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ヨドバシカメラの新ショップ「Yodobloom」、より深い体験で美容製品との出会いと購入意欲を促進

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ヨドバシカメラの体験型ビューティショップ「Yodobloom」では、たとえばシャンプーからトリートメント、そしてブローまで、現物のヘアケア製品や高機能ドライヤーを使用した、自宅でのセルフケアでの使用感や効果を再現可能なリアルな美容体験を商品購入前に無料で提供する。このユニークな新業態を立ち上げた背景と体験サービスの全容をYodobloom立ち上げプロジェクトを主導したヨドバシカメラの担当者に聞いた。


ビューティ製品の実際の使用感がわかる体験提案、SNSでのUGCの生成も促進

2024年6月21日、ヨドバシカメラは、同社が「SNSと商品体験を融合した新しいリテールメディアストア」と位置づける、新業態の体験型ストア「Yodobloom(ヨドブルーム)」1号店を東京・池袋駅東口にオープンした。

単に商品を陳列して販売するのではなく、来店客が美容家電やカラーコスメ、スキンケア、ヘアケアの各製品を購入前に試すことができる店舗設計となっている。あわせて、ヨドブルーム公式アプリをダウンロードした会員には、エステティシャンやスパニストなどのプロの施術によるスキンケアやシャンプー&ブローが受けられるコースメニューという、より深い体験を用意しているのも特徴だ。コースの体験後は、5,000円以上の購入か、SNSでのレビュー投稿が求められ、UGCの生成と拡散にもつなげている。

こうした「体験型ビューティストア」を開設するに至った理由について、株式会社ヨドバシカメラ プラチナ事業本部 コスメ事業部 部長 横山愛氏は、顧客にパーソナライズした商品提案とは何かを考えた結果であるとして、次のように話す。

「家電量販店というイメージが一般的には強いかもしれないが、現在、ヨドバシカメラでは食品など、いわゆる家電とはかけ離れたカテゴリーの物品も販売している。そもそも幅広い商品を取り扱うという方針が弊社の根本にあり、美容家電をはじめ、コスメやスキンケア、ヘアケア製品も扱っているが、こうしたビューティ系商材は非常にパーソナルな商材だという認識を社内では持っていた。そこで、お客様にもっと深掘りをした提案ができないかと考えた。商品選びに際して、目的や好みがそれぞれ異なる一人ひとりのお客様にとって一番良い商品提案をしたいという思いから、実際の使用感はどんなものなのかを購入前に実感いただける業態をスタートした」(横山氏)

株式会社ヨドバシカメラ プラチナ事業本部 コスメ事業部 部長 横山愛氏
プロフィール/2012年株式会社ヨドバシカメラ入社。店舗配属後、2021年より本社へ異動。化粧品、ヘアケア関連商材のバイヤーを経て、2023年より現職。Yodobloomの立ち上げプロジェクトを主導

販売ではなく体験が一番の目的のOMO店舗、頭皮測定や肌測定などエビデンスにもとづく接客

ヨドブルームでは現在、化粧品や美容家電のブランド約50社が、店舗内の商品を置く棚を自社スペースとして契約する形で出店しており、およそ500アイテムを取り揃え、ブランドを横断した幅広い商品知識を持った店舗スタッフが接客や施術を担当する。アプリのダウンロードを必要とせず、空きがあればすぐに受けられる6つの体験「パーソナルカラー診断」「美顔器体験」「メイクアップ」「肌測定」「ムダ毛ケア体験」「頭皮測定」に加えて、公式アプリからの予約が必要な所要時間1時間のアプリ会員限定3つのコース、「スキンケアコース」「ヘアケアコース」「メイクレッスンコース」があり、前述したように、SNSでの投稿もしくは5,000円以上の購入いずれかで体験できる。

ヨドブルームの目玉ともいえるこれらのコースは、たとえば、スキンケアコースなら、最初に肌測定とカウンセリングを行い、同店が取り扱う幅広いブランドのなかから、顧客の肌状態にあわせて適切な美顔器などの美容機器とスキンケア製品が提案され、プロのエステティシャンの施術が受けられる。同様に、ヘアケアコースでは、頭皮診断とカウンセリングをもとに、店内に特設したシャンプー台でブランドをまたいだシャンプーやトリートメントを受け、最後に顧客が試してみたいドライヤーを選んでブロー体験まで可能だ。また、メイクレッスンでも、サロンブランドや人気のアジアンブランドの化粧品を駆使し、顧客の要望を汲みつつ、メイクアップアーティストが似合うルックを提案し、メイクの際のテクニックやコツをあわせて伝授する。

スキンケアコース体験イメージ

つまり、ユーザーが自宅でセルフケアをした際にどのような使用感や結果が得られるのか、製品のテクスチャーや香り、カラーコスメの色味はもとより、美顔器の使い心地や扱いやすさ、ドライヤーの風の強弱や仕上がり具合など、自身が使うときの感覚を想像できる一歩踏み込んだ体験設計としている。横山氏はそれを「お客様のライフスタイルに落とし込んだ、実生活に即した流れの体験づくり」と説明し、ほかの化粧品小売店とは一線を画するヨドブルームならではの仕組みとする。

実際に店舗を訪れてみると、棚には、「リファ」や「ヤーマン」、「エレクトロン」や「ダイソン」といったハイエンドな美容機器やドライヤーの有名メーカーが並ぶ。スキンケアやヘアケアは、オーガニック認証を取得したクリーンビューティブランドやサロンブランドなどが多く、ドラッグストアやバラエティショップとは異なる品揃えだ。カラーメイクは「hince」「Flower Knows」など韓国や中国ブランドも目立つ。

ヨドブルーム店内

アプリがなくてもその場で受けられる体験のなかから、AIを活用した頭皮測定を選び体験した。タッチパネルの画面から普段の頭皮ケアや乾燥など気になるところ、年代グループをたずねる簡単な質問に答えたのち、店舗スタッフが専用機器で頭皮を撮影しながら、頭皮の水分量や毛穴の詰まり、赤みの有無などの指標を測り、全体的な判定結果が即時に表示される。それをスタッフと一緒に確認して解説やアドバイスを受け、おすすめの製品の提案もある。水分量や毛穴汚れなどは良好なスコアだった筆者は、今使用しているシャンプーの機能が合っているという判断で、プラスアルファのケアとしてスプレータイプのスカルプセラムをすすめられた。実際に噴霧してどう頭皮に揉み込むかのレクチャーも受けた。

頭皮測定体験イメージ
頭皮測定器 著者撮影

測定結果を参照しながらの提案には説得力があり、質問や要望も気軽に口にしやすく、会話を楽しみながら自分の頭皮コンディションや新しいブランドを知るなどの発見ができる。あくまで顧客に体験をしてもらうことが一番の目的というスタンスの接客で、体験をしたからには購入しなければというプレッシャーは感じない。とはいえ、良い意味で気持ちが盛り上がり、おのずと購入意欲が湧いてくる。

横山氏も「ヨドブルームは、家に帰ってゆっくり検討したあと、後日オンラインから購入もでき、アプリを通じて、リピート購入は弊社のECを利用いただけるよう流れを組んでいる。ただし、やっぱり体験されたお客様の多くが、気持ちが上がったタイミングのその場でお買い上げになる」と話す。

メイクアップレッスン体験イメージ

ヨドブルームに出店しているブランドは、販売ではなく、体験を通してブランドや商品の認知を広げることや、より深く理解してもらうこと、また、これまでリーチできていなかった新しい顧客層へのアプローチに重きを置いている。同時に、体験したユーザーの購買履歴やSNSでの発信状況、各種測定器に蓄積される数値や、接客の現場からのフィードバックといったデータが得られ、商品開発やマーケティングに活用できるのもメリットだ。

ヨドブルームのこうした体験を軸とした店舗システムは、体験型美容テーマパーク「Tierland(ティアランド)」の企画・運営をする株式会社トレンドキャスケットのノウハウを活用し、協業することで完成した。

幅広い商品カテゴリーをクロスさせ、生活シーンに落とし込んだ体験設計

横山氏は、ヨドブルームは新業態店舗ではあるものの、体験重視という発想はヨドバシカメラが創業当初から持つDNAだと示唆する。

「弊社はもともとカメラからスタートしたが、1970年代当時、カメラはかなり高額な商品だったにも関わらず、店頭で手に取って確認できる場所がほとんどなかった。やはり、お客様に触ってもらわないと良さがわからないという思いから店舗を出したところにヨドバシカメラの起点がある。その意味で、商品を体験いただくことを積極的に考えている会社だと思う」(横山氏)

また横山氏は、同社が取り扱う商品の幅を増やしてきたのは、こんなものも置いてほしい、さまざまな商品を1カ所で一度に買えたらいいのにという顧客の声を受けてのことだという。ヨドバシカメラが重視する体験と幅広い商品カテゴリー、その流れから、美容分野に関しても、これまでできていなかったクロスカテゴリーを深める施策という観点にたち、化粧品と美容家電を同じ売り場で隣り合わせに並べるだけではなく、美容液とその肌への浸透を助ける美顔器を一緒に使う、あるいは、トリートメント後の濡れた髪をドライヤーで乾かすといった、実際の生活シーンを再現する商品提案ができる場としてヨドブルームは設計されたと横山氏は説明する。

ヨドバシカメラは、2025年夏にグランドオープンを予定する西武池袋本店に、約4万8,000平方メートルの旗艦店を開店する予定だ。製品体験やサービス体験のあとの購入は、その場でもオンラインからでも可能なOMO店舗であるヨドブルーム池袋店には、隣接する旗艦店への送客も期待されることになるのではないか。

ヨドブルーム店内

「今後のヨドブルームについては、明確な方向性というものは正直まだ固まっていないのが現状だ。現在は開店してようやく3カ月が過ぎたところで、まずはきちんと運営していくことに集中している。ヨドブルームを通じて、これまでのヨドバシカメラの店舗ではご縁がなかったブランドとの出会いがあるなど、学びの機会も多い。ヨドブルーム池袋店でしっかり知見を蓄え、この先に活かしていきたい」(横山氏)

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image and photo: 株式会社ヨドバシカメラ