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ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2018年下半期デジタル施策総まとめ

◆ English version: What did the Top 6 cosmetics makers do in the second half of 2018?
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2018年下半期の化粧品の売上上位6社のデジタル施策と事業開発をまとめた。今回は6社のうち1位~3位企業のロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダーについて紹介する。上半期と同様に、消費者の求めるナチュラル志向や企業としての透明性や倫理観、ダイバーシティへの対応を着実に行いながら、デジタル技術をビジネスに取り込み、変わる消費者ニーズやAmazon等の競合を意識した策を取っている。4位~6位企業については次回に紹介予定だ。

※ランキングは、BeautyPackaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIES
より

2018年上半期デジタル施策総まとめ」でも紹介したように、2018年のキーワードは、ナチュラル、情報開示による透明性など、消費者動向に沿う方向に変わり、特に世界の消費を大きく動かしているミレニアル世代の価値観に強く影響されている。ロレアルやユニリーバはM&Aによるナチュラルマーケット攻略に余念がない。上半期では、透明性や倫理性の話題が多かったが、下半期は、人種だけでなくLGBTを含むダイバーシティの話題が各社とも多かったことも特徴である。

デジタル領域では、ビューティテック企業として自身を位置づけているロレアルが、次の成長テクノロジーを探すためにCVCの設立やファンドへの投資などの動きを加速させるなか、デジタルシフトはビューティアドバイザーから起こそうとデジタル人材育成を積極的に行うエスティ ローダー、デジタル技術を倫理的・社会的問題解決に積極的に使おうとするユニリーバと、各社の戦略は明確に分かれている。

1位 ロレアル 
さらなる顧客体験向上を目指し次のテクノロジーを探す動きを加速

正式な発表は2月7日を予定しているが、好調だった上半期に続き、下半期も売上を堅調に伸ばしたようだ。ロレアルは、自身をビューティテック企業と位置づけ、ModiFaceに3Dメイクアップ体験を、またライブストリーミング、1:1コンサルテーションなどに最新テクノロジーを投入しながら、新しい顧客体験を作り出すことに注力している。2018年下半期は、Facebookとの提携や、アップルと協業してウェアラブルを発売した。革新的なスタートアップにマイノリティ出資を行うCVCを設置し、アフリカのテック企業に投資するベンチャー・ファンドへの出資を実施するなど、グローバルで通用するベンチャーへのアクセスを優位にする動きも盛んだ。

また、すでに成熟している北米・西ヨーロッパ、日本以外の美容市場がこれから伸びるとみており、特にアジア向け商品開発を強化してきているが、成長著しい中国マーケットでは、百雀羚などの地元企業にシェアを奪われており、苦戦が続いている。

世界的なナチュラル志向の潮流のなかで優位性を築くために、欧州のナチュラルコスメの草分けであるドイツのLogocos Naturkosmetik(ロゴコス ナトゥアコスメティクス)やSOCIETE DES THERMES DE LA ROCHE-POSAY(ソシエテ デ テルム ドゥ ラ ロッシュ ポゼ)を買収した。過去にマス向けヘアケアブランド、ガルニエからナチュラルラインを出したが失敗しているため、グローバルなナチュラルコスメ市場でロレアルが存在感を出せるかは、元祖ナチュラル化粧品ともいえるロゴコスの買収により、いかに市場ポジショニングを築けるかにかかっているといえそうだ。

環境問題からLGBTへの配慮、教育まで。欧米美容企業は次世代の利益のために動く」でも取り上げたが、ロレアルも環境問題やジェンダー・ダイバーシティへの配慮には徹底しており、2018年下半期も関連する数多くの賞を受けた。

ロレアルのデジタルでの主な動き

■ 8月9日 ロレアルがFacebookと提携し、Facebookユーザーが、ARを利用しFacebook Cameraを使って、ロレアルブランドのメイクアップ商品を体験できる機能を構築すると発表。まず、NYX Professional Makeupが、最初のAR体験を8月末から提供開始した。

■ 11月12日 ロレアルとGeneral Assemblyは、デジタル時代のマーケティングスキルを測定するための新しい基準を設置

■ 11月14日 「ラ ロッシュ ポゼ」がアップルと協業し紫外線計測のウェラブルデバイス「マイ・スキン・トラックUV」を発売。アップルはBeautyTech初進出。ロレアルのデジタルテクノロジーのインキュベーターチームが手掛けたもの。

ロレアルの事業開発での主な動き

■ 8月1日 1978年にドイツで薬草療法士が設立したナチュラルコスメのパイオニアで、ナチュラルブランド「ロゴナ」と「サンテ」を持つロゴコス ナトゥアコスメティクスを買収。2017年の売上高は5900万ユーロ。買収額は未発表。買収により、ナチュラルコスメのグローバル展開を加速させる狙い。10月17日に買収完了。

■ 8月1日 1921年に欧州初皮膚病治療の温泉施設として創業し、統合的な皮膚ケアプログラムを提供しているソシエテ デ テルム ドゥ ラ ロッシュ ポゼの全株式の取得を発表。2017年に7500人以上が訪れ、売上高は360万ユーロ。1989年に同施設のスキンケアビジネス ラロッシュポゼを買収したが、今回の買収で施設を旗艦店にする計画。

■ 9月25日 アフリカのテックプロジェクトを対象とするベンチャーキャピタルファンドPartech Africaへの投資を発表。この投資は、これまでのベンチャーキャピタルファンドへの投資(Partech International Ventures、Founders Factory、Raise Investissement)に追加されたもの。

■ 12月5日 革新的な成長の可能性を持つスタートアップにマイノリティ出資するコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)BOLD(Business Opportunities for L’Oreal)を設置

2位 ユニリーバ 
経営資源をウェルネスやナチュラル領域に戦略的に集中

2018年上半期デジタル施策総まとめ」の記事で、ユニリーバをデジタル技術を利便性だけでなく、倫理的・社会的問題解決に積極的に使用している企業だと書いたが、下半期もその路線は大きくは変わらない。下半期では、テクノロジー領域ではないが、世界の美容業界トップ10の中で最初に、化粧品の動物実験を5年以内に終わらせることを目標としたヒューメイン・ソサエティー・インターナショナルの#BeCrueltyFreeキャンペーンの支持を表明し、話題となった。

世界的な健康志向の高まりから、ユニリーバもウェルネスやナチュラルへの投資を強化しており、上半期に発表したイタリアの自然派パーソナルケアと栄養補助食品で有名なエクイリブラの株式75%取得を完了し、GSKのインドの栄養補助食品事業やオランダのベジタリアン向け食品販売会社ベジタリアン・ブッチャーを買収

11月29日に発表された2019年1月1日付でのポール・ポールマン(Paul Polman)氏からアラン・ジョープ(Alan Jope)氏(前美容・パーソナルケア部門の責任者)へのCEOの交代は、消費財や食品業界を取り巻く厳しい環境のなか、AmazonやテンセントのWeChatなどが重要な販路になるという消費財業界の変化が背景にある。

ユニリーバの事業開発での主な動き

■ 7月2日 マーガリンなどのペースト事業を米投資ファンドのKKRに売却完了。健康志向の高まりなどから不振が続くペースト事業から撤退し、健康食品やスキンケアなど将来の発展が見込まれる事業に経営資源を集中させたいと、2017年12月に売却を発表した。

■ 10月1日 6月に発表したイタリアのエクイリブラの株式75%の取得を完了

■ 10月24日 ヴェオリアと持続可能なパッケージングで提携を発表し、廃棄物の回収及び再利用に関するインフラを改善。プラスチック廃棄物における循環型経済の形成を支援すると表明

■ 12月3日GSKのインドの栄養補助食品事業などを33億ユーロ(約4200億円)で買収すると発表。

■ 12月19日 オランダのベジタリアン向け食品販売会社ベジタリアン・ブッチャーを買収。健康への関心の高まりや宗教上の理由から肉を食べない消費者が増えていることに対応するため。

その他

■ 10月9日 世界の化粧品の動物実験を5年以内に終わらせることを目標としたヒューメイン・ソサエティー・インターナショナルの#BeCrueltyFreeキャンペーンを業界トップ10のうち最初に支持を表明した。

■ 12月6日 プラスチックを含まない新しい洗濯タブレットに10万ユーロを投資すると発表し、一流のデザイナー、イノベーター、パッケージングの専門家を集めた1日ハッカソンでソリューションを開発、試験的に導入した。

3位 エスティ ローダー 
下半期もデジタルシフトの人材育成に積極投資

2018年上半期デジタル施策総まとめ」や「エスティ ローダーの熱いARトレーニング、日本でも美容部員をインフルエンサーへ」で、デジタルシフトに向けた人材育成に注力していることを紹介したが、下半期でもパーソナライズされたオンライン学習プラットフォームをLinkedInとのパートナーシップで提供することを発表し、業界初の取り組みとして話題となった。IndeedのTop-Rated Workplaces: The 50 Bestにランクインしたり、フォーブスがBest Employer for Womenとするなど、人を大切にする姿勢は高く評価されている。下半期はデジタルや事業開発で派手な動きはなかったが、ハッカソンを行ったり、3D印刷技術を採用したり、地道に取り組んでいることがわかる。

エスティ ローダーのデジタルでの主な動き

■ 8月7日 美容業界で初めてLinkedInと提携し、オンライン学習プラットフォームを社員に提供

■ 11月6日 Whitman Laboratoriesの3D印刷技術を使用し、製造工程とプロトタイピングの近代化を図っていることを紹介。

■ 11月16日 ニューヨーク州ロングアイランドシティにある新しいテクノロジー・ハブで初めてハッカソンを主催し、35の大学、28の企業、5つのエスティ ローダーの国際チームから120人以上が参加。学生部門で最優秀賞を受賞したのは、グーグルビジョンを利用し、肌の色合い、ニキビ、老化の分析を行い、消費者が自分で肌を改善するための商品を提案するClinique Reflectorアプリケーションを作成したチームだ。プロフェッショナルチームの最優秀賞は、#GetThatLookというモバイルアプリケーションが受賞した。これは消費者が自分の好きな化粧の写真をアップロードし、それを再現するために適したエスティ ローダー製品を知ることができるというもの。

エスティ ローダーの事業開発での主な動き

■ 10月1日 アンドリュー・ロス(Andrew Ross)氏が戦略及び新規事業開発担当副社長に昇進。新規事業のデューデリジェンスに対するアプローチを洗練させ、早期に躍進するブランドの創業者との良好な関係を築くことで、急成長中のBECCAや最大規模の買収となったToo Facedのディールを実現した。ブランドポートフォリオを強化し、多様化していくことを今後も推進していくと示唆している。

<2018年下半期1〜3位ランキングまとめ>

2018年の1年をグローバルトップ企業の動きからまとめると、「デジタル」「ナチュラル」「ミレニアル」「グローバルマーケット」「ダイバーシティ」「倫理」「透明性」が共通したキーワードだ。年率5%程度で成長し続けるグローバル美容市場だが、化粧品の一人当たりの消費量は、北米、西欧、日本以外でみるとまだまだ少なく、今後大きく伸びる可能性を秘めていると各社はみている。とはいえ、2019年1月のアップルショックで世界景気の鈍化が個人消費にも波及することが懸念され、中国需要を取り込もうとしていた消費財企業は苦戦を強いられそうだ。

また、Amazonやテンセントなど、リアル店舗よりも大きな影響力を持ちはじめたデジタル企業と戦っていくために、どのように販売力を保ち続けるのかも課題になる。ブランド力だけでなく、製品力、ポートフォリオ、そして、すべての力のベースとなる「人」に各社は積極的に投資をしている。上半期のまとめに、自分たちの持つ軸を明確にしたうえで、新しいことに挑戦することが大切だと説いたが、消費財企業を取り巻く環境は激変しており、過去の正解が通用していかなくなっている。そんななか、さらに多種多様なことに挑戦し、自分たちが生き残っていける道を探らなければならない時代に入ったのだと実感した1年だった。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Top image: ARTFULLY PHOTOGRAPHER via Shutterstock 

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