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RAFIQ、独自アップサイクリング技術で韓国のサステナブルビューティを牽引

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韓国の優秀なスタートアップを発掘するためのテレビ番組「スタートアップサバイバル」で、最優秀賞を受賞したビューティテック企業のRAFIQ(ラフィック)。同社は食品製造過程で出る廃棄物から化粧品原料を生み出し、廃棄物ゼロを実現する独自のアップサイクリング技術によって、サステナブルビューティトレンドの牽引を宣言している。注目が集まる自社開発技術や、企業としての成長の軌跡についてレポートする。

オーディション番組で知名度を上げたサステナブル美容企業

隠れた才能を発掘して未来のスターを育てることをうたい、ここ数年、韓国ではさまざまな芸能オーディション番組が毎日のように放送されている。韓国の大手テレビ局SBSが製作した番組「スタートアップサバイバル」は、いわばそのビジネス版で、「グリーンスタートアップタウン」と称する商業団地を建設中の忠清南道・天安市とSBSが共同で企画したプログラムだ。

K-POPブームや韓国の番組企画トレンドに沿ったプログラムといえるが、その中身はスタートアップによる白熱したピッチだ。企業としての実力や事業性、および投資誘致実績を兼ね備えたスタートアップが数多く出場していることでも知られる。

スタートアップサバイバルの決勝ラウンドでは、審査委員や投資家が出場者に希望投資額をつけ、そのなかで最高額を獲得したスタートアップが最優秀賞に選ばれるという審査スタイルが採用された。TOP10に入賞したスタートアップに対して総額35億ウォン(約3億6,000万円)の投資が表明されたが、新興化粧品ODM/OEM企業のRAFIQが約7億ウォン(約7,200万円)を集めて1位に輝いた。

スタートアップサバイバルでピッチを行うRAFIQのイ・ボンジュ代表
出典:SBS公式サイト

番組内で高く評価されたRAFIQのソリューションは、ビール製造過程で発生する副産物の麦芽粕を余すことなく化粧品原料などに転用するというものだ。RAFIQはこの技術を「ゼロウェイスト・アップサイクリング(Zero-waste upcycling)技術」と呼んでいる。

ゼロウェイスト・アップサイクリングのイメージ図
出典:RAFIQ公式サイト

韓国国内では、ビール製造過程で発生する副産物の量が年間約31万トンに達するとの試算が出ている。そのうちの45%が家畜飼料としてリサイクルされているが、残りは廃棄されている現状だ。

RAFIQはこの廃棄される麦芽粕に含まれた栄養価値に着目。自社技術で酵母を分離、化粧品原料を生成するほか、残さを顆粒にしたのち成型して薬やサプリなどのカプセルとして再利用する方法を実現した。審査員や投資家がとくに評価したポイントは、この技術が広く活用されれば、廃棄プロセスにおける二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減少できる点だった。

しかもこの技術は、アイディア段階ではなく、すでに活用事例や製品化事例がある。たとえば、韓国国内ビール市場で高いシェアを持つ大手OBビールとの協業では、麦芽粕を活用したシャンプーやスクラブ製品を開発している。ビールメーカーにとっては、環境負荷軽減のための予算支出削減ができ、かつ新たな原料を活用した新規事業の推進も可能になるなど、複数のメリットがあるとされる。

業界の常識に対する疑問から生まれた「植物体軟化技術」

RAFIQが設立されたのは2017年。ファウンダーは代表を務めるイ・ボンジュ(Pomjoo Lee)氏だ。イ氏は高麗大学大学院化学工学科を卒業後、OEMグローバル大手の韓国コルマー皮膚科学研究所、サムスングループと英国の大手小売Tescoが共同運営する国内ディスカウントストアブランド大手「Homeplus」の商品基準管理チームに在籍。ソウル大学の専任研究員を経てRAFIQを立ち上げた。

RAFIQ代表のイ・ボンジュ氏
出典:RAFIQ公式サイト

韓国内において18件の特許を取得済みで、スタートアップサバイバルの番組以前から高い注目を集めてきたRAFIQは、サムスン電子と大邱市が共催するC-Labアクセラレーターや、政府が選定する「韓国革新企業1000」にも選出されている。

RAFIQがフォーカスするのは、麦芽粕のアップサイクルだけでなく、韓国国内の効能の高い天然素材や廃棄資源を発掘・商品化する事業だ。消費者と生産者双方の利益を追求するというビジョンを掲げており、自社ではこれを「ラフィクスピリット(RAFIQ Spirit)」と呼んでいる。

RAFIQのスタッフは、新たな化粧品原料となる天然素材や廃棄物を探すため、日々全国各地に足を運んでいる。市場を直接訪問するほか、農業技術実用化財団などの組織から支援を受けて、農家や漁師のもとで素材サンプルを確保し、こうして集めた素材をテストして、新たな原料候補となる素材を選出・加工するという製品開発フローとしている。

このRAFIQの新素材開発の強力な武器となっているのが、自社独自の特許技術である「植物体軟化技術(Cosmetic Containing Softened Natural Plants)」だ。これはゼロウェイスト・アップサイクリング技術のベースにもなっている。

植物体軟化技術で抽出されたエッセンス
出典:Economic Review

植物体軟化技術は、その名のとおり、植物全体を極限まで柔らかくする「ソフテック(SofTech)」のひとつだ。原理としては「高価な酵素や機材を必要とせず、植物体を構成するセルロースネットワークを切断して、素材の軟化を促進するもの」と説明されている。

またRAFIQでは、この植物体軟化技術に生体内変換技術(バイオコンバージョン)である「ソフトファーム技術(SoftFerm、※RAFIQによる呼称)」を組み合わせる方法も確立している。生体内変換技術とは、微生物や酵素の生物学的反応を利用し、既存素材の安全性、吸収率、機能性を向上させたり、新規機能を付与する技術である。

これらの技術を組み合わせることで、たとえば、素材の有効成分を高濃度で残しつつ、そのまま肌に塗れるクリームや液状になるまで軟化させることや、これまで難しかった成分の抽出ができる。

RAFIQが公開している新事業紹介資料では、同社の化粧品原料や技術に関して、「化粧品産業で使用される植物の部位は、根、茎、葉、花など非常に多様だ。(中略)植物体のセルロースは非常に硬く結合しているため、化粧品産業において植物を原料として使用する場合、直接使用せずに抽出などの過程を経て、水に溶解しないセルロースを除去することになる。この過程で、溶媒や熱水で抽出されない大部分の肌有効成分はセルロースと一緒に廃棄されることになる。ただ、セルロースは化粧品原料として使用されている安全性が検証された成分であり、化粧品に添加されてもまったく無害で、構造的特性によって形を維持し、特定成分(機能性成分)の外部因子による酸化防止に有利な点も持っている。 加えて、セルロースを構成するモノマーは、グルコース等の糖類に該当するため、人体の保湿等に有効な性質を持っている」と記述されている。

また、ゼロウェイスト・アップサイクリング技術の場合も、この2つの技術を使って有効成分を抽出したり、廃棄成分をリサイクル用に加工している。

さらに注目すべきは、独自技術によって植物から抽出された成分のデータを、ライブラリーとして保有している点だ。バラ、キンセンカなど花類、ツボクサなど葉類、柿など果実皮類、ヒジキなど藻類のデータがここに含まれており、今後も拡充を続けていくとしている。

イ氏は業界トップ企業や研究職としてキャリアを積むなかで、自然素材に含まれる大部分の有効成分が加工過程で失われてしまうこと、また、抽出の濃度が低いため、効能や特性が充分ではない原料が多く流通していることなどの、“業界の常識”に疑問を抱き続けてきた。そこで、植物軟化技術などを開発するRAFIQの起業を決意したという。

「(多くの)化粧品メーカーやブランドが、原料をパートナー企業や子会社から受け取って商品を製造している。(一方で)RAFIQは原料開発から製造過程をすべて自分たちで進めているため、化粧品づくりの源泉技術をより深く理解していると自負している」(イ代表)

素材と業界の新規開拓が今後の目標

RAFIQは現在、麦芽粕以外にも、食品関連企業との共同研究や協業を通じて、緑茶粕、ゴマ粕、マッコリ粕などを用いたゼロウェイスト・アップサイクリング技術を適用させる方法の開拓にのりだしている。

同時にRAFIQは2022年10月に、「Plenty Plant(プレンティプラント)」という自社化粧品ブランドもローンチ。ソフトファーム技術を活用した「メルティングリーフ・スプラウト真正アンプル(韓国名:멜팅리프 스프라우트 진생 앰플)」の発売を開始した。同商品は、発酵させた高麗人参の葉の新芽が配合されているのをボトルの外側からでも見ることができ、かつ、新芽が溶け込んだ美容液を皮膚にそのまま塗ることができるのが特徴だ。配合成分を視覚で確認できるビジュアルとともに、効能が高いとされる原料を肌にダイレクトに使用するナチュラル感があり、体験としても斬新さが感じられる商品設計としている。

メルティングリーフ・スプラウト真正アンプル
出典:Plenty Plant 公式サイト

このように、RAFIQは廃棄物削減に大きく貢献するなどの事業活動そのものが環境フレンドリーであるのに加え、自然素材や廃棄物から効能が高い成分を抽出する独自技術も持ち合わせている。現時点では、韓国国内には競合や類するようなスタートアップはまだ存在しないとみられ、韓国におけるサステナブルビューティという新たな美容トレンドの担い手として、期待値が高まっている状況だ。

現在はビューティ事業を重点的に展開しているRAFIQだが、今後は食品や健康機能食品分野への進出も狙っているという。イ氏はスタートアップサバイバルの授賞式で次のように話した

「ゼロウェイスト・アップサイクリング技術は、人間の美しさだけでなく、地球の美しさも一緒に考えることができる技術だ。(中略)この技術を活用し化粧品の新しいトレンドをつくっていきたい」

Text:河 鐘基(Jonggi HA)
Top image:RAFIQ公式サイト

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