サブスクリプション・ビジネスの女王ipsyは、なぜ一人勝ちなのか
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コスメサンプルを毎月届けるサブスクリプション・ビジネスにおいて、他社を大きく引き離した感のあるipsy。だが、企業としての真価はサブスクリプションから得る利益にはない。300万人を超えるサブスクライバーと、自社で抱えるソーシャルメディア・インフルエンサーの存在、それが圧倒的優位のカギだった。
まだ、インフルエンサーという言葉がなかった頃、YouTube上のメイクアップ・チュートリアル動画で大人気を博し、美容ユーチューバーの先駆けとされるミシェル・ファンが2011年に創業した、ビューティボックス・サブスクリプションとECサイトを運営するipsy。会員になると、月額10ドル(約1,100円)で、フェイシャルマスクからアイシャドウなどのカラーアイテムまで、約50ドル(約5,500円)相当のさまざまなコスメサンプルを詰め合わせたポーチ Glam Bagが毎月送られてくる仕組みだ。2017年時点で300万人を超える会員がいると報道されている。
Glam Bag, courtesy of ipsy
先発のBirchboxなどとその手法は同じだが、ipsyは現品サイズの製品を必ず1点は組み込むのと、スキンケアよりもメイクアップアイテムに比重をおいており、1回使い切りのパウチは入れない。また、無味乾燥な箱ではなく、都度デザインが変わり、後々まで使いまわせるポーチで届くところが受けた。バリューフォーマネー、つまりお値打ちだと認知されたのだ。
ビジネス戦略の柱はインフルエンサー
もともと、こうしたサブスクリプションが米国でヒットした背景には、安めの会費で大きなお得感が消費者心理にアピールしたのと同時に、開けるまで何が入っているかわからないサプライズ・プレゼントを毎月もらえる“楽しみ”の側面が支持されたことが大きい。そして、この新しいものと出会うワクワク感を増幅させたのが、「クリエイター」と呼ばれるipsyの契約インフルエンサーによる大量の動画である。
ipsyは充実した設備の専用スタジオをもち、月に300本の動画を制作・配信している。内容は基本的に、毎月送られてくるさまざまなコスメアイテムの使い方やおすすめのポイントを、インフルエンサーが実際に使用しながら、わかりやすく、かつ、楽しく指南するというもので、今まで使ったことがないような色味でも、動画をみれば挑戦するのも簡単になる。好みじゃないサンプルだからと、捨ててしまっていたかもしれないものが、動画によってさらなる“サプライズ”をもたらしてくれるのである。ipsyのサブスクライバー数を急速に伸ばしたのは、届けられるサブスクリプションの中身の質以上に、商品を受けとったあとのチュートリアル動画という手厚いフォローにほかならない。
インフルエンサーを活用して継続率とファンを増やしていく戦略は、当初からビジョンにあったようで、共同創業者の1人、マルセロ・キャンベロスは2017年の取材インタビューのなかで次のように述べている。「自分たちにとってGlam Bagが重要なポイントだったことは1度もない。私たちのプランは、現在の美容業界の潮流にマッチした会社を作ることだったのだ。どの商品がクールなのかを決めるのは、もうブランドじゃない。今の時代は、美容ブロガーや(ソーシャルメディアの)クリエイターが場を引っ張っている」。
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