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ポストコロナ、ポストクッキー時代の美容ブランドが目指すべき「ゼロパーティデータ」

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美容業界、とくにデジタルを含むマーケティングはこれから「ポストコロナ」と「ポストクッキー」時代の消費という2つの大きな課題と向き合っていかなければならない。この局面においてブランドはどうあるべきか。必要なのはその存在意義と、消費者との直接のコミュニケーションから得られる「ゼロパーティデータ」だ。

新型コロナウイルス感染症の流行により世界各地でリアル店舗が休業を余儀なくされている。そして人々は不要不急の買い物を控えており、日経新聞によれば化粧品もその不要不急の買い物のひとつだ。 

そして、アフターコロナを「コロナ終息後」という意味あいで使うことはない、との見方も強まってきた。つまり、多くの専門家が指摘するように、2年から3年のスパンで、人々は新型コロナウイルスと折り合いをつけながら生活していく必要があるとみられるからだ。withコロナという言葉を使う人もいるが、パンデミックを経験した「ポストコロナ」という新しい時代を定義することが求められている。これからさらに未知のウイルスの脅威もあるかもしれない。

ポストコロナでは、できるだけ人と人の距離を離し、対人接触を少なくする非接触リテールが必要不可欠だ。モノを売る場のメインはオンラインに移行し、リアル店舗もデジタルツールの配置による非接触が進むか、あるいはショールーム化し、OMO体験への移行を多くの小売店やブランドが試行錯誤することになる。(参考記事:非接触リテールの時代 特集)

同時に、そのオンラインではデジタルマーケティングの潮流が激変する時代に突入した。GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)の流れもあり、Googleは2020年1月に、猶予期間2年でサードパーティのクッキーへのサポート廃止を発表した。これにより、DSPなど運用型広告は大きな打撃を受けることが予想される。これまで、潜在顧客をターゲティングし、顧客ニーズをとらえて配信していた広告が打ちにくくなるからだ。

これからはゼロパーティデータの時代

この極めて不透明で先が読みにくい時代に、選ばれるブランドであるためには、何が必要だろうか。「ひとつ間違いなく言えることがある」と話すのが、ネット黎明期からデジタルマーケティングを切り拓いてきた株式会社デジタルインテリジェンス 代表取締役会長 CEO 横山隆治氏だ。横山氏によれば、不可欠なのは「消費者と直接つながること」であり、それを「ゼロパーティデータ」と表現する。

「サードパーティのデータを使えない今後は、GoogleやAmazon などのファーストパーティデータを持つプラットフォーマーがより強くなる。しかし、そのデータの使い勝手が悪くなることをふまえると、まずは、たとえ小人数でも消費者と『強い』つながりを持つ必要がある」(横山氏)。

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株式会社デジタルインテリジェンス
代表取締役会長 CEO 横山隆治氏

たとえば、パーソナライズアイテムを扱うD2Cブランドのケースでは、顧客はブランドからの素晴らしい価値提供を期待して、自分のパーソナルなデータを預けるということが起きる。

「こんなにいい価値を提供してくれるなら、私のデータを喜んで出す」とユーザーが認証する形でゼロパーティのデータ構築をするべきで、そのためにはデータありきではなく、まず顧客ありきに回帰しなくてはならないと横山氏は説明する。

特に化粧品のように自己関与が強い商材は「私が支援しているからこのブランドは成立している」「私がサポートしている」とユーザーが思えることがブランドの価値になるとして、横山氏は「そういったモデルがたくさん出てくるだろう。それを大手ブランドも視野に入れるべきだ」という。

言いかえれば、CX(カスタマーエクスペリエンス)がどれだけ高いかが、ブランドの存在意義にも関わってくるということだ。

「大事なのは顧客であってデータではない、CXを最適化するためにデータが必要なら、データを使えばいい。デジタルマーケティングを考えるときに、データをどうこう分析するノウハウよりも先に、顧客にとっての価値を作るところからできる『人』がいないと、始まらないのではないか」と横山氏は指摘する。

実際に大手美容ブランドは、顧客とのつながりが濃い、実力のあるD2Cブランドを傘下に入れ、あるいは出資を行うことで戦略的パートナーとなるのを急務としている。大きな組織となった自社には難しい、個人的な思いや熱意をテコにブランドを立ち上げ、スピード感をもってユーザーとコミュニケーションできる体制がつくれるカリスマたちを自分たちのサイドに招き、支援しているわけだ。

ミレニアル世代やZ世代は、このような創業者の顔がみえて自分の悩みやニーズをすくいあげてくれ、自分らしさを後押ししてくれるブランドに熱狂する。代表的な例をあげるなら、コーセーがタルトを資生堂がドランクエレファントをユニリーバがTatchaを、コティがカイリー・コスメティクスを傘下におさめ、そして、韓国のアモーレパシフィックは英国のMilk Makeupに出資を決めた。

そうしたカリスマ的D2Cブランドのなかには、単独ですでにユニコーン級に成長しているブランドもある。米国Glossierや中国の完美日記(Perfect Diary)の2つのブランドに共通するのは、表にはあまり出てこないが、顧客サポートを徹底している点にある。美容部員やカスタマーサポートがオンラインで一人ひとりの顧客とのつながりの濃さと、CXをなによりも大事にしているのだ。

メディア化するブランド

これらのD2Cブランドのもうひとつの特徴は、ブランドそれ自体が「メディア化」していることだ。自社のポリシーや理念、製品の素晴らしさを、動画やSNSを通じて積極的に発信し顧客に届けている。Glossierやドランクエレファントをはじめとした多くのD2Cブランドで、そのメッセージに応えるように自然発生的なファンコミュニティができている。

広告費をかけずとも、SNS上でファンがファンを呼び込むサイクルができていることに加え、新型コロナウイルス感染症の広がりにともなう外出規制では、それぞれのブランドが工夫をこらして家での楽しみ方やリラックス法、フィットネスなどを紹介し、かつ顧客や従業員の安全を守るためにとっている対策も開示され、共感や連帯感を分かち合うことにフォーカスしている。

つまり、ブランドポリシーを貫いた商品を開発することでコアなファンを育てるとともに、ファンの心に響くメッセージをコンスタントに発してエンゲージメントすることができるチームが、消費者との直接のつながりには欠かせないということだ。そのうえ、時代はブランドに「透明性」も求める。Glossierや完美日記は、顧客の声をしっかり受け止めて要望に即応するスピーディなアップデートを止めることなく続けている。

現にGlossierは、2019年に鳴り物入りで登場したGlossier Playというメイクラインを、過剰包装や生分解性でないグリッター使用に対するユーザーの批判を受け廃止し、Glossierに統合するとメディアの取材に答えている

「大手企業はD2Cスタートアップのインキュベーター的な組織や子会社なりをつくり、こことなら組みたいとスタートアップ側から寄ってくるくらいのスタンスをとるべきではないか。小回りがきき決断と実行が早く、トライアル&エラーを繰り返せるスタートアップのスピードに合わせる必要がある」(横山氏)。

アナログな施策の裏にこそ、デジタルを使うべき

こういった顧客とのつながりの濃いブランドを小さく立ち上げて徐々にファンを増やすというD2Cモデルでは「つながりをつくることそのものは圧倒的にアナログ施策のほうがビジネスインパクトは大きくなる」と横山氏はいう。そして「アナログ施策に力をかける分、そこからゼロパーティデータを構築し管理する部分にこそデジタライズしていく必要がある」とする。

一般消費者が顧客になって初めて管理できるCRMには、さまざまなツールがある。これまでDSP広告などのターゲティング配信でとらえていた顧客は、今後は熱量のある自社の施策によってゼロパーティとしてためていく必要があるが、そのあとにはCRMでいかに分析し対応していくかが問われてくるのだ。つまり、デジタルで効率よく高い精度の知見を得ることが、アナログな顧客獲得施策をより的確に磨き上げることに直結するからである。

また、データをどうためるのか、オンラインとオフラインの名寄せをどうするか、どう分析してどう現場にフィードバックし売上につなげるのか、といったさまざまな課題について、横山氏は「価値を作る人」の次に必要なのが「CXを想像できる人によるデータの扱い」だと断言する。

「講演ではよく、米国ドラマ『24』でのジャック・バウアーとクロエ・オブライエンの関係にたとえて説明している。クロエのようにいくら優秀な分析官でも、ジャック・バウアーが明確な指示を出さなければ成果はあげられない。現場をよく理解して顧客にとっての価値がどこにあるのかということをまず最初に考えないと、データはとりあえずためたが、それをどうしたらいいかわからない状況に陥る」(横山氏)。

AIは相関関係をみていくことはできる。しかしデータそれだけでは、実は無関係だったり、いままでの仮説と同じようなものばかりになる可能性もある。ジャック・バウアーとクロエのコンビは、そのなかのゆらぎだったり、ある種の「特異点」を見つけることで、スーパー難問である課題を解決するわけだ。それはブランドのあり方とも共通すると横山氏はいう。

「特異点は、本当に顧客や現場を見ている人だから見つけられることでもある。結局、原点となるのは、ゼロパーティで根気よくユーザーと対話しながらブランド構築をすることだ」と横山氏。その際に効果を発揮するのは、社会的意義も含めNPOのような活動かもしれないとして、「すぐにリターンを求めるのではなく、質と付加価値の勝負。化粧品という自己関与の高いカテゴリーこそ、そういったマーケティングが通用する」と提言する。

Text: 矢野貴久子(Kikuko Yano)
Top image: ANDI WHISKEY via Unsplash

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