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韓国トップエンジニアが開発、話題の新AR美容アプリ「Ticker」が正式リリース

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化粧品業界の新たなエンゲージメントツールとして脚光を浴び、またコロナ下において非接触マーケティングの重要な技術に位置づけられるARバーチャルメイク。「YouCam メイク」など関連サービスを展開するPerfect Corp.、またロレアルに買収されたModiFaceなど主要ベンダーがグローバルで市場獲得競争を繰り広げるなか、韓国ではAR技術に注力したビューティ・プラットフォーム「Ticker」が誕生し話題を集めている。注目される理由と韓国国内のARメイク事情に迫る。

9件の特許技術を出願したARビューティ・プラットフォーム

Tickerは、誰もが簡単に美しく写真やビデオを撮影・編集し、バーチャル体験、ビデオ通話、SNS体験、ショッピングまで楽しめることを目的とした総合ビューティ・プラットフォームというコンセプトを掲げる。2020年12月にβ版のユーザー募集がかけられ、2021年3月15日に正式版がリリースされたばかりだ。

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出典:Ticker 公式サイト

β版の段階から、Tickerが韓国で話題となった理由はいくつかあるが、まずは運営会社であるTachyon B&T(以下タキオンB&T、旧称はタキオンホールディングスで2021年3月に社名変更)の存在が大きい。同社は2018年に設立されたビューティテック専門のテクノロジー企業で、もともとはインダストリー4.0(第四次産業革命)時代の先端技術に特化した持株会社としてスタートした。それは、同社がAIやARなどさまざまな特許技術を保有しており、その技術を利活用した多様なプロジェクトのインキュベーションを事業の柱にしてきたことを意味する。

そんなタキオンB&T が、自社サービスとして満を持してリリースしたのがTickerだ。開発は、韓国国内屈指のIT企業であるカカオやLINE GAMES出身のトップエンジニアたちが担っており、Tickerを支えるメイン技術9つは特許出願をすでに終えたという。

特許詳細名については公式サイトに掲載されているが、Tickerに実装される技術としては、ARバーチャルメイクなどビューティ機能を使いながらビデオ通話できる「リアルタイムフェイストラッキングを通じたモバイルオブジェクトウェアリングシステム」、写真や映像をSNSに共有した際に自動的にハッシュタグが登録される「自動ハッシュタグシステム」などがある。出願された特許群は、自撮りの美肌補正やパーツ修正などができる既存のビューティカメラアプリやAR技術の課題を解決し、より高いパフォーマンスを実現するための技術だと説明されている。

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出典:タキオンB&T公式サイト

興味深いのは、タキオンB&Tが中国でARメイクサービスの筆頭であるMeituと技術提携を結んでいる点だ。もともとAR関連で技術開発に力を入れてきたMeituが韓国で技術提携関係を結んだ例は過去になく、タキオンB&Tが初めてとなる。タキオンB&Tは自社開発技術に加え、Meituの技術もTickerに盛り込んでいくとしている。

またタキオンB&T は2021年2月25日、Tickerと連携するブランドを発表。ローラ メルシエ、シャンテカイユ、エスポアらと契約を完了したとしている。

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出典:タキオンB&T公式サイト

ユーザー向けプラットフォームとしてソーシャルを強く意識したTickerの5つの特徴

では実際にTickerにはどのような機能が盛り込まれているのか。

1つは、「Ticker Beauty Camera」だ。これは、最新のフェイストラッキング技術を採用し、ユーザーの顔を美しく撮影することに加え、プラットフォーム内のほかの機能と連携するうえで核となる機能である。

2つめは「AR Cosmetic」。他社のARメイク機能と同じく、さまざまなメイクアップ商品をバーチャルトライオンできる仕組みとなっている。

3つめは「Beauty AI」で、これは各ユーザーにマッチするコスメを提案したり、写真や動画の編集を簡易化する役割を持つ。取得したデータを活用したパーソナライズやサービス利用の効率化を目的とする機能だ。

4つめの「Ticker Video Call」は、最大で8名まで同時に通話が可能なAR映像チャット機能となっている。通話中は画面に映る顔上にバーチャルメイクを施すなど、いつでもTickerのAR機能を利用することができ、また、ゲームやアイコン、スタンプなど、ソーシャル機能も提供される予定だ。

こういった、顔部分にARなどのビューティ機能を利用できるようにしながら複数のユーザーが同時に映像通話できるプラットフォームは、今のところほとんどないとされている。じきにその精度が明らかになるだろうが、Tickerの目玉機能の1つになるとみられる。

5つめは、正式リリース以降に順次実装されるという機能「Beauty Market」で、ARカメラを使ってバーチャルにお試し体験した商品を、そのまま買えるEC機能だ。最後の6つめの機能「Ticker SNS」についての詳細はまだ不明だが、外部SNSへの連携、またSNS内での活動による独自ポイント付与などがうたわれており、ポイントはBeauty Market 内のショッピングに使えるとされている。

ARバーチャルメイクの二強に挑むスタートアップとなるか

台湾企業のPerfect Corp. と、ロレアル傘下であるModiFaceのARバーチャルメイク分野で二強といわれるトップベンダーは、ブランドのEC内やショップの店頭端末など、主にB向けにサービスを開発・ブラッシュアップしており、タキオンB&Tもまた、非接触時代にブランド側に利益を生み出すマーケティングチャネルとしてTickerを仕掛けるという立場を表明している。

その一方で、Tickerはビューティ関連機能を使ったユーザー同士のコミュニケーションを重要視し、その共感や熱量を消費行動に結びつけようという目論見も感じられる。タキオンB&Tはロードマップのなかで、将来的にはTickerで集めたデータを駆使してプライベート・ブランドを立ち上げる構想も掲げており、それらを加味すると、ユーザー向けのサービス展開にも重点をおく意向がみてとれる。

では、Tickerが占有を目指す韓国国内のARバーチャルメイク市場はどのような状況なのだろうか。

NAVERが提供する検索サービス、クーパンを筆頭とするECなど、韓国国内では“国産ITサービス”が強く、他国のように海外サービスが成功するのは難しいという実情がある。ARメイクについても同じことがいえそうだ。Perfect Corp.のエージェントは存在するが、同社が急速に成長しているグローバル各国と比較すると、その勢いは韓国ではあまり感じない。

韓国国内では、化粧品メーカー最大手アモーレパシフィックが、ARメイクに力を注いでいる。近年ではサムスン電子と協業し、同社が展開するAIプラットフォーム「Bixby Vision」上で、バーチャルメイクおよび商品購入が可能なサービスを独自に提供している。また、ARメイク機能を搭載した老舗カメラアプリとしてはNAVERの子会社が手掛ける「SNOW」がある。こちらは世界的にユーザー数も多く日本でも認知度は高い。ただし、個人が自撮りの顔にバーチャルメイクをのせて遊ぶという使い方でエンターテインメント性が強く、ポジション的には各ブランドがプラットフォームあるいはインフラ的に使えるような、特化したARメイクサービスというイメージにはまだ遠いようだ。

こういった状況を俯瞰してみると、国内製・海外製を問わず、ブランドとユーザー双方から揺るがない信頼を得ているARメイクサービス、もしくはベンダーは、未だに韓国では登場していないというのが現状だ。

その意味でTickerは、運営企業のバックボーンや、海外有名企業およびブランドとの関係構築の流れをみても、注目を集めているのは理解できる。ユーザーの美容感度が高く、かつ新興ブランドも多く、ARバーチャルメイクツールベンダーの“覇者不在”の市場でどのようなポジションを築いていくのか、将来的なグローバル展開はあるのか。その技術力で、グローバルでは前述の二強が率いる流れの一角に食い込む存在となりえるのか、今後が注目される。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Ticker 公式サイト

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