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過去最高額の中国「双11」はロレアルなど海外ブランドが思い切った施策で復権

◆ English version: China’s “Double 11” event pulls in a record-breaking $137 billion with L’Oréal and other overseas brands staging a comeback
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中国で独身の日とされる11月11日にちなんで始まったセールイベント「双11(ダブルイレブン)」は、2020年は11月1日から開催されるなど期間も大幅に伸び例年以上に商戦は活況を呈した。中国ブランドに押され気味だったエスティ ローダーやロレアル、P&Gなど海外ブランドが復活を果たし、日本ブランドでは資生堂や花王のほか、美顔器でヤーマンが躍進。美容分野を中心に、2020年のダブルイレブンを振り返る。

美容整形プラットフォームSo Youngもセールに参戦

平安証券によると、ダブルイレブンの期間中(2020年11月1日~11日)の全プラットフォームのGMV(流通取引総額)は合計で9,000億元(約14兆2,000億円)を超えたと見込まれる。トップはやはりアリババグループのTmall(天猫)で、前年同期比26.1%増の4,982億元(7兆9,000億円)、同グループのタオバオ(淘宝)と合わせるとシェアは59%に達した。2位はJD.com(京東商城)で、GMVは32.8%増の2,715億元(約4兆3,000億円)で、シェアは26%だった。

越境ECも好調だった。中国メディアの報道では、Tmall Global(天猫国際)の11月11日12時時点のGMVは前年比47.3%増。2,600ブランドが初参加で、120万アイテムが初登場したという。

ダブルイレブンに参加するのは大手ECだけではない。以前紹介した、美容整形クリニックとユーザーを繋ぐ美容医療プラットフォーム「So Young(新氧科技)」でもセールが行われ、10月14日から11月11日までのGMVは前年比213%増となった。So Youngでは痩身やレーザーだけでなく、整形、脂肪吸引、頬骨形成(骨削り)などのメスを伴う施術への注目度も高かったという。期間中のライブ配信時間は5,000時間を超え、3,000万人以上が視聴した。

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7兆9,000億円を売り上げたTmall
出典:Tmall

1位はエスティ ローダー、資生堂は8位

ダブルイレブン期間中(11月1日〜11日)のスキンケアアイテムの売上は前年比45%増の755億元(約1兆2,000億円)、メイクアイテムは38%増の154億元(約2,422億2,000万円)を記録した。 Eコマースのシェア1位のTmallでも美容分野は活況で、11月1日から3日までのGMV1,082億元(約1兆7,000 億円)のうち化粧品が20.1%を占め1位だった。また、アリババ系オウンドメディア「天下網商」によると、Tmallにおける期間中の化粧品売上ランキングは以下の通りだった。

1位 エスティ ローダー
2位 ロレアル パリ
3位 ランコム
4位 The History of Whoo(后 ドフー)
5位 OLAY
6位 SK-Ⅱ
7位 Sulwhasoo(雪花秀)
8位 SHISEIDO(資生堂)
9位 WINONA(薇諾娜)
10位 LA MER

1位のエスティ ローダーの売上は24億元(約379億2,000万円)を超えた。グローバル大手では、エスティ ローダー、ロレアル、P&Gのブランドが、それぞれ2つずつランクインし強さをみせつけた。韓国勢は2ブランドだった。一方で、例年と比べ大きく異なるのは、近年、躍進が目覚ましい中国ブランドが「WINONA」1つしか入っていない点だ。2019年は4ブランド、2018年は5ブランドがランクインしていたこともあり、急減速にみえる。

日本ブランドについては、資生堂以外はトップ10に入っていないが、一方で日本の美容家電は堅調だった。中国調査会社・CBNDataによると、10日に人気KOL(キーオピニオンリーダー)viyaが行ったライブコマースでは、ヤーマンの美顔器の見込み額が4,100万元(約6億5,000万円)に達した。

また、越境ECでの日本ブランドの存在感は今年も際立っていた。報道によると、Tmall Globalの11月11日16時時点での輸入先は日本が1位。天下網商によると、輸入(海外)ブランド別の売上ランキングには、1位にヤーマン、4位に花王、5位に資生堂、15位にドクターシーラボがランクインした。ただし、花王に関しては紙おむつの数量が多かったためではないかとも推察される。

大幅ディスカウントを実行した海外ブランド

海外ブランドが巻き返しをみせた要因について、中国メディアは、各ブランドが例年以上に割引に力を入れたことをあげている。今年のダブルイレブンには25万ブランド、500万店舗が参加したが、割引されたアイテムは前年の1.4倍の1,400万点に達し、過去最高だったという。

中国のセールイベントでは、1つあるいは2つ購入すると同じ商品をもう1つプレゼントという特典や、クーポン券の配布が必須になっているが、今年は海外ブランドがライブコマースを通じて大幅な割引を実行した。たとえばエスティ ローダーはアイクリームを実質50%引きで販売し、SHISEIDOも美容液アルティミューンを60%引きで販売するなど、半額以上のディスカウントが散見された。OLAYのフェイシャルマスクは、実質77%引きだったという。2018年実績では2割引程度が最大であったことを考えると、値引き合戦がさらに拡大している。

もちろん中国ブランドも割引販売をしているが、1つ買うともう1つがプレゼントされるという実質50%引き以外の割引はあまりなく、今回はむしろ海外ブランドの方が大胆に値引きをしていたといえそうだ。

1人で約1,700億円以上を売り上げる人気KOL

同時に、割引キャンペーンも含め、効果的に売上増となった理由としてはライブコマースの存在が大きい。中国の調査会社iiMedia Research(艾媒咨詢)によると、Tmallでのセール期間中のライブ配信数は10万を超え、視聴者総数は3億以上、取引額は前年の6倍を超えた。「天下網商」によれば、取引額が1,000万元(約1億6,000万円)を超えた配信ルームは500近くにのぼり、1億元(約15億8,000万円)を超えた配信ルームも33あったという。

「タオバオライブ(淘宝直播)」に特化したデータ会社・知瓜数据の調べでは、10月21日から11月11日までのライブコマースの売上ベスト10のうち7つが美容ブランドで、1位がランコム、3位がエスティ ローダー、6位がSHISEIDOだった。

二大KOLであるviya(薇娅)とAustin(李佳琦)の人気は今なお絶大で、同期間中にviyaのGMVは112.8億元(約1,782億2,000万円)、AustinのGMVは80.9億元(約1,278億2,000万円)に達した。

この二大KOLだけでなく、ユーザー特性によって細かくライブ配信の内容も分けられている。11日だけで、ランコムに関連する配信は705の配信ルームで行われ、のべ2,098のアイテムが紹介されたという。とくに取り上げられる頻度が高かったのは、化粧水、口紅、アイクリームなどだった。エスティローダーに関連する配信は591の配信ルームで行われ、延べ2,676のアイテムが紹介された。アイテムはアイクリーム、ファンデーション、美容液などが多かった。

ViyaとAustinが商品を取り扱った回数が最も多いブランドは、ロレアル パリで計17回。取引額は10億元(約158億円)弱だった。Sulwhasooはviyaに紹介されることが多く、8回だった。

ヒマラヤからライブ配信を行った「CHANDO」

海外勢と比べるとプレゼンスが低下した中国ブランドだが、販売成績そのものは決して悪くはなかった。Tmallの期間中の化粧品売上ベスト10に中国ブランドとして唯一ランクインしたスキンケアブランドWINONAは、Tmallでの売上が前年の2倍以上で7億元(約110億6,000万円)を突破した。

また、最終日11日の中国ブランドの化粧品売上ランキング1位はJALA(伽藍集団)傘下の「CHANDO(自然堂)」だったが、Tmall旗艦店の売上は1時間で1億元(約15億8,000万円)を突破。植物性保水フェイシャルマスクが4,000万枚販売された。1箱5枚入りとして、800万箱が売れた計算だ。

中国のデータ会社・星図数据によると、同日のパーソナルケアの売上ランキングでCHANDOは9位と、中国ブランドで唯一トップ10にランクイン。ライブコマースを重視している同ブランドは、競合とは異なる配信も行っている。CHANDOは、ヒマラヤの天然水などを原料に使用しているのがウリで、そのことから環境保全活動も展開している。予約販売期間の10月24日には、ヒマラヤの4,000メートルの高地にある麦畑で行った収穫祭を配信して、約150万人が視聴し話題になった。

今年も好調だった上場間近の「Perfect Diary」

新興ブランドとして近年の話題をさらい、2020年11月20日に運営会社の Yatsen Holding(逸仙控股)が米国証券取引委員会に上場したばかりの「Perfect Diary(完美日記)」も健在だった。同ブランドはTmallでの売上が6億元(約94億8,000万円)を突破し、メイク部門での売上では1位になったという。

最近勢いのある新興ブランドとして過去記事でも紹介した「Florasis(花西子)」も好調で、Tmallでの売上が前年比259%増の5億元(約79億円)を突破。メイク部門で2位につけた。また、11月1日から3日までの海外取引額が中国ブランドではトップとなり、海外配送が可能なTmallを通じて100以上の国・地域に向けて販売されたという。

メイク部門の1位と2位は中国ブランドが独占したものの、総合では海外ブランドのスキンケアにおされて中国ブランドがランクインできなかった状況だが、そのなかでもスキンケア分野で好調だった中国ブランドが、深圳証券取引所に上場予定の御家匯傘下の「UNIFON(御泥坊)」だ。

フェイシャルパックのメーカーとして有名な同社は、ダブルイレブン当日の11日に日付が変わった直後、わずか1分17秒でアミノ酸泥パックを10万個売り上げ、Tmallで「最もフェイシャルパックを売ったブランド」として名を上げた。

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フェイシャルパックで有名なUNIFON
出典: UNIFON公式サイトより

同ブランドもライブコマースを重視しており、11月6日に動画共有アプリ「Kuaishou(快手)」で配信を行ったところ、用意した60万個のアミノ酸泥パックが3分で完売したという。ほかに同社は4ブランドを展開しているが、開始10分少々ですべてのブランドの販売額が1億元(約15億8,000万円)を超えたという。

中国ブランドも力をつけ、ますます競争が激化する市場

年々、右肩上がりで化粧品ブランドが増える中国だが、今年も新たな新興ブランドが注目を集めた。Z世代をターゲットとしたシンプルなデザインが特徴のメイクブランドで、2018年ローンチの「Colorkey(珂拉琪)」は、ダブルイレブン期間中の売上が1.6億元(約25億3,000万円)に達した。創業から3年経っていないにもかかわらず、「ドラえもん」とのコラボ商品を展開。ダブルイレブン期間中に70万個以上売れたという。資金力で有名キャラクターを採用し、知名度を大きくあげたようだ。

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ダブルイレブンで人気だった
「ドラえもん」とのコラボ商品
出典: ColorkeyのTmall旗艦店

プラットフォームでの露出や人気KOLの起用、ライブコマースを数多く実施するなど、ダブルイレブンでプロモーションを展開するには大きな費用がかかる。それでも、海外ブランドが価格競争を挑んだのは、そもそもが低価格に設定されることの多い中国ブランドを意識してのことだろう。

たとえば、前述のColorkeyのドラえもんとのコラボリップの割引特別価格は、2本セットで79元(約1,200円)だ。欧米市場の回復がコロナ禍でいまだに見通せないなかで、ダブルイレブンのように中国でのセールイベントは大きなPRの場でもある。まずは中国市場での存在感を高めるための施策として、思い切ったディスカウントに踏み切った海外ブランドと、年を追うごとに存在感を増す中国ブランド、2021年はどのようなシェアと戦いになるか注視していきたい。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Len wang via Shutterstock

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