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花王のファインファイバー技術が進化、キュレルの”着る角質ケア”として、深刻な乾燥肌のQOL向上へ

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直径1ミクロン以下の繊維を肌に直接吹きつけて極薄膜を形成する花王のファインファイバーテクノロジーが進化を続けている。繊維から保湿成分を染み出させる技術(ブリードアウト)によって、角質層の上から肌を保護するための極薄膜そのものの機能がさらに高まった。乾燥性敏感肌向けブランドの「キュレル」から、”着る角質ケア“製品として2024年4月4日にリリースされ、国内外で拡大しつつある「敏感肌向け市場」におけるブランドシェアをさらに広げていくとする。


ファインファイバーテクノロジーの進化、その2つのポイント

クイックルワイパーやおむつ、マスクなど、花王が持つ不織布の加工技術に端を発するファインファイバーテクノロジー。この技術が目指しているのは、いわば「第二の皮膚」として肌の上の極薄膜をつくり、肌を保護するものだ。今回の進化は、その膜そのものがより高機能となったことと、その膜をつくるためのデバイスの小型化、使いやすさといった2点だ。

1)極細繊維から保湿成分が染み出すブリードアウト技術

花王は、独自に開発したファインファイバーテクノロジーを応用した製品を、2019年に「est」や「SENSAI」で発表している。専用の美容液を肌になじませたあとに、専用機器で極薄ヴェールをふきつけるステップが必要だったが、この技術をさらにシンプルなステップで実現することを目指して、膜のもととなる化粧液の研究をすすめ、肌にふきつけた極細繊維から保湿成分が染み出す「ブリードアウト技術」を開発した。このことにより、専用美容液を事前に使う必要もなくなり、かつ、より柔らかく、肌への密着性も高い膜となった。開発に関わった花王株式会社 研究開発部門 スキンケア研究所 第二研究室 室長 庭野悠氏は、技術の進化をこう説明する。

「ファインファイバー技術のさらなる進化をめざして研究を継続するなかで、ブリードアウト技術の開発を行い、繊維を肌にふきつけるだけで、繊維と繊維の隙間を保湿成分で満たせるようになった。これにより、膜の閉塞性が高まり、専用美容液が不要となっただけでなく、膜の柔軟性、肌への密着性も向上した。つまり、角層機能の低下した肌にむけて、水分の蒸散や摩擦などの外部刺激から肌を守るバリア機能を補う“疑似角層膜”を、より心地よくシンプルなステップで提案できるようになった」(庭野氏)

花王株式会社 研究開発部門 スキンケア研究所 第二研究室
室長 庭野悠氏

プロフィール/2008年花王株式会社入社。ファブリック&ホームケア、ヘアケア、ヘアサロン領域での研究開発を経て、2021年より、スキンケア商品の技術・製剤開発のマネジメントだけでなく、花王独自のエビデンスに立脚したデジタルコミュニケーション技術開発を統括。カスタマージャーニーに寄り添う「モノ」と「コト」が連動された新価値の提案に向けて日々挑戦。(写真は「Fine Fiber Technology 最新研究成果」学会発表報告会」より)

2)使い勝手とケアの継続性にこだわり、デバイスを小型化

また、繊維をふきつけるためのデバイスも進化した。シンプルな操作で毎日のケアとして習慣化させるために、ユーザービリティをどう捉え直すのかという課題設定からスタートしたという。

「たとえば、初号機ではふきつけ推奨時間は約30秒だったが、実際にユーザー調査をしてみると30秒よりも早くふきつけを終わらせる人が大多数だった。すると、ふきつけた膜にムラができたり、十分な厚みが出なかったりと、本来、我々が想定している機能的なポテンシャルが十分に発揮されていない可能性があることもわかった」(庭野氏)

そこで、人間工学観点からも片手で持ちやすく、ふきつけ距離を短く、かつ短時間で密な極薄膜を形成するために、ノズルの形状や電極回路の設計を一から見直したという。かつスペースを取らずに保管できる形状にもこだわった。「社内でパッケージデザインを手掛ける部署と連携し、3Dプリンターで何度も試作と改良を重ねた。そして、製造を手掛けるパナソニック株式会社の協力のもと、的確にふきつける場所を狙うことができ、また、ふきつけ時間を約3分の2に短縮できるデバイスが完成した」(庭野氏) 

この進化したファインファイバーテクノロジーを活用し、“着る角層ケア”として発売されたのが「キュレル 着る角層ケア<カートリッジ>」と「ヴェールクリエイター」だ。

ブリードアウト技術を用い、4週間の連用試験を実施

一方、花王の研究発表によると、角層機能が低下し深刻な乾燥肌に悩みをもつ人に、ブリードアウト技術を搭載した新たな機器を使用した4週間連用試験を行ったところ、期待以上の結果が得られたという。角層水分量が増加し、かつ角層細胞の状態が良好となり、角質細胞間で保湿・バリア機能に重要な役割を果たす脂質であるセラミドの総量が増加していることなども確認している。

また、連用試験に参加した人に、事前に乾燥悩みについてのアンケートを行ったところ、より深刻な乾燥悩みを抱える人は、「乾燥や寒さにより、肌にかゆみやヒリヒリ、粉ふきなどの変化を感じやすい」「紫外線や汗、入浴さえも刺激に感じやすい」「ワセリンや保湿スプレーで一時的な対策をする必要がある」と回答。そして、4週間の連用試験の結果、こうした深刻な乾燥肌を悩みとして抱える人からは、「朝から肌の調子がよく、気分がよかった」「外出したくなるような気持ちは久しぶり。手触りでも見た目でも肌が変わった」「ケアする時間が楽しみになった」といった喜びの声が寄せられ、肌だけではなく気持ちの面でもポジティブな変化がみられたという。

現在、繊維(ファインファイバー)から染み出す成分は保湿成分だが、「美白やシワなどに対して効果のある機能性成分を染み出させることも技術的には可能で、この技術そのものの発展性も大いに期待できる」と庭野氏は語る。

通常発売に加え、始めやすく、続けやすいサブスクモデルを導入

キュレルはセラミドの機能に着目した乾燥性の敏感肌向けスキンケアブランドで、この分野では国内売上のNo.1(*1)とされる。美容感度の高いユーザーのなかでも、とくに乾燥性敏感肌を自覚して肌悩みが深いユーザーの満足度が非常に高かったことから、キュレルブランドからのファインファイバー技術を応用した製品を提案することで、これまで以上に多くの人の肌悩みに応えられるソリューションになると考え、発売を決定したという。
*1 インテージSRI+敏感肌化粧品市場 2015年1月~2023年12月

「キュレル 着る角層ケア<カートリッジ>」と「ヴェールクリエイター」は、花王公式オンラインショップ「My Kao Mall」で発売すると同時に、サブスクリプション型サービス「Rentio」でも取り扱いを開始。月額3,980円のベーシックと、キュレル化粧品が毎月1品届く月額5,980円のプレミアムの2つのコースから選べる。両コースともに、3カ月に1回、「キュレル 着る角層ケア<カートリッジ>」が届く仕組みだ。

サブスクモデル導入の理由について、花王株式会社 化粧品事業部門 グローバルリーディングビジネスグループ Curél グループ ブランドマネジャー 松倉申之介氏は、「始めやすく、続けやすいサービス設計にこだわった」と話す。またLINEを活用して、使い方や肌改善実感を経時でしっかりサポートしていくとする。

花王株式会社 化粧品事業部門 グローバルリーディングビジネスグループCurél グループ
ブランドマネジャー 松倉申之介氏

プロフィール/2003年花王株式会社入社。ファブリック&ホームケア事業、中国家庭品事業などの経験を経て、2020年より、キュレルブランドマネジャーに就任。世界中の乾燥性敏感肌者に100年愛用していただけるお役立ちブランドとなることをめざし、グローバルでのブランド事業を推進。(写真は、「キュレル新事業説明会」より)

今後は、約3万人のメンバーがいるキュレルブランドのコミュニティ「Curel MemberShip」での発信を強化していくと同時に、キュレルユーザー以外の顧客開拓として、ファインファイバーテクノロジーを実際に体験できるさまざまなポップアップイベントの開催を検討している。

世界の乾燥性敏感肌ユーザーのQOL向上に向けてグローバル展開を加速

化粧品と皮膚科学という2つの分野を組み合わせた世界のダーマコスメティックス市場は年々拡大しており、2030年には1,300億ドル(約20兆円)の市場規模が予測される成長著しいカテゴリーだ。松野氏は、「地政学的なリスクや流通の大きな変化などにも柔軟に対応しながら、花王としてもキュレルはグローバルで注力するブランド群G11のファーストランナーというポジショニングで、市場の成長機会をしっかりと捉えていきたい」と話す。

キュレルの現在の海外売上比率は40%程度。すでに認知度があり多くの支持を集めている中国、台湾、香港などの中華圏からグローバル展開を加速し、2030年には2023年比で売上1.3倍、海外比率約50%を目指す計画だ。

Text: 小野梨奈(Lina Ono)
Top image: 著者撮影
画像提供:花王株式会社

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