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進化を続ける米国のサニタリーD2C。盛り上がりを後押しする3つの社会的課題

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アメリカでは近年サニタリー用品のD2Cサービスを手がける新規のスタートアップが次々に誕生し、急成長している。オーガニックナプキンのLOLA(ローラ)や、生理用ナプキンを不要にした専用ショーツのTHINX(シンクス)、生理中の不快感を解消しセックスも楽しめる、タンポンの代替品FLEX(フレックス)などが注目株だ。

アメリカでサニタリー用品のD2Cサービスが盛り上がる背景には、(1)「サニタリー製品の安心・安全性への疑問」(2)「セックスについてオープンに語れない風潮」(3)「LGBTQへの配慮」という3つの社会的課題がある。代表格のLOLAの事例を中心に、サニタリーD2Cの潮流と成長理由を見ていく。

創業3年で3,500万ドルの資金調達に成功

「何十年もの間、体に直接触れたり体内に入れたりするものなのに、なぜ原材料について無頓着なの?」

そんな素朴な疑問から生まれたのが、サニタリー用品のD2CサービスLOLA(ローラ)。創業から3年足らずで3,500万ドルの資金調達を行うなど、アメリカのサニタリーD2Cサービスの中でも特に注目を集める。

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LOLAのECサイトトップページ

同社は、ジョーダナ・キアー氏とアレックス・フリードマン氏という2人の若き女性起業家によって、ニューヨークで誕生した。タンポンの提供から始まり、現在はナプキン、初潮キットなどの生理用品、生理痛ケア用品、さらにコンドームや潤滑油といったセックスプロダクトまで、多岐にわたり取り扱う。

LOLAのサニタリー商品の売りは、100%オーガニックコットン製。潤滑油も17種のピュア・エッセンシャルオイルを使い、パラベンやアルコールなどが一切使われていない。安全性に加え、「生理用品は必要なときに限って手元にない」と女性なら誰でもあるだろう失敗経験を解消するサブスクリプションモデル(1〜2ヶ月に1回届く)が受け、顧客数は年々うなぎのぼりだ。

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一箱10ドル前後と手を出しやすい価格帯を設定

成分を開示しないのはなぜ? が出発点

日本ではサニタリーD2C自体珍しいが、なぜアメリカでは次々と誕生しているのだろうか。

一つには、LOLAの起業理由にもなっている「安全性」の問題が挙げられる。小学校高学年で初潮が来て50代の閉経まで40年間、毎月7日間生理があると仮定すると、女性は一生のうち3,360日、年に換算すると9年以上生理と付き合うことになる。これほど長い間、しかもデリケートな部分に使うにも関わらず、これまで“原材料”に目が向けられることはなかった。

そこに疑問を持ち、創業したのがLOLAのジョーダナ・キアー氏とアレックス・フリードマン氏。「そういえば、タンポンには何が入っているんだろう?」と、市販商品の研究を始めると、「ingredients may contain(成分が含まれているかもしれない)」という曖昧な記述を目にするようになった。

「MAY contain?」結局含まれているのか、含まれていないのか。なぜタンポンブランドは成分を開示しないのか。そんな数々の疑問が安心・安全なサニタリー商品を届けたいという気持ちを生み、アメリカ屈指のサニタリーD2Cブランドへと成長を遂げた。

同じく安全性を押し出すのが、タンポン、月経カップ、生理用ナプキンなどの代替品として登場した月経ディスク、FLEXだ。最大12時間連続で着用できるという。医療現場で使用されている低アレルギー性の超うす型ゴムでできており、子宮頸部と恥骨にFLEXを引っ掛けることで、経血を収める。こちらも成分にこだわり、産婦人科による認可という安全性を売りにするほか、FLEXを着用すれば、生理中でも水泳やセックスを楽しめるとあって、アクティブなアメリカ人女性から支持を得る。

扱いにくい「性」の問題を語り合おうという風潮

2つ目の理由は、性に対するオープンマインドだ。生理やセックスなどこれまでタブー視されてきた話題を、女性もどんどん語っていこう。そんな風潮がアメリカでは広がりつつある。その背景には、女性の社会進出や、人生100年時代自分らしい人生を送りたいと願う人が増えてきたことがある。豊かな人生を送る上で、三大欲求の一つである「性」は無視できない。

代表的な例として、日本にも上陸を果たしている有料会員限定の性教育サイト「OMGYES」がある。女性が性的快感を得るための詳しい方法に関して、18~95歳の2,000人以上にリサーチを行い、その結果から得たテクニックを動画で紹介するというものだ。女優のエマ・ワトソン氏も「もっと早くに欲しかった。絶対にオススメ」と絶賛するという。

LOLAも企業として積極的に性のオープン化を促進する。たとえば、「Sex is a touchy subject. Let’s talk about it.(セックスは扱いにくい問題。語り合いましょう)」と顧客に呼びかけ、オーガズム、リビドー(※精神分析の用語。 S.フロイトによると、性本能を発現させる力またはエネルギーで、快感追求的な性質をもつ)、素晴らしいセックスとは、といったテーマをドクターらと共に話し合う場を設けるほか、Facebookページでも、「なぜ一部の女性はオーガズムに達したフリをするのか?」「セックスにおける人気体位トップ10」など、切り込んだブログポストを積極的にシェアする。

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メルマガ会員宛に届いた案内メール

トランスジェンダーの男性にも使いやすいように

冒頭で紹介した、生理中でもナプキンを不要とする専用ショーツの「THINX」は、トランスジェンダーの男性にも使いやすいように、という観点で商品開発を進めている。

上記の動画で紹介されているモデルのSawyer DeVuyst氏は、トランスジェンダーの男性だ。生理が来ると、男性用トイレに入りながらタンポンやナプキンを取り替えなければならない。個装の紙を破る音が誰かに聞かれたらーー。こうした不安を抱えているであろうSawyer氏のようなトランスジェンダーの男性が、ナプキンやタンポンを装着しなくても、血液を吸収してくれるTHINXのショーツが登場したことで精神的に救われたことは、想像に難くない。

どんなサービスにも共通していることではあるが、顧客の悩みは人それぞれ異なる。特に、デリケートな問題を含むサニタリーはよりそれが顕著だろう。2018年6月27日にDigiday社が主催した、オンラインマンガジン『Glossy』によるウェビナー(オンライン上でのセミナー)でLOLAは、「D2CサービスのLOLAはどのようにパーソナルケア業界を席巻しているか(How LOLA disrupts personal care with personalized, direct-to-consumer experiences)」と題し、セミナーを行った。

セミナーに登場したのは、顧客戦略&オペレーション担当のシニアマネージャー、キャロライン・デル氏と、マーケティングプログラム担当のシニアマネージャー、ステーシー・ドルチン氏の2名。

セミナーの中で同社は、顧客サービスを向上させるために一番大切にしていることは、「何が必要とされているかについて知ること。そしてそれには、顧客の声を拾うのが一番の近道」と説明。週に1,000通ものメールが顧客から届いていることを明かした。内容については月経の悩みからハネムーンに関しての心配ごとなどさまざまだ。こうした声を拾い、商品開発やサービスに活かしている。2018年5月にローンチしたばかりの、セックスライフを豊かにするニューライン「Sex by LOLA」も、顧客からの要望により誕生したという。

今回紹介したようなサニタリーD2Cサービスは、アメリカでは「フェムテック(フィーメール+テクノロジー)」という名の下、急成長を遂げている。

大きな可能性、課題ともに存在するフェムテック分野。日本ではまだ公の場で「性」や「カラダ」について語られることは多くないが、時代や人々の意識の変化とともに、必ず変わっていくことだろう。アメリカの先行事例を参考にしながら、日本でもフェムテックが盛り上がり、それによって多くの人が救われることを期待したい。

Text: 編集部
バナー画像:志谷のぞみ(Nozomi Shiya / BuzzFeed)

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