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「サステナブル+デザイン性ある化粧品パッケージ」【海外トレンド 2024年5月-6月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、化粧品業界で強まるサステナブルな包装・容器へのシフトを背景にパッケージング企業が打ち出す、環境負荷を軽減し、かつデザイン性や機能性を兼ね備えた製品提案の動きを紹介する。


サステナブルは当たり前、プラスアルファの魅力で製品を際立たせる包装・容器に注目

★注目ポイント
数年前までは、ビューティブランドにとって、持続可能な包装・容器を製品設計に組み込むことは、サステナビリティに配慮する姿勢を示し競合他社と一線を画す手法だった。だが、環境課題を懸念する消費者の声がグローバルで高まるとともに、米国で持続可能な包装を要件に含む化粧品現代化規制法(MoCRA)や、包装に関する拡大生産者責任(EPR)法が可決されるなど、政府機関からのプレッシャーも強まり、現在ではサステナブルなパッケージは業界のスタンダードになりつつある。これを受け、パッケージング製造企業からは新しい素材の提案や、より高次元の脱炭素化の実現に寄与しようとする試みが起きている。

サステナブルかつデザイン的インパクトのある包装・容器の提案

調査会社Verified Market Researchのレポートによれば、化粧品パッケージ(包装・容器)市場規模は2020年に349億8,000万ドル(約5兆5,859億円)と評価され、2028年までに537億8,000万ドル(約8兆5,881億円)に達するとの予測で、2021年から2028年にかけて5.76%のCAGRで成長するとされる。その背景のひとつには、ビューティブランドやサプライヤーがよりサステナブルなパッケージへの転換を図っていることがあげられる。

たとえば、自然由来の成分を使用し温室効果ガスの排出を抑えたカーボンニュートラルな処方を採用するブランドであれば、当然、パッケージにもエコフレンドリーな仕様を求める。総合的に環境に配慮したサステナブルな製品づくりは、とくに「サステナブルカルチャー」が社会に浸透している欧州市場においては“当たり前”になってきている。そんななかで、環境配慮のアピールや製品の保護だけではなく、わかりやすく他社との違いを際立たせ、消費者の目にとまりやすくしたり、心地よさや驚きのある使用体験を印象づけるパッケージの役割にも、改めて注目が集まっている。

2024年5月29日〜30日に仏パリで開催された国際展示会「MakeUp in Paris」における化粧品トレンドを分析するレポートでは、植物由来でありながら革やベルベットのような見た目と肌触りの高級感ある素材や、紙のリフィル容器なども取り上げられており、サステナブルな設計に加えて、新しい発想や高いデザイン性で付加価値を持たせたパッケージが脚光を浴びている。

今回は最新の化粧品パッケージの流行を体現する製品をいくつかピックアップして紹介する。

⚫︎Albéa Cosmetics & Fragrance:スティックフレグランス容器

仏Albéa Cosmetics & Fragranceはクリスチャン ディオールと協働し、「Miss Dior Mini Miss」から発売されたアルコールフリーのスティックフレグランス「ミス ディオール オードゥ パルファン ミニ ミス」の容器を開発した。ローズワックスなど自然由来成分を82%配合した淡いピンク色の半透明なこの固形香水は、ポリプロピレン(PP)100%の容器に挿入されており、キャップ本体とホルダーには、亜鉛メッキによる装飾が施され、リサイクル可能な鋼(はがね)で底部を安定させて重量感と高級感を出すとともに、職人が手織りした千鳥格子模様のジャガード織をあしらったケースに収められている。

ミス ディオール オードゥ パルファン ミニ ミス
出典:クリスチャン ディオール公式サイト

⚫︎Desserto:サボテン由来のヴィーガンレザー

LVMH傘下のメゾンと、ラグジュアリーグッズ業界における可能性を備えたソリューションを持つスタートアップの連携を促進するイニシアチブ「La Maison des Startups」に選出されたメキシコ企業Desserto。同社は、自社開発した本革のような見た目と手触りをもつサボテン由来の“ヴィーガンレザー”を、ジバンシィの「ローズ・パーフェクト・リキッド」のキャップに2022年から提供している。同リップバームのキャップ本体の素材は再生プラスチック(PCR)を30%含むABS樹脂で、ボトルはガラス製だ。

ローズ・パーフェクト・リキッド
出典:ジバンシィ公式サイト

⚫︎FaiveleyTech:大理石を思わせるバイオベースのボトルキャップ

美容業界向け高価値プラスチック製品を製造する仏FaiveleyTechは、高機能バイオベース樹脂である「Sulapac Luxe Flex」素材で作られた、さまざまな色合いの大理石風の模様と強い硬度を持つボトルキャップを発表した。香水瓶をはじめとする各種容器に対応できるという。

Sulapacは、自然由来のバイオコンポジット(複合物)材料を製造するフィンランド発の同名スタートアップの製品で、北欧で森林の管理認証を受けたウッドチップや廃材と植物由来の結合剤で構成されており、生分解されて自然に還る性質を持つ。あわせて、なめらかな表面など美しい外観と、従来のプラスチックと同等の機能や品質を備えるとする。

出典:Sulapac公式サイト

2018年以来、FaiveleyTechはSulapac社と提携し、美容業界のクライアントのより持続可能なパッケージングへの移行を支援している。FaiveleyTechはこれまでに、「N°1 ドゥ シャネル」シリーズの一部のためにSulapac製の蓋を製造しているほか、シャネルのフレグランス「レ ゾー ドゥ シャネル」125mlボトルのキャップや、資生堂の「Ulé」シリーズのキャップと封印などを手掛けている。

⚫︎Quadpack:グリッターリップグロス

スペイン・バルセロナに本拠地を置くQuadpackは、植物ベースの天然由来成分99%のグリッター製品を展開する仏ブランドSi Si La Paillette 初のリップグロスのための容器を提供した。Quadpackが展開するモジュール方式のディップイン型容器のフォーマットをもとに、各種オプションが用意されたボトルと付属アプリケーターから、ブランドが製品コンセプトやイメージする使用感にふさわしいものをそれぞれ選択することでパーソナライズした容器が作れる方式だ。「環境にダメージを与えずに人々をキラキラさせる」をミッションに掲げるSi Si La Pailletteは、ボトルにはPCR50%の素材を選んだ。

Gloss Paillete Si Si La Paillette
出典:Quadpack公式サイト

⚫︎Morrama:詰め替え型パッケージコレクション

英国が拠点のイノベーションコンサルタント企業Morramaは中国のパッケージングメーカーPPKと提携し、リップスティック、メイクアップパレット、ジャー、ポンプボトルで構成される、何回も使用できる詰め替えタイプの化粧品向け容器コレクション「Maya」を制作した。

Mayaシリーズ
出典:Morrama公式サイト

同シリーズは、竹とサトウキビの廃棄物から作られたセルロースパルプ製のリフィル(詰め替え用品)が特徴だ。Morramaによれば、紙製インナーを使用した詰め替え用口紅は市場初だという。口紅と固形フォーミュラのリフィルは100%紙製で、ポンプボトルとジャーのリフィルには薄いPPを採用、あるいはPETコーティングが施されている。Mayaの容器本体はPP、PET、ABS樹脂、アクリル樹脂製で、オプションでPCR製もある。また、PPKは2025年の完成を目指し100%プラスチックフリーのリフィルの開発に取り組んでおり、植物由来とバイオプラスチックの選択肢を模索しているという。

⚫︎FR & Partners:遊び心をプラスしたカラーパレット

スイスの化粧品パッケージング企業FR & Partnersが提案するのは、さまざまな形のピースを組み合わせて正方形を作るパズルゲームにヒントを得た、遊び心のあるメイクアップカラーパレットだ。ケース本体は、適正に管理された森林から産出した木材が原料のFSC認証ペーパーで作られている。

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