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仏ビューティテックフォーラムで語られた非接触リテールと中国市場の最新トレンド

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パリでPerfect Corp.がCEWフランス支部と共催したウェビナーイベント「The Global Beauty Tech Forum」。美容業界でもDXの確立が急がれるなか、各社のデジタル施策や、各ブランドが注目する中国市場トレンドを俯瞰できるフォーラムとなった。

The Global BeautyTech Forumとは

Perfect Corp.が主催する「The Global Beauty Tech Forum」が2020年10月2日にパリで開催され、同社が進める最新デジタル技術によるパーソナライゼーション、美容業界のデジタルトレンドの紹介や、リアル店舗での非接触テスターの現状、提携するアリババグループによる中国市場戦略などが語られた。本来は今年3月にパリ市内の会場で開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオンライン配信となり、130名が視聴参加した。

Perfect Corp.は、最先端のAR/AI技術を応用したバーチャルメイクアプリ「YouCam」シリーズをグローバル展開し、メイク、ヘアカラーなどの高精度なバーチャル・トライオン、肌診断など、美容におけるデジタル体験を提供している。同社が開催する「The Global Beauty Tech Forum」は、最新の美容テクノロジーについて発表する場であり、2018年東京での開催を皮切りに、ニューヨーク、上海と開催地を広げ、パリでは美容業界の管理職のための国際組織、コスメティック・エグゼクティブ・ウーマン「CEW」のフランス支部と共催して、大手化粧品メーカー、スタートアップ、リテールなどに向けて、最先端のビューティテック情報が発信された。

Perfectが示すコロナ禍のカスタマーエンゲージメント

コロナ禍で世界的にデジタル化が加速し、企業のD2C戦略の強化やデジタル施策によるカスタマーエンゲージメントの見直しが急務となっていることを受け、フォーラムの冒頭では、Perfect Corp. CEOのアリス・チャン(Alice Chang)氏が同社の最先端技術を活用したサービスについて語った。

Perfect Corp.創業者のアリス・チャン氏

6月に発表されたGlobalWebIndexの調査によると、3人に1人は「化粧品をオンラインで購入したい」と、また22%が「購入前にバーチャル・トライオンで商品を試したい」と回答しており、その割合はコロナ以前よりも増加している。Perfect Corp.のARによるメイクアップや髪色のバーチャルな試用や、AI肌診断とその診断結果にもとづいた商品のレコメンデーションは、すでに店舗、モバイル、ECサイトなど、オムニチャネルで幅広く活用されているとチャン氏は説明。さらにAR技術はインタラクティブなライブ配信にも搭載され、ライブストリーミング、美容部員との1対1のオンライン・カウンセリング、社内トレーニングの場でも利用されているとした。

たとえば、Perfect Corp.とパートナー契約を結んでいるエスティ ローダーは、ARトライオンの導入後、口紅のコンバージョン率が2.5倍増加し、顧客ロイヤリティも上がっている。また、ARを使ったライブ配信を美容部員の社内トレーニングに導入しており、すでに1万7,000人が利用している。

さらに、4月からパートナーとなったLVMH傘下のMAKE UP FOR EVERでは、ARバーチャル・トライオンを、自社公式サイトに加えて、セフォラ内のWebサイトページ、中国のWechatやTmall 、GoogleやYoutubeなど、チャネルを超えて提供している。ここには、顧客を自社サイトに囲い込むのではなく、顧客の日常生活におけるすべてのタッチポイントに働きかける戦略だ。

ヘンケルと共同開発の髪色トライオンアプリChoicify

顧客にとっての利便性を第一に考えるサービスとして、独ヘンケル がPerfect Corp.と共同開発したセルフ・カラーリング剤の髪色バーチャルトライアプリChoicify の例が、ヘンケルのニルス・デーク(Nils Daecke)氏により紹介された。アプリ上で自撮り画像、もしくはモデル画像を選ぶと、顔の半分にカラーリングのシミュレーションをのせて比較検討ができる。豊富なカラーバリエーションから好みの髪色を選んで、かつ、現在の髪色と白髪の比率を入力すると、なりたい髪色に導く商品が提案されるサービスだ。ヘンケル社だけでなく、競合他社の商品も含め幅広くラインナップすることで、ユーザーの選択肢を広げ、より好みに合う製品を購入することを可能にしているという。

さらに、Perfect Corp.のチャン氏は近い将来、アルゴリズムの一種であるGAN(敵対的生成ネットワークGenerative Adversarial Network)により、エイジング・シミュレーションのサービスを実現すると明かした。この機能が付加されると、スキンケア商品の場合、消費者はアプリ上でAI肌診断をしたあとに、数年後の自身の肌状態の予測ヴィジュアルが確認でき、その肌トラブル(老化)を事前に防ぐために必要な商品のレコメンデーションが受けられる。テクノロジーの進化により、未来予測という新しい「体験」が生まれるわけだ。

ビューティテック最新トレンド:ライブコマース

フォーラムでは続いて、米国のトレンド・エージェンシーFashion Snoopのシャルロット・デロベル(Charlotte Delobelle)氏により美容業界のデジタルトレンドが紹介された。同氏は「コロナ禍で美容業界もデジタルへのシフトが急速に進んでいるが、バーチャルな世界においてもヒューマニティ(人間性)が共存している」と分析し、ライブコマース、ゲーミング、バーチャルストア、プラットフォームの新しい活用方法について語った。

まず1つ目のトレンドは、ライブ配信によるEコマースだ。中国ではストリーミング動画をライブ配信してその場でアプリ上で決済・購入ができるライブコマースが活況を呈している。ロレアル、エスティ ローダーといったグローバル大手企業も積極的に参入しているほか、ソーシャル・ショッピングネットワークtalkshopliveなど、商品説明やチュートリアル動画をライブ配信して商品を販売する新しいプラットフォームも登場している。

視聴者は動画配信中に自由に質問ができ、リアルタイムで回答を得られるため、実際に商品を試さずとも、納得したうえでの購入ができる。ライブコマースは短時間で高額の売上が見込めることもあり、EC戦略の重要なツールとなっている。

ビューティテック最新トレンド:ゲーマーへのアプローチ

また、化粧品企業によるゲーマーコミュニティへの積極的なアプローチがみられるのも最近の特徴だ。App Developer Magazineによると、グローバルのゲーマー人口の65%を女性が占めるといわれており、複数の化粧品ブランドが人気ゲームとコラボレーションしている。

たとえば、M・A・C Cosmeticsは、プレイヤーが“シム(アバター)”と呼ばれるキャラクターを自分の好みでメイキングして操作し、その日常生活に介入する人生シミュレーションゲーム「シムズ 4」と提携している。このゲームはシムのルックスや個性をカスタマイズできるのが特徴で、ゲーマーは、M・A・C Cosmeticsのファンデーション、アイシャドー、口紅などを使って、アバターをパーソナライズすることができる。

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また、ニンテンドースイッチのゲーム「あつまれどうぶつの森(あつ森)」では、ジバンシイがキャラクターの顔に入れられるブランドロゴや、リップ型のメイクアップデザインを提供したり、女性用カミソリのジレット・ヴィーナスが、キャラクターの肌をカスタマイズするために、インクルーシブを意識した多様なオプションを提供するなど、バーチャルな世界でも自分のアイデンティティを表現したいデジタルネイティブ世代に向けた施策を試みている。

ジレット・ヴィーナスの
インクルージョンを配慮した
Skinclusive summer Line

ビューティテック最新トレンド:3Dバーチャルブティック

また、ラグジュアリーブランドでは、バーチャルブティックの開設や、リアルとデジタルを融合したフィジタル、またOMO施策などが進んでいる。

バーチャルブティックは、2020年2月にLVMH傘下ディオールの最高級フレグランス「メゾン クリスチャン ディオール (Maison Christian Dior)」が、パリ・シャンゼリゼ大通り店を再現した3Dバーチャルブティックをオープンしたことで話題となったが、今年8月にはロレアル傘下のランコムがシンガポールの公式サイト上で、期間限定のバーチャルポップアップストアをオープンし、フィジタルな3D体験を提供した。

このバーチャルストアは同ブランドの美容液「Advanced Génifique」の販促キャンペーンの一環で、消費者は「Discover(発見)」「Explore(探求)」「Inspire(インスパイア)」「Live(ライブ)」「Shop(購入)」の5つのゾーンをバーチャルで訪れながら、性格判定テストや肌診断が受けられ、著名人や専門家によるライブ動画を視聴するなど、同ブランドのコンセプトを反映した体験型コンテンツが多数用意された。自宅にいながらリアル店舗を訪れたような感覚と同時に、デジタルならではの特別な顧客体験を提供できるバーチャルストアは、リアル店舗に足を運びにくい状況において、顧客エンゲージメントをキープするのに効果的だ。

ビューティテック最新トレンド:シームレスな購買体験

また、現代の消費者は自身にパーソナライズされた情報をより効果的に得て、欲しいと思ったときにすぐに購入できる環境を求めている。そこで、1つのプラットフォームでさまざまな体験を享受し、購入まで完結できる統合的なソリューションの導入が急務だ。すでにInstagramやFacebookショップでは画像をタップしてシームレスに商品購入ができる仕組みを構築しているほか、TikTokがライブコマース「TikTok LIVE」をスタートしたり、Pinterestが画像、ビデオ、ボイスオーバー、オーバーレイテキストのページを複数組み合わせる「ストーリーピン」を始めたりと、各プラットフォームが次々と新しい機能を実装している。

こうしたなか、エスティ ローダーではWhatsAppのチャット機能を通して、顧客にパーソナライズしたアドバイスや情報を提供するなど、インタラクティブなプラットフォームを活用した施策が試みられていることが紹介された。

また、ECでの支払い方法も、Afterpay、PayBright、Klarnaなど、無利息で分割支払いできるといった柔軟なオプションを持つ、後払い決済サービスが複数登場しており、支払い条件や利便性の向上により、ECでの購入がさらに促進されると見込まれる。

リアル店舗における非接触ソリューション

続いて、リテールのソリューションを提供するMeiyumeによる、リアル店舗で使用できる非接触テスターの事例が紹介された。非接触のテスターは、顧客はもちろん、店舗で働く従業員の安全を守るツールでもある。同社は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、実店舗で消費者が商品を安心して試せるよう、手をかざすと自動で化粧水などの液体が噴出されるテスターをいち早く開発した。

スキンケアのテスターは、手をかざすと適量の美容液が出るモーションセンサーによるディスペンサーで、電池式で設置する場所の自由度が高く、デザインもブランドに合わせてカスタマイズ可能だ。また、フレグランス用のテスターは、センサーによりスプレーのヘッド部分が押される仕様で、装置に製品をそのまま置くだけなので、テスター用の特別なパッケージボトルを製造する必要がない。ファンデーション用のテスターは、現在のところシェードごとにセットアップするスタイルで開発中だ。

非接触テスター(例)Meiyume

Meiyumeが開発した
非接触テスターのイメージ。
スキンケア、フレグランス、
ファンデーションのソリューションを持つ

テスター以外のソリューションとしては、スマートフォンがキーとなる。今まで実店舗ではタッチパネルを設置して、さまざまな情報を提供していたが、パネルへの接触を避けるため、画面上にQRコードを表示したり、NFC (近距離無線通信規格)を搭載して、ユーザー自身のスマートフォンで商品情報を確認したり、ARバーチャル・トライオンやオンライン決済を行う方向へシフトしている。スマートフォン決済が進んでいる中国では、こうしたOMO化がすでに日常的になりつつある。

アリババが牽引、中国の消費者が求めるパーソナライズ

セッションには、アリババ・フランスの国際営業部ディレクター、アリーヌ・グオ=ハエフェル(Aline Guo-Haefele)氏も登場し、中国におけるアリババグループのエコシステムとパーソナライゼーションについて語った。アリババグループは2019年9月にPerfect Corp.と業務提携し、同グループのプラットフォームでのARトライオンなどをPerfect Corp.が提供している

グオ=ハエフェル氏は「中国は消費者、特に若い世代を中心に動くマーケット」と話し、消費者のプロフィールと行動を理解する重要性を訴える。現在、アリババグループのユーザーの85%が18歳〜39歳のミレニアル世代、そのうち29歳以下が59%を占めている。また、決済方法はモバイルが90%と極めて高く、ユーザーは1日あたり8回モバイルアプリにアクセスし、平均25分利用しているという。よって、ブランドは若い世代を楽しませつつ、すべてモバイルで完結するパーソナライズした情報やサービスを効果的に届けることが必要となる。

中国には約900のライブコマース・プラットフォームが存在しているが、世界最大のプラットフォームがアリババグループのタオバオだ。タオバオは2018年の売上は150億ドル(前年比400%)を記録し、毎日15万時間のコンテンツが配信され、CVRは60%を超えている。動画に登場するKOLやタレントは視聴者(ファン)の嗜好をよく把握しており、視聴者に合ったコミュニケーションを取ることも巧みだ。

そして、消費者ファーストの中国で若者が求めているのは、パーソナライゼーションだとグオ=ハエフェル氏はいう。アリババグループが運営する中国最大のB2CオンラインショッピングモールTmallでは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)、ミニプログラムの導入により、出店企業が消費者の一人ひとりにパーソナライズした体験や特典を提供しやすい環境を整えている。

たとえば、イヴ・サンローラン・ボーテの旗艦店では、新作の口紅の発売時にARバーチャル・トライオンで自分の顔に色味をのせてシミュレーションする体験を提供しているが、アプリ上での滞在時間が長いほど、CVRは上がるという結果が得られた。また、ジョー マローンの旗艦店ではミニプログラムを導入して、フレグランスのキャップに名前やメッセージを刻印してカスタマイズできるサービスを提供している。

さらに、グオ=ハエフェル氏は「パーソナライゼーションを追求するには、データ分析がもっとも重要」と強調する。アリババグループは決済サービスAlipayをはじめとする複数のプラットフォームを抱えており、消費者の日常生活における関心や行動パターンの膨大なデータを収集している。Tmallの市場調査部門であるTMIC(Tmallイノベーションセンター)は、これらのデータをブランドに提供してターゲティングや商品開発のサポートもしている。すでにロレアルはTMICと提携して、中国人男性のビューティルーティーンを詳細に分析し、中国市場のみに投入するメンズ化粧品を開発している。

また、音声アシスタント付きのメイクアップ用スマートミラーTmall Genie Queenでは、天気や紫外線情報をもとに、その日にベストな美容ルーティンの提案ができ、J&J、シスレー、ケラスターゼなどとコラボレーションして、ブランドの商品情報や美容アドバイスを届けている。

このように、アリババグループはデジタルで繋がったさまざまプラットフォームを通して、的確に消費者のニーズを掴み、協働するブランドに有益なエコシステムを築いている。

世界的に外出自粛が緩やかに続くウィズ・コロナの状況で、今までインストアで行われていた美容体験をどのように調整して提供していくのか。デジタル技術や新しいテクノロジーでいかに顧客体験を豊かにできるのか、各社のチャレンジが続いている。「The Global Beauty Tech Forum」で発表された最新のトレンドやイノベーション事例は、今後の戦略づくりの参考となるはずだ。

Text: 谷 素子(Motoko Tani)

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