事「ステレオタイプを克服しない代理店とは、距離を取る」: ユニリーバのマーケティング責任者が語る多様性の取り組み

3位 エスティ ローダー 
テクノロジーとBAを通じて顧客満足を実現

AIを活用したパーソナライズ化を進め、顧客が自分に最適な製品を見つけることをサポートし、満足度の高い購入体験を提供することを重視するのがエスティローダーだ。「2018年下半期デジタル総施策まとめ」や過去記事などで、デジタルシフトに向けた人材育成施策について紹介したように、美容部員をインフルエンサーとして活用していく道を着実に進んでいる。2019年上半期は、エグゼクティブ・リーダーシップチームの昇進や化粧品業界での動物実験廃止を目指す活動についてのアップデートがあったが、大きなプロジェクトの発表はない。だが、2019年第3四半期の売上は好調で、37.4億ドルと11%の増加。ほぼすべての製品カテゴリー及びチャネルで純売上高の伸びを記録したと発表された。株価も1月2日の終値131.94ドルから6月28日は183.11ドルと約39%伸びている

エスティ ローダーのその他の動き

■ 6月20日 Cruelty Free InternationalとHumane Society Internationalと提携し、化粧品業界における動物実験廃止活動の拡大を発表


まとめ:エシカル企業のM&Aとサステナビリティへの動きはさらに加速か

世界的に消費者の健康志向が高まりをみせるなか、ポートフォリオの拡充を短期間で実現できるM&Aを選択するケースが増えている。なかでも、ソーシャルメディアで厚い支持層を持つ独立系化粧品ブランドや、オーガニック系ブランドなどのニッチな市場でのM&Aが加速した。2019年後半もこの動きは続くだろう。消費者がヴィーガンやフェアトレードなど倫理的な製品を求める傾向もあり、「エシカルな企業のM&A」が増えると見込まれる。たとえば、2018年8月にロレアルがロゴコス ナトゥアコスメティクスを買収した背景には、フランスでのナチュラル化粧品志向の高まりがある。買収した企業の長所を残しつつ、いかにして自社に取り込むかが課題となる。

また、社会的活動として、サステナビリティやマーケティングでの透明性・倫理性の推進といった領域では、ユニリーバのニュースが目立った。一方、ロレアルも企業の社会的責任として、環境への配慮と、地域社会への貢献という両面からアプローチをしている。2013年にスタートしたロレアルのサステナビリティプログラムでは、2019年に入ってからP&Gの特許技術によるリサイクルプラスチックの購入も決めている。あわせて、「持続可能な小売り」という目標を掲げ、店舗デザインやPOS広告にもその活動を広げており、もはや、サステナビリティは推進するのが当たり前で、競合とも手を組み、どのように消費者に伝えていくのか、そして、化粧品業界のみならず他業界にもその取り組みをどう広げていくべきかという思考へとシフトしている。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top image: Kwame Anim via Unsplash



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