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「米プレステージフレグランス市場12%増の成長」【海外トレンド 2024年7月-8月】

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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流をひも解く。今回は、2024年上半期、前年比8%増を記録した米国プレステージビューティ市場の成長をけん引したフレグランスカテゴリーを取り上げ、好調の理由とプレステージブランド各社が注力する製品を紹介する。


プレステージフレグランス戦略:フェンディは最高級コレクション、シャネルはZ世代に照準、エルメスはベビー&キッズ市場へ

★注目ポイント
プレステージフレグランスの売上はパンデミックが始まった2020年以降、予想を上回る伸びをみせている。外出がままならない状況で心を慰めてくれる自分のための香りから、アフターパンデミックではさりげない高級感や気品を漂わせる「クワイエット(静かなる)ラグジュアリー」がトレンドになり、香水でもその良さを静かに感じさせる高級フレグランスへの注目が高まった。そして今、物価高騰に伴う消費減退のなか、大きな買い物は控えても自分を楽しませてくれる小さな贅沢を求めて、人々の気持ちは再びプレステージフレグランスにスポットライトを当てているようだ。

米国で伸びるプレステージフレグランス、Z世代もその押し上げに貢献

市場調査会社サカーナ(Circana)の調べによると、全体的な消費の低迷基調にもかかわらず、2024年上半期の米国プレステージビューティ市場は前年比8%増にあたる153億ドル(約2兆2,108億円)の売上高を記録した。これをけん引するのが前年比12%増の伸びをみせたフレグランスカテゴリーだ。

出典:サカーナ公式サイト

プレステージフレグランスは高価格帯のなかでも200ドル(約2万8,900円)以上のとくに高額なものと100ドル(約1万4,450円)以下の比較的リーズナブルなものの両方で成長している。つまり、高級ブランドのなかでも最高価格帯のパルファムやオードパルファムが好調なのに加え、3,000ドルのバッグは無理でも、小さな贅沢としてハイブランドのフレグランスを購入することはいとわないZ世代に向けたミニボトルなど、高級感を味わえて、かつ“手の届きやすいアイテム”の人気が高まったとみられる。

一方、米国のZ世代が好むのは高級フレグランスのミニボトルだけではない。彼らは1つの香りだけでは満足しない傾向にあるという。フレグランスは自分らしさを表現するために加えられるべきレイヤーであり、今日は爽やか系の気分だが、明日はちょっとスパイシーさが欲しくなるかもしれない。雰囲気の違う数本のお気に入りのフレグランス製品を持つのは、彼らにとってはデザインや色の異なる服や靴や帽子をいくつもそろえるのと同じことだ。

そのため、若い消費者の間で人気のボディミストやボディスプレーといったカテゴリーでは、平均価格25ドル(約3,610円)未満の製品の売上が前年比の2倍以上になり、このマスフレグランス市場では独立系ブランドが前年比で50%以上成長した。サカーナによれば、こうした若い消費者はマスフレグランス市場に精通しており、高級ブランドの名品フレグランスの代替品となりうる、香りの似た安価なブランドを見つけることが一種のゲームのようになっており、「dupe culture(偽物カルチャー)」トレンドが起きている。

TikTokにはZaraやLidl、Action、Mangoなどのフレグランスを手にした動画が数多くみられ、視聴者はこれらを通して、たとえばZaraの「Gardenia」がイヴ・サンローランの「ブラック OP オーデパルファム」に、あるいは、ディスカウントスーパーLidlのPB製品Suddenly Fragranceの「Lovely」が、ディオールの「ジャドール オードゥ パルファン」に、それぞれ“そっくりな香りに思える”ことを知るとされる。ハイブランドにとっては当然商標権侵害の可能性に目を光らせなくてはならない。だが、模倣かどうかのグレーゾーンで話題になることは、逆説的ではあるが、本家ブランドの製品名が、それを使ったことのない若いユーザーに浸透することにもなる。結果的にプレステージフレグランスのステイタスを押し上げているとの見方もできるのだ。

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