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韓国ヴィーガンスキンケア「owndo」は地域創生を哲学に、グローバル市場開拓へ

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前回の記事では、韓国のヴィーガンコスメブランドの詳細を取り上げたが、なかでも異彩を放つのが「地方創生」をテーマに商品を展開するヴィーガンコスメブランド「owndo(オンド)」だ。その運営企業BLOCALLYのキム・ジヨン代表に話を聞いた。

広告代理店出身の女性起業家が立ち上げたヴィーガンブランド「owndo」

欧米の美容業界を中心にヴィーガンコスメがトレンドとなるなか、韓国でも近年、新たなブランドが続々と登場している。なかでもowndoは、地域ブランディング企業BLOCALLYが 2020年1月にローンチした、ユニークなポジショニングをとるヴィーガンコスメブランドだ。

代表を務めるキム・ジヨン氏は起業前はLGアドという韓国の大手広告代理店に勤めていた経歴をもつ。在職中には、系列企業であるLG生活健康など大手化粧品メーカーの広告業務のほか、企業・自治体のCSV(共通価値の創造)キャンペーン、地域ブランディングキャンペーンにも携わっていた。ソウル市とともに手がけた「心の薬房」という自殺防止キャンペーンでは国際的な広告賞も受賞している。

「LGアドを退社してすぐに、英ロンドンや京都など、地域ブランディングがうまくいっているエリアをみてまわり、帰国後にブランド+ローカリーという言葉を掛け合わせたBLOCALLYという、地域の価値を掘り起こすことでブランドを立ち上げる会社を設立した。そして、このビジネスを具現化するプロジェクトとしてローンチしたのがowndoという自社ブランドだ。その名称には、肌に合う温度、地域の温度、季節の温度など、重層的な意味が込められている」(キム氏)

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BLOCALLY 代表 キム・ジヨン氏

キム氏らがowndoの製品開発にあたり最初に目をつけたのは、全羅南道の田舎町のスマン里、そして同地域に自生する「九節草」という野草だった。スマン里の世帯数はわずか25。最年少である里長も60代と、韓国では “消滅都市”と呼ばれる過疎化が著しいエリアだ。里では昔から九節草の花を使用した生薬づくりが盛んだったが、里から人が離れていくにつれ関連産業も衰退。休耕地が増え、土地の整備もままならず、里の風物詩となっていた九節草が咲き誇る風景も徐々にすたれ始めていた。

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九節草の群生
出典:韓国・井邑市公式サイト

owndoでは、皮膚の温度を一時的に下げる抗酸化作用など、九節草に含まれる効能に加え、スマン里の歴史や現在を改めて精査。里の伝統や、地域を再生するプラン、また名産品である九節草を現代的にリブランディングするストーリーを組み立て、九節草を配合した商品ラインの開発を決める。

「スマン里のストーリーを持って、国内のOEM企業にプレゼンテーションをして回った。最終的に大手の一角であるコスメカコリアとの協業が決まり、一緒にブランドをつくっていくことになった。九節草はそのままでは効能が薄いのだが、成分研究所とも共同研究し発酵抽出物をつくることにも成功した」(キム氏)

現在、九節草を使った商品ラインは、「クレンジングバー」「エッセンス」「アンプルクリーム」の3種類だ。クレンジング製品を固形にした理由は、環境に配慮して、パッケージなどの廃棄物と水の使用量を極力抑えるためである。エッセンスには、九節草の抽出物を配合可能限度に限りなく近い88%配合した。一方、保湿持続力72時間のアンプルクリームは、ユーザー満足度96%(成分検索アプリ・ファヘ調べ)で、一番人気の商品となっている。

「エッセンスなどに九節草の抽出物を高濃度で配合したのは、もちろん高い成分効果を担保するとの理由もあるが、なるべく多くの九節草を使うことがスマン里の利益につながるからだ。また、自然の力を活かすという観点から、防腐剤や香料は入れていない」(キム氏)

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左から「エッセンス」
「アンプルクリーム」「クレンジングバー」

キム氏は、広告業界出身ながら、owndoを立ち上げる際に心に決めたことがある。それは「マーケティングや広告宣伝に過度なコストは割かない」「地域に還元するために原料生産に費用をかける」というものだ。そのため、芸能人を使った広告写真などはほとんど制作しない。そのかわり、ヴィーガンを厳格に遵守する女優キム・ヒョジンなどのセレブや、環境保全のためのアクションをしている活動家らをモデルに起用して宣材撮影を行うなど、ブランドコンセプトの強化を図っている。消費者とのコミュニケーションチャネルは、Instagram、また外部メディアなどが中心となっている。

「目立つ広告を打つのではなく、ブランドストーリーを丁寧に発信したい。たとえばSK-Ⅱは、粕を扱う酒造所の杜氏の手肌の美しさからインスピレーションを受けたというが、九節草の場合も、ハルモニ(おばあちゃん)たちが生薬を手づくりするなかで、手指がなめらかになったり、かゆみがなくなったという逸話がある。地域や伝統に根差したストーリーで、消費者の共感を呼ぶコミュニケーションをしていくことを目指す」(キム氏)

課題を残しつつも可能性を秘めるローカル×ヴィーガンコスメ

owndoの九節草シリーズは、社会・環境問題に高い意識を持つと同時に、化粧品に配合されている成分の安全性や機能性に関心がある層を中心に売上を伸ばしているとキム氏は付け加える。製造の背景や実際的な効果を評価して再購入するユーザーの割合は、およそ40%にのぼるという。

「韓国では、アプリなどのサービスを通じて、化粧品成分に対するナレッジが広くシェアされており、成分表示ラベルから製品の良し悪しをすぐに判定できる消費者層も増えてきている。私たちはまず、owndoの成分表をみただけで良い商品だと理解できる層に対してのコミュニケーションを強化し、アプローチしていくことから始めている」(キム氏)

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スマン里の風景

地域とそこで育まれる天然由来成分を大切にしつつ、ブランドの価値を着実に高めようとしているowndoだが、一方で課題も少なくないという。とくに難しいのは、特殊な生産プロセスと収益にどのように折り合いをつけるかという側面だ。

「一般的な化粧品はサンプルを提示して『このようなものをつくって欲しい』と依頼すれば、OEMメーカーがある程度解決してくれる。しかし、owndoの商品の場合はそうはいかない。実際、九節草を仕入れるのにはそれほど多くの費用はかからない。ただ、そこから抽出物を取り出し、メーカーに原料を運ぶという過程でのコスト負担は大きい」(キム氏)

広告やマーケティングに過剰な費用をかけず、原料に費用をかけるという前述の代表の決心は、こうした生産プロセスの画一化が難しいという課題を解決する方策のひとつともなる。また、「“意識の高い”消費者層をターゲットにしているため、国内だけでは市場のパイが限られる」というのもキム氏が感じている課題感だ。

owndoはローンチからしばらくの間は、一般的な小売業者には流通させず、マーケットカリー29センチ10×10など、オンラインセレクトショップ(キュレーションショップ)を中心に流通販路を拡げてきた。これは「ブランドストーリーを理解してくれる人たちに特化してコミュニケーションを図るため」だった。ただ、どうしても市場は限られるため、owndoは、2021年からは海外進出を積極的に展開し、グローバル規模で消費者とのコミュニケーションを築く戦略を掲げている。また国内においては、オリーブヤングなど大手H&Bストアと提携し新たな流通チャネルの開拓も進めている。

「すでに欧州に関しては輸出の契約が完了しており、日本語版公式サイトも用意していく。今後は欧米、日本、シンガポールなど、成分を重視する姿勢があり、我々のブランド哲学に共感してくれる国々に向けて販路を拡大していきたいと考えている。中国に関しては、すでに多様なブランドがあるうえ、当初は、ヴィーガンコスメや我々のブランドとはあまり馴染まない市場だと思っていた。ただリサーチしたところ、中国・青島市など経済特区は、消費者意識や購買額が平均より高いという情報もある。国や地域というよりも、より細分化したエリアに絞って販路拡大の方法を積極的に考えていくつもりだ」(キム氏)

第二弾は廃棄される農産物を活用したブランド「UGLYCHIC」

BLOCALLYは、韓国らしさ×地方色をテーマに、地域の植物を原料としたowndoのシリーズを拡充するとともに、次にローンチしたブランド「UGLYCHIC」の展開にも注力していく計画だ。

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出典:UGLYCHIC公式サイト

UGLYCHICは、商品としては形が悪かったり、キズや虫食いによって廃棄されてしまう“アグリー(醜い)”な有機農作物からの成分を配合した商品ラインナップのオーガニックブランドだ。具体的には「ブロッコリーを用いたUVクリーム」「チョウセンゴミシのシャンプー」「リンゴが原料のデリケートゾーン・フェミニンウォッシュ」などを商品化している。また、「桃を使ったデリケートゾーン用の潤滑ローション」もある。こちらは、体内に入っても悪影響がない、女性のために開発されたオーガニック・ラブローションだ。

UGLYCHIC は、PETA、ドイツ・DermatestEWGなどのヴィーガン認証や評価も取得している。キム氏はこれからも、韓国国内に限らず地域独自のストーリーを発掘して共有するブランドづくりに邁進していくという。

「韓国、そして世界には、すでにヴィーガンやオーガニックブランドが数多く存在する。もちろん私たちも成分の安全性、環境に対する優しさを掲げるが、地方・地域が持つ魅力こそが最も重要視している価値だ。歴史や文化を育んできた村や町は韓国だけでなく、日本や世界のいたるところにあり、外部の人間からすると神秘的なものにさえ映りうる。そうした地域独自のストーリーを共有できるブランドになれればと考えている。パンデミックが世界を覆うなか、自分たちの身近にある“ローカル”を再発見する機会が訪れていると思う」(キム氏)

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image & photo : owndo

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