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Bentenがテクノロジーで目指す先は化粧品業界の民主化とオープンイノベーション

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化粧品・美容業界を横断したビジネスマッチングプラットフォーム。企業間の壁なく聞きたいことを自由に情報交換でき、大手もスタートアップも一緒にものづくりをする仲間や、つくりたい化粧品の原料や最適なOEM企業を見つけられる。そんな世界を目指して2019年11月にβ版がローンチされた「Benten」。その現在地と、これから向かう先の姿を考察する。

「誰に、どこに聞いたらいいかわからない」課題を解決するBenten

化粧品業界のビジネスマッチングプラットフォーム、Bentenを運営する株式会社Cogane studio(コガネスタジオ)代表取締役 植村元氏は、オーガニック、ナチュラルコスメ専門の化粧品メーカー出身で、スキンケアやメイク、ヘアケアなどのR&Dから商品開発・製造のバックグランドをもつ。植村氏がBentenの着想を得たのは、美容業界、あるいは化粧品ブランドとしての参入を考えているさまざまなビジネスパーソンの悩みを多く聞いてきたからだ。

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出典:Benten

「たとえば化粧品をつくりたいと思ったときに何をすればよいか?どこに頼めばよいか? といったことから、いざ始めても薬機法など法律の壁にあたり、何が正解かわからないという悩みを数多く聞いてきた。また、既存の化粧品メーカーも大小さまざまな悩みを抱えていることを、開発の現場でも目の当たりにしてきたが、この業界は保守的な傾向もあり、悩みやノウハウをあまり社外に出さないということも感じていた」(植村氏)

こういった悩みを解決できないかと立ち上げたのがBentenだ。ここには化粧品業界のさまざまな企業、部門、職種のビジネスパーソンが登録している。機能としては化粧品をつくりたい側とOEM企業のマッチングのほか、化粧品ビジネスの課題を投稿し回答を得られる仕組みや、それぞれの企業が運営するPRやセミナー情報などの掲載も可能にしている。つまり、Bentenは下記のような機能を備えた化粧品業界ビジネスマッチングプラットフォームである。

Bentenの主な機能・ソリューション
・化粧品関連企業・OEM&ODM企業検索
・質問依頼機能
・専門家との業務マッチング機能
・イベント告知、自社PR機能
・薬事に関する相談(薬事の部屋)
・バナー広告メニュー

現在、人気が高いのは質問依頼投稿機能だという。ここでは化粧品ビジネスに関するあらゆる悩みごとを掲載し、それを見た登録スペシャリストやソリューションをもっている企業がそれに答える。イベントPR機能もよく活用されており、セミナーや自社サービスの紹介ができ、Bentenに登録しているユーザーにアプローチが可能だ。また、2020年12月にリリースした業務マッチング機能では、専門家に相談後に実際の業務を依頼できる。植村氏の実感として、登録している特定の人に相談してみたいという名指し需要が大きいという。

現在の利用者の属性を細かくみると、大手から中堅・小規模化粧品メーカー、OEM企業、容器や原料企業、薬機法等のコンサルティング企業、個人事業主などさまざまだ。現在は、OEM企業を探したいという案件が多く、「どうしたらいいか」という質問を投げると登録しているOEM企業が答える仕組みとなっている。

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質問依頼の一覧
出典:Benten

マーケティングや広報担当が、PR会社やインフルエンサーを探したり、容器やパッケージデザイン、薬機法のわかるライターを探したいといったニーズも多い。また製造過程で感じた課題、たとえば「化粧水・フェイスクリームに、Krill Oil(クリルオイル)を配合したいが、臭いを抑えたい」「化粧水をブルーに着色したいがどうしたらいいか」といった成分に関する専門的なトピックスも寄せられる。

「それぞれの企業や個人が内々で長く悩んでいたことが、他社の話を聞いてすぐ解決したというのはよくある。特許や企業秘密は別として、それ以外のノウハウは、もっとオープンにしていったほうが業界全体のメリットになる。国内メーカーや関連の容器会社もそうだが、国内ばかりをライバル視するのではなく、海外にもっと目を向けて、海外の企業と戦っていかないといけない状況だ。せめて日本国内ではさまざまなノウハウをオープンにすることで世界と競い、日本の化粧品業界全体のプレゼンスをあげていくべきではないか」(植村氏)

業務マッチング機能で、スペシャリストを探し出す

業務マッチングは、化粧品関連のさまざまなスペシャリストたちを探し、コンサルティングを依頼できる機能だ。Benten側でスペシャリストの精査を行い、ソリューションの質を確認したうえで、登録者が1時間いくらでコンサルティングをするかを決めて自分でチケットを発行し、企業がプラットフォーム上で購入できる仕組みだ。「我々のサービスの特徴は、美容業界に特化した専門家にアプローチできるところと、Benten側で人選を行っているという部分で信頼されている」(植村氏)

たとえば薬機法については、化粧品や薬機法関連の民間検定を取ったというだけでは、ソリューションのレベル感にばらつきがある。こうした部分は植村氏自身が精査し、ソリューションの提供が可能な人のみに登録許可を出している。また、業務マッチングの機能として、時間単位でのコンサルティングのほかに、まとまった業務の依頼についてもチケットを発行できる仕組みをもっている。質問自体はオープンだが、一度マッチングすればやりとりはクローズでできる。ただ、質問からオープンにしたくないという要望も寄せられており、近いうちに完全にクローズドで質問できるプレミアム機能を検討中だという。

準備中の2つのサービスが、化粧品開発の劇的な業務効率化へ

Bentenは、現在はまだβ版として運用しており、質問機能やイベント告知、自社PR機能は、会員登録すれば無料で利用できる。将来的にはマッチングによる収益化を強化しつつ、データベースを充実させ、クローズドでの相談や商談を可能にして、業界が使いやすいプラットフォームとして完成度をあげていく予定だ。

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株式会社Cogane studio.
代表取締役
植村元氏

そのほか、Bentenとは別に化粧品業界向けのアプリを2つ準備中だという。どちらも2021年以内にリリースを見込み開発中だ。

そのひとつが、薬機関連のサービスである。すでにBentenでは、化粧品企業を対象に月額固定で薬機法関連のドキュメントチェックを行うサービスを実施中だが、このサービスをアプリ化して使いやすくすること、そして次の段階では最初のチェックをAIで行い、最終的な確認を人間がするサービスを目指しており、2021年夏頃までにリリースの予定だ。

もうひとつは、化粧品の原材料データベースの拡充とプラットフォーム化だ。Bentenのリリース以来、積み上げてきたメーカーやOEM企業、広告やマーケティング関連企業のデータベースがほかに類をみないほど充実してきている。そのデータは、当初は植村氏の経験や、ネットワークやWebで公開されているデータなどから収集してきたが、最近は「うちの会社がまだ載っていない」と、国内だけではなく、海外からも問い合わせがあり都度追加しているという。

こういったさまざまなカテゴリーのデータのうち、植村氏がまず注力したいとするのが原料のデータベースだ。大手の原料メーカーや商社はそれぞれ独自のデータベースを持っているが、中堅や中小の原料メーカーは自社でデータを整備するのが難しいなどの事情がある。そこで植村氏は、すべての原料メーカーの情報を一括して調べられるプラットフォームを目指している。

その背景には、化粧品メーカーがある原料を採用するときに必要な書類作成(全成分表示、INCI、原産国表示の証明書など)が、原料会社側で作成する際に大きな負担となっている状況がある。提出先のメーカーごとにフォーマットが異なるので、内容が同じでもすべて手作業で作り変えるのが常になっているという。

こうした課題を解決するために、データベースを原料会社には無料で開放し、情報を登録してもらう。このデータを化粧品メーカーとAPI連携することで、各化粧品メーカーは、自社のフォーマットにあわせてデータを加工するだけでよく、今かかっている工数が最小限になると見込む。化粧品メーカー側にとっては、原料の最新トレンドがわかることで、R&Dはもとより、商品開発やマーケティング担当にもメリットがある。また、そこからサンプル発注や管理といった業務全般のDXを目標にプラットフォーム化し、効率性のよさを追求していくという。

「とにかく化粧品業界のビジネス上の悩みを解決するという目的でこのビジネスをスタートさせた。自分自身も化粧品メーカーで働いていた時代に、延々と自分で解決しようとしたり、既存の取引先だけで何とか解決しようとして時間を浪費したことも多かったと思う。自分の悩みは誰かが必ず答えを持っており、たくさんの選択肢から選ぶ選ばないを各自で決められる環境をつくりたい」(植村氏)

機密に関わらない情報はオープンに流通することが化粧品業界全体の利益にかなうという信念のもと、植村氏はBentenの仕組みづくりに集中してきた。選択肢が増えることでイノベーションも生まれやすくなる。ITによる化粧品業界の民主化は、いまの言葉でいえばオープンイノベーションのひとつの姿でもある。

Text: 矢野貴久子(Kikuko Yano)
Top image: GoodStudio via shutterstock

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