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韓国新興ブランドAnua、ユーザーとのコミュニケーション可視化で日本、米国でも急成長
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スキンケアブランド「アヌア(Anua)」は、2024年から2025年にかけて、韓国美容業界で注目されている新興ブランドのひとつだ。2019年のローンチから5年で、売上規模が約55倍に急成長し、グローバル市場での存在感を高めている。アヌアを運営するThe Foundersでシニアマネージャーを務めるイ・アラム(Lee Aram)氏に、ブランドの現況とマーケティング施策の裏側について聞いた。
日本や米国でも躍進する韓国の新興ブランド「アヌア」
The Foundersが運営する化粧品ブランド、アヌアが韓国の美容業界でも注目されている理由のひとつが、米国市場におけるマーケティングの成功事例だ。なかでもTikTokマーケティング施策に関しては、国内外のメディアからも好感をもって評価されている。インフルエンサーコラボやUGCの活用、使い方を短尺動画で紹介するなど、丁寧なコンテンツづくりとユーザーとのコミュニケーションが奏功している。
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♬ bounce (i just wanna dance) - фрози & joyful
2025年1月上旬時点でアヌアに関連したTikTok上のコンテンツ数は12万5,000件に達し、合計視聴数は24億PVを突破した。2024年7月にはTikTokショップの化粧品ランキング1位を記録し、ヒット商品である「アルティメット・スキンケア・ルーティンセット」は累計で13万3,000個(2025年1月3日時点での集計)が販売された。2025年1月上旬までの3カ月間に同ショップを訪問したユーザーのうち、約80%が新規ユーザーであるとのデータもある。
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アヌアは米国でも、アマゾンで大きな成果をあげている。2024年7月に開催されたアマゾン・プライムデーでは、アヌアの主力商品である「ドクダミ 77スージングトナー」がトナー部門の売上1位を獲得。前年比の売上成長率537%という数字も達成し、こちらはビューティカテゴリー1位に輝いた。次いで同年10月に開催された「アマゾン・セラーカンファレンス2024」では、年間売上および成果が優秀だったブランドを評価・表彰するアマゾントップブランドに選定されている。
韓国国内のアワードなどでもアヌア製品の評価は高い。韓国化粧品小売最大手オリーブヤングが2024年末に発表した「オリーブヤングアワード2024」では、同ブランドの商品が「グローバルトレンドトナー部門」や「グローバルトレンドクレンジング部門」など5部門で大賞に選出された。
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画像提供: The Founders JAPAN
丁寧なマーケティング施策で2019年の創業から年間成長率250%を維持
The Foundersは、大学の同期だったイ・ソンヒョン氏とイ・チャンジュ氏が共同で設立した企業だ。2人はモバイル環境が広がるなかで、新たな機会が訪れるのを直感し、起業にのりだした。The Foundersは現在、アヌアを中心にに計3ブランドを運営しており、進出している国の数は50カ国にのぼる。
「スキンケアブランドであるアヌアは、韓国、日本、そして米国市場を中心に商品を展開している。自然由来成分やダーマ成分を活用した多様な肌悩みに対応可能な商品ラインナップを有し、なかでもドクダミ 77スージングトナーやクレンジングオイルが世界的に人気だ。同商品の販売実績はグローバル累計で1,600万個以上となっている」(イ氏)
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出典:アヌア公式サイト
The Foundersは企業として着実な成長を遂げており、創業から年間成長率250%を維持し続けている。アヌアブランド単体の成長も著しく、2019年から2024年にかけて売上は約55倍に拡大し、グローバル市場での存在感を急速に高めている。
「アヌアが成長のきっかけをつかんだのは、2019年にドクダミトナー、2020年にドクダミパッドを発売し、スキンケアブランドとしての基盤を築いたことだ。その後、わずか1年で2022年のオリーブヤングアワードを受賞し、韓国市場での地位を確立した。シンプルなケアで効果を実感できることが、多くの支持を集める要因となった」(イ氏)
アヌアはローンチから9カ月後となる2019年12月から、日本市場にも進出を開始した。現在、日本ではQoo10、楽天市場、アマゾンジャパン、@cosme SHOPPINGなどオンラインチャネルに加え、日本全国8,000店舗のオフラインチャネルで商品を展開している。
人気アイテム、ドクダミトナーにおけるユーザーコミュニケーション
アヌアの代表的な商品であるドクダミトナーは、高額な治療費の可能性がある皮膚科を訪ねなくとも、セルフケアでユーザーの肌悩みを軽減できる商品を開発したいという思いから生まれたものだ。自然由来成分のドクダミエキスを肌に適切な比率とする77%で配合し、ニキビができにくいノンコメド処方で、皮膚刺激性試験で「無刺激」判定を受けている。その後もユーザーの悩みや意見を聞き取りながら、2024年1月時点で白樺ライン、ライスライン、桃ラインなどさまざまな自然由来成分を活用した商品を開発・販売している。また厳選したダーマ成分(専門家が注目する美容成分)を使った商品開発もアヌアの強みだ。
そして、アヌアがマーケティングに際し最も重要視しているのは「顧客にとっての価値」だ。顧客の声に耳を傾け、そのニーズを早いスピードで商品に取り込むことでヒット商品を生むことに成功してきたとイ氏は振り返る。
「日本市場においては、消費者の声を商品開発や改善に活かすことが重要だと考えている。そのため、“顧客への執着“を持ち、専門的な消費者調査を通じて、日本の消費者のニーズや嗜好を深く捉え、より良い製品づくりに反映できるよう努めている」(イ氏)
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同時にアヌアは、商品について拡散してくれるクリエイターやインフルエンサーの意見も重視しており、顧客向け説明会とは別にコミュニケーションを図る機会やイベントを積極的に設けている。アヌアの人気商品のなかには、インフルエンサーとコラボレーションした商品もあるという。
「より多くのステークホルダーの声ひとつひとつに丁寧に耳を傾けながら自社製品をブラッシュアップしていくことが、ブランド価値を高めていく道につながると私たちは考えている」(イ氏)
アルタやブーツからのオファーは、着実なユーザーとのコミュニケーションから
米国市場においても、効果的なマーケティングの根幹はコミュニケーションにあるとイ氏は説明する。米国の有力なクリエイターとの協業を積極的に進めており、とくにTikTokを活用した施策で大きな成果を上げている。
また、冒頭で紹介したTikTok上の12万5,000件のコンテンツのほとんどは、消費者やインフルエンサーが自発的に発信したものだ。アヌアのデジタルマーケティング施策は韓国美容業界を驚かせたが、それが地道なリアル対面コミュニケーションがベースになっての成果であるという点は非常に興味深い。
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出典:TikTok
「お客様やインフルエンサーの方々が自発的に作成してくれたオーガニックなコンテンツによって認知度が広がっているというのが実態だ。私たちはブランドに関心を持ってくださる皆様とのつながりを大切にし、できるだけ距離の近い存在でありたいと考えている。つまり、人と人の関係が育むブランド力。それがアヌアの武器であり財産だ」(イ氏)
アヌアが米国市場に進出を開始したのは2022年頃だが、TikTokでの評判をベースに、前述したアマゾンをはじめ、昨今ではオフラインチャネルへの入店も着実に進んでいるという。直近の成果としては、米国最大の化粧品小売チェーンであるアルタ・ビューティ(Ulta Beauty)の全店舗への入店を果たした。
「もともとアルタ・ビューティでの取り扱いを目指してはいたが、TikTokやアマゾンなどのオンラインチャネルで当社製品の認知度が高まるなか、結果的に取り扱いが実現した。さらに、2024年には英国のドラッグストア ブーツ(Boots)への入店も決定。今後、米国や欧州においても販路を積極的に拡大していく計画だ」(イ氏)
イ氏らThe Foundersのメンバーは、日本市場への進出にもさらに拍車をかけていきたいとする。オンラインの売上を強化しながら、オフラインチャネルの開拓を一層進めていくことが直近の目標だ。
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Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image & photo: The Founders JAPAN