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MR、ライブ、パーソナライズ化。ショッピング体験の新しい波はカリフォルニアから

◆English version: Shifts and movements in Beauty as dictated by Gen Z
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サンフランシスコで開催されたBeautyTechSFのミートアップでは、加速度的に進化するテクノロジーをいちはやくビジネスに活かすファウンダーたちの登壇に、会場の熱が高まった。

2018年9月25日、今や世界各都市に支部を持つBeautyTechSFコミュニティ誕生の地で開催された4回目のミートアップ。世界標準の電子署名ソリューションを提供するドキュサインの本社オフィスの、湾を見晴らす眺めも美しい会場には90人あまりの起業家や投資家が集い、各社の事例の紹介や活発な意見交換が行われた。

多彩なディスカッションに通底する今回のメインテーマは、ひとことでいえば「ミレニアルやZ世代の消費者が求める新しいショッピング体験をいかに実現するか」である。D2Cモデルや、ライブストリーミングなどリアルタイムなコミュニケーション、人々が知りたいデータを的確に明示するとともにパーソナライズへとつなげる工夫など、スタートアップはもちろん、グローバルブランドの企業にとっても有用な、美容業界へのヒントが満載だった。

消費者との対話

ソーシャルメディアの台頭が、これまでトップダウンで行われてきた商品開発を大きく変えたと指摘するのは、ロンドン発オンライン・ビューティECサイトFeelunique のCEO ジョエル・パリックス(Joel Palix)氏だ。InstagramやFacebookなどクラウド上には、プロダクトやブランドに対する消費者の率直な感想や要望、批判も含めた貴重な意見が溢れている。

そこは、トレンドをいちはやくキャッチするための宝の山であり、インディブランドがグローバルで注目を集めることを可能にする場でもある。それゆえに、ブランドがSNSを通して直接顧客と対話することが、これまでになく重要になっているとパリックス氏は語る。

画像:左から、Devon Bergman、Calgary Avansino、Joel Palix

顧客との双方向性を重視するのは、ビューティ専門ライブストリーミングアプリGlamcam の創業者カルガリー・アヴァンシーノ(Calgary Avansino )氏も同様だ。『英国版ヴォーグ』で15年働いた経験をもとに、誌面に掲載され読者の目に触れるまで3ヶ月を要する雑誌の世界と、ライブストリーミングを比較した。

アプリ視聴者にとって最大のベネフィットは、インフルエンサーなど自分が信用している人物が実際に製品を使っている様子をリアルタイムで確認し、ときにはその場で質問などをすることで、ユーザーは店舗に出向くことなく、その製品の使用感や特徴を理解できるところにある。オンラインでのショッピングのリスクを格段に低くしてくれるわけだ。

この状況は一方で、ブランド側には、顧客の興味の方向を素早く見定めつつ、臨機応変なコミュニケーションを取ることを要求するものでもある。すでに、マーケティングにおいて、的確なコミュニケーションができるブランドと、そうではないブランドが明暗を分けているという。

インフルエンサーの信頼性が問われている

生まれたときからオンラインが存在しているデジタルネイティブな世代の消費者は、ソーシャルメディアに精通しており賢くなっている。誠意のない嘘のレビューや、加工されすぎた画像など、彼らには本物ではないものを見抜く力があるとするのは、SNSの投稿をデータ分析することで市場やブランド力を客観的に評価する企業Social Standard のデヴォン・バーグマン(Devon Bergman)氏で、ブランドもインフルエンサーもオーセンティシティ(信頼性)を持つことが極めて大切だと語る。

つまり、このインフルエンサーは本当にAという製品が好きで実際に使っているから紹介しているのか、それとも、投稿によってマネタイズした後は2度と使用しないのか、消費者は冷静に観察しているのだ。企業側もまたインフルエンサーがフォロワーを買っていないかなど、インフルエンサーがフォローされている理由を見極めたうえでキャンペーンに起用するようになっている。今や「正直であること」はインフルエンサーには欠かせない資質なのである。

あわせて、バーグマン氏は、自分の身近な世界のリアルなオピニオンリーダーや、自分と思考が似た人物の意見を聞きたいと考える消費者が増え、小さな地域やコミュニティに特化したハイパーローカル、よりクローズドなハイパーパーソナライズの時代が始まりつつあると予測。インフルエンサーには、フォロワーの数以上に、ニッチなコミュニティにリーチできる能力が求められてくるだろう。

ビジュアルコマースへの移行

このようにデジタル時代ではショッピングのあり方が変わってきつつあるなか、コンテンツを作る企業のクリエイティブの現場も変化している。

画像:左から、Zach Parker、Nicolas Zylbestein、Gabrielle Chou

たとえば、消費者は自分の人種や肌色、体型、サイズに近いモデルが衣服を着用した画像を参考にショッピングをしたいと考えている。親近感もわき、何より実際に身につけた感じがイメージしやすいからだ。だが、企業側からすれば、1商品に何パターンもの着用例を用意するのは撮影やモデルにコストがかかりすぎる。この課題を解決するのが、コンピュータ・ビジョン・テクノロジーで1枚の画像からモデルの着用画像が生成できるAllure Systems だ。

同社のCEOのガブリエラ・チョウ(Gabrielle Chou)氏は、ファッションの分野では現実の世界とコンピュータの世界が重なり合うミックスドリアリティ(MR)化がますます進み、仮想空間で各自のアバターに服を試着させることも、あまり遠くない将来に可能になるだろうとする。

また、ピンタレストUSのニコラス・ザイルバースタイン(Nicolas Zylberstein)氏は、2018年4月に導入した、美容に関する検索の回答をスキントーンにもとづいて絞り込む機能について説明した。この機能は、ピンタレストの美容関連の検索を利用するユーザーの70%が、デイリーケアや日々のメイクアップのための製品を探すのが目的であるとする、サーベイにもとづいて追加されたものだ。各自のスキントーンにマッチした検索結果であれば、ユーザーが求めている製品により近いものを提案できるはずだと考えたからである。

これらの個々の嗜好によりそう試みは、ユーザーの利便性の向上はもとより、インクルーシビティ(排他的の逆で誰もが参加できる社会)の実現を念頭に置いて進められているという意味でも興味深い。

クリーンビューティは生活の一部に

有害な化学物質を含まない、天然由来の成分で人体や環境に安全なコスメ、いわゆるクリーンビューティはもはや単なるトレンドではない。ミレニアルやZ世代には、エシカルな製品やブランドを意識的に生活に取り入れようとする姿勢が広がっている。それに伴い、クリーンビューティをうたう美容スタートアップも続々登場している。

画像:左から、Chloe Takahashi、Lily Xu、Suveen Sahib、Astrid Taupin

セフォラが運営する女性起業家のためのアクセラレータープログラム に関わっているリリー・スゥ(Lily Xu)氏は、“クリーン”と“コンシャス”が最近のキーワードで、Clean@Sephora のマークがついた商品は、硫酸塩、パラベン、ホルムアルデヒド、フタル酸、鉱油などが原材料に含まれていないことをセフォラが保証するものだと解説する。

Cosmehunt を創業した高橋クロエ氏は、自身が日本から北米に移住した際、自分の敏感肌に合う安全な化粧品が見つけるのが困難だったことから、Jビューティ製品を手に入れやすいプラットフォームを立ち上げた。

ただし、クリーンビューティにはまだ越えなければならない課題もある。1つには、各国で法規制や基準が異なるため、真のクリーンビューティとは何かという定義づけが曖昧な点である。たとえばヨーロッパは、米国のFDAに比べて規制が厳しく、使用が禁止されている項目が米国の倍以上もある。また、フランスでは、消費者の33%が商品の購入前に原材料が書かれたラベルを確認するとビューティ・エディターのアストリド・トーピン(Astrid Taupin)氏がいうように、意識の高さにも違いがある。

クリーンビューティにとどまらず、この先、消費者1人ひとりの望みに細やかな応える製品やサービスへとさらに磨き上げるには、テクノロジーの関与は欠かせない。ユニークなアイディアをカタチにしようとするスタートアップが多数集まった今回のミートアップは、何が起こるか目が離せないBeautyTechのエキサイティングな未来を予感させるものだった。

Text: 大石結花(Yuka Oishi)、編集部
Image credit: techandcoffeemedia.com



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