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サイエンス系化粧品の創業者コミュニティ「Science of Beauty Collective」発足

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科学者としてのバックグランドを持つインターナショナルな女性起業家16名のコミュニティ「Science of Beauty Collective」。美容業界の潮流にも関わる結成の背景とその目的に加えて、いずれもマイクロバイオームに着目した創設者3名のブランドについて紹介する。

科学的な見地にもとづくパフォーマンスの高い化粧品、その透明性と基準の確立へ

科学的データに根ざした美容&ウエルネス領域の女性起業家が、米サンフランシスコでコミュニティ「Science of Beauty Collective」を発足した。創設者は博士号(Ph.D.)をもつ科学者であり起業家の3名で、それぞれが肌の表面に常在する微生物「マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)」に着目したスキンケアを提案している。

近年、化粧品の成分の安全性、透明性が重視されているなか、創設メンバーの1人であるエルザ・ジュングマン(Elsa Jungman)氏がフランスのテレビ番組のインタビューで語ったところによれば、ある皮膚科医の調査によると米国では50%以上の女性が敏感肌であるとされ、肌に負担や刺激の少ない処方が求められているという。また、パンデミックを経て、科学的な根拠にもとづいたパフォーマンスの高い化粧品を志向する人が多くなっているとの分析もある。こうした背景に根ざしたScience of Beauty Collectiveが目指すものと創設者たちの化粧品ビジネスについてレポートする。

現在、美容やウエルネスの領域では、クリーン、ナチュラル、グリーン、体に害のない処方、アンチエイジングといった、明確な定義がない曖昧な言葉や表現があふれている。また、環境に配慮した取り組みをしているように見せかけただけの「グリーンウォッシュ」な手法もいまだ存在し、消費者が誤った商品選びをしかねない状況にある。さらに、米国では化粧品の成分に関する規制はFDA(米国食品医薬品局)が管理しているが、その規制の原則は80年以上もの間アップデートされておらず、企業や独立団体が独自に成分の安全性を監視したり、基準を定めている状態だ。

このような状況から、測定可能で明白な科学的データをもとに製品の安全性やパフォーマンスをレポートし、美容・ウエルネス産業の透明性を高めようというのが、Science of Beauty Collectiveの一番の狙いである。

美容・ウエルネス分野の起業家にScience of Beautyが提供する4つのメリット

コミュニティが提供するメリットは4つある。創業したばかりの女性起業家のメンタリング支援、サイエンスを軸とした美容・ウエルネス分野の女性起業家リーダーとのネットワーキング、メディアや投資家の間でサイエンスやテクノロジーがもたらす価値や認知を高める、そして、互いに質問しあったり、ファクトチェックのサポートをするなど頼りあえるSlack コミュニティに参加できることだ。将来的には科学データにもとづいた独自のスタンダード(基準)を作ることで、「クリーン」など曖昧な用語を明確に定義し、消費者だけでなく、業界全体を啓発していくことを目指している。

このコミュニティには、美容やファッション関連の起業家コミュニティFaB(Fashion and Beauty Tech Community) の創始者で、個人投資家でもあるオディール・ルジョル(Odile Roujol)氏が支援者として関わっている。世界中の美容スタートアップとのネットワーキングや投資の機会創出において、同氏が果たす役割は大きいだろう。

理系の研究者はマーケティングを深く学んだ経験がないことも多く、ブランディング、D2C戦略、投資家を納得させるビジネスプランの作成などのスキルを磨く必要があるともされる。Science of Beauty Collectiveを通じて、さまざまな専門性や経験をもつ起業家が助け合い、ともに価値を高めながらムーブメントを作るところには大きな意義がある。

Science of Beauty Collective創設にあたっての中心メンバーは、シリコンバレーを拠点として活躍する3名の女性科学者だ。いずれも複数のキャリアと起業経験を持つが、共通点はマイクロバイオームに着目したスキンケアブランドを手がけていることだ。データドリブンで科学的なアプローチによるビジネス展開を図る彼らのブランドを紹介する。

Dr. Elsa Jungman 
マイクロバイオーム・フレンドリーで、ミニマルな敏感肌用コスメ

前述した創設者の1人ジュングマン氏は、仏ロレアルのR&Dでキャリアを積んだのち、サンフランシスコにベースに移した皮膚科学の研究者で、自身が18歳の時に毒素性ショック症候群(細菌性の毒素により引き起される疾患)を発症して敏感肌になったことから、渡米後はバイオテクノロジーやマイクロバイオームにフォーカスしたクリーンビューティやパーソナルコスメを通して、消費者の敏感肌の悩みに答えてきた。

2019年に敏感肌用のクリーンコスメを開発するElsi Beautyを創業、2020年にはブランド名に自身の名前を冠した「Dr. Elsa Jungman」をローンチした。公式サイトでは、肌の悩みや日頃の手入れ方法などの質問に答えていくオンライン診断が用意され、最後に適した製品がレコメンドされる。

Dr. Elsa Jungmanは、米国で初めて、認証機関MyMicrobiomeから、皮膚常在菌叢にダメージを与えず自然の肌のバリア機能を損なわない処方の「マイクロバイオーム・フレンドリー」なスキンケアと認定された植物ベースの製品を提供する。基本ケアはクレンジングと保湿用のセラムの2ステップとし、配合成分は5種類以下のミニマルさをうたい、本当に肌に必要な成分だけで処方を最適化し、皮膚のバリア機能を高めるとする。すべての製品は皮膚科医が監修した低刺激性で、成分の安全性に関しても米国の非営利環境団体EWGの認定を受けている。香料、保存料、エッセンシャルオイル不使用、動物実験もしていない。

Codex Beauty Labs 
サステナブルにコミットするバイオテック・ビューティ

科学者であり投資家でもあるバルバラ・パルダス(Barbara Paldus)氏は、34歳までにシリコンバレーで2つの企業を創業し、炭素循環/天然ガスパイプラインのモニタリングや、ワクチン/がん治療薬の開発などに携わった。また、スタンフォード大学で電気工学を学び、40の米国特許と科学分野における数々の賞を受賞している。

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出典:Codex Beauty Labs公式サイト

パルダス氏は、バイオテクノロジーをビューティの世界に導入した「Codex Beauty Labs」を立ち上げ、臨床研究で高い効果が証明された植物ベースのフォーミュラで、肌の健康とマイクロバイオームをサポートする。同ブランドもマイクロバイオーム・フレンドリー認定、EWD認証を取得済みで、ヴィーガン処方かつ動物実験をしていない。あわせて、サステナビリティの推進と啓発をブランドの核と位置づけ、2025年までにカーボンフットプリントをゼロにする、生物の多様性の尊重、フェアトレードを進めるなどの目標を掲げて具体的なアクションにコミットしている。

Ellis Day Skin Science 
米国初のバクテリオファージ配合のセラム

キャロル・クリストファー(Carol Christopher)氏は、化学技術者であり、製薬業界で25年にわたって新治療の開発に従事した経験をもつ。3つの企業の共同創業者であり、ドラッグデリバリーシステム(DDS・薬物の効果を最大限に高め、副作用を最小限に抑えること)に関する数多くの特許技術の発明者でもある。

同氏が創業した「Ellis Day Skin Science」は、米国で初めてのバクテリオファージ(細菌に寄生して増殖し菌体を溶かす一群のウイルス)をベースとしたスキンケアブランドで、肌トラブルの原因となるバクテリアをとり除き、良い菌を繁殖させることでマイクロバイオームのバランスを整えるとする。現在のところ、「Balancing Phage Serum」と「Hydrating Phage Serum」の2種類のセラムをラインナップする。

バクテリアの研究と技術革新は、医療、食品(食事療法)などの領域でとくに進んでおり、疾患予防分野は巨大なマーケットとされる。そんななかで、クリストファー氏が美容分野でのビジネス展開を選んだ理由は「多くの人々に影響を与え、人生を変えることができる可能性があるから。また、健康な肌をもたらすことで、日々の不安を和らげ、ストレスを少なくし、最終的に喜びに満ちた人生に寄与する役割を果たせるからだ」としている。

現在のコミュニティメンバー16名が手掛けるバラエティ豊かな美容ビジネス

現在、Science of Beauty Collectiveのメンバーは16名だ。サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントン、パリ、ロンドンを拠点としたインターナショナルな女性起業家たちである。創設者たちと同様に、マイクロバイオームやプロバイオティックス(有用微生物)などの細菌に着目したトータルビューティ「Gallinée」のほか、2人の化学者が手がけるスキンケアブランドで、独自の成分分析や情報を消費者にわかりやすく発信する「Chemist Confessions」、製造過程で水を使用しないパウダーシャンプーを提供する「Yodi Beauty」と「Susteau」、アフリカのシアバターを使用したケアシリーズでフェアトレードにより現地女性の自立を支援する「Shea Yeleen」など、そのサービスやプロダクトはバラエティに富んでいる。

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出典:Fashion and Beauty Tech
CommunityのMedium

基本的には科学的に効果が証明された専門性の高いサービスや製品を提供することがポリシーで、注目すべき点は、透明性をより一層重視しており、ヴィーガン、クルエルティフリーなどの処方で、かつリサイクル可能なパッケージ素材を使用したり、生物の多様性を尊重するなど、サステナブルを考慮しながら開発しているところだ。また、配合成分はできるだけミニマルとし、より本質的なケアに向かっている傾向もみてとれる。

Science of Beauty Collectiveの複数のコミュニティメンバーが取り組むマイクロバイオームに着目したスキンケアは、すでに市場に多数存在しているが、皮膚の構造とメカニズムという生物学的なファクトにもとづき、科学的なアプローチをしながら、開発・製造過程の透明性を高めて消費者にフィードバックしていくという共通の志を持った女性起業家がコミュニティを作り、サイエンス系ビューティの価値を高めるムーブメントをグローバルで起こしていく流れは注目に値する。

ジョングマン氏は「ほかのメンバーを競合相手とみるのではなく、真の味方とみなすことが重要だ。お互いを引き上げ、仲間の経験から学ぶのは素晴らしいこと」とコミュニティとして活動する大切さを語る。また、メンバーは女性限定というところに、いまだ女性比率の低いサイエンス分野において女性をエンパワメントしようとする意図も明らかだ。

Text: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: Pressmaster via Shutterstock


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