見出し画像

クラシエが放つ累計350万回再生のヒット動画広告の秘密は「口出しなし」

◆ English version: The secret to Kracie’s 3.5M YouTube views
New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

クラシエホームプロダクツ株式会社(本社:東京都港区・以下クラシエ)は近年、YouTubeやC CHANNEL、Instagramなどあらゆるプラットフォームを活用した動画広告に力を入れている。恋愛ドラマ仕立てのオリジナル作品を制作し配信するなど、動画広告にかける思いは強い。累計350万回再生を超える広告もあるというクラシエに、ヒット広告が生まれるまでの裏側を聞いた。

UUUMとの出会いで動画広告に本腰

クラシエは旧カネボウの流れを継ぐ会社で、創業は明治20年と老舗中の老舗だ。ヘアケア、フェイスケア、ボディケアなどのトイレタリーや、食品、医薬品と扱う商品の幅は広い。これまではマス広告を中心に展開してきたが、ここ最近はYouTubeやC CHANNELなどのプラットフォームを活用した「動画広告」にも力を入れている。理由はいろいろあるが、テレビを見ない若年層へのリーチがその一つだ。

写真:人気クリエイターとのコラボ例

近年、YouTube等でオリジナル動画を制作し、配信するクリエイターが注目されていることもあり、人気クリエイターとのコラボ動画に対する企業からの視線は熱い。クラシエもその一社だ。以前から注目していたというが、人気クリエイターを多く抱え、彼らのセンスを活かした動画プロモーションを提案するUUUM株式会社(本社:東京都港区)との出会いにより、その思いは強くなった。

「クリエイターは昔のラジオパーソナリティーのような感じで、視聴者との距離が近い。テレビに出ているタレントやモデルよりも、自分との距離が近いと感じている」。そのようにUUUMから説明を受け納得したと語るのは、宣伝・販促部長の丸山誉高氏だ。

今でこそクリエイターの影響力は多くの人が知るところだが、実際それを企業として活用していくにはいろいろとハードルがあるように思える。なぜなら、YouTubeには旧来のテレビCMにはない独特のカルチャーがあるからだ。

人気クリエイターとのコラボでヒット作続々。売り上げにも貢献

クラシエ発の動画広告の中でヒット作となった「恋愛ドラマ仕立て」の企画は、誤解を恐れずに言えば、同社の「古き良き堅い企業」のイメージを覆す、いわゆる「おふざけ」要素を持ったYouTubeらしい動画と言えるだろう。

一見、思い切った施策のようにも見えるこの動画広告だが、2018年5月3日の時点で、150万回再生を突破するヒット動画となっており、多くの視聴者から支持されている。こちらは人気クリエイター関根理紗さんと東海オンエアさんとのコラボ動画で、もう一本、同じく人気クリエイター河西美希さんと東海オンエアさんを起用した別バージョンもある。こちらも200万回再生を超える人気動画だ。

それぞれボディケア用品「ナイーブ」と「ラメランス」をPRしている。公開初日で50万回再生を突破し、現在でも、「2本合わせて毎日1万ずつ再生回数が伸びている」(宣伝・販促部 七森有貴課長)という。

もう一つ、国内でも最も知名度があるクリエイターのひとり、HIKAKINさんを起用した動画広告もある。こちらは前述した、関根理紗さん、河西美希さんが、男性のHIKAKINさんに女性風のメイクを施したり、逆にHIKAKINさんが女性2人にメイクをしたりという内容になっている。

PRしているのは、ふきとり水クレンジングの「CREER(クリー)」だ。動画の最後に、クリーを使ってメイクを落とす様子を披露している。この広告では、しっかりメイクした後でも、楽しみながらコットンでスルッと落とせる商品であることを訴求したかったという。

(写真:ふきとり水クレンジングの「CREER(クリー)」)

HIKAKINさんは子どもからの人気が高いこともあり、狙っている「若年層の女性」にも見てもらうため、その世代から支持される女性クリエイター2人も合わせて起用した。その結果、2本の動画はそれぞれ270万回、120万回と再生回数を伸ばした(2018年5月3日時点)。

同社は動画広告のKPIは再生回数に置いているというが、売り上げにも変化があった。クリーの動画広告配信後、「前週比120%で売り上げが伸びた」(七森氏)のだ。

「メーカーが『こう使うんですよ』とハウツーを披露しても、なかなか視聴者に響かないこともあるが、(視聴者が信頼している)クリエイターが説明することで、使用シーンや仕上がりといった商品の良さを伝えることができた」と、丸山氏は人気クリエイターに発信してもらうメリットを説明する。

ヒットさせたいから、「あえて口出ししない」

上記に挙げた動画広告の再生回数が伸びたのは、ヒット動画のノウハウを多く有するUUUMのサポートによるところも大きいが、クラシエによると、UUUMから伝えられていた事前予想をも上回る結果になったという。

ヒットした理由について、クラシエはどう見ているのだろうか。

丸山氏、七森氏、両氏が口を揃えて言うのは、「ヒットさせたいから、あえて『口出ししない』」という姿勢だ。両氏によると、動画広告で一番大事なのは、「キャスティング」、そして「コンテンツ」だという。なぜならクリエイターを起用するということは、彼らに紐づくファンがそのまま視聴者になることを意味するからだ。

写真:共に動画広告の可能性を感じていると話す宣伝・販促部の七森有貴課長(左)、丸山誉高部長(右)

ふきとり水クレンジングの「クリー」は、10〜20代の女性客をメインターゲットにしている。起用したクリエイターの関根理紗さん、河西美希さんは、クラシエが狙う年代の女性が、ファン全体の35%を占めている。つまり同社からすれば彼女たちの動画を配信することで、潜在顧客に視聴してもらう可能性が高くなるのだ。

口出ししないことでヒット動画になり、そのこと自体がいままでアプローチが難しかった潜在顧客の掘り起こしにつながるわけである。

各クリエイターは、どういうコンテンツを配信したら自身のファンが喜ぶかを熟知している。だからクラシエとしては、最低限の「NGワード」や「言って欲しいワード」などを伝えるだけで、細かい点において、あえて口出ししなかったという。

たとえば東海オンエアさんと関根理紗さんとの動画では、東海オンエアさんが上半身裸でふざけ合うシーンがある。これまでの企業イメージにはない内容に社内からは不安視する声も挙がったというが、説得し、押し通した。それもすべて、「ファンに受けるノウハウは彼らが持っている」と理解しているからだ。その結果が累計350万回突破という数字になって現れた。

10分弱とやや長めの動画の最後に商品紹介を入れているが、最後まで見る視聴者は多いという。「恋愛ドラマ仕立てなので、テレビを見ているような感覚だからではないか」と丸山部長は分析する。

テレビはブランディング。商品によって使い分けていく

動画広告に限らず、デジタルにかける予算の割合が増えてきているという同社。商品によっては全予算の100%を投下することもある。しかしいくらウェブメディアが伸びてきているといっても、リーチに限界があるのも事実だ。

「日常的に使う消耗品はブランド力が必要になるので、商品によってはテレビを使わないといけない。高級車の場合でも、ターゲティングを考えるならウェブだけでも十分なはずだ。でもなぜテレビを使うかというと、一般の人に対するブランド力を作らないといけないからだ」(丸山部長)。

買わない人でも、「そのクルマは知っている」。つまりはそれこそがブランド力で、ブランド力がなければクルマの購入を検討する人の後押しはできない、ということだ。

ただテレビCMだけ放映していればいいかというと、そういうことでもない。若年層のテレビ離れは深刻だ。そこを補填する意味でも動画広告を使い、普段テレビを見ている人にもより深く訴求するために利用する。クラシエではテレビCM用に制作したものを動画広告に使うケースもあるといい、それぞれのプラットフォームに合わせて適した動画を配信している。

これまでの経験から動画広告の可能性を感じており、今後もSNSとの連携など、「共感してもらいやすい動画を作り、どんどん広めていきたい」(丸山部長)と意気込みを見せる。また、「常に新しいものを探っていきたい」と、動画に限らずデジタルを活かした取り組みは今後も前向きに検討していく構えだ。

動画広告の使いみちは「若返り施策」にもあり?

今回話を聞き、取り組みとして興味深いと思った動画施策の一つに、ヘアスタイリング剤「プロスタイル」シリーズを擬人化した動画プロモーション企画「あるある女子図鑑」がある。

コラムニストの犬山紙子さんが脚本・監修を手がけ、「ウェットスタイル」「スーパーストレート」「ナチュラルウェーブ」など、それぞれの商品を大人の女性にしたらという前提でショートムービーを公開。それをFacebook、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディアで拡散させた。2017年の公開当時は、Twitterと連動したプレゼントキャンペーン企画を展開していた。

このような企画を行った背景には、「若返り施策」がある。プロスタイルシリーズは長年の愛用者が多く、40〜50代の利用が目立つという。若い世代にもプロスタイルシリーズに興味を持ってもらえればと、元アイドルで女優の真野恵里菜さんを起用し、身近にいそうな8人の女性のショートストーリーを公開した。

女性の前向きな姿勢を感じさせるストーリーが好評

この企画が好感を持って受け入れられたのは、「前向きな姿勢」にある。動画はどれも商品の特徴を活かしながら、女性が前向きに変わっていく姿が描かれている。結局スキンケアなりヘアスタイリング剤なり、女性がこうした美容商材を利用する理由は、「キレイになりたい」「自分らしくありたい」ところにあるはずだ。8本の動画の中で特に印象的だったのは、真野恵里菜さん演じる、“ゆるふわ女性”が、「ネイルは男性のためしているんじゃない」と言い切る姿だ。誰かのためじゃない、自分のためにおしゃれを楽しみたいという、現代女性の姿を上手に表現している。

制作側やクリエイターの思いがこもった動画は、視聴者の心にスッと入ってくる強さがある。商品や情報が溢れかえった今だからこそ、動画広告は企業が消費者に何を訴えたいのかを、直接的にも間接的にも伝えるまったく新しい媒体だ。しかも、スチール写真やテレビCMのような短尺では難しかった「遊び心」を発揮しやすいという特性もある。

時代や顧客の興味関心に合わせて、どう「面白さ」を追求していけるか。そしてそれを「炎上」ではなく、理想的な形で広められるか。どんな企業でも、どんな商材でも、その存在やよさをしっかり広めていくには、時代の空気をまとった創造性が必要だ。それがいまは、YouTubeをはじめとする動画にあるのは間違いない。

Text&photos: 公文紫都(Shidu Kumon)
Top image: Shutterstock.com

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
12
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp