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韓国コスメをデータで世界に売り込む流通支援スタートアップB2LiNKの分析力

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韓国美容業界内で着実に認知度をあげている注目の流通系スタートアップがある。化粧品に特化したB2B向けデジタル流通プラットフォーム「umma(ウーマ)」を運営するB2LiNKだ。中小規模の韓国ブランドを海外に拡販する“強い味方”としての地位を確立する同社の、差別化されたコンセプト&ビジネス手法を探る。

世界350のリテイラーに韓国コスメを供給

外資大手による買収や大型投資を受けてグローバル市場への進出を果たし、その名が世界的に知られるようになった韓国新興化粧品ブランドは少なくない。だが、韓国コスメの海外進出を流通面からサポートする存在の、B2LiNKという企業を知る人はまだそれほど多くはないはずだ。

B2LiNKは海外の小売企業向けに韓国コスメを販売するスタートアップで、韓国美容業界内では高い知名度のある企業だ。設立は2014年、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー出身のイ・ソヒョン代表、タトゥー専門誌の発行人や整形外科クリニックのマーケターとして従事してきたパク・ヒョンソク副代表らが起業した。いずれも男性であるため、韓国メディアは彼らを「K-Beautyを売る男たち」という異名で呼んでいる。

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B2LiNKが運営する「umma」
出典: umma公式サイト

創業メンバーは、K-Beauty市場が堅実な成長を果たすに違いないという“勘”だけを頼りに起業したというが、そのビジネスモデルはみごと的中することになる。同社は着実に成長を遂げ、2020年7月末までに、累計1,730億ウォン(約165億円)の売上げを達成した。資金調達に関しては、公表されているだけでも、シリーズCまでで約275億ウォン(約26億2,000万円)を集めることに成功。プレミアパートナーズポスコ技術投資など韓国のベンチャーキャピタルのみならず、OEM大手の韓国コルマーの持ち株会社の韓国コルマーホールディングスなどが株主になっている。

韓国コルマーホールディングスの関係者は、B2LiNKに投資した理由ついて「他社とは差別化された流通の形」をあげている。従来、流通企業は最新情報の入手が遅れているエリアに話題の新商品を持ち込む、いわば「情報の非対称性」を利用して売上を伸ばすのが定石だったが、B2LiNKは「情報の共有」をコンセプトに据え、デジタルを駆使して情報を拡散することで販路を拡大する。こうした新たなB2B販売モデルに期待が寄せられているのだ。

B2LiNKは米国、中国、台湾などに支社を構え、2020年現在、23カ国、約350のリテイラーと取引実績を築いている。代表的なクライアントには、中国のTmallやJD.com、JUMEI.COM、米国やメキシコのコストコ、アマゾンなど各国の小売大手が含まれる。中小ブランドが多い韓国化粧品業界において、B2LiNKは世界中に流通・販売網を持つ心強い存在という立ち位置を築いている。

デジタル&データを駆使した販売戦略、米コストコへの成功事例

韓国メディアは、B2LiNKが短期間で成功を収めることができた要因を3つの観点から説明している。まず1つは早くからスタートさせた「新しい配送と企画」だ。

実例として、初プロジェクトとなった2015年の中国JUMEI.COMとの越境販売企画では、韓国国内のECで人気だったルリビオ ゾンビパックを大量販売することに成功している。当時はまだ越境ECでは受注後に韓国から発送するのが常だったが、B2LiNKは中国国内の保税倉庫に商品を保管し販売する方法をいちはやく採用することで、中国国内にいても韓国コスメがすぐに手に入ると話題になり販売開始から2分で5,000個を完売した。JUMEI.COMはただちに10倍の5万個を追加発注したという。

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B2B向けデジタル流通プラットフォーム
「umma」

次いでB2LiNKの強みとされているのは、デジタルおよびデータの利活用だ。2020年にB2B向けデジタル流通プラットフォームのummaをリリースしている。これは海外バイヤーやリテイラーが韓国コスメの詳細情報に簡単かつ迅速にアクセスできるように開発された、情報&注文プラットフォームだ。

既存の流通企業のように、言葉の壁などで海外バイヤーが韓国内の情報にアプローチするのが難しい状況を武器にするのではなく、情報を限りなくオープンにし、かつ買いやすくすることで集客を効率化しようというビジネスモデルを体現したummaでは、一般ECサイトのような見やすいインターフェイスで、6,000点以上の商品が閲覧・購入できるようになっている。

同時にB2LiNK内では、独自開発した情報解析システムやAPIの「B2KER」などを使い、1日あたり25万点の韓国美容系商品情報、各国の市場状況など最新データを収集。海外市場攻略のためのアイディアや戦略を練るのに活用している。B2LiNKに商品を委託するブランドはこうしたデータをベースに、個別にカスタマイズされたマーケティング&流通サービスを受けることもできる。

B2LiNKがデータを活用し成功を収めた事例としては、2016年末頃にスタートした米コストコへの進出支援が挙げられる。当時、B2LiNKが自社で集めたデータを解析した結果、米国では「K-Beauty」とともに、「K-Beauty routine(韓国コスメを使った肌の手入れやメイク法)」というキーワード検索が増えているとのインサイトを発見した。そこでB2LiNKは7~11のスキンケア商品にあわせ、韓国ユーザーが実際に行なっている使用方法の解説を添えた「K-Beauty Kit」というパッケージ商品をコストコに提案。最終的に160億ウォン(約15億円)以上を売上げ、コストコ内のビューティアイテムのなかでも上位5位に入る人気商品になったという。

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B2LiNKが米・コストコに企画・販売した
「K-Beauty Kit」

市場インサイトの理解と一歩先のトレンドを見出す判断力

B2LiNKが商品を取り扱うパターンは主に2種類ある。1つは、自社で潜在力があると判断した商品を大量に購入しリテイラーに販売するパターン、もう1つは海外進出したい国内ブランドから手数料を得て、マーケティングから配送までをパッケージとして請け負うパターンだ。手数料に関しては公表されていないが、各リテイラーやブランドによって異なると予想される。

B2LiNKの事業の全体像を俯瞰すると、韓国コスメをリテール面で海外進出支援するスタートアップから、データドリブンなマーケティング&物流支援企業へと進化している。イ・ソヒョン代表は2019年7月、韓国メディア中央日報の取材に答え、データから導き出した中国市場のインサイトについて、次のように指摘した。これは韓国のみならず、日本ブランドの海外進出を考える際にも役立つものだ。

「(ここ数年、中国における)K-Beautyの売上総額は増えているが、平均単価は下がっている。一方で、J-Beautyの売上総額はK-Beautyより少ないが、平均販売単価が上がっている状況が明確になってきた。(中略)多くの韓国インディーズブランドは、中国に進出する際、『中国の人々はどんな商品が好きか』を考える傾向が強い。(中略)しかし、受けそうな商品をつくる販売優先主義よりも、ブランドを堅固に育てるのが先だ。精巧かつ独自性のある製品コンセプトをまず考えなければならない。奇抜な製品よりも、(日本製品のように)信用される商品力やブランド力が重要視されている」(イ・ソヒョン代表)

データから海外市場の状況を読み解き、中小ブランドにインサイトを提供しつつ、かつデジタルの力で自前の販路を効率的に拡大する。2020年3月にはそのデータ分析力を生かして、米国の人気ブランドを韓国に独占輸入するジョイントベンチャー、Creative Peopleをたちあげた。米国の女優ジェシカ・アルバ氏による育児世代のファミリー向けベビー&ホームケアブランド「The Honest Company」製品の韓国内独占輸入契約などを行っている。

イ・ソヒョン代表が、化粧品を含めたクリーン系の商材に関心を持っているとコメントしたとの報道もあり、今後、韓国国内からの海外市場開拓だけにとどまらず、クリーンビューティ文脈でのビジネスにも注目が集まる。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image & 画像: B2LiNK 公式サイト

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