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アーユルヴェーダが世界を席巻なるか。クリーンビューティ時代の新トレンド

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欧米を中心にグローバルに拡大するクリーンビューティのトレンドを受け、北米市場で急速に注目を集めつつあるのがインドを発祥とするアーユルヴェーダを取り入れた化粧品やケア製品だ。世界を席巻したKビューティのようなトレンドになっていくのか。その現状を探る。

アーユルヴェーダは5,000年以上の歴史を持つインドの伝統医学体系で、身体エネルギー「ドーシャ」のバランスを整え健やかな状態を保つことで、長寿や若さを実現する実践的な生活健康法として受け継がれてきた。

昨今の美容業界における、体に有害な人工化合物を極力避け、自然由来の成分を用い、環境へダメージを与えない“クリーンビューティ”を求める消費者志向は、ビューティとウェルネスの境界をどんどん曖昧にしている。Kビューティに続く次のヒットを模索するなかで、どんな種類の合成化合物も一切使用せず、体内に入るものは100%天然素材を原則とするアーユルヴェーダが脚光を浴びてくるのは当然の流れといえる。

「北米やヨーロッパの先進国でストレスの高い忙しい毎日を送っている消費者にとって、食生活を正し、ヨガや瞑想を行うことで心と体のインナーバランスを調整するというアーユルヴェーダのホリスティックなアプローチが魅力的に映るのは間違いない」とユーロモニターのリサーチアナリストは語り、「アーユルヴェーダビューティの処方を取り入れるブランドも増えている」とする。

そうしたブランドの1つが、アロマセラピー製品のGuruNanda で、同社のエッセンシャルオイルはウォルマートでも販売している。また、世界最大のクリーンビューティECサイトを標榜するCredo や、高級百貨店Saks Fifth Avenue、そのほかアマゾンでもアーユルヴェーダビューティブランドの取り扱いは増えているという。

ラグジュアリーリテールで展開

Uma Oils は、インドで生まれ育ち、両親がマスタードオイルでマッサージするセルフケアを日課にしているのを見ていたという女性が、2016年に米国で創業したアーユルヴェーダブランドである。

伝統的なスキンケア製品に加えて、より“難解な” アーユルヴェーダの哲学を反映し、生の起源を象徴するというへそのオイル(Navel Oil)や、アンチエイジング・デコルテセラムといった新商品を今年に入り次々と投入。こうした“深遠なアプローチ”の製品カテゴリーは、年間売上の35%を占めるまでに成長、同ブランドの昨年度の全体売上げは500万ドル(約5億5,000万円)に迫る勢いで、2021年までに2,500万ドル(約27億円)を目指すとする。

Uma Oilsの製品は自社ECサイトのほか、デザイナーズブランドのファッションアイテムが主力のラグジュアリーリテールNeiman Marcus でも販売されている。なかでも前述のへそオイルなどは、Neiman Marcusの「Trending Beauty」部門にフィーチャーされ、3ヶ月の独占先行販売を実施して知名度を上げた。

クリーンビューティを求める顧客は原材料について詳しく知ることを望み、ウェルネスの面でも効果がある製品を好むとされ、Uma OilsはNeiman Marcusなどパートナーの小売店舗を巡回する特別セールスチームを組み、アーユルヴェーダについて正しく理解してもらうための活動や、サンプルの配布を行なっている。

米国で誕生したアーユルヴェーダブランド

Uma Oilsのほかにも、北米で立ち上げられたアーユルヴェーダビューティブランドが次々と登場している。

Sahajan

次代の美容業界のリーダーになる女性起業家として、セフォラのアクセラレータープログラムに選出された創業者はインドのケララの出身。ブランドを立ち上げたのは、当時2歳だった娘にふさわしい、無害で、しかもより健康な肌に育んでくれるスキンケアを考えたのがきっかけだ。自身が子供の頃に与えられていた、インドでファミリーが所有する農園の植物で作られたホームメイドのアーユルヴェーダ処方を思い出し、改めてその効果を見直したという。

医学的にもアーユルヴェーダの伝統としても、正しいフォーミュラであると証明された製品とするために、科学者とアーユルヴェーダ医師の双方の協力を仰ぎ、世界で唯一、エビデンスに基づく効果が実証されたアーユルヴェーディックなナチュラルスキンケア&ヘアケアラインを提供している。

Taza Ayurveda

コロンビア・ビジネススクールで出会った女性2人は、それぞれ、不眠および吹き出物による肌荒れと、過敏性腸症候群(IBS)に悩んでいた。いずれも現代の西洋医学では治癒できなかったコンディションをアーユルヴェーダが解決してくれたことから、多くの人に広めたいとブランドを創業する決意をした。肌と腸という栄養素の浸透と毒素の排出に関わる重要な器官に的を絞り、インドの管轄省庁から認定を受けている2つのアーユルヴェーダ医療機関とコラボして開発した、3つの製品をラインナップする。

Nourish Kumkumadi Nighttime Facial Oilはヒマラヤンサフランやマンジッシュなど19の希少な生薬から抽出したオイル。Nourish Eladi Body Oilはパールパウダーや乳香などを配合したリッチなオイルで、アーユルヴェーダの重要な習慣であるセルフマッサージ用だ。そして、Nourish Gandharvahastadi Digestive Supplementは、酵素の働きを活性化させ、腸での消化と栄養の吸収をサポートすると同時に、腸内デトックスを促進するサプリメントである。

同ブランドの公式サイトには、質問に答えることでユーザーのドーシャのタイプを判定する「クイズ」を設けており、各自のドーシャにもとづくパーソナルなケア方法のアドバイスや、最適な製品を提案するサービスもしている。

Banyan Botanicals

「人々がオプティマルヘルスとウェルビーングを手にする手伝いをする」ことをミッションに掲げ、ハーバルオイルやスキンケア製品に加えて、バラエティ豊富なサプリメントを取り揃えるのが特徴のブランド。

80年代にアーユルヴェーダ医師のもとでで学んだ創業者は、植物療法にもとづいて処方するハーバルファーマシーの設立と運営に携わってきた。90年代に入り、アーユルヴェーダの認知が広がってきたのに伴い、ユーザーから品質の高いアーユルヴェーダコスメが欲しいという要望が寄せられるようになり、1996年にBanyan Botanicalsブランドを創設し今に至る。

現在では、内側と外側のボディケアラインのほか、ヘアケア、デンタルケア、ダイエットなど幅広いカテゴリーのラインナップを誇り、ウェルネス・ビューティを推進すると宣言する。

Jiva Apoha

Jiva Apohaという名称はサンクスリット語で「ヒーリング」を意味する。ヒーラーとして活動していた女性創業者は、ケララのアーユルヴェーダアカデミーで学び、ニューヨークでブランドを立ち上げた。

オイルに特化した製品ラインナップで、サイトの各商品ページには原材料や効能など詳細な情報が記載されている。オイルの香りで気分や感情に作用するロールオンタイプと、マッサージ用のボトルタイプがあり、人気の(S)ex Rollはオーガニックヘンプ配合で催淫効果があるとされている。

本場インドでは高級路線で市場を拓く

最後に、グローバルな展開を狙う、発祥の地インドのアーユルヴェーダブランドをみていこう。

インドでは、ユニリーバ傘下の大手家庭用品製造販売会社Hindstan Unilever のLever Ayush をはじめ、マス向けの安価なアーユルヴェーダ製品が数多く市場に出回っているが、最近では、可処分所得の高い中産階級が育ち、高級路線のブランドに目を向ける消費者が増えてきている。ユーロモニターの調査によると、アーユルヴェーダのスキンケア&ヘアケア製品を購入する消費者の41%がプレミアムタイプのフォーミュラを好むと回答し、低価格のマス製品を選ぶとする21%を大きく上回った。

Forest Essential

2000年にハンドメイドソープとキャンドルの製造販売からスタートしたForest Essentialsは、5ッ星ホテルのアメニティに採用されたことからビジネスが拡大した。2008年と2014年にはエスティ ローダーが投資を行い、株式の40%を取得している。

「食べられないものを、肌に使うのはやめよう」をモットーに、ピュアであることがラグジュアリーとして、中価格帯以上の製品を展開。商品レンジも広く、マザー&ベビーやメンズラインも揃えている。インド版ヴォーグやエルなど女性誌のビューティアワードを受賞するなど、インドではよく知られたブランドとなっている。

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出典:Forest Essential 公式サイト

Kama Ayurveda

2002年、インド・デリーで4人の共同創業者によって立ち上げられたKama Ayurvedaは、100年の歴史を持つアーユルヴェーダ薬局と共同開発による9つのトリートメントをベースにした製品レンジからスタート。インド各地の農園や自然の森で採取したオーガニックな原材料と、アルチザンが手がけるパフォーマンスの高いフォーミュラにこだわり、製品はEUの認可を取得している。

インド全国に40以上ある直営店のほか、50を超える販売店を擁し、ホテルやスパコレクションも用意。サイトのショッピングページでは、性別とスキンタイプ、悩みを入力する簡単な質問コーナーが設けられ、即座に製品レコメンドが受けられる。

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出典:Kama Ayurveda 公式サイト

上記の2ブランドは、アーユルヴェーダの哲学とメリットをわかりやすく提示すると同時に、オーガニック認証やクルエルティフリーであることを打ち出し、インド国外の多様な消費者にも対応する幅広い製品レンジとしている。自社ECからインターナショナルな配送も受け付けており、北米やヨーロッパのマーケットを意識していることがうかがわれる。

実際、インド国内のアーユルヴェーダ市場は伸びている。インドの経済紙The Economic Timesによれば、2018年末までに44億ドル(約4,800億円)に達した市場は、2025年までの年間成長率が16%ともいわれる。また、世界市場は、2015年に34億2,800万ドル(約3,750億円)だったのが、2022年までに約3倍の97億9,100万ドル(約1兆7,000億円)に達すると見込まれている

アーユルヴェーダは、現状はまだ世界的トレンドといえるまでのムーブメントにはなっていないが、クリーンビューティの大きな潮流はこのまま続くことが予想され、ビューティプロダクツに対する消費者の期待は、心と体のウェルネスという概念を包有する方向へと向かうだろう。英語に直訳すると「サイエンス・オブ・ライフ」を意味するアーユルヴェーダが、そう遠くない時期に、いわゆるスピリチュアル系ソサエティだけではなく、一般の生活者にも認識されて浸透するのは十分に考えられる。


Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: yurakrasil via Shutterstock




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