韓国LILLYCOVERはAI肌診断から自社製造のパーソナライズD2Cブランドまで、その評価
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韓国LILLYCOVERはAI肌診断から自社製造のパーソナライズD2Cブランドまで、その評価

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AI肌診断ソリューションを開発する韓国スタートアップ、LILLYCOVER(リリーカバー)が、約4億7,000万円のシリーズA投資調達に成功した。肌診断用ハードウェア「Muilli(ミュルリ)」や分析用AIを自社開発する同社は、ユーザー個人のデータにもとづいたパーソナライズコスメの製造およびサブスクリプションサービスも展開している。自社工場としてスマートファクトリーも稼働させ、AI肌診断から化粧品ブランドのリリースまで手掛ける、D2C分野の新たなプレイヤーとして着実に基盤を固めている。

肌データ数11万件とスピーディなパーソナライズコスメ製造が高評価

LILLYCOVERは、2016年創業の韓国・大邱に拠点を構える美容スタートアップだ。肌診断を行うための専用ハードウェア端末「Muilli」や、端末と連動した解析用AIアルゴリズム、スマートフォン用アプリなどを開発している。2019年には、韓国の行政機関である中小ベンチャー企業部が主催する技術創業プログラム「TIPS」に、また2021年には独バイヤスドルフが韓国で運営するアクセラレータープログラム、NIVEA Accelerator NXにそれぞれ選定されるなど、着実に知名度を高めてきた。

LILLYCOVERはシステム開発とあわせて、パーソナライズコスメブランド「BALANX」も運営している。AI肌診断によって分類されたユーザーの肌タイプに合わせたカスタムメイドコスメを製造・販売するコンセプトで、2週間に1度商品を届けるサブスクリプションモデルを採用している。

パーソナライズスキンケアブランド
「BALANX」

LILLYCOVERのサービス全体像はどのような仕組みなのか、レイヤーごとにより詳細にみていこう。

まず肌診断機器であるMuilliはハンディタイプのハードウェア端末で、外見はコンパクトカメラや家庭用ビデオカメラを思わせるデザインだ。重さは121gと軽量で、スマートフォンとWiFi連動してデータをやり取りする仕組みである。また、Muilliには顔をケアするプラズママッサージ機能も搭載されている。

肌診断デバイスMuilli

ユーザーはMuilliを肌にかざすだけで、毛穴の状態、シワ、油・水分バランス、ほてり具合、敏感度などを測定することができる。その後、独自開発されたアルゴリズム(AI)が40種類以上の類型に各ユーザーの肌タイプを分類する。ユーザーは専用スマートフォンアプリ「당신의 피부(あなたの肌)」を通じて診断結果が得られる。

MuilliやAIアルゴリズムには、LILLYCOVER創業者 CEO アン・ソンフィ(An Sun-hee)氏が10年以上にわたり蓄積した、火傷治療用の医療機器開発経験や、専攻である工学的な知見やノウハウが反映されている。アン氏はLGエレクトロニクス出身のエンジニアで、病院向けの医療機器開発の分野に長らく従事してきた。

アン氏が起業するにあたり、とくに心血を注いだのがビッグデータの確保だ。これまでに収集した肌データの数はおよそ11万件。韓国国内において競合他社が保有するビックデータの数は1万件程度とされており、このデータ保有量の優位性は、投資家がLILLYCOVERを評価する根拠のひとつとなっている。LILLYCOVERは米国のインキュベーター施設Plug&Playに入居していたことがあり、当時、アン氏らは人種別の肌データを確保することに専念したという。ほかにも、ベトナムにルートをつくり、肌データを積極的に収集。これらは後々のグローバル展開を見据えての作業だった。

ユーザーがMuilliでの肌データ取得とAI診断を完了すると、後日、およそ2万5,000パターンある処方のなかから、ユーザーごとにパーソナライズしたBALANXブランドのスキンケア商品が発送される。転送された診断データ取得から、工場で商品が製造されるまでの時間はおよそ2~3分で、ユーザーには2週間に1回のペースで商品が届けられる。競合他社のサービスは4週間程度で商品を供給するサイクルが多く、比較した際のスピード感や安定した供給体制も今回の資金調達成功に大きく作用したという。

BALANXブランドが現時点で販売している商品は、エッセンスとローションの2種類で、それぞれ2週間分(15ml)の販売価格は、日本円にしておよそ2,300円だ。

BALANX エッセンスとローション

LILLYCOVERでは今後も肌データの収集に価値をおき、より多くのユーザーに肌診断をしてもらうため、専門家による1対1のオンラインコーチングサービス(カウンセリング)をより高度化していく計画とする。

自社開発のスマートファクトリーで、パーソナライズコスメの無人店舗も

肌診断にもとづきパーソナライズした製品を提供するD2CモデルのLILLYCOVERが、投資にあたり高い評価を受けたもうひとつの強みが、スキンケア商品を実際に製造する設備であるスマートファクトリーを自社で開発し、設置完了している点だ。

LILLYCOVERの製造工場では、肌診断データをベースにロボット「enima(エニマ)」がコスメを製造している。従来、パーソナライズコスメは、処方やアイテム数が多岐にわたることから手作業が多くなるのが課題だったが、LILIYCOVERでは製造速度や衛生面、また異物混入防止など安全面でも競争力があるとみなされた。ロボット工場設備に協力したのは、大成ハイテックという韓国工作機器メーカー大手だ。

キオスクタイプのenima

LILLYCOVERは、その製造設備をポップアップストア形式で一般公開したこともある。公開されたのは、ロボットアームが作業するブースの壁面に肌診断用タッチパネルを搭載したキオスクタイプのenimaだ。今後、ユーザーがその場で診断し、数分で各自に最適な処方のスキンケア製品が製造され購入までできる、 “ミニ工場兼ストア” といった同キオスクモデルのサービス展開をどのように広めていくのかにも注目が集まる。

LILLYCOVERの競争力の中心は、この自社開発のスマートファクトリーにある。今回のシリーズA投資は、この工場の拡大と量産体制の確立のために使われると公表されている。一方で、韓国OEM大手の韓国コルマーとカスタムメイドコスメの共同研究も進めているという。肌データと化粧品のマッチングアルゴリズムやパーソナライズについては、外部企業との協業によりブラッシュアップしていく戦略と思われる。

LILLYCOVERの動きとしてさらに特筆すべきは、頭皮ケアに関するビジネスへの進出も表明している点だ。BALANXブランドで関連商品のラインナップをリリースしていくことはもちろん、同分野に特化したカウンセリングサービス、専用デバイス開発、製造工場、また、医療機関とユーザーとのマッチングサービスなども構想中だとする。

またLILLYCOVERのアン氏はIPOを目指すと宣言しているが、現在、NIVEAブランドを保有する独バイヤスドルフなどグローバルな化粧品企業、韓国コルマーなどOEM企業、独電子機器メーカーのシーメンスなどからも協業のアプローチを受けている段階だという。資金を提供した投資家サイドからは、IPOのほかに大型買収が充分見込める点も高評価された。現在、LILLYCOVERにはポスコ技術投資、TBTパートナーズ、IBKなどが投資を行っている。

韓国ではアモーレパシフィックなど大手メーカーがパーソナライズコスメの商品開発に乗り出している一方で、新興D2Cブランドも同分野に進出を始めている。たとえば、パーソナライズコスメブランドとして知名度を高めているtoun28は、サステナビリティや環境保護などSDGsのコンセプトを体現することで消費者からの信頼を得ている。

対するLILLYCOVERは、データ収集や製造工程のイノベーションなどテクノロジー面からのアプローチが高く評価されている。今後、パーソナライズをテーマにした化粧品D2Cブランドは、大手の参入やアプローチの多様化とともにより競争が激化していくことが予測される。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image and photo: LILLYCOVER公式サイト




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