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「フェムテック投資」「インド化粧品市場」がキーワード【海外トレンド 2022年9月- 10月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、2021年には550億ドル(約8兆151億円)規模となり、3年以内に750億ドル(約10兆9,297億円)にまで成長するとの予測もあるフェムテック市場でのVC投資の現状をみていくほか、グローバル大手が積極的な進出を始めたインド化粧品市場について取り上げる。

グローバルで550億ドル市場のフェムテック投資はVCが牽引

出典:BillionToOne公式サイト

★注目ポイント
Statistaの予測では、2020年に402億ドル(約5兆8,583億円)規模だったフェムテック市場は、2025年には750億ドル(約10兆9,297億円)にまで拡大するとされている。成長分野として有望な投資対象とみられているが、なかでもVCからの注目が熱い。一方で、同分野では研究開発費が十分とはいえないとの議論もあり、さらなる資金の注入が期待されている。

フェムテックにおけるイノベーションとスタートアップの活動は、驚異的なスピードで加速している。これらのスタートアップは、月経や不妊といった“明白な”女性の健康問題にとどまらず、ホルモンの働きを認識することから性的エンパワメントに至るまで、さまざまな課題に取り組んでおり、加えて、女性が主導する企業が増えているのが特徴だ。

The Economist誌によると、フェムテックは、世界40億人の女性のほとんどの人生のある時点で何らかの支援をするソリューションに焦点を当てており、巨大な潜在市場を形成しているという。これは、勃起不全(男性人口の10~20%と推定)など、男性人口の一部に対するソリューションであることが多い、男性向けテックとは対照的だ

この大きな成長が見込まれる分野に対し、投資家の目が向きつつあるが、なかでもVC(ベンチャーキャピタル)やファンドなどの女性キャピタリストがこの道を切り開いているとされる

フェムテックは比較的新しい用語であり、女性の健康に焦点を当てた新しいテクノロジーにもとづく製品、サービス、ソフトウェアを指すと一般的に定義されている。フェムテックのカテゴリーには、各種スマート生理用品、コードレス搾乳ポンプ、妊活/避妊のためのテクノロジー、さらには緊急避妊へのアクセスを生み出す企業、あるいは女性特有の病気の発見・治療など医療分野での技術開発まで、女性の健康にとって差し迫ったペインポイントに対処しようとするスタートアップの提案が含まれる。

PitchBookによると、グローバルにおけるこうしたフェムテック企業へのVCの資金提供は、24億ドル(約3,497億円)以上を記録した2021年に続き、2022年は、7月現在で8億4千万ドル(約1,224億円)に達している。今のところ、2022年最大のフェムテックへの投資案件は、独自開発の定量的計数テンプレートにより、微小な疾患関連DNA断片(分子)を1塩基対レベルで検出・測定することで、医師が出生前の胎児スクリーニングにおける疾患の発見をサポートするBillionToOneが3月に行った1億2,500万ドル(約182億円)のラウンドだ。

そのほかの2022年に資金調達した注目企業には、不妊治療をクリニックとオンラインのハイブリッドで提供するユニコーン企業のKindbodyや、オーガニックの女性用生理製品などを提供するRaelある

しかし、アナリストによると、女性の健康に対する投資全体をみれば依然として資金不足だとされる。マッキンゼーの報告書によると、乳がん以外の女性の健康関連分野では、2020年の医薬品研究資金のわずか1%を獲得したのみで、医療技術開発資金のうち、がん以外の女性の疾患に充てられたのは2%に過ぎなかったという。また、MedCity Newsによると、臨床試験における被験者の女性の割合は低く、医療機器開発の現場では女性の懸念はあまりかえりみられてはおらず、女性の臨床支援に役立つような研究開発が十分に行われていないとのレポートもある。

こうした女性の健康に関する研究の不足が、フェムテックの必要性を生んだとの見方もある。止むに止まれぬ想いから、女性の体と健康の問題に注目するよう声をあげた人々によりフェムテックがリードされてきたという考え方だ。同時に、PMS(月経前症候群)や更年期障害から性交障害、不妊まで、治療が可能な症状であるにもかかわらず、口にすることがはばかられ、診療やサービスを受けることをためらう文化的タブーがいまだに根強く、それが女性の健康に対する社会的な理解が広がるのを妨げ、投資の不足になっている可能性もあるとされる。

フェムテック分野では、婦人科、不妊、妊娠に特化した企業が最も多くの資金を獲得している。それは、WHOによって不妊症は病気であり公衆衛生問題であると認識されており、それに関するデータや研究が多く行われ、話題になっているため、投資家は資金調達を通じてスタートアップがこの問題に取り組むのを支援することに関心を持っているからだという

もう一つの課題は、男性投資家がフェムテック産業とその影響に関する十分な知識を持っていないことだ。フェムテック製品のインパクトに対する認識が高まれば、投資家、研究者、企業経営者は、このイノベーションのトレンドをサポートし、女性の健康に新しい時代を切り開くことに寄与できるだろう。

女性のためのオンデマンド・ヘルスケアサポートを提供するNabta Healthの創業者兼CEOのソフィー・スミス(Sophie Smith)氏は「女性の健康を総合的に改善するためには、遺伝子データから投薬、反応、コンプライアンス、クリニカルパス(治療や検査の標準的な経過を説明するための計画書)まで、より多くのデータが必要だ。そのためにも、フェムテック企業のニーズと価値提案をアーリーステージで理解している人たちからの、もっと多くの支援が求められている」と語っている

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