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ライブ、動画、ストーリー。注目の新型ECは、心を動かす力を持っている

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「お気に入りのインフルエンサーがスマホアプリの生配信で洋服を紹介。質問したら、その場で答えてくれた」「商品紹介動画を見ていたらボタンが出てきて、クリックしたらすぐにその商品が買えた」「どんな人がどんな思いで作っているのかという制作側のストーリーに感動し、商品を購入した」。その場で心が動き思わずポチってしまう経験が誰でもあるだろう。信頼できる人、心動かすストーリー。ECをより豊かな体験にするための技術がさまざに開発されている。

テクノロジーと価値観の変貌が生み出すECの変化

Amazon、楽天、ZOZOTOWNといった伝統的なECは、いまやとてつもなく利便性が上がっている。商品を検索すると価格や機能などの商品情報が出てきて、即座に購入できる。今までは店舗で買って家まで持ち運んでいた重量のあるアイテムも当日に届けてくれたり、欲しい商品が売っていないために、店舗をはしごして探す必要もなくなった。

一方でTwitterやFacebook、InstagramといったSNSの進化もいちじるしい。とくにミレニアル世代はSNSとともに育っており、消費行動においても人とつながっていることに価値を見出す。ゆえに商品にはコスパや機能だけでなく、背景にあるストーリーや透明性、コンテクストが求められるようになった。この価値観の変化はECにも影響を及ぼしている。便利さだけではない、人とのつながりだ。

たとえばライブコマースではインフルエンサーがスマホアプリの動画に登場し、ユーザーとリアルタイムにコミュニケーションをとりながら商品を紹介する。とくに若年層においては、動画から直接商品を購入する機会も増えてきた。こうした視聴者の心をつかむため、従来はそのすべてを公開してはいなかった商品のもつ背景を徹底的に紹介するストーリーテリング(=コンテンツ)も重要性が増している。そのストーリーをどんな形でユーザーに届けるかによって、ECが進化しはじめている。

今回は新しいコマースの形に挑戦する美容業界のプレイヤーの参考になるべく、近接のファッション(アパレル)領域の事例を中心に「新たなEC×メディア」の最新動向を紹介していく。

買う理由を提示するコミュニケーションでユーザーの心を捉える

ECとメディアがミックスする形態はまだ黎明期であり、正確に定義や分類が決まっているわけではないものの、以下の3つが新たなEコマースの形式として存在感を増している。

① ライブコマース
② 動画コマース
③ ストーリー / メディア コマース

順に見ていきたい。

① ライブコマース

ライブコマースとはその名の通り、演者が生(ライブ)放送で商品を販売するシステムで、以下のような特徴がある。
・タレントやインフルエンサーが演者として登場
・リアルタイムで配信(ただしアーカイブすることもある)
・演者とユーザーがコミュニケーションをとる

ライブコマース分野のスタートアップのプレイヤー

ライブコマースの醍醐味は、インフルエンサーとユーザーの双方向コミュニケーションにある。たとえば、インフルエンサーが商品のスカートを着用している場合、ユーザーから「くるっとまわってほしい」「おすすめの色を教えて」「どうやって着こなせばいいか」といった質問が送られ、インフルエンサーはそれに対してその場で答えていく。

ユーザーは気になるポイントが理解できるのはもちろん、お気に入りのインフルエンサーと「会話」ができたことに歓喜する。もちろん好きな人が紹介してくれた商品だし、質問をして心配な点も解消されているので、購買意欲は高まっている。実際、あるライブコマース運営者は「ライブコマースのコンバージョン率は通常のECの比ではない」と語る。

この分野で気を吐いているのは、「ゆうこす」の名で知られる菅本裕子氏やAAAの宇野実彩子氏などがチャンネルをもち人気を博している「Live Shop!(ライブショップ)」やPinQulなどだ。また、salomee LIVEなどサロンスタッフが配信者となる美容に特化したサービスも登場している。

Live Shop!アプリ

C2Cフリマで確固たる地位を築いたメルカリは「メルカリチャンネル」、ネットショップを簡単に開設できるBASEは「BASE LIVE」などのプラットフォームを用意し、こちらはインフルエンサーだけでなく、誰もが配信できる体制を整えている。もちろん、配信だけならインスタグラムやLINEなどでも可能だ。

② 動画コマース

動画コマースは「ユーザーが動画を視聴して、そのまま商品が買えるようなコマース」である。TVショッピングのスマホ版といったイメージで、この記事では別扱いにしたものの、ライブコマースも動画コマースの一部といえる。

従来は技術や通信環境などの制約があり、スマホで動画を観るということがそもそも敬遠されてきた。しかし、4Gやwifiの普及によって、スマホで動画を観るのは当たり前になってきている。また、以前は動画からすぐに購入までリンクされる仕様ではなかったが、ユーザーからすると購入までワンストップのUIのほうが断然利便性が高く、かくして購入可能なUIが増加し、動画コマースが勃興してきた。今後5Gが通信環境のメインになれば、動画の閲覧はさらに簡単になり、動画コマースの役割はさらに大きくなると考えられる。

動画コマースの代表例としてあげられるのは、美容やファッション分野でのスマホ動画の先がけであるC Channel。プロの美容師、読者モデル、スタイリストなどの専門家が、「女子の知りたい!」を1分程度の動画で解説してくれるサービスだ。一部の動画にはリンクボタンが掲載されていて、そこから各ECに誘導され紹介されたアイテムが購入できる仕組み。美容業界ではノインHowTwoらが活躍している。両社についてはこちらの記事をご覧いただきたい。

image: C Channel

ファッション業界ではないが、各社がしのぎを削る料理レシピ動画においては、動画コマースの発展がいちじるしい。たとえばDELISH KITCHENは生鮮食品など配送するAmazonフレッシュと連携。アプリ内で選んだ食材を注文したら、Amazonフレッシュ経由で配達してくれる内容になっている。

③ メディア / ストーリー コマース

メディアコマースまたはストーリーコマースとは、ECに商品の物語を語るメディア機能をセットにした形態である。北欧暮らしの道具店などが成功事例として取り上げられることが多い。

モノが溢れる現代においては、機能だけで商品を差別化することは難しいし、できたとしてもすぐに他社に模倣されてしまう。また価格や機能に頼っているだけでは、その効用を上回る製品が登場すれば、自社の製品はリピートしてもらえなくなる。そこで重要になってくるのが“ストーリー”である。作り手の気持ちや企業の歴史、商品開発の過程など、商品の裏側にあるストーリーを提示することによって、多少価格が高いこともむしろ買ってもらえる理由になるし、商品を消費するだけでなく、企業やサービス自体を応援するために消費者はリピーターになる。

たとえばファクトリエは、made in Japanにこだわったファクトリー・ファッションブランドだ。同社は単に品質の高い製品を作り販売するだけでなく、「工場や職人のこだわり」といったストーリーを消費者に伝えている。そうすることで「他の似たような商品ではなく、紹介されたこの商品を買う理由」ができるのだ。

またファクトリエは、工場見学や同社の銀座ストアで積極的にイベントを開催している。社長の山田氏が登場し、集まったオーディエンスに同社の理念や工場のモノづくりについて語ることで、ファンを醸成している。オンライン全盛時代において、オフラインでイベントを開催してファンをつくるという動きは、効率性以上に大事なのは、人と人とのつながりという意味で、学ぶべき点がある。

上:ファクトリエはたびたびリアルイベントを開催。上は老舗和菓子屋の虎屋を招いたセミナー

またスタイラー社が提供するFACYは、「こんな洋服を探している」という質問にアパレルショップ店員が回答してくれるサービスだ。そこから「今本当に流行っている洋服」をキュレーションし、その回答をMAGAZINEとして記事にしている。MAGAZINE内で紹介されているアイテムはFACY上でそのまま購入することもでき、いわばインタラクティブなメディアコマースという側面を担っている。

重要なのはやり方ではなく「ユーザーの潜在的ニーズを捉える」こと

以上、「ライブコマース」「動画コマース」「ストーリー / メディア コマース」をECとメディアの融合という観点から、ファッション業界の事例を中心に紹介してきた。

これからのEコマースで本当に重要なのは、ライブや動画といったシステム自体を導入することではない。インターネットやSNSの発展による「より便利な機能」の価値低下という社会的背景を理解し、「コミュニケーションをとりたい」「応援できる商品を購入したい」という、ユーザーの潜在的なニーズを捉えること、つまり消費者をファンにする中身のあるコンテンツが作れるかが肝要であり、ただ、流行っているからと動画を取り入れるなど、そこだけ真似をしてもユーザーから支持されることは難しいだろう。

今後は、ARやVRを使った、試着機能や没入感をもつECも増え、AIの発達でよりパーソナライズされた商品を簡単に見つけだせるようにもなる。こういった技術を使いこなし、消費者の心をつかみにいかなくてはならない。表現の方法論が増えれば増えるほど、気持ちをつかむクリエイティブとは、により時間をかける必要がある。クリエイティブの議論は、また別の機会に考えてみたい。

Text: 納富 隼平(Notomi Jumpei)

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