LINEで相談、深部体温測定デバイスなど、日本の妊活サポート最前線

◆ English version: Femtech: at the forefront of fertility support in Japan
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グローバルでは2025年までに5.5兆円規模になると言われているフェムテック市場。日本ではフェムテックの知名度はまだ低いが、不妊治療を受ける人が増加しており、テクノロジーを活用した妊活サポートを提供するスタートアップが出てきている。この分野はフェムテックとしてもホットな領域だ。今回は日本のスタートアップ「ファミワン」と「HERBIO」の妊活サポートを紹介したい。

日本の女性をとりまく妊娠・出産の現状

出産に関する日本の現状をみると、女性の社会進出に伴って晩婚化・晩産化が進み、子どもの数は減少の一途をたどっていることがわかる。内閣府のデータによると、女性の平均初婚年齢は2015年で29.4歳、出生時の平均年齢が第一子で30.7歳と、それぞれ30年前より3.9歳、4.0歳上昇。出生数は、2018年で92万1,000人と過去最小を更新し、2017年の出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率)は1.43と2年連続で低下している。(出典:厚生労働省人口動態統計より)

第1-1-9図 平均初婚年齢と
出生順位別母の平均年齢の年次推移
平成29年版 少子化社会対策白書より

生き方が多様化しているため、子どものいないライフスタイルを望む人も増えている。しかし、調査によると「理想とする子どもの数が0人」という夫婦の割合は2.7%と少数派で、結婚した女性で子どもがいない、あるいは1人いる25〜34歳の場合、約8割が出産したいという希望があることがわかる。

一方で、不妊治療の1つである体外受精と顕微授精による出生児は2006年の約2万人から2016年には5.4万人と増加している。ただし、費用は高額だ。国は特定不妊治療支援事業として高額な医療費の一部を助成するなどの対策を図っているが、妊活のさまざまなステップにおいて、金銭面だけでなく、身体的にも精神的にも困難を伴うことが多く、そのほとんどの負担が女性側に集中する。妊活サポートが担うのは、妊活初期から後期までにおけるよりきめ細やかな課題解決だ。

LINEで気軽に相談ができる妊活コンシェルジュ「ファミワン」

妊活に取り組む夫婦が、LINEで気軽に妊活のサポートを受けることができる「ファミワン」は、専門家からそれぞれの課題によりそった的確なアドバイスが届くサービスだ。専門家には不妊症看護認定看護師やNPO法人Fine認定ピアカウンセラーなどが在籍しており、信頼性も高い。

2018年3月にスタートしてから登録者数は順調に伸びており、小田急電鉄が福利厚生として正式導入するなど、企業との連携や問い合わせも多い。基本機能は無料で、入力した妊活チェックシートの内容に基づくアドバイスや病院選びの相談が受けられる。月額3,980円のプレミアムプランで電話相談やテキストでの自由相談が可能だ。妊活をこれから始めようと考えている人から体外受精を受けている人まで幅広いユーザーが登録しているが、満足度は高く93%の人が「またアドバイスを受けたい」(N=454、同社調べ)と回答している。

そもそも「子どもがほしい」と妊活にふみきっても、どこから始めていいのかわからないという人は多い。ネットでは情報が氾濫しており、とくに個人差のある身体のことに関しては自分に当てはまる情報を探しづらく、人にも相談しにくい。その結果、妊活のスタートが遅くなったり、本来必要のない負担が生じて非効率な取り組みになってしまうことも多い。こうした現状をふまえ、相当数の夫婦のヒアリングを経て、改善を重ねてサービスがつくりあげられている。そこには、創業者である石川勇介氏の妊活・不妊の実体験からくる、まっとうな形で夫婦の妊活に寄り添いたいという強い理念がある。

株式会社ファミワン
代表取締役社長 石川勇介氏

実際に、ユーザーからは「誰にも言えなくて不安だった」「(ファミワンからのアドバイスを)何度も読み返している」「(専門家からのアドバイスに)涙があふれてきた」という声が届いているという。妊活では、信頼できる人に話を聞いてもらうということが、いかに当事者の不安を拭うかがわかる。また、妊活を始めたばかりの夫婦で、まだ特に相談したいことがない段階であったとしても、これまでの妊活の振り返りや参考情報収集の一つとして専門家のサポートを利用することはとても意味があるという。

結婚しても仕事を続ける女性が多い今、時間的制限からも妊活のために医療機関を受診するハードルは高い。また、受診しても診察時間中に医師にゆっくり相談ができるとは限らず、セカンドオピニオンを得られる機会も少ない。身近なLINEを活用したファミワンの登場は、出産を望む夫婦にとって大きな存在になりそうだ。

不妊や妊娠に詳しい医療ライターの山本尚恵氏も、「女性にとって、婦人科や不妊専門のクリニックを受診するハードルはまだまだ高い。妊娠に関する何気ない疑問や悩みをスマホから専門家に相談できるサービスは、婦人科受診のハードルを下げる効果と専門家による適切な情報提供がされるという2つの面でメリットがある」と語る。

排卵日予測がラクになる基礎体温計測のウェアラブルデバイス「Picot」

妊活の悩みを気軽に相談できないのと同じように、生理の悩みも人に打ち明けにくい。また、将来妊娠を望むのであれば自身の月経について正しく把握し理解しておくことは重要だ。

基礎体温計測のウェアラブルデバイス「Picot」を開発したHERBIOの代表・田中彩諭理氏は、自身も月経痛と重いPMS(生理前症候群)に悩まされてきた。生理時期を予測するために基礎体温を計り始めるも、毎朝の計測が継続できず挫折。PMSや生理の辛さを周囲に対してずっと隠してきたという。

また、自宅で介護していた祖父の急な発熱に気づくのが遅れ、肺炎で亡くしてしまった経験からも、内臓など体の内部の温度に着目し自動的に計測できる方法はないかと考え始め、IoTを使ったウェアラブルな基礎体温計を作ることを決意。女性の体温を専門とする早稲田大学人間科学学術院助教の丸井朱里氏(当時、同大学博士課程)を論文検索サイトから探し出し、熱い思いを共有。2017年9月に丸井氏をパートナーに迎え、会社を設立した。

株式会社HERBIO
代表取締役 田中彩諭理氏

基礎体温は、不妊の理由を探る意味でも、妊活の早期の段階で取り組むタイミング法においても基本となる必須データだ。生理周期が不安定でも基礎体温によって排卵日がある程度把握できるため、基礎体温をつけることは、妊活をスタートした女性の最初のステップといっていい。しかしながら、基礎体温は毎朝決まった時間に体温計を口にくわえて計測しなければならず、妊娠を希望している女性(2,570万人 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」より)の8割が継続測定できていない(HERBIO調べ)というデータもある。妊活の最初から基礎体温でつまずく女性は多い。

1) “数字”で読み解く、今ドキの
妊娠&出産事情 (日経ウーマンオンラ
イン 2011年10月19日)
2) HERBIO調べ

すでに国際特許も出願済みという「Picot」は、4cmほどの500円玉大のウェアラブルデバイスで、寝ているあいだの深部体温を10分置きに自動計測。また、今後は心拍・体動・呼吸も連続計測し、異常検知やアラート機能も搭載予定である。これによって排卵のリズムや生理日の予測のほか、不妊体質の予測や疲労度、熟睡度といった生体情報が把握できるという。

体温の測定箇所は今春を予定しているリリースまで非公開だが、男女ともに違和感のない場所で、舌下の測定と変わらない有用なデータが取れることが実験によりわかっている(HERBIO調べ)。また、入浴後に装着し、次の入浴のタイミングではずしてつけかえるという日常生活に違和感なく組み込める使用法を想定しているという。販売価格は5,000円程度を予定しており、今春にも100台を製造し企業等と共同研究を開始、2020年秋に一般発売を目指す。初年度売上は800台、2022年には10万台の販売を目標としている。

田中氏によると、就寝中の体温からは排卵日や生理周期のほかに、さまざまな健康状態がわかることが研究によって明らかになっているという。たとえば鬱疾患をもつ人はそうでない人と比べて体温が高い傾向にある。また、乳児の死亡理由の第3位であるうつ熱(衣服内熱中症)のように、体温調節がうまくできず高体温になってしまうような状態や、熱性けいれんが起こる前にも体温を感知すればアラートで知らせることができる。

うつ病患者の体温の日変化
(出典:テルモ体温研究所

ウェアラブルデバイスによって手軽に持続的な生体情報が得られることによって、あらゆるシーンで包括的なサポートが可能になる。それは、妊活をはじめた女性だけでなく、将来的に妊娠を望むカップルが早い段階から妊娠・出産の知識を持ち、体への健康意識を高めていくプレコンセプションケア(将来の妊娠を考えながら女性やカップルが日常の生活や健康に向き合うこと)や、女性の更年期、介護など、一生涯にわたったヘルスケアの有効な手段だ。

テックを活用した“妊活サポート”の登場が時間と意識を変える

山本氏は、日本女性の「生理のときはつらくて当たり前」という思い込みが、受診の機会や適切な治療を遅らせる結果となり、不妊につながる可能性は否定できないと指摘する。月経痛やPMS(生理前症候群)は、日常生活に支障がでたり本人に不安があるならば本来治療に値するものだ。日頃から婦人科を受診して生理や自身の体調について専門家である医師と自分自身が把握していれば、いざ妊娠したいというときもスムーズにプランが立てられる。

日本のフェムテックの普及が海外と比べてゆるやかなのは、医療システムの違いもさることながら、こうした意識の差によるものが大きいのではないだろうか。「テクノロジーの進歩によって月経痛や不妊のケアに取り組みやすくなり、多くの人が当たり前のように早期から取り組むことで、将来的に『どうしたらいいかわからない』と悩む人がいなくなることを願う」と山本氏がいうように、日本の忙しい女性たちがないがしろにしてしまいがちな“自分の心と体に向き合う時間と意識”を生み出すきっかけづくりにもなる妊活サポートは、市場も大きくビジネスチャンスも広がる。さらに幅広い分野で新しいサービスが期待される。

Text:佐々木彩子(Ayako Sasaki)
Top image: Photo by Mahkeo on Unsplash

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BeautyTech.jpは、BuzzFeed Japanとコラボレーションして、ビジネスチャンスの大きい新しい市場として世界的に注目を浴びている「フェムテック」をテーマとした記事キャンペーンを展開。国際女性デーにちなんで2019年3月8日(金)〜31日(日)、フェムテックに関する記事を積極的に配信するほか(記事一覧はこちら)、花王ロリエ&めぐりズムの協賛のもと、Twitterのハッシュタグ「#わたしの本気はすごい選手権」を使ったアワードを実施いたします。

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