見出し画像

Glossier PlayにKylie Skin、人気ブランドが若年層に向けた「サブブランド戦略」考察

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

欧米ではGlossierやKylie Cosmeticsなど、Z世代やミレニアル世代にカルトな人気を誇るブランドを中心に、サブブランドの発表が相次いでいる。その目的は、購買層やファンのさらなる拡大とともに、消費者を飽きさせないようブランドに新鮮さや深みを与えるところにある。具体的な事例を検証しながら、その裏側にある戦略を探る。

多様な民族・人種で構成されている米国は、美容市場に限らず日本より数多くのセグメントが存在する。そこで、各企業が細分化されたセグメントをターゲティングした結果、いくつものヒットブランドが誕生したが、一方で各ターゲットごとに人気のブランドが固定化する傾向が散見される。

米国の金融機関PiperJeffrayの調査によると、今、米国のティーンに人気のコスメブランドランキング10位以内に入る老舗ブランドはクリニークのみで、大手や歴史のあるブランドは、同世代に人気のモデルをアンバサダーに起用したり、若者に人気の野外音楽フェス、コーチェラ・フェスティバルなどでインスタフレンドリーなフォトブースを出したりと、いかにして若年層を顧客に取り込むかに工夫を重ね、苦心している。

意思決定も早く身軽な新興ブランドは、従来のターゲット層以外の消費者にリーチする施策の1つとして、サブブランドを展開するケースが相次いでいる。今回はそのトレンドと成功事例、そして抱える課題にも触れつつ、今後の美容業界が目指すべき方向について考察する。

Glossier Playがもくろむのは打倒Milk Makeup?

サブブランドの登場が最もファンを賑わせたのはGlossier Playだろう。母体となるGlossierは、Vogueのファッションアシスタントとして働いていたエミリー・ワイス氏が、2010年にはじめた美容をテーマにしたブログ「Into The Gloss」から誕生したコスメブランドだ。2014年の創業以来、アイテムはもちろん、「自社社員が最初の顧客」との姿勢からも伝わる徹底的な顧客主義、そしてソーシャルメディアを通したファンとの信頼関係構築が、米国のZ世代・ミレ二アル世代の心をがっちり掴み、Glossierは今や世界規模でカルト的な人気を誇るブランドに成長した。今年2019年5月にはウォールストリートジャーナル誌がその企業価値評価を120億ドル(約1兆3,000億円)と報じている

これまでGlossierは「スキンケア・ファースト。メイクアップ・セカンド」を理念としたアイテムラインナップが大きな支持を得てきたが、同社が2019年3月にローンチしたサブブランドGlossier Playからは、大粒のグリッターやカラフルなライナーといった、ポイントメイクに活躍しそうな“キラキラした”アイテムが登場し、方向性の違いを示して大きな話題を呼んだ。

出典:Glossier Play 公式Instagram

Glossier Playの創立について、同社のSVPであるアリ・ワイス氏は「新たな“遊び心”の表現方法の一つとしてGlossierを認識してもらうためだ。Glossierの世界観を残しつつ我々の持つクリエイティビティと商品ラインナップを広げたかった」と米メディアのGlosssyに語った。同社によると、Glossier Playの商品購入者の82%はGlossierの商品も合わせ買いしているといい、PlayラインがGlossier本体へのリードとしてもうまく機能していることがわかる。

PlayラインもGlossierのWebサイトから購入可能で、サイト上では特にPlayのみを分けてカテゴライズはしていない。パッケージはGlossierと同じくシンプルなデザインで、異なるイメージを持ちながら同じ世界観をとどめている点は、あくまでユーザーが主体で、各アイテムは彼らを引き立たせるためのツールにすぎないという共通点を持っているからだろうか。

もともとGlossierというブランドを後押ししたのは、スキンケアに重点を置き、素肌(または素肌を活かしたナチュラルメイク)をベースにしてポイントメイクを楽しむ「ミニマリスト・メイクアップ」とも呼ばれる手法で、それまで米国で人気だったファンデーションにコントゥアーを施す立体的なフルメイクアップに対するカウンターカルチャーとしてますますメジャーになってきており、そのムーブメントを主導しているのがこのGlossierとMilk Makeupである。

Milk Makupは創業こそGlossierより6年遅い2016年だが、スタート当初からスキンケアに加えてメイクアップアイテムのラインナップにも注力していた。また、米国では、GlossierとMilk Makeupのどちらもファンだというユーザーが多く、Milk VS. Glossierといったレビュー動画も多い。そういった ことからも、今回のPlayラインはMilk Makeupの存在を意識したようにも感じられる。

インフルエンサー発ブランドも商機逃さず

インフルエンサーがプロデュースするブランドからサブブランドがローンチされる事例も相次いでいる。米国ティーンの間で絶大な人気を誇るセレブリティー、カイリー・ジェンナーが手掛けるブランドKylie Cosmeticsは、彼女のアイコンともいえるふっくらしたリップメイクや陶器肌を実現するアイテムが揃うラインナップが人気の秘密で、新商品は発売後1分で完売というような熱狂的な支持を得るブランドだ。

次いで、カイリーが2019年にスタートさせたのはスキンケアラインKylie Skinである。スキンケアラインでは一転してクリーンなイメージを打ち出し、クルエルティフリー、ヴィーガン、パラベンフリー、皮膚科医のテスト済など、原材料に対するこだわりを全面的にアピールしている。

コスメティックとスキンのWebサイトは相互リンクされているものの、完全なる別ブランドとして異なるブランドイメージのもと展開されている。11月にグッチ、クロエやマーク ジェイコブスなど多くのデザイナーズ・ビューティープロダクトを手掛けるコティが、カイリーのビューティー事業の株式51%を取得し、パートナーシップを締結すると発表した。商品開発やマーケティングに関しては、引き続きカイリー率いるチームがイニシアチブをとるとしながらも、今後は国内外のセールスにより注力していくことが予想される。

図1

図1

Kylie Skin (上)
 Kylie Cosmetics(下)
それぞれ異なるブランドイメージ

またメイクアップアーティスト、フーダ・カタンが運営するコスメブランドHuda Beautyが、2018年にリリースしたフレグランスブランドKayaliも話題となった。Kayaliは資金面や販路はHuda Beautyと共有しながらも、商品開発からマーケティングチームまで、実際の運営は異なるチームで行っている。カタン氏はInstagramとYoutubeをあわせて4,300万人以上のフォロワーを擁しており、購買意欲の高いファンがそのまま、横展開させたフレグランスラインに手を伸ばす導線が敷かれている。

図1

Kayaliのフレグランス
出典:Huda Beauty 公式Instagram

ミレ二アル・Z世代を狙うには「クリーンさ」がカギ

既存の大手ブランド事例としては、仏発のラグジュアリー化粧品ブランドとして認知度の高いクラランスが2019年1月にローンチしたマイクラランスだ。ミレ二アル世代をターゲットにしており、同社のマリエ・ヘレン・ライアー氏はGlossyに対して「若い消費者は、肌にもよりバランスの取れたヘルシーなコスメを求めている。マイクラランスはそんな層に向けた植物由来の原材料を使用したクリーンなブランド」と、サブブランド発足のきっかけについて語った

図1

本ラインよりフレンドリーなイメージの
マイクラランス。
ほとんどの製品が
25ドル(約2,700円)以下の価格
出典:クラランスの公式サイト

先日の資生堂による米スキンケアブランドDrunk Elephant(ドランクエレファント)買収のように、大企業が特定の分野に秀でた新鋭企業を迎え入れるケースもみられる一方で、クラランスのように歴史、膨大なデータ、そして潤沢な資金力を持つ企業が、新規ブランドを出す際には研究開発からマーケティングまで自社で一貫して行う場合もある。

マイクラランスは、大手百貨店Macy'sや、Z世代のあいだで最も人気の高いコスメ小売りUlta Beautyなどの既存販路に加え、若い世代に人気の英国発オンラインセレクトショップASOSからも購入でき、ASOS出店はクラランス史上初の試みとなることから、同社の本気度がうかがわれる。

また、2月にはミレ二アル世代に多くのファンを持つTarteが、Z世代をターゲットにした低価格帯ブランドSugar Rushをリリースしたことも記憶に新しい。Sugar Rushはメイクアップとスキンケアアイテムがどれも30ドル(約3,200円)以下とリーズナブルな価格に設定。そのうえで、Tarte同様すべての原材料がクルエルティフリー、パラベン・グルテンフリーで、本ラインよりもヴィーガンフレンドリーなアイテムのラインナップが目立つなど、クオリティー面で劣らない。

シュガースクワッドと呼ばれるブランドアンバサダーには、あえてプロではないモデルを起用し、Sugar Rushの使い方をSNS上でシェアしてもらうなど、親近感のあるフレンドリーなイメージづくりも特徴的だ。またTarteはSephora、Ulta Beautyの両店で購入可能なのに対し、Sugar Rushに関しては、母娘世代にフレンドリーなUlta Beautyと同社公式Webサイトにのみ販路を絞っている点もZ世代の消費行動を意識している。

図1

TarteのWebサイト上にある、
コレクションの1つとしての
Sugar Rushのページ。
お菓子をイメージした商品など、
本ラインより可愛さを重視
出典:Tarteの公式サイト 

ここまで紹介したのは、いずれも若年層をターゲットにしたマーケティング施策だった。美容メーカーがこの世代の獲得に力を注ぐのは、米国のZ世代は約9,100万人、ミレ二アル世代は約7,200万人と数が多く、彼らが最も購買力を持つからにほかならない(データ会社Statistaの2017年の調査より)。

その一方で、多くのブランドが支持を得るのに苦戦している世代がいる。現在40歳以上で、米国に約6,500万人いるというX世代だ。このX世代に向けてのブランドについては次の機会に取り上げたい。

Text: 橋本沙織 (Saori Hashimoto)
Top image: Dmitry Zimin via Shutterstock

ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
14
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

BeautyTech.jp記事
BeautyTech.jp記事
  • 498本

BeautyTech.jpのすべての日本語コンテンツはこちらからご覧いただけます