「メタバースビッグイベント」「ロレアル、グリーンサイエンス投資」がキーワード【海外トレンド 2023年5月-6月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、初開催のメタバースビューティウィークなど、バーチャルワールドの大型イベントへの参加や施策を行うビューティブランドの最新動向にあわせて、ロレアルが推進する環境への負荷を減らす製品開発哲学「グリーンサイエンス」の観点に立った投資についてレポートする。
初のメタバースビューティウィーク開催。NYXやアーバンディケイはロブロックス活用
★注目ポイント
2023年6月は、ビューティ関連の大型メタバースイベントが相次いだ。業界初の「Metaverse Beauty Week(メタバースビューティウィーク)」が開催されたほか、プライド月間にちなんだ恒例の「Metaverse Pride 2023」が予定されている。その一方で、ビューティブランドが、メタバースプラットフォームのロブロックスを舞台に、仮想世界の美容消費者に向けてゲーミファイド体験でアプローチする試みや、バーチャルストアを立ち上げる動きも目立ってきている。これらは、2029年には1兆5,270億ドル(約216兆円)に成長するとの予測もあるグローバルでのメタバース市場を見据え、本格的な足がかりをつかもうとする意思の表れといえそうだ。
●Metaverse Beauty Week
メタバースビューティウィークは、2023年6月12日から17日まで、LUSHやニュートロジーナ、Lottie Londonなどのビューティブランドが参加し、ディセントラランド、ロブロックス、スペーシャルの3つのプラットフォームにまたがって開催された。この企画は、2022年3月にディセントラランドによって立ち上げられた「メタバースファッションウィーク」にインスパイアされたものだ。初年度のメタバースファッションウィークは5日間で10万8,000人の参加者が集い、アバターウェアラブルなどの製品で7万7,000ドル(約1,000万円)相当の売上を獲得して大成功とみなされたが、2年目の2023年度は参加者が大幅に減少し、実施日が3日間だったとはいえ2万6,000人にとどまった。
その理由としては、イベント内での体験が不足しており、実生活では経験できないような驚きや感動に出会えるというより、現実社会のショップのレプリカ(複製)に重点を起きすぎていたとの指摘がある。今回のメタバースビューティウィークではこの反省を踏まえ、ユーザーエクスペリエンスに焦点を当て、フィジカルなイベントで起きがちな、アクセスしにくい場所や長い行列、営業時間などの制限をなくすとともに、ヘアスタイルや美容機能を含むアバター用のウェアラブルを提供し、サンプリングやギフトなど、リアルでも人気の施策の提供を心がけたという。
その結果、TikTokでバイラルした製品を賞品として現実世界で引き換えることができるトークンを集めるゲームや、ベストセラー製品から発想したウェアラブルをプレゼントする自動販売機などが設けられ、LUSHによる「メタバース史上最大のバスボム」の発表に加え、毎日新しいサプライズ体験が提供された。
●Metaverse Pride
2023年6月27日〜29日、ディセントラランドは恒例の「バーチャルプライド」パレードを3年連続で開催する予定だ。バーチャルアートインスタレーションやライブ音楽パフォーマンスから、インタラクティブなゲームや魅力的なアクティビティまで、さまざまな没入型体験を提供するとしている。
参加者は、独自のアバターを作成し、多彩なデジタルウェアラブルでカスタマイズすることができるのに加え、LGBTQIA +デジタルアーティストによって設計された独創的なウェアラブルの展示やコンテストの開催もする。同時に、グローバルコミュニティのリーダーによるワークショップやパネルディスカッションを通じた学びの場も設けられる。
●Color Dare by EssenceとGame Out Loud by NYX
6月のプライド月間がはじまると、ビューティブランドがロブロックス内でプライドをテーマにしたゲームを立ち上げる事例が現れた。Essence Cosmetics(エッセンス)もそのひとつだ。
エッセンスが開設したゲーム「Color Dare」は、アイデンティティと個性をテーマにしており、ゲーム内のノンプレイヤーキャラクターに親切にすることで、「ラッシュプリンセス」キャラクターが灰色の世界をカラフルな色に変えていくのを手伝うストーリーだ。プライド月間中に4回ある「コミュニティデイ」に、参加者アバターが制限時間内にゲームを完了すると、2つのLGBTQIA +慈善団体への寄付が獲得できる。
一方、NYX Professional Makeup(ニックス)は、オンラインゲームの世界で反LGBTQIA +と彼らへのいじめが起きていることへの意識を高めるとともに、メタバースと実生活の両方で安全な空間を作る目的のプライドキャンペーン「Game Out Loud」に、ロブロックスを組み込んだ。ロブロックス内のiHeartlandにある「House of NYX Professional Makeup」を訪れたユーザーアバターは、いじめと戦う仲間になる誓約をたてることで、アバターが身につけられる同盟バッジを受け取れる。
●Urban Decay Eye-Con
2023年5月、Urban Decay(アーバンディケイ)はUlta beauty(ウルタビューティ)と組んで、“ロブロックス初のメタバースメイクアップローンチパーティ”と銘打った「Urban Decay Eye-Con」を、ロブロックス内にウルタビューティが持つワールド「Ultaverse」に制作した特設ポップアップ会場で開催した。
アーバンディケイは、18のバーチャルメイクアップルックをリリース。これらは、アーバンディケイにとって初めての「実生活で購入できる製品を使用した限定版3Dアバターウェアラブル」で、その半数は著名な美容系インフルエンサーによって作成され、ブランドのベストセラーである「24/7」ラインをベースにしている。
ランウェイではアバターがアーバンディケイのルックを誇示し、参加者は自撮りステーションや、大画面でのメイクアップチュートリアル、ビューティ知識の豊富さを問うクイズを楽しみ、Eye-Conのホストを務めたメガインフルエンサーとのパーティを満喫した。
●エリザベス アーデンとラネージュのバーチャルショップ
同じく2023年5月には、Charlotte Tilbury(シャーロット・ティルブリー)やアルマーニ ビューティなども出店しているバーチャルストアプラットフォームObsessに、エリザベス アーデンとラネージュが相次いで常設のバーチャルストアをオープンした。
エリザベス アーデンのバーチャルストアは、ブランドの歴史の象徴でもある米ニューヨーク5番街のサロンをベースにした仮想空間で、同店のアイコニックな赤い扉をクリックすることで入場する。
ユーザーはテーマ別のルームを自由にみてまわり、商品情報の表示や動画の視聴ができ、購入まで可能だ。また、カプセル入り美容液「アドバンス ライト セラミド カプセル セラム」のPRとして、5つの異なるセラミド製品を見つけてクリックしたユーザーは賞品がもらえるゲーミフィケーション企画も設けている。加えて、画像生成AIの「DALL-E 2」を活用して、同ブランドの創業者などのアーカイブ画像と製品画像を編集・生成した、ブランドの変遷を語るパネルの展示コーナーもある。
ラネージュも同ブランド初の没入型バーチャルストアを立ち上げた。このスペースには製品の紹介やショップ機能のほか、動画コンテンツやスキンケアクイズ、賞品が当たる宝探しゲームなどの体験が用意されている。ラネージュの親会社であるアモーレパシフィック USのCMOであるジュリアン・ブジタット(Julien Bouzitat)氏は、「バーチャルストアは、買い物客がラネージュ独自の科学的専門知識に触れ、面白いデジタルコンテンツに飛び込むことができる強力な顧客エンゲージメントツールであり、同時に人々が肌のニーズに適した製品を選択するのに役立つ」と話した。
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