花王とPreferred Networksの「仮想人体生成モデル」がもたらすBX、そのインパクト
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花王株式会社はライフケア事業の拡大を宣言し、消費者向けプロダクトのみならず、B向けサービスや新たなビジネスモデル構築に注力している。2022年2月には、「仮想人体生成モデル」という革新的な仕組みを発表した。統計モデルを使った新たなプラットフォームサービスの詳細と可能性について、花王でプロジェクトをリードするデジタル事業創造部 部長 鈴木愛子氏と、プロトタイプの共同開発を行った株式会社Preferred Networksのフェローで、現在はエグゼクティブ・フェローとして花王に出向中の丸山宏氏に話を聞いた。
世界最先端のコンセプトを持ったライフケアツール
仮想人体生成モデルは、ある時点のある人の心身の状態、ライフスタイル、性格傾向、嗜好性といったさまざまなデータを網羅的に推定することができる統計モデルだ。年齢性別、運動機能、認知機能、睡眠状態、性格特性、幸福感、食事/栄養素、薄毛/脱毛状態、皮膚状態、体臭、さらには花王が独自技術で収集した皮脂RNAなど、およそ1,600項目のデータの相関関係が統計学にもとづいて訓練されており、いくつかの項目データを入力すると、別の項目のデータが本モデルで計算されたのち出力され、健康状態を簡単かつ詳細に推定することができる。
たとえば、「女性・48歳・身長158センチ」という3つの項目を入力すれば、該当する人物の幸福感や運動機能、ストレス/疲労傾向など、関連付けられた他の項目の推定数値がすぐにはじき出される仕組みとなっている。
「名前や住所など個人情報は入力する必要はない。ユーザーが任意の健康情報を入力するだけで、複数項目の健康・精神状態の値を統計的に算出することができる。ユーザーが健康診断などで自分の健康に関するデータを入手したとして、そのうちのいくつかを入力してもらえれば、その他の健康数値のバロメーターを一目で確認していただくことができる」(鈴木氏)
仮想人体生成モデルには、花王研究所が保有している希少データ、花王が実施した多項目横断試験で得たデータ、健康診断や健康保険のデータなど科学的に裏打ちされた市販の健診およびレセプトデータが使用されている。なかでも、皮脂から採取できるRNAデータは花王独自の画期的な技術だ。DNAのように遺伝で決まっている因子ではなく、RNAは環境によって変化するもので、これまで採取が難しいとされてきた。
データはAPI形式で、企業向けにサービス提供予定
この仮想人体生成モデルの最大の強みは「汎用性」だ。現在、美容業界では肌診断データなど一部のデータからコスメをパーソナライズ、もしくはレコメンドするサービスが登場しているが、仮想人体生成モデルは「肌状態+幸福度」、「肌状態+食事」など、膨大な項目のデータ同士を組み合わせたサービス開発を、API連携によって企業ごとに可能にする。
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