マーケ主導でSDGsとビジネス戦略を融合、ユニリーバの「LUX Rethink Beauty」
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マーケ主導でSDGsとビジネス戦略を融合、ユニリーバの「LUX Rethink Beauty」

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「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパス(目的・存在意義)を掲げ、企業の成長とサステナビリティを両立する戦略を実施するユニリーバ。同社が2030年までの約10年間で取り組む新プロジェクト「LUX Rethink Beautyプロジェクト」は、マーケティング部門が主導でコミュニケーションを設計し、LUXブランドの売上に中長期的につなげていく狙いがある。同プロジェクト発足の背景や運営体制について、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社 マーケティング 林宏樹氏、同 大西朱音氏に、ビジネス戦略の側面から話を聞いた。

中長期的な戦略で成長を続けるユニリーバのパーパス経営

ユニリーバは、2010年に「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を導入し、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスを掲げ、企業の成長とサステナビリティを両立する戦略を行なってきた。

パーパスを中心に掲げてきたのは、「パーパスを持つブランドは成長する」「パーパスを持つ企業は存続する」、そして「パーパスを持つ人々は成功する」という3つの信念があるからだ。さらに「2020年までに10億人以上が健やかに暮らせるために支援する」「環境負荷を削減する」などの目標を達成し、現在は、後継プランの「ユニリーバ・コンパス」で、ブランドの規模と影響力を最大限に活用し、気候変動や人権、不平等などの環境・社会課題を解決しながら成長することを目指している。これらの活動の結果、ユニリーバの時価総額はこの10年で1.8倍増加し、年平均成長率は6%を超えた。

出典:Global ranking

マーケティング部が主導し、パーパスを軸にコミュニケーションストーリーを設計

地球・社会課題を解決する企業として、ユニリーバは「ステレオタイプや社会規範は人々のマインドセットや行動に大きな影響を与える。それはときに人々が自分らしく生きることを阻む、目に見えない壁となる」と考えてきた。2016年には、広告からあらゆるステレオタイプな表現をなくすためのプロジェクトとして、「 #UNSTEREOTYPE」をスタート。2021年3月には、ビューティ&パーソナルケアの新しいビジョン「ポジティブビューティ」を発表した。

このなかで、LUXは「自分らしい一歩を踏みだす勇気」を与えるブランドとして自らを位置づけ、「私をすすめるのは、私。」をスローガンに掲げ、2021年9月に新しいビジョン「LUX BRAVE VISION 2030」を発表した。「自分自身を美しいと思えることが自信になり、一歩踏みだす勇気につながること、そしてその踏みだす姿勢こそが美しい」という信念のもと、「社会に潜む“美しさ”に関する固定観念一つひとつに問いを立て、世の中に選択肢を増やす」ことを目指している。

ブランドアンバサダーに、水原希子氏を起用
出典:ユニリーバ・ジャパン・
カスタマーマーケティング プレスリリース

特徴的なのは、このプロジェクトをマーケティング部門がリードし、営業や人事などの他部署を巻き込みながら、現在20名ほどの規模でプロジェクトを実施している点だ。一般的には、こうしたユーザーエンパワメントの施策はCSRや広報が担当する企業が多い。ユニリーバでは、売上目標は当然ながらあるものの、マーケティング部門がパーパスを軸にコミュニケーションストーリーを作ることで、中長期的にビジネス(収益)につなげていくことを意識しながら取り組んでいる。

ブランドが取り組むべき社会課題のテーマをどのように選定しているのかについて、林氏はこう語る。

「必ず考えるのは、自分たちが展開しているブランドのカテゴリー(LUXの場合はヘアケア)にあったテーマに落としこむことだ。消費者や世の中の人々が持つ悩みを、製品を通じてどのように解決できるかを考え、“見ための美”という、ブランドが狙っているテリトリーをはき違えないことが、パーパスを軸にコミュニケーションをして売上につなげていくポイントだ」(林氏)

このようなパーパスを軸とした価値創造の手法について、社内では常にグローバル事例や情報が共有されており、なかでもよく話題にあがるのが、ダヴのキャンペーンだという。

ダヴは、2004年からReal Beautyの概念を開拓してきており、キャンペーンの第一段階では、モデルなどではない一般の女性の写真を紹介し、リアルな女性像を社会に問いかけることで注目を集めた。その後も続いているダヴのさまざまなキャンペーンは、社会に大きなインパクトを与えた点で成功をおさめたコミュニケーション手法として、ビジネススクールのケーススタディでも取り上げられている。

「グローバルでのダヴの動画キャペーンでは、自分自身や容姿に自信がない女性たちをエンパワメントするテーマが多く、毎回消費者からの反響も大きい。それらを参考にしながら、日本ではどう展開すべきかを常に考えている」(大西氏)

このようにグローバル規模で情報共有をしながら、ローカルでは最も消費者の悩みに寄り添うコミュニケーションを軸にプロジェクトを展開するパーパス・ドリブンな進め方で、売上の成長も実現していくのだ。

LUX BRAVE VISION 2030を実現する3つのステップ

LUX BRAVE VISION 2030は、2030年までに「誰もが何にも縛られず、自分らしい美しさを謳歌できる社会」「傷つくことを恐れずに踏み出した一歩が称賛される社会」の実現を目指している。この未来の実現に向け、「知識を身につける」「押しつけをなくす」「アクションを起こす」の3つのフェーズに分けてプロジェクトを進めていく予定だという。

第1フェーズとして、2021年10月にローンチしたLUX Rethink Beautyプロジェクトは、美の固定概念に縛られて、踏みだすことができない現状を変え、自分らしく美しく過ごせるような社会環境を作るために、まず「いろいろな美がある」ことを知ってもらうフェーズに位置づけられている。芸人のバービーやメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂氏、義足モデルの海音氏をアンバサダーに起用した。

LUX Rethink Beautyプロジェクトのアンバサダー

アンバサダーには、苦悩を乗り越えた自身の経験を語ってもらい、これまでの社会規範とされてきた美を超えた美があることを社会に伝えられる人を選んだ。また、ブランドの代弁者として、ブランドのビジョンやブランドとして伝えていきたいメッセージに共感してもらえるかどうかも考慮したという。

LUX Rethink Beauty LIVEの様子
出典:LUXのInstagram公式アカウント

2021年10月11日、「私を縛る美しいから、私だけの美しいへ」をテーマにしたInstagramライブ「LUX Rethink Beauty LIVE」を開催。インスタライブは、直接的に販促商品を売るために活用するブランドが多いが、ユニリーバはパーパスを伝える手段として活用した。「映像に映したのはLUXのロゴのみで、製品は一切登場させなかった。製品を売りたいというよりも、視聴者の考え方が変わるきっかけになり、明日から少しでも楽しく生きていけるようにという思いで企画した」(大西氏)

当日は、想定の倍以上となる1万3,000人を超える視聴者が参加し、「勇気をもらいました」「LUX買います」「前向きに頑張ってみよう」などの共感コメントが次々と書き込まれ、LUXのイメージアップにつながり、プラスの反響につながったことを実感できた。

ここまでの成果が出せたのは、「パーパスを主軸に、担当者が強い思いを持って、ブランドとしてやる意味をしっかりと考え、施策に落とせていること、そしてその強い思いを社内も含めて伝えられているからだ」と林氏は分析している。今後は、ライブ配信などの反響をみながら、少なくとも2~3年かけて、粘り強く、根幹となるメッセージを発信し続け、消費者の反応を拾っていくという。

第2フェーズでは、美の多様性に関する個人のアクションに対して周囲からの同調圧力的な「押しつけ」をなくしていくためのプロジェクトを実施する。また第3フェーズでは、自らアクションを起こしていく人たちの活動を後押しするようなプロジェクトを立ち上げるという。そしてゴールとしている2030年には、美の多様性を受け入れる社会を実現させることを目指している。

消費者からの反響は、毎月ブランドイメージ調査を実施し、消費者からのリアルな声を定量的に調査している。そして、ソーシャルリスニングで定性的データも抽出し、それらを統合的に見て、次のフェーズに進めていくかどうかを判断していくとする。

パーパスを自分ごと化し、社内でもパーパス文化を醸成

マーケティングが短期的な売上をあげる施策だけではなく、中長期的にブランド価値を高めるためにエンパワメント施策も担当できるのは、冒頭にもあげたように、ユニリーバならではの、社員一人ひとりがパーパスを自分ごと化できる企業文化があるからだ。2010年からの「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」で、「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスに始まり、数々の施策を断続的に行うことで社内にパーパス文化を醸成してきた。

直近で社会的にも大きな話題となったのは、2020年3月からの「#性別知ってどうするの」キャンペーンだ。ユニリーバの採用試験における履歴書の性別欄を削除し、顔写真や、性別が類推できるファーストネームの記入も不要にするなど、ジェンダーバイアスを意識的になくそうとする取り組みが、同社で働くスタッフにも大きく影響を与えている。

「入社前から、世の中によいことをしたいという思いはあったが、より具現化して考えられるようになったのはユニリーバに入社してからだ。また、上からなにか言われても鵜呑みにせず、自分の頭で考えフラットに議論できる文化も、パーパスを軸に社員が動ける理由だ」と林氏は語る。

個々の社員がパーパスを軸に、未来を描き、未来を実現するために、自分が担当しているブランドを最大限に活用する。そのことでビジネスの成長と同時に、社会課題も解決に導くことができる。社員が自然にパーパスを語り、パーパスを軸にすべてのビジネス活動を行っていることがユニリーバの強さの根源である。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
画像提供:ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社

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