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倫理性と透明性。米国ミレニアルズが化粧品に求めるクリーンビューティのいま

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2018年7月19日 、ニューヨークで米国の美容マーケティングに関するフォーラム「Glossy Forum」が開催され、200人近くが来場した。登壇したのは、現在米国内で 急成長するコスメティックブランドのトップたち19名。25分刻みで次々にピッチしていく。主催者は美容とファッションに特化したニューヨーク発のメディアGlossyで、同イベントは、Glossyが2018年にスタートさせた有料会員プログラム「Glossy+」の一環として行われた。「クリーンビューティー」「ウェルネス」「パーソナライズ」「AI」「コミュニティ」など、旬のキーワードが飛び交った同イベントの様子を全3回にわたり紹介する。

米国では、「オーガニック」「グリーン」「クリーン」などの”身体によさそうな”言葉が飛び交っているが、それらの定義は曖昧で消費者が困惑することも多い。またFDA(アメリカ食品医薬品局)が定める化粧品に関する法律が長い間改定されていないことから、透明性の高さや倫理観は各企業にゆだねられている状態だ。

こうした状況のなかで米国の美容企業は、どのように消費者をエデュケートしているのか。 登壇者が語った米国におけるクリーンビューティーの動向と、各ブランドが力を入れるミレニアル世代の集客方法を見ていく。

透明性の向上と消費者の啓発に力を入れるBeautycounter

まずは目玉企業として、メイクアップ用品やベビー用のプロダクトまで幅広く扱うカリフォルニアベースのクリーンビューティーブランドとして知られる「Beautycounter」が登場。どのように消費者とコミュニケーションしているかについて語った。

同社のウェブサイトでは、製品に使用されている全ての原材料を公開しており、成分の80%がナチュラルで植物由来であることや、クルーエルティフリー(動物実験をしない製品)であることをアピール。またEU内で使用禁止になっている成分を含む有害、もしくはリスクの恐れのある1,500項目の成分の使用を禁止しており、それらの成分はウェブサイト上の「The Never List」で確認できるなど、商品知識を深める場を提供している。

こうした同社のクリーンビューティー施策は、主に小さな子どもをもつヘルシー意識の高いミレ二アル世代から絶大な支持を得ている。ショウケースではCEOを務めるグレッグ・ レンフルー(Gregg Renfrew)氏によってその秘策が語られた。

米国内で化粧品の成分に関する規制はFDA(米国食品医薬品局)の管轄だが、長い間その内容はアップデートされていないという。EUは加盟国に対してパーソナルケア用品に関する1,400項目の化学品の使用を禁止したが、現時点で米国の規制は30項目に留まる。そのような状況からレンフルー氏は米国を「クリーンビューティー後進国」と指摘。危機感を覚えていると語った。さらに化粧品のパッケージには「オーガニック」「ナチュラル」や「グリーン」などの言葉が氾濫しているものの、「それらの定義は各企業によって異なり、そんな状況がさらに消費者を困惑させている」とも。

こうした背景から、今後は各企業が消費者に教育の場を与え啓発することが、自社ファンを増やし利益を拡大させるためのキーになるとレンフルー氏は言う。過去には大手小売りのTargetや、アパレルメーカーのJ.crewとパートナーシップを組み販路の拡大を図ってきた。とくにTargetとのコラボレーションはBeautycounterの認知度を飛躍的に向上させたというが、現在は自社の理念を直に感じてほしいとD2Cモデルに転じている。ポップアップストアを含む同社の正規販売店や、後述する公式カウンセラーを通じた消費者との直接のコミュニケーションに力を入れているのだ。

BeautycounterのCEO グレッグ・レンフルー氏(右)と
Glossyのジル・マノフ氏(左)

Beautycounterの強みは米国内の全州に、2万5,000人以上の公式コンサルタント配置していることだ。定期的に開催されるイベントを通して彼ら彼女たちがユーザーに直接商品の説明をすることで単に商品を売るだけでなく、「肌に直接つけるものを正しく選ぶことがどれだけ大切か」を消費者に直に伝えている。また、アメリカとカナダの都市で、同社のヘルシーなイメージとリンクするサイクリングイベントなども開催。こういったユーザーとのコミュニティ活動を通してファンを拡大しているという。

「今後もBeautycounterの商品を通してアメリカにクリーンビューティーを根付かせ、業界全体を良い方向に導くことが自身の使命だ」と、レンフルー氏は力を込めた。

Beautycounterの公式ウェブサイトでは、
成分に関する詳細な情報を知ることができる

日焼け止めを学校に根付かせる…Supergoop!の挑戦

続いての登壇者は日焼け止めブランド「Supergoop!」のCEOであるホリー・サガード(Holly Thaggard)氏と、Presidentを務めるアマンダ・ボールドウィン(Amanda Baldwin )氏。セフォラなどの店舗や、Amazonなどのオンラインでも購入できるメジャーブランドとして知られる同社。子ども用からメイクの上からも使用できるスプレーやパウダー対応など、あらゆるタイプの日焼け止めを扱っている。ファミリーからミレニアル世代まで、消費行動の違う層にどのようにアピールしているのかが、彼女らの口から語られた。

前職で小学校の教師だったという異色の経歴を持つサガード氏がSupergoop!を起業するきっかけとなったのは、親しい友人を皮膚ガンで失い、紫外線が肌に及ぼす悪影響を知ったことだった。また、その当時アメリカで紫外線ケアというと夏場だけのもので、市場に出回っているのはベタベタして着け心地の悪いものばかりだったことから、「日常のルーティーンとして根付いていない現状を変えたい」とも思ったそうだ。

Glossyの エマ・サンドラー氏(左)、Supergoop!のホリー・サガードCEO(中)アマンダ・ボールドウィン氏(右)

同社のマーケティング施策は、多岐にわたる。たとえば、ミレ二アル世代から支持を得るアパレルブランドMillyとのコラボレーションでは、それまで訴求できていなかった層にアプローチすることに成功。同社のファッショナブルな印象を根付かせるのに成功し、大ヒットとなった。

またインフルエンサーマーケティングにも力を入れており、同社の公式インスタグラムアカウントにはずらりと有力インフルエンサーが並ぶ。その顔ぶれを見ると、フォロワー数約200万人を抱える韓国系アメリカ人ビューティーブロガーのジェン・イム(Jenn Im)氏や 、同じく約59万人のフォロワーを擁するビューティー系Youtuberのメリッサ・ アラトッレ(Melissa Alatorre)氏などいずれも世界中に多くのファンをもつ女性たちばかりだ。

他にも有名なインフルエンサーたちが頻繁に同社の製品ラインナップを紹介したり、使用感をレビューしたりしている。こういったインフルエンサーたちの起用がミレニアル世代の支持を広め、売上の50%がEC経由という結果となっている。

また米国ではFDAが日焼け止めを「Over-the-Counter」(薬局などで医師の処方箋なしで購入できる薬のこと)に指定しているため、生徒が学校に日焼け止めを持っていくには医師の許可が必要で、アレルギーなどの観点から校医が塗らなければいけないと法律で定められている。そのため、サガード氏自身の子どもや教師時代の教え子たちが屋外で遊ぶ際、日焼け止めを塗っていなかったという。今でこそフロリダ州、アラバマ州やユタ州などが法を改正し、教育現場における日焼け止め事情は徐々に改善されてきているが、Supergoop!発足当時にその法律を廃止していたのはカリフォルニア州のみだったそうだ。

そんな中、米国内の学校へ自社製品を寄付し、子どもたちの日焼け止めを日常のルーティーンにすべく2017年から始まった「Ounce by Ounce」というプログラムは、同社のキッズフレンドリーなイメージを根付かせただけでなく、日焼け止めの大切さを教育したという意味で大きな功績と称えられている。

Supergoop!のウェブサイト
消費者向けに効果的な日焼け止めの使い分けなどを紹介している

クリーンスキンケアに対する関心の高まり

同じセッションで登壇したマーケティング会社Pixabilityの報告によると、クリーンスキンケアに関するYoutube動画の視聴回数は昨年から454%の伸びを見せており、2018年度は4,500万回の視聴回数を見込む。同名のハッシュタグも2018年に入ってから急増しているといい、これも消費者のクリーン意識の高まりを裏付けている。

消費者が原材料を意識して購入するという意味では、これまで食品ジャンルが多かったが、この動きはすでに美容業界にも押し寄せている。企業は今後、透明性の向上と消費者に対するエデュケーションがより一層求められることだろう。

Text&photos: 橋本沙織(Saori Hashimoto)

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