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Lalineが導入、店頭のBAが顧客と対話できるコマースアプリHEROⓇが変革する現場

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米国でスポーツブランドのNIKEや、美容では化粧品小売・ECを展開するCredo Beautyといったブランドに導入されている、オンライン対話式コマースアプリ「HEROⓇ」。日本で最初に採用したのはTSIホールディングス傘下のコスメブランドLalineを日本国内で展開するLaline JAPAN株式会社だ。その利便性やCRMツールとの連動などを検証し、HEROⓇがオンライン、オフラインの販売現場をどう変えようとしているのかを探る。

HEROⓇは、シンプルなユーザーインターフェースとデータ活用を武器とし、顧客、販売員、ブランドの密接な関係を中長期に渡って構築することを最大の目標に掲げている。Laline JAPAN株式会社 代表取締役社長 山本直樹氏に導入後の実績を、そして、HEROⓇを運営する米国ニューヨークのHero™でCEOを務めるアリステア・クレーン(Alistair Crane)氏に開発の背景など話を聞いた。

Lalineが実感するHEROⓇの効果とメリット

HEROⓇは、テキストメッセージ、チャット機能、ビデオ通話機能などを搭載したオンライン対話式コマースアプリで、リアル店舗で販売業務に従事する販売員とオンラインショッピング中の顧客が、商品情報をリアルタイムで共有することをサポートし、またコミュニケーションを円滑にするためのソリューションを提供する。

従来のECでは、顧客がリアル店舗のようにその場で寄り添い、細やかで丁寧な接客を受けることが難しいという課題があった。それを解決するデジタル販売促進ツールのひとつとして世界中で注目を集めているのがHEROⓇだ。

現在、HEROⓇは世界各国のビューティおよびファッションブランド100社以上と契約を結んでおり、同分野においてリーディングカンパニーの地位を固めつつある。日本国内でも、グローバルブランドを中心に10社が導入。6月初旬から化粧品会社としては初めてLaline JAPAN株式会社(以下、Laline JAPAN)でも運用がスタートした。

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画像提供:Laline JAPAN

Laline JAPANの山本氏は、「本格的な売上貢献はこれからだろう」と前置きしつつも、導入初期から評価できる効果が少しずつ現れ始めていると状況を説明。8月3日には当初の5店舗から9店舗に運用を拡大している。

「HEROⓇを利用した顧客の評価の平均は5段階評価で4.7。利用した実感として、まずは満足してもらえていると思う。客単価平均はECでは約6,300円だが、HEROⓇと販売員の接客を経由すると約7,100円になるというデータもある。CVR(コンバージョンレート)もECが約1%なのに比べ、HEROⓇ経由では約10~20%と跳ね上がっている。もちろん、購入する意志の強い顧客がHEROⓇを利用するとも分析できるが、それを差し引いても高いパフォーマンスだと考えている」(山本氏)

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画像提供: Laline JAPAN

Lalineは国内に27店舗を構え、1店舗あたりの来客数は月間1,500名ほどだ。対して、HEROⓇ経由では月間300~400名が来客している。現在、HEROⓇの使用を促すための特設ページなどを用意している最中といい、今後、認知を強化するなかでさらなる売上貢献を期待している。

山本氏はまた、HEROⓇの導入が顧客の体験価値向上だけでなく、現場の販売員の働き方にも寄与すると考えている。

「Lalineの店舗販売スタッフは全員女性で、妊娠・出産・育児などのライフイベントで仕事の時間を削らざるを得ない状況が、少なからずある。HEROⓇを利用することで在宅でも販売員としての能力を活かす機会が増える。店舗スタッフとしてのテレワークをHEROⓇが可能にするからだ。HEROⓇ導入を新たな契機として、スタッフがキャリアを継続し、能力を高めるチャンスを積極的にプロデュースできればと考えている」

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Laline JAPAN株式会社
代表取締役社長 山本直樹氏

また、Lalineの国内店舗にHEROⓇを導入する際、タブレットを通しての接客オペレーションにおける障壁はあまりなかったというのが山本氏の印象だ。20代前半とデジタルネイティブ世代の販売スタッフが多いという理由もさることながら、HEROⓇ自体が非常にシンプルかつ分かりやすく、使用が簡単という点がスムーズに導入できた理由だという。

「HEROⓇ導入後の課題としては、忙しい時期や閉店後は対応が難しいなど、販売員が接客できる時間に限りがあることだ。現状では顧客の要望に対して7割くらいしか対応できていない。接客量を増やし売上貢献をいかに実現していくかが、今後の運営における焦点となる。我々のブランドビジネスの数年来の課題は、香りを含めた五感で楽しんでももらえる店舗のエンターテインメント性向上と、デジタルの利便性を両立することだった。HEROⓇを活用することで、ブランドのアセットである販売員の能力を活かしながら、オムニチャネルの顧客を増やしていく方法を考えていきたい」(山本氏)

顧客と販売員のマッチングアルゴリズムも販売増に寄与

日本ではLalineが美容では最初の事例となったが、2020年1月以降、HEROⓇ経由でショッピングをした顧客数は、世界30カ国で100万人を超え、ショッピングの総額は1億ドルを突破した。テキストやビデオ機能を利用した対話式コマースアプリとして誰でも扱えるシンプルなUI(ユーザーインターフェイス)で、一見、最先端のテクノロジーを多用しているようには見えない。

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出典: HEROⓇ公式サイト

パンデミック需要により市場における競合も多いように思える。では、HEROⓇがブランドの支持を受けることに成功している理由は何か。Hero™のCEOアリステア・クレーン氏は、「シンプル」「データ」「インテリジェンス」の3つを、競争力のポイントとして挙げる。

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Hero™ CEO
アリステア・クレーン(Alistair Crane)氏
画像提供:HEROⓇ

「HEROⓇは、その仕組みがシンプルであるがゆえに、短いリードタイムで導入してもらえるというメリットがある。また『どう接客すればコンバージョンがあがるのか』というような、販売員の能力を高めるためのデータやインテリジェンスが蓄積されるため、多店舗展開する際のスケールメリットが非常に大きい。そして何といっても顧客と販売員を最適にマッチングするためのアルゴリズムを保有している点が強みだ。正しいマッチングが行われることで、購入率を21倍も高めるという結果もデータとして残っている」(クレーン氏)

HEROⓇは、顧客がチャットを開始する時点で「検索ページから来たのか」「ECでの滞在時間はどれくらいか」「どの商品ページをみているのか」「ショッピングカートに商品が入っているか否か」「ショッピングカートに商品を入れて戻したのか」「ショッピングカート内の商品は高額か低額か」など、さまざまなデータを取得している。

そこに、ブランド側が持つ顧客データやCRMツールを連動すれば、新規顧客なのかリピーターなのかという顧客属性も特定することができる。つまり、顧客がリアル店舗に来たのとほぼ同じ情報量がデジタルで可視化され、それを踏まえて販売員が接客することが可能になる。

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クリーンビューティに特化した
米国の小売チェーンCredo Beauty
でも導入されている
画像提供:HEROⓇ

「HEROⓇは販売員側にも多くのメリットをもたらす。最近ではHEROⓇを毎日使っている販売員が40%に達しているというデータがある。コロナ禍の影響で自宅待機している販売員が多いが、ブランドの方針で自宅から接客してもいいということであれば、店舗と同じように販売が可能だからだ。歩合制が多い海外では収入を担保する手段となっている」(クレーン氏)

HEROⓇには、最後の接客から最長30日以内に顧客が購入した場合、また、接客から30日以内に何度も購入しても、すべて接客した販売員の実績として反映される仕組みがある。販売員は「その場で売らなければならない」というプレッシャーから解放され、顧客が納得できるまでエンゲージメントを高めることができる。結果、それが顧客の安心感や信頼に繋がり、ブランド全体の価値を高めるという好循環を生み出すとする。

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Credo Beautyのスタッフと
顧客のやりとり 
画像提供:HEROⓇ


クレーン氏は「我々の当面の数字的な目標は、HEROⓇ経由のショッピング総額10億ドルの実現だ。そのためには、ブランド・販売員と顧客が、売上だけに左右されることなく、関係を長続きできる環境をつくることが重要だと考えている。現在、各国ではショートメールやWhatsAppなどのメッセンジャーアプリを使って、顧客と顧客に影響力を持つ販売員が継続してコミュニケーションを取れる機能を実装している。日本でもLINEなどで同じような仕組みを取り入れていきたい」と意気込む。

HEROⓇの興味深い点は、テクノロジーを活用しつつも、あくまで「人間ファースト」であるという点だ。たとえば、アルゴリズムが洗練されるとある種の自動化が進むのではなく、「写真ではなく動画を送りましょう」「Aという商品でなくBという商品をおすすめしましょう」といったように、販売員に対するアドバイスが向上していく。

販売員はそのAIのアドバイスにより個人の能力を高めることができ、ナレッジをシェアすることでブランド全体の販売力を高められる。顧客からすると、機械ではなく、自分が好む販売員から最適な商品を紹介してもらうことができ、関わる人すべてにメリットや充足感をもたらす設計だ。あくまで「対人コミュニケーションをサポートする」ツールを自負しているのだ。

クレーン氏は、いまのところはARメイクやAI肌分析のようなテクノロジーを取り入れる方針はなく、顧客と販売員のマッチング、そして販売員に対するアドバイスをより強化できるようサービスをグレードアップしていきたいと展望を語っている。

いくらテクノロジーが発達しようとも、人間の感性に強く訴えかけ、連帯感や共感、憧れなどを引き出すのはマシンには容易ではない。人間に影響を及ぼすのは、今後も人間であり続けるはずである。そして、ブランドへの愛を集め、顧客と良好な関係を築くのも人間の役割だ。人間の能力と役割を理解し、人と人との結びつきを強化することに多くの力を注いでいるからこそ、HEROⓇは世界のブランドから高い評価を獲得することに成功している。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Laline JAPAN 提供

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