香りのデジタル化市場は年平均10%成長へ。新たなビジネスを生み出す4つのトレンド
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遠隔で商品の香りや匂いを体験できる、これまでなかった製品やサービス開発にAIを活用する、ユーザーの好みにあわせてパーソナライズした香り製品を提供する。大手からスタートアップ各社の「香り」をデジタル化する試みはAIの進化で一気に進み始めた。Research Nesterの調査によると、グローバルでのデジタル・セント・テクノロジー(Digital Scent Technology)市場は2022年~2030年にかけて年平均10%程度で成長すると予測されている。香りに関するテクノロジーをそれぞれの視点から4つのトレンドに整理し、その具体的な取組みを紹介する。
1. AIを活用した新たな香りの評価・開発
香りの開発プロセスにおいてもAIの活用が進んでいる。香りを構成する化学物質や原材料、その香りの特徴といったデータを利用し、AIを用いて化学物質や原材料の組み合わせから香りを予測することで、新たな香りの創出や開発の効率化に活かす取り組みが海外を中心に盛り上がりつつある。
スイスの大手フレグランスメーカー ジボダン(Givaudan)では、AI技術を用いた香り開発や感性評価を行う。同社が開発する調香師向けのシステム「Carto」では、タッチスクリーンを使用して調合したい原材料を複数選択するだけで、ロボットが最適な製法を採用し、従来の方法では不可能な速度でインスタントサンプルを作成できる。同システムは、ジボダン独自の成分マップ「Odour Value Map」を活用したAIツールであり、最終的な調合品における香りのパフォーマンスを最大化するよう設計されている。将来的には、消費者のインサイトを統合することで、より洗練された香りの創造につなげていくことも計画している。
一方、同じくスイスの大手フレグランスメーカー フィルメニッヒ(Firmenich)は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のキャンパス内に産学連携組織「d-lab」を設立。AIなどのデジタル技術のほか、科学研究の成果、消費者のインサイト・生産・販売を含むフレグランスに関わるデータを活用し、各分野の専門家の知見を集結させることでフレグランスデザインのデジタル化を加速させている。さらに同社では、自社の原料利用統計データベースを用いることで、「世界初のAIフレーバー」として、代替タンパク質製品での使用を想定した牛肉の味を再現することに成功している。
イスラエルのスタートアップMoodifyも、AI技術で香りを分析し、新たな香りを開発する技術を持つ。同社では、ワイツマン科学研究所における神経生物学研究の成果をもとに人間の嗅覚反応を分析・予測し、望みどおりの香りを再現する分子の混合物を調合するAIプラットフォームを提供している。これにより、香料開発期間を数週間に短縮したり、悪臭の要因分子を打ち消す香りのレシピを提供したりすることが可能となる。2022年5月には、Toyota VenturesやLG エレクトロニクス、フィリップ・モリス、大正製薬等が参加したラウンドで1,000万ドル(約13億3,000万円)を調達している。
2. 香りを捉える「電子鼻(e-Nose)」
香りは、化学物質が鼻の中の嗅覚受容体に結合し、電気信号に変換されてその情報が脳へ伝えられることで認識される。この仕組みを模倣するセンサーによって香りの成分や濃度を測定する「電子鼻(e-Nose)」の開発が、科学分析機器メーカーやスタートアップ企業などによって進められている。香り製品の開発にはもちろん、食品の品質管理やプロセスモニタリングをはじめ、さまざまな用途が期待されている技術だ。
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