韓国の化粧品リフィル市場、大手からスタートアップまで消費者目線の取組み
見出し画像

韓国の化粧品リフィル市場、大手からスタートアップまで消費者目線の取組み

◆ 9/1よりリニューアルしました。詳細はこちら
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

持続可能性や環境保護を重要視する消費者意識が世界的に高まるなか、韓国ではリフィル(詰め替え)市場でのシェア獲得を目指す各社の競争が始まっている。韓国のビューティ業界では、”ビッグ2”と呼ばれる、アモーレパシフィックLG生活健康が同市場に参入を開始しており、リフィル容器やシステムに特化したスタートアップも登場している。プレイヤーの動向や課題など、韓国リフィル市場の現況をレポートする。

アモーレパシフィック、LG生活健康もリフィル市場に積極参入

世界的に関心が高まるリフィル市場だが、グローバルではTHE BODY SHOPや、ロクシタンユニリーバなどがすでに関連事業に積極的な参入を果たしている。

THE BODY SHOPは2021年内に世界500店舗にリフィルステーションを設けるのに加え、リサイクルプログラム「Return, Recycle and Repeat」も14地域800店舗に拡大する方針を打ち出している。対するユニリーバは、英国全域でリフィルサービスを展開する方針を発表。また、ロクシタンは27カ国60カ所でリフィルステーションを設置する方針を明らかにしている。

グローバルブランドがリフィル市場への参入を本格化させる一方で、韓国省庁も市場の成長を積極的に奨励している。「リフィルステーション1カ所で1日20件の詰め替え製品が販売されると、プラスチックゴミを年間1,095キロ削減することができる」という政府試算を出し、規制の整備や実証実験の後押しを開始した。そんな動きに呼応するように、いわゆる韓国の化粧品業界 ”ビッグ2”であるアモーレパシフィック、LG生活健康 が相次いで施策を打ち出している。

アモーレパシフィックは、2020年10月にアモーレストア光教店にリフィルステーションをオープンした。続いて2021年5月には、アモーレストア ヘア&ボディ内にも内にも同設備を設置。売り場では現在、シャンプー2種類、ボディケア商品8種類の詰め替えが可能で、今後は10種類に商品数を増やしていく計画だとする。

アモーレストアHair&Bodyショップ
出典:アモーレパシフィック公式サイト

LG生活健康も、2021年5月と7月にリフィルステーションが設置された店舗L.Heritage1947をオープンさせている。1店舗目は大手小売チェーンEmart竹田店内で、2号店はソウルの文化発信エリア新沙洞にある。L.Heritage1947はシャンプーやボディケア商品の詰め替えとともに、LG生活健康のプレミアムブランド商品が体験できる複合施設という位置付けだ。

たとえば、多彩な香りの商品ラインナップの「Dr. Groot」と「VEILMENT」に関しては、すべてのボディウォッシュがお試しできるほか、常駐する化粧品調剤管理者が来店した顧客に対し、アンケートや聞き取りをもとに、商品のなかから各自に適したものをレコメンドしてサンプルをくれる。

L.Heritage1947
出典:LG生活健康公式サイト

このように、トレンドをいち早く取り入れ、国内およびグローバル市場で影響力を発揮しようとしている大手2社だが、店舗サービスの拡大だけでなく、競争力に直結するサステナブルな技術開発にも注力している。

アモーレパシフィックは、従来の容器に比べてプラスチックの使用量を約70%削減し、最長で36カ月間の流通が可能な紙ベースの容器を開発している。一方、LG生活健康もプラスチック量を30%削減したリサイクル可能な容器をリフィルステーションで実用化。同容器には通常ゴミとして廃棄されるココナッツの皮を原料に使用し、あわせて、貼付したラベルシールを水で簡単に剥がせる新技術も採用されている。

韓国では大手以外にも、同分野に参入するブランドがある。2004年に設立された「Aromatica」がその代表格だ。Aromaticaはエコサートなど国際的な認証を取得するヴィーガンコスメブランドで、国連グローバル・コンパクトにも参加。スキンケアおよびヘアケア、ボディケアなど幅広い商品を取り扱う。リフィルステーション(アロマティカゼロステーション)の設置もビッグ2に先駆けて実施しており、国内リフィル市場において注目すべきブランドのひとつとなっている。

またビューティ業界ではないが、テイクアウトカップメーカーであるBOTTLE FACTORYもカフェやイベントでの飲み物容器を使用後に回収・洗浄しリユースするサービスを提案。同社はさまざまな商材の詰め替えができる売り場を複数設置し、容器という切り口からリフィルを推進する。

小売業界もリフィル市場の潜在力に着目しており、なかでもディスカウントチェーン大手Emartの活発な動きが目立つ。すでに「シュガーバブル」など洗剤ブランドと協力し、およそ31店舗でエコリフィルステーションを展開している。前述のアモーレパシフィックやLG健康生活もEmart系列のモールにリフィルステーションを設置したテナントを構えていることから、今後コスメやスキンケア用品の取り扱い拡充にEmartが積極的に動くとみられる。

オンラインリフィル市場を狙うInnerbottle

Innerbottle
出典:Innerbottle 公式サイト

リフィル市場をメインターゲットに技術開発をするスタートアップもあり、なかでも話題を集めているのが、Innerbottleだ。同社は2017年に設立されたゴム製容器のメーカーで、代表を務めるのは弁理士から転身したオ・セイル氏である。

Innerbottleは、人体に無害かつ環境ホルモンの影響を排除する、特殊素材のポリマーでつくられたボトル「Innerbottle(社名と同名の商品名)」と、内容物を注入する設備を開発し展開している。Innerbottleは風船のような容器が内側にある二重構造ボトルで、既存のディスペンサー容器だと内容物を最後まで出し切れない形のものも多いが、Innerbottleはおよそ1%まで残量を抑えられるとしている。中身をほぼ残すことなく使用でき、ゴミ削減にもつながるというわけだ。

Innerbottleは2021年内に、多種多様な商品の詰め替えが注文できる“オンライン・リフィルショップ”のリリースも計画中だ。利用方法は、専用ECサイトにアクセスし商品を購入すると、Innerbottleに入った製品が届けられる。使用後にユーザーが詰め替えを申請すれば、洗浄済みのほかのボトルで商品がふたたび配送され、使用済み容器はInnerbottle側に回収されるというものだ。

これは、韓国には未上陸だが、欧米や日本など世界展開を進めるLoopのECサイトと同様の仕組みだ。実証実験が始まったLoop JapanのECサイトでは、参画企業がガラスやステンレスの容器を独自に開発した詰め替え対応商品が販売されており、Loopが回収を担うが、リユース容器も自社で製造し充填まで行う点で、Innerbottleはより踏み込んだソリューションといえよう。

リフィル事業に乗り出す背景についてオ氏は次のように説明している。「化粧品を詰め替えて使用できるオフラインリフィルショップが登場しているが、コストの問題でさまざまな種類の詰め替え製品を常備しておくことができない。消費者側からすれば自宅付近にリフィルショップがないと頻繁に使うこともできず、利用する理由もそれほどみつからない」(毎日経済2021年10月05日付

Innerbottleはリフィル市場に対応した特殊容器や商品販売プラットフォームのみならず、資源循環プラットフォーム「Re-Turn」も用意している。同サービスはLG化学と協業し開発したB2Bプラットフォームだ。化粧品メーカーはInnerbottleに添付されたQRコードから利用履歴を追跡管理でき、最終的にプラスチック量を削減することができる。また何度も使用し耐用期限を過ぎた容器はInnerbottle側で回収。細かく粉砕してLG化学などポリエチレンを製造する企業に販売される仕組みとなっている。なお、Innerbottleは英国向けにボトルと注入設備の出荷が始まっており、米国、カナダ、ハンガリーなどの企業と輸出交渉が進んでいると公表している。

韓国リフィル市場の現状と課題

韓国のリフィル市場を読み解く際、プレイヤーの動向とともに注目すべきもののひとつが規制の問題だ。これまで韓国では、リフィルショップもしくはステーションに専門知識を有する国家資格者・調製管理士を配置する必要があった。化粧品などリフィルする商品の安全性を、消費者にその場で周知するためだ。だが2021年9月15日に同規制の一部が撤廃され、シャンプー、リンス、液体ソープ、ボディクレンザーの4種類の商品に関しては、調製管理士がいなくてもリフィルショップで補充・販売できるようになった。今後、規制緩和で扱える品目がさらに増えていくかどうかが、市場拡大を左右する重要なイシューとなるだろう。

ちなみに日本においては、簡易パッケージ版を発売しユーザー自身が詰め替えるリフィル商品販売は薬機法で認められているほか、リフィルステーションに相当する、商品をリクエストに応じてその場で容器に詰め替えて販売する「分割販売」も、薬機法上、問題ないとされている。ただし「表示義務」と「衛生状態確保」を必ず行うことが定められている。

一方、規制が撤廃されようとも、「韓国においてリフィル文化が普及するには、まだまだ時間がかかる」とするメディア報道もある。美容専門メディアのビューティ経済は2021年10月中旬に「コスメリフィルステーションはまだ期待値に達していない」という記事を掲載。「(お客様は)趣旨には共感を示すものの、実際の購入に結びつかない傾向が強い。どう利用してよいのか分からず質問される方や、ためらいがちに容器を差し出す人も多い」とする、現場スタッフのコメントを引用している。リフィルに対する理解がもっと広がり、ステーションの数が増えないことには、詰め替えを選ぶ人の増加にはかなりの時間がかかるとしている。

韓国最大の検索ポータルにも、リフィルに関する消費者のさまざまな“悩み”が投稿されている。なかでも多いのが、「お気に入りの商品が詰め替え対応しているか」「ボトルの清潔さ」「詰め替えした際の保存期間」などに関するものだ。詰め替えの利便性や環境ダメージを減らせるなどの利点に一定の評価はあるが、実際に商品を利用した際の安全性について、業界側はユーザーの要望に応えられていない状況とも分析できる。

英国では、クリーンビューティブランド「Beauty Kitchen」が、2019年という早い段階から、ユニリーバとも協働し、自社製品のみならず、洗剤など他社の日用品もセルフで詰め替えできる自販機型リフィルステーションをスーパーマーケットなど英国全土の1,000カ所に設置するプロジェクトを進めている。同社はハッシュタグReuseRevolutionの拡散や、設置してほしい場所などのフィードバックをSNSで呼びかけており、消費者の理解と賛同が広がっている。

肯定的な報道と現状の課題を指摘する批判が飛び交う韓国の状況ではあるが、消費者の注目を集めていることは間違いない。サステナブルを志向する世界の動向を見る限り、近い将来、韓国を含むアジアでもリフィル市場の拡大は確実とみられる。プレイヤーの数や商品の多様性、また詰め替えカルチャーそのものの周知が課題となるなか、民間側のアイディアやイノベーションを促進しつつ、政府の施策と上手くリンクさせることが市場成長のカギとなりそうだ。

Text:河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Aromatica公式サイト

ありがとうございます!メルマガで隔週で更新情報配信中。ぜひご登録を!
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。最新記事から過去1ヶ月分は無料でお読みいただけます。それ以降の記事は「バックナンバー読み放題プラン」をご利用ください。詳しくはこちらから→ https://goo.gl/7cDpmf