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AIで生産管理される超ファストブランドSHEINが美容ブランドをローンチ

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低価格と豊富なラインナップで、米国をはじめ、世界各国で人気を伸ばしているグローバルファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」が、日本市場に攻勢をかけている。2022年9月に美容ブランド「SHEGLAM」を投入後まもなく、東京にショールームを開設した。中国が発祥のSHEINのビジネスモデルと戦略を紹介する。

SHEINは南京で設立された中国発のグローバルブランド

Webサイトおよびアプリにおいて、米国やヨーロッパを中心に150以上の国と地域でサービスを展開するグローバルファッションブランドSHEINは、一見するとわからないが、実は中国発のブランドだ。ただし中国国内では展開していないため、多くの中国人はその存在を知らない。

SHEINのCEOである許仰天(Chris Xu)氏は2008年、南京点唯信息技術を設立。中国での報道によると、最初に着目したのはウェディングドレスだった。中国では500元(約9,900円)で買えるウェディングドレスが、海外では500ドル(約6万9,500円)で販売されており、この価格差を利用し、越境ECで中国製ドレスの海外販売をはじめた。

そこからアパレル業界に主軸を移し、許氏は2012年に前身となる「Sheinside」を立ち上げて女性ファッション市場に参入。1年間で公式ECサイトのユーザー登録数は25万人に達したという。その後すぐにメンズや子ども服の取り扱いも始めた。

ロイターの報道によると、2021年には、シンガポールのRoadget Business Pte. Ltd.に本部を移し、許氏もシンガポールの永住権を取得したといわれる。中国では近年、テック企業への締め付けが厳しい。許氏は政府からの圧力を恐れ、国外に拠点を移したという見方も多いが、引き続き生産は中国国内に置かれている。

日本の若い女性からの認知も高まっているSHEIN
出典:SHEIN日本公式サイト

SHEINは店舗を持たないため、徹底してデジタルマーケティングを重視してきた。SHEIN人気の高いインドでのメディア報道によると、スタート当初はアフィリエイトによってコンバージョンを増やしたという。ユーザーが商品をほかの人に勧め、勧められた人がそれを注文すると、コミッションを受け取れる。このアフィリエイトプログラムにより、多くのZ世代がSNSで商品を宣伝するようになった。

SHEINは、InstagramやFacebookなどSNSを積極的に利用しており、Instagramの北米公式アカウント「SHEIN.COM」のフォロワー数は2022年11月時点で2,600万を超える。ほかにもSHEINは市場やターゲットによって20以上のアカウントを使い分けて運営している。また、KOL(キー・オピニオン・リーダー)やKOC(キー・オピニオン・コンシューマー)も活用している。

市場ごとにInstagramを展開する(上は北米公式アカウント、下はブラジル公式アカウント)

超ファストファッションとして業界の常識を覆す多品種小ロット生産

SHEINは2015年から成長が加速し、翌2016年に売上高が10億元(約198億円)に到達。コロナ下で利用者が急増し、2020年の売上高は100億ドル(約1兆4,000億円)近くまで達した。Forbesによると、2022年の売上高は240億ドル(約3兆3,400億円)と見込まれている。また、SHEINの評価額は、1,000億ドル(約13兆9,000億円)に達する。

2021年には米国でのアプリのダウンロード数が3,200万回を突破。iOS版とアンドロイド版ともに、アマゾンを抜いてショッピングアプリで1位を獲得した。iOS版は、54の国と地域で1位だったという。SHEINはいまや、ZARAなど競合のファストファッションブランドの売上高に迫る勢いだ。

シンガポールメディアの報道によると、ZARAは製図から出荷まで3週間を要するが、SHEINは5〜7日程度だ。そのスピードを可能にしているのは、最適化されたサプライチェーンである。

SHEINのサプライチェーンは中国広東省広州市番禺に集中しているが、前掲の中国メディアによると、自社開発したプラットフォームでサプライヤーを管理しており、コアとなる登録企業は2020年初頭時点で300社超。中小規模の登録企業まですべて合わせると2,000社を超えるという。

新しいアイテムは、最初は100点程度しか生産しない。ユーザーの反応を分析したAIが“売れる”と判断した場合のみ量産するシステムをとる。米国メディアによると、SHEINは毎週3,000を超える新商品をリリース。リアルタイムの顧客追跡データをサプライヤーと共有し、設計と生産を管理しているとされる。このため大量廃棄のリスクが低く、一般的なファストファッションブランドに比べると、この点ではサステナブルな体制をとっているといえよう。

さらに米国では、自社商品専用の再販プラットフォーム「SHEIN Exchange」を立ち上げた。再販プラットフォームのリーディングカンパニー Treetとの提携により開発したもので、現在は米国のみだが、2023年にはグローバルに拡大する計画だという。こうしたアパレル業界の批判の種である廃棄問題に取り組み、サステナブルなビジネスをうたう姿勢も、メインターゲットのZ世代からの支持を受ける一因となっている。

米国で立ち上げられた再販プラットフォーム「SHEIN Exchange」
出典:SHEIN Exchange公式サイト

通常、小ロットの生産はサプライヤーにとっては利益が生まれにくくメリットに欠ける。だが、中国メディアによるとSHEINはサプライヤーをS、A〜Dの5ランクに分け、SとAの企業には半月ごとに代金を支払い、そのほかのランクについても、月締めで支払っている。中国の商習慣ではサプライヤーへの支払いが3カ月後になることも珍しくないのを考えると、この支払いの早さがサプライヤーを惹きつける要因になっている。

ただし、昨今では広東省での製造コストが数年前に比べ上がってきている。SHEINのビジネスモデルは薄利多売で成り立っているため、中国国内でもよりコストの低い内陸部の江西省にサプライチェーンを移転させるのではとの憶測も呼んでいるという。

ファッションと同じくAI活用のサプライチェーンで美容カテゴリーにも参入

競合をしのぐ規模にまで成長したSHEINは2020年、美容ブランド「SHEGLAM」を立ち上げた。10種類のアイテムで始められたSHEGLAMは、いまでは600アイテムを超え、アイメイク、リップ、チーク、ベースメイクなど日常使いのレギュラーコスメから、ブラシやメイク道具まで商品バリエーションを豊富に取り揃える。

アパレル同様、極小ロットから販売をスタートし、売れ行きスピードによって追加発注量をAIが算出するプラットフォームの活用に加えて、簡易包装とすることで、価格設定を低く保ちつつ、余剰在庫のリスクと環境への負荷の低減を両立させているとする。あわせて、サプライヤーやメーカーに対しても、中間マージンやマーケティングコストをカットすることで、低い価格帯での提供につなげている。

また、SHEGLAM製品の改善と企画に顧客の声を反映させるため、オンラインリサーチシステムで毎週4,000〜5,000通のユーザーアンケートを収集している。

日本でも販売開始となった美容ブランド「SHEGLAM」
出典:SHEGLAM公式サイト

Instagramの公式アカウント「SHEGLAM OFFICIAL」のフォロワー数は2022年11月現在92万を超え、徐々にユーザーを増やしているようだ。インフルエンサーも積極的に活用し、米国の美容系ユーチューバー、James Charles氏が公開したSHEGLAMの商品を使用したメイク動画は、再生回数が700万回近くまで伸びた。

SHEGLAMは2022年9月には日本にも上陸。インターネット上で話題となり、インフルエンサー「ハウスダスト」のYouTubeチャンネルでのレビュー動画は、再生回数が2万8,000回を超える。

同年11月に東京・原宿にオープンしたショールーム「SHEIN TOKYO」でもSHEGLAMの商品が扱われている。アパレル製品同様、直接購入することはできないが、展示されている商品に付いているQRコードを読み込むと公式サイトにとび、オンラインで購入ができる。

SHEIN TOKYO
出典:PRtimes

目指すはマーケットプレイス化との見方も

SHEINでは2021年から自社開発商品に加えて、他ブランドの取り扱いを開始した。また、ブラジルでは出店者とともに、サプライヤーも現地で募集しているという。SHEINが目指すのは、自社ブランドをグローバルで拡大させつつ、その人気を基盤にアマゾンのようなマーケットプレイスプラットフォームを構築することとも考えられる。

SHEINは米国での上場を目指しているとされているが、同ブランドは新疆ウイグル自治区で生産される綿花を使用している可能性が指摘され、サプライヤーの長時間労働なども含め、グローバルマーケットでは倫理的な問題を疑問視する報道も多い。美容ブランドの強化やマーケットプレイス化は、アパレルへの依存度を減らそうという意図もありそうだ。

SHEINが抱えるリスクはほかにもあり、そのひとつが競合の出現だ。CiderなどSHEINの後を追うスタートアップのほか、米国で上場する中国EC大手「Pinduoduo(拼多多)」が、2022年9月に越境EC「Temu」を米国で立ち上げた。同社はSHEINを意識しているとみられ、デザイン性と低価格を売りにしている。しかもアパレルのほか、家電やインテリアなど幅広い商品を取り扱う。SHEINの成功をみて強力なライバルが今後も登場すれば、これまでのような成長を続けることは難しくなりそうだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Roadget Business Pte. Ltd.プレスリリース

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