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韓国の外資ブランド進出を裏で支えるCTKコスメティックス、OEMプラットフォームも

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韓国証券市場KOSDAQに上場しているCTKコスメティックスは、化粧品市場激戦の韓国で、華やかなグローバルブランドを裏方で支える実力企業だ。関わる領域は広く、企画から納品まですべてのプロセスにおいてノウハウを有し、市場にマッチする商品開発からリリースまでを支援する。そのノウハウをもとにコスメ開発支援、そして韓国の各ECマーケットプレイスを統合管理できるプラットフォームも築き、化粧品ビジネスのDXを促進。同社のユニークなビジネスモデルと市場開拓手法を紹介する。

元容器開発メーカーが提供する「フルサービス」とは

CTKコスメティックスは、もともと2001年に化粧品容器メーカーとして出発した企業だ。創業者で、現在代表(共同代表)を務めるのはチョン・インヨン(Jeong Inyong)氏である。同社は、2009年からグローバル化粧品メーカーを対象に、「フルサービス(Full-Service)」を提供することで大きな成長を遂げてきた。

CTKコスメティックスがとなえるフルサービスとは、クライアント企業の商品企画、開発、生産、マーケティング、品質管理、納品までのプロセスを全面的にサポートするB2Bワンストップソリューションだ。化粧品業界に特化した「ターン・キー(一括請負)方式)」のサービスと言い換えることもできる。2009年当時、化粧品業界に特化した同様のビジネスモデルは、韓国のみならず世界にも類をみなかった。

CTKコスメティックスは、フルサービスのリリース後、数年でクライアントを着実に拡大。ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー、シャネルなど、欧米のグローバルコスメブランドを中心に100社以上と取引し、2017年にはKOSDAQに上場を果たした。上場当時、ほぼすべての売上が米国や欧州のブランドから発生していたという、韓国コスメ関連企業として稀有な存在である。

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出典:CTKコスメティックス 公式サイト

また、CTKコスメティックスは、自社工場を一切保有していない。クライアントとOEM業者など国内外の業界プレイヤー、そして市場を繋ぐプラットフォーマーとしての立ち位置を築くことで成長してきた。CTKコスメティックスは、なぜ業界の裏方にまわるフルサービスに商機をみいだしたのか。そこには、チョン・インヨン代表が経験した手痛い失敗と教訓があるという。

チョン代表は2001年の起業後しばらくして、国内の有名メイクアップアーティストと組み「VIDIVICI」というブランドをローンチした。VIDIVICIは新興ブラントとしては異例の注目を集め、韓国国内の主要百貨店に入店。香港にも進出を果たした。しかし、経営は決して順調とは言い難かった。というのも、当時、新興ブランドが着実な成長を遂げられるエコシステムが、韓国国内にまだ存在しなかったからだ。

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出典:VIDIVICI公式サイト

つまり、チョン氏らがVIDIVICIをスタートした2000年代前半は、OEM企業、容器メーカー、パッケージ会社などと個別に連絡を取りながら製品開発・生産を行わなければならず、ブランド側は人的リソースを多分に割く必要があった。またそれら各社の最小注文量も異なり、在庫管理も困難を極めた。チョン氏は「OEM/ODM企業に関する情報も不足しており、内容物と容器を想定通りに掛け合わせて商品化することに限界があった」と当時を回想している。

チョン氏は志半ばでVIDIVICIの運営から離脱。ブランドビジネスへの挑戦を中断する。しかし、この苦い経験が新たな挑戦、そしてアイデアの種となった。自分と同じような困難にぶつかったブランドにとって、製品企画、開発、生産までをワンストップで提供するサービスの需要がきっと高まるはずだと考えたのだ。そこで新たに考案・リリースしたのが「フルサービス」だった。

CTKコスメティックスが自社で工場を持たない理由も、過去の教訓から学んだことだ。工場を保有しているOEMメーカーは当然、自社工場が得意とする商品の生産に重点を置くことになる。だが、CTKコスメティックスはブランドが望む容器と内容物などを最適にデザインして、ふさわしいOEMメーカーとマッチングすることをサービスの利点として掲げている。そのため、クライアントのリクエストや要望にあった商品を開発するための多様な選択肢を持つ、複数の業者とつながるプラットフォーマーという立ち位置を貫いている。

チョン代表らがしかけたフルサービス事業は、現在でこそ確固たる足場を築いているが、実は最初の発注が決まるまで約3年の時間がかかったという。容器専門メーカーとして実績を持つCTKコスメティックスだが、欧米のグローバル企業から、トータルなサービスとして信頼を勝ち取ることは簡単ではなかったのだ。チョン氏は韓国メディアに次のように述懐している

「フルサービスのローンチ後、米国ニューヨークに拠点を構える、ある有名化粧品ブランドの本社を訪問した。役員たちに私たちのビジネスモデルを熱心に説明したが、返ってきたのは『なぜそれを、あなたがたがやるのか』という冷淡な反応だった」(『朝鮮日報』でのインタビューにて)

韓国の無名の容器開発企業が急にやってきて、グローバルブランド相手に「あなたのブランドの新製品を企画段階から納品までサポートする」と提案したところで、OKを出すブランド関係者はほぼ皆無だったことは想像に難くない。なかには、時間の無駄だとばかりに露骨に嫌な顔をする重役もいたそうだ

が、チョン氏をはじめとするCTKのスタッフは企画案を片手にクライアントを訪ねて回ることをやめなかった。そしてある日、突然依頼が殺到し始めたという。外資大手がCTKコスメティックスの意図と発想を理解するのに、競争も激しくかつ独特のECプラットフォームが多い韓国でのビジネスに困難を感じ、その価値に目を向ける時間が必要だったようだ。

韓国での異業種コラボや、独自ブランドの展開も推進

CTKコスメティックスは近年、海外グローバルブランドのみならず、国内異業種とのコラボレーションも開始している。2021年5月には、国内最大のスクリーンゴルフ専門企業・ゴルフゾンと提携。ゴルファーのためのビューティブランド「OKAYY」のローンチをサポートすると発表している。ほかのクライアント同様、ブランドコンセプトの企画、デザイン、製品開発、マーケティングまで全プロセスをサポートする。

また、子会社を通じた独自ブランドの展開にも拍車をかける。同年4月には、子会社COMPLETONE KOREAのクリーン&ヴィーガンブランド「SERUMKIND」が、米ホームショッピング大手QVCのECに入店を果たした。COMPLETONE KOREAは、SERUMKINDのほかに、「SUREBASE」というクリーン&ヴィーガンブランドも運営している。

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出典:SERUMKIND公式サイト

自社ビジネスもDXへ、化粧品開発やECのソリューションプラットフォームを次々とリリース

ブランドサポート、自社ブランド運営に加え、CTKコスメティックスが事業ポートフォリオとして注力するのが、コスメ商品開発およびEC販売におけるデジタライゼーションだ。

2021年3月には、「CTK Clip」というコスメ開発プラットフォームをローンチしている。フルサービスをオンライン上で提供するためのデジタルプラットフォームである。CTK Clipでは、CTKコスメティクスが開発・提供している5,000以上のパッケージや原料を検索できる。ユーザーはカテゴリーやテーマ、トレンドごとに商品を検索することができ、また成分やパッケージを推薦してくれるキュレーション機能も装備している。登録は無料で、経験がないクライアントでも数クリックで化粧品商材の開発に着手することができる。

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出典:CTK Clip公式サイト

CTKコスメティックスは同じタイミングの2021年3月に米国子会社であるE-vision Global Networksが開発した「PopinBorder」というECソリューションプラットフォームを本格的に稼働開始した。これは、グローバルメーカーやブランドと韓国国内のECマーケットプレイスをつなぐ新たな仕組みだ。

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出典:PopinBorder公式サイト

韓国では独特のモール型のECサイトが複数ある。化粧品を扱うモールだけでも、クーパンをはじめ、米eBay傘下の「Gマーケット」、タイムセールを定期的に開催する「11番街」や「TMON」などが人口5,000万人強の韓国でひしめくが、現地で小売におけるEC化率は12%を超え、世界でも3本の指に入る。

こういった複数のECモールへの参入に、PopinBorderを利用することで、ブランド側のシステムと各モールシステムを統合管理できる。ブランド側のシステムからそれぞれのECモールへ受注・配送、在庫管理、オンラインマーケティング、CSなどを統合管理することが可能となる。

直近では、自然系サプリメントやミネラルコスメなど、自然派志向の商品を展開する世界最大のウエルネス製品小売企業iHerbが、PopinBorderを導入。eBayコリアのGマーケット、G9などで1万8,000以上の健康機能食品の直接販売を開始した。

環境に配慮した容器開発、社内では手厚い福利厚生でも知られる

一方で、CTKコスメティックスはクリーンビューティをサポートすることによる社会貢献という文脈で、環境に配慮した容器およびパッケージの開発にも余念がない。2021年4月には、金属を使わない「スプリングレスポンプ」、ボンドを使わない「エコペット」、内容物を最後まで利用可能にする「ボトムズアップスティック」などを相次いで発表している。

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CTKコスメティックスの
サステナブルパッケージ
出典:CTKプレスリリースより

あわせて、内部的にはスタッフの働きやすさやエンゲージメントを高める、福利厚生施策の充実も推進している。結婚時には7日間の休日、結婚祝金、新婚旅行支援費が、また出産時には出産支援金および出産祝いが支給される。不妊治療が必要なスタッフには、年間3日の治療休暇が支給される。

そのほかにも、子どもの年齢に応じた養育費、教育費、大学の奨学金支援などさまざまな施策を実施しており、従業員の結婚、妊娠、出産、子育てと一連のライフステージの過程で積極的なサポートをしているのだ。今年からは、妊娠したスタッフにオーガニックコットン素材の産着など「新生児キット」も贈呈している。さらに、未婚もしくは子どものいないスタッフ向けには、自己啓発サポートや毎年5日のリフレッシュ休暇が提供されている。

近年、韓国ではCTKコスメティックスのように、ブランドの裏方としてコスメ開発をトータルサポートする企業が急増している(関連記事:『韓国でコスメ開発プラットフォームを提供する話題の5社。P2Cは本格化するか』)。Beauty Makersや、woohwamanがその一例だ。

いち早く市場の需要を見出し、海外大手ブランドとの信頼関係を築いてきたCTKコスメティックスは、ノウハウの蓄積という意味では同分野のトップランナーといえる。近年登場の開発プラットフォーマーは、インフルエンサーや新興ブランドの増加という韓国国内市場の需要に対応したものだが、当初からグローバルブランドとの関係づくりを念頭に置いてきたCTKコスメティックスが、CTK Clipをローンチし、より広い潜在クライアント層にアプローチを始めた事実は既存のプラットフォーマーにとっては脅威となろう。

ビジネスモデル、環境問題に配慮した開発、そして社内の福祉制度にいたるまで、最先端トレンドを先取りしているCTKコスメティックスの動向は、韓国国内、またグローバル市場の変化を知るうえでも貴重な情報となりそうだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Africa Studio via shutterstock

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