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実生活とオンラインの境界が曖昧なZ世代が求める「リアル映え」

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SNS上のバズワードとして、化粧品マーケティングにおいても注目される「リアル映え」。この言葉の生みの親であるZ世代の意識をひもといてみよう。

日本の美容業界において、Z世代が次の消費トレンドの牽引役になるといわれて久しい。その意味で、株式会社マンダムが2018年9月に公表した「出会いとデジタルコミュニケーションに関する調査 」は、Z世代のインサイトを浮かび上がらせる興味深い結果が出ていた。それによると、彼らの半数が「ネットで知り合った人と実際に会った経験」があり、現実の自分をネット上の自分に近づけたい「リアル映え」欲求を持つ人が7割を超えるという。

SNSネイティブな世代

一般的にZ世代とは90年代後半以降に生まれたエイジグループを指す。1995年が平成7年なので、ざっくり平成2ケタ生まれと考えていいだろう。参考までに、1998年生まれの場合は2歳(2000年)でAmazonの日本語サイトがオープンし、9歳(2007年)でYouTubeが日本に上陸し、10歳(2008年)でFacebookが日本語対応になった計算だ。ちなみに、初代iPhoneの発売は2007年である。

要するに、Z世代とは初めての携帯がスマートフォンで、中学生になるかならないかの歳でSNSをはじめ、友人との連絡はLINEを使い、日々の情報はオンラインで入手というのが当たり前の世代だ。ミレニアルが「デジタルネイティブ」なのに対し、Z世代の特徴は「ソーシャルメディア(SNS)ネイティブ」ということになる。

Z世代が、その親世代である1960年代半ばから70年代に生まれた“ジェネレーションX”と究極的に異なるのは、実生活とオンラインとの間に境界がほぼないという点だ。

明確にいつまでとは定義しにくいが、ある時代まではネットは匿名であることが前提だった。だからこそ、実生活では常識的で穏やかな人が、ネット掲示板では激しく毒を吐いているといったことも珍しくなく、現実に顔をあわせる「オフ会」というものが、特別な場として機能していた。ジェネレーションXの場合、ネットの自分とリアルの自分は別ものという感覚が強いのではないだろうか。

しかし、本人確認および自己責任追及社会に育ったZ世代は「ネット=リアル」になる。彼らがネットで情報発信するのは、現実世界での友人なり知人なりに、自分のことや教えたい情報を知ってもらうためである場合が多い。

「盛る」という名の虚構

ただし、ここで押さえておきたいのは、ネットは虚構を演出する場所だという点だ。それは、昔も今も変わらない。虚構という言葉が大げさならば、何らかの改ざんがあるのが当たり前といってもいい。つまり、オンライン上では誰もが多かれ少なかれ嘘をついている。昔はネットで嘘の人格なり人生なりを演出していたのが、情報発信の主要な手段が画像と動画になりつつある昨今では、見た目を偽造するのだ。偽造という言葉は穏当ではないので「盛る」と表現するのだが、その盛り具合はなかなかすごい。

YouCam メイク
出典:Perfect Corp

Z世代の盛り願望はとにかく強く、写真加工アプリを使うのは常識。いや「加工していない写真なんかネットに上げられない」という。Z世代の盛り感覚を知りたいならば、「激盛れアプリ」で検索してみるのが近道だ。デカ目にしたり、小顔にしたり、美肌加工は当たり前。瞳の中にキラキラをプラス、脚を半分サイズにスリムにし、歯を矯正レベルで整え、さらに真っ白にする。出来上がりはというと、もはや詐欺レベルではないかと親世代は不安をおぼえるほどだ。

ネットと現実の溝を埋めるための「リアル映え」

もちろん、それが誰かの迷惑になるわけでもなく、本人が満足してやっているのなら、他人がとやかくいうことではない。だが、ここで問題になってくるのが、前述した「ネット=リアル」という構図だ。Z世代はネットとリアルの間に溝が生まれてしまうことを恐れる。「ネットではあんなに可愛いのに、リアルはこんなもの」となる状況はできれば避けたい。

実際、マンダムの調査でも10〜20代の回答者の約7割が「ネットの写真とリアル(=実物)にギャップを感じたことがある」とし、「ギャップがあったとしたらどう思うか?」という質問には6割を超える人が「がっかりする」と答えている。

そして、ネットとリアルがあまりにも乖離(かいり)してしまう状況を「リアル離れ」と呼ぶ。このリアル離れを避けるためにどうするのか、それがマーケティング分野でも注目のキーワード「リアル映え」志向だ。

ネットの盛りを控えめにするのではなく、盛りはそのままで、リアルをそこに近づけていくという方向に向かう。つまりは現実も加工する時代になったのだ。ナチュラルメイクとか生足ストッキングとか、人工を自然に見せることが求められたのは遠い出来事となった。

ただ、リアル映えで気をつけるべきは、どこまでやるのかそのレベルの度合いだ。まず、どう頑張ったところで、虚構は現実とは違う。よくいわれることだが、アニメキャラとまったく同じ目鼻立ちの構成比の人間がいたら、可愛いというよりはむしろ不気味なはずだ。ネットなら激盛りもいいが、リアルはある程度は抑え気味にする必要がある。

もっともアプリの操作に慣れたZ世代は、そのあたりのさじ加減にも長けていて、激盛りは派手なエフェクトやフィルターがたくさんあり、試せるブランドやカラーも豊富なYouCam メイクで、いわば“遊んで”、投稿もYouCamのプラットフォームにあげるのみ。一方で、SNS用はナチュラル盛りがきれいにできると最近人気の高いSODAで、実物の自分よりやや上に仕上げるなど、使い分けている。

SODA 制作元 Snow Inc
出典:Google Play

リアル映え志向が生んだヒット商品

Z世代が写真加工アプリで手を加えることが一番多いのは「肌」だという。確かに顔のパーツや体型を加工しすぎるとリアルとの整合性がつかなくなるが、肌なら正しいスキンケアの積み重ねや、肌色にあったファンデーション選び、コンシーラーやプライマーの上手な使い方で、現実の世界でみてもきれいな肌を手にすることは夢ではない。多くの加工アプリには、肌を“トーンアップ”させる、シミやクマなどを隠す機能がついているが、2018年はSNSのクチコミで「トーンアップ」という語の出現率が倍増し、「コンシーラー」に関するクチコミ件数も伸長した

あわせて、投稿では「まるでアプリ加工したかのような仕上がり」「フォトアプリみたいな加工肌」のような表現や記述もよくみられるようになった。@cosmeのベストコスメアワード2018で日焼け止め部門の1位に選ばれた「スキンアクア トーンアップUVエッセンス」は、日焼け止め効果だけではなく、「フィルターをかけたようなフォトジェニックな肌になれる」ことをうたっており、当初の予定を3倍上回る出荷実績をあげた。大ヒットの裏側には、Z世代のリアル映え志向の存在がうかがわれる。

同製品からは、近年SNS上で増えている「鏡越しに写真を撮ってSNSへ投稿する」トレンドに着目した、「鏡に映すと文字が読めるようになる」デザインの限定パッケージも2019年1月に発表されている。

スキンアクア
トーンアップUVエッセンス
(アリス限定デザイン)
出典:ロート製薬

こうしたリアル映えへの欲求は、日本だけのものではない。「Look like an Instagram filter on」「Make you look filtered in real life」などの見出しのもと、どうメイクすれば、あるいは何を使えば、アプリで加工したかのような見た目になるかを指南する、数多くの欧米のブログや記事、チュートリアル動画がある。そこでは、毛穴を完璧に隠し、肌の輝きをアップさせるスグレモノとして、リアーナ(RIHANNA)がプロデュースするFenty Beautyやメイクアップアーティストのシャーロット・ティルブリー(Charlotte Tilbury)、Benefitなどのプライマー、Kjaer Weisのパウダーといった、Z世代御用達のカルトなブランドの商品がレコメンドされている。

Benefit Porefessional
Pearl Primer
出典:Benefit Cosmetics

リアル映えはポジティブ思考

この盛り盛りの時代にあっては、人々は2次元というものを信用しなくなっている。写真でも動画でも、2次元ではデフォルトですべてが加工されているというのが、固定観念として刷り込まれているのだ。逆説的だが、だからこそ、リアルを虚像にどう近づけていくかが重要になる。

Z世代にとっては、「なりたい自分」も「理想の自分」もネット上に存在している。そして、ネットとリアルの間にある溝を埋めるべく、今日も現実の自分を磨くのだ。得意のSNSを駆使して情報交換をしながら、理想の実現を目指して奮闘する姿は男女を問わず、若い世代らしく真剣で、かつ一生懸命であり、ポジティブだ。そこに思い至ったとき、「美は1日にして成らず。努力してこそつかめる」という古い格言が頭をよぎるジェネレーションXには、少しほっとするものがあるかもしれない。

Text: BeautyTech.jp編集部


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